河岸のおはなし



築地初の回転寿司はマグロだけ!そして秋はサンマだー!

二八とはよく言ったもので、八月はなんじゃこりゃあ、たこ焼き屋の売り上げかい、と思うほどお客さんも少なかったのですが、九月ともなると、さすがにだんだんと忙しくなってきました。考えてみれば、一番の稼ぎ時の暮れまで指折り数えればほんの少し、という感じなんですから、早いものです。

九月の出来事といえば、九月二日、場外にあるうちの会社の事務所の程近くに、回転寿司が出来ました。意外なことにも、築地には初めての回転寿司です。で、これが面白いことに、マグロだけなんですよ。いろいろな部位によって一皿二カン200円から600円(!)まで値段をかえてるわけです。店先ではマグロの解体をやっていて、そこから店の中にネタを運び、握って出すというわけ。だから、中トロが今きましたー、とかっていって回転ベルトに並ぶわけです。さすがに一番高い600円の皿のは美味しい。霜降り牛肉のように脂が乗っていて。でもそれでも中トロなのです。大トロは二個食べるとしつこいというので、他の部位と一個づつ乗って500円の皿。他にネギトロとか、鉄火とか、マグロだけだけど結構飽きずに食べられるし、美味しい。回転寿司とはいえ、普通のお寿司並みのお値段ですけど、ま、気軽に食べられるしオススメですよ。ちなみに私は6皿食べてお腹ぽんぽこりんになりました。ちょっと大きめかもしれない。一人2000円超ってとこでしょうか。

そう、新サンマが出てきて、まだまだ価格はべらぼうに高いのですけど……一尾400円なんていう、おそろしい値段がついてたりして……やはり、この季節は食べておかなければね、と。お刺身で食べられる貴重な時期だし。サンマのお刺身って、食べたことありますか?見た目はイワシやアジのお刺身とそっくりだけど、歯ごたえが予想外にコリコリしてるのですよ。イワシほどじゃないけど骨が細くてめんどくさいのですが、イワシより身がしっかりしているので皮もむきやすいし(皮をむくというより、身と皮の間にメリメリと指を突っ込んで、身を皮からはがす、という感じでやると上手くいきます)、ぜひ一度、新鮮なサンマを手に入れて賞味してみてください。……でも、ほんとに新鮮じゃないと、サンマをお刺身では食べられないので、それこそ、築地で買ってって欲しいな、と思うのですけどね。いわゆるスーパーのパックものはちょっと私には怖くて刺身では食べられないなあ。

とはいうものの、やっぱり私はサンマは塩焼きに限ると思ってるんですけど。思えば昔からほんとに私、サンマの塩焼き、大好きでしたね。もう、マンガみたいに、ほんとに骨だけをきれいに残して食べてたものでした。これでもか!というくらい、たーーーっぷりの大根おろしで。

サンマって、ほんと、美しいです。ここ、築地にいると、新鮮なサンマを見ることが出来るので、その見事に銀色の、ピンとそりかえった、無駄のない直線に近いほどの体の線には、ほんとうにほれぼれとしてしまいます。秋刀魚、とはまさしくそのとおり。太刀魚という魚がありますけど、あちらが太刀なら、やはりサンマは懐からキラリと光ってる小刀といったところでしょうね。

ああほんとに、早くサンマ食べなければ!そうそう、ビールも用意してね。秋は、コレですよお。




夏はコレでしょ、築地のカレー。

お盆休みで実家でのんびりしているときに目に入ってきたTVCM“夏はやっぱこれでしょ”というあの、どーもと君の某メーカーのカレーのCMで思い出しました。そうそうそう、カレーといえばね、美味しいところが場内に二つ、あるんですよ。

以前ご紹介したお団子の「茂助」さんの同じ並びにある「中栄」さんと「豊ちゃん」がそれ。「中栄」さんはもうまんまカレー専門店、目印であるちびくろサンボみたいな男の子のマークがキュートです。かなり辛目でキャベツの千切りがどんっと乗ってきます。キャベツといっしょに混ぜながら食べる、というのがマイルドに食べる秘訣ということで、キャベツが苦手な人は事前に言えばのけてくれます。

「豊ちゃん」はいわゆる洋食やさんでメニューも豊富です。これまで何度となくマスコミに紹介されていて、さるテレビ番組放映の後はカツどんを頼む客ばかりで閉口したとかしないとか。ま、もちろんカツどんも美味しいんでしょうけど、豊ちゃんといえば私はオムハヤシかカレーだと思ってますから。オムハヤシの超絶美味さについてはまた日を改めてご紹介するとして、今回はカレー。水よりも熱いお茶が似合うくらい、全くもって辛くないのですが、黄色味の強いカレーはいったいいつから煮込んであるの?というほど味わい、コクともに深く深く深い!キャベせんは言えば乗っけてくれます。以前ここでカレーばっかり食べていたときは、お店のおじさん、私たちの顔を見るとすぐ「ベツのっける?」と聞いてくれたものでした。

字数のさきかたで判るように、私は断然「豊ちゃん」カレーがごひいきなのです。おこちゃまなので甘口カレーが好きだし、ご飯のかたさも好みだしね(「中栄」さんは少々やわらかめ)。ただ、「中栄」さんには“あいがけ”というメニューがあって、ハヤシとビーフを半々とか出来るのは魅力です。カレーにこだわりがある人にとっては、辛さといい、「中栄」さんのカレーの方が王道かもしれない。

もう一つ、まだ私は行ったことはないのですが“本場のインド人のシェフが作った”なんていう触れ込みの、ほんとにインド人かどうかは怪しいものですが、とりあえずそっち系の人が腕を振るっているカレー屋さんが、これは場外に出来ていました。結構繁盛しているようですが、美味しいのかなあ……もし情報を仕入れられたらご紹介しますね。行ったことある方がいたら、教えてほしい……。




場内への誘(いざな)い……。

ふと気付くと、このままでは単に築地グルメ情報になってしまうので、たまには違う話をしますね。

それは、築地魚河岸に来てみませんか?っていうお誘いであります。えー、場外じゃなくて、場内にまで入ってきませんかってこと。こう言っても判らない方もいらっしゃると思いますが、築地と一口に言っても、場外市場、場内市場、ヤッチャバ(青果市場)などなどとあるわけです。場外市場とは、一般の人が買い物に来るところで、いくつかの通りに海産物関係の店がズラーッと軒を連ねています。中には刃物屋さんとか、食器屋さんなんかもあったりします。

私が勤めているのは場内市場といわれるところです。ここは広大な敷地に屋根付き(しかし吹きさらし)の石畳の市場で、何百もの仲買のお店が入っています(ごめんなさい、正確な数、知りません)。いわゆる仕入れ関係の人……魚屋さんとか、お寿司屋さんとか、レストランのコックさんとか、スーパー、デパートに入ってる水産店の店長さんとか……が来るところです。ので、一般の人は入っちゃいけないと思っている方が多いようなのですが、そんな事はありません。というか、以前はそうだったらしい……今でもひょっとしたら本当はそうなのかもしれませんが、一般の人もガンガン入ってきています。一種観光名所にもなっているようで、最近は外国人の団体さんなんかも多いのです。

場内市場は歩いて見てまわるだけでも充分面白いのですが、やはりちょっと買ってみると更に面白い。場外とちがってなかなか小売りはやってませんが、最近は一般の人向けに小売りをやっている店も有るし、グループでケース買いして山分けすれば、かなり格安になると思います。居酒屋さんなんかに卸す、袋入りのお惣菜を扱っている店などは試食も出しているので面白いですよ。

まあでも気をつけて欲しいのは、場外と同じ感覚で来ると、結構危険だということです。足場は濡れているし、ターレット(立ち乗り運搬車?)や手引き荷車は歩く人をよけるなんて事は全く考えずにガーガー走っているので、いい洋服など絶対着てこないように!下手するとマグロを洗った、血に染まった水がザバーッ!なんてことがありますからね。更に理想的なのは長靴をはいてくることですが、いくらなんでもそこまでは押し付けできませんので、せめて歩きやすいスニーカーぐらいにしてください。間違ってもハイヒールなんて馬鹿なものをはいてこないように!(いるんですよね、結構。何考えてんのと思っちゃいますが……)

そしてもう一つ。時間帯。朝ご飯食べてゆっくりしてー……なんて感じで10時すぎに来る方々が結構いますけど、それじゃほとんど意味ありません。もうあらかた売り終わっており、店頭にはもはや魚のない店がほとんどで、すっかり片づけちゃっている店もあります。やはり来るのなら7時前、6時半なんて言ったらさらに理想的です。活気のある市場が見られますよ(最近はすっかり不景気で大人しいもんですけどね)。




築地の美味しいもの……お団子!(流行りものだからな訳じゃありゃあせん!)

『だんご3兄弟』が流行っているから言うわけじゃなくて、本当に紹介しようと思っていたのが、「茂助」さんのお団子です。まあでも、流行ってるならその旬のうちに紹介しようと思い立ったわけで。ここのお団子はさまざまなグルメマガジンや、TVにもたびたび紹介されているのでご存知の方も多いかと思いますが、本当に美味です。それも、独自の食感を持つ、ほかでは決して出会えない唯一無比のお団子なのです。

『だんご3兄弟』はおしょうゆの3つ刺さったお団子だったと思いますが、「茂助」さんのお団子はおしょうゆ(甘いみたらしではなくて、おしょうゆ味の焼き団子状態のもの)は4つ、あんこが3つなのです。特にお勧めしたいのがこのあん団子の方で、つぶしあんとさらしあんがあり、どちらも絶品なのですが、こしあんが苦手という方に、ぜひともこのさらしあんのおだんごを試して欲しいのです。見た目も白っぽい感じでちまたのこしあんとは全く違うのですが、こしあんではなく、さらしあん、と強調したいこのすうっと溶けてしまうようなきめ細かなあんの食感がとにかく素晴らしくて、芸術的とでも言いたいほど。そして前述しましたが、団子生地が独特の弾力を持った食感で、これまた目からうろこの美味しさ。そしてこの3つ刺さったあん団子が大きい!串ではなくて、すこし平たいくろもじのようなものに刺さっていて、持つとずしりと重く、実に食べごたえがあります。

一般に有名なのはもちろんですが、河岸の人にも、もともととても人気があって、普段の日でも10時頃にはほとんど売り切れ、土曜日ともなると、おみやげとして買っていく人が多く、早朝のうちになくなってしまうこともしばしばです。特に今はお団子が流行っているということもあり、さぞかしすさまじい状況になっているのは想像にかたくありませんので、あまり無責任なことは言えませんが、早起きして買いに行くだけの価値はあると思います。

「茂助」さんは和菓子のお店で、他の和菓子もいろいろ絶品モノがあるのですが、それはまたの機会に……。場所は波除神社を左にした海幸橋という小さな橋を渡って(つまり場内に入って)すぐ右に折れ、狭い通路の右側にお店が立ち並んでいる中を進んでいくとあります。某軽食屋さんの隣です。どうかして場内に入っちゃえばすぐ判ると思います。




築地の美味しいもの……お寿司!

築地に美味しいものを食べにくる方というと、ま、当然のごとく、お寿司を目当てに来るわけですが、築地には他にもほんといろいろ美味しいものがあるのです。ま、それはおいおい紹介するとして……。今回はやはりオーソドックスにお寿司と行きましょう。

大体みなさん、グルメ関係のマガジンやテレビなどを参考に来るので場内の「大和寿司」さんとか、「寿司大」さんとか、「寿司清」さんとかに、天気のいい土曜日なんか、長蛇の列を作ってますけど、河岸の中の人はまずこれらのお寿司やさんには入らないのです。

いえいえそれは別にそこがまずいというのではなく、(そんな事言ったら私築地にいられなくなってしまう……(笑))河岸の人はまあそれはそれは気が短いので、並ぶということを極端に嫌うせいです。なので実際に入ったことのある河岸の人はいないに等しいので、味については、まああれだけいつも並んでいるんだから美味しいんだろう、という程度にとどまります。
でもやっぱりお寿司はゆっくり味わいたいという方には、これらのお寿司やさんはかなり辛いものがあります。特に「寿司清」さんなんかは、食べている人のすぐ後ろに並んで次の人が待っているので、食べた気がしないんじゃないかと思うのです。ま、安いというのも手伝っているんでしょうが、せっかく築地に来て美味しいお寿司を食べようというのなら、ちょっとがんばってお金を出してみてもいいんじゃないかな……。

というわけでおすすめのお寿司やさんは、また次回。ではなくて(笑)、えー場内ではまず「すしまる」さんがおススメです。先の「大和寿司」さんからちょっと河岸を背にして歩いていっていただいて、ひょこっと左を見ると、ひっそり看板が出ています。ただここは、確実に美味しいのですが、値段を設定してないので、河岸の常連さんはいいのですが、一般の一見さんはそれはそれはボラれる可能性があります(「すしまる」さんがこのHPを読まないことを切に祈る……)。

ので、本当のおススメは、場内でも場外でもなく、そこからちょっと離れた、築地の駅に程近い「喜楽寿司」です。地下鉄築地駅を本願寺出口から出て、ちょっと裏手になりますが、その辺の人に聞けばすぐ判ります。そこは普通に食べるとやはりちょっとお値段ですが、平日の11時からのランチが1800円で、ま、ランチの値段としては値が張りますけど、それだけの価値はある美味しさです。

どおーしても場外か場内で食べたいっ!という方には、「浜茂寿司」さんあたりがおススメです。新大橋通りに面した場外市場から一本中に入った通りの、建物の二階にありまして、ここはお値段も手ごろです。