河岸のおはなし

2008/4/30/水

ある日の飲み会。

桜の季節も過ぎました。
先日、お客さんがおでこに桜の花びらがついているかと思ったら、「バカ、違うよ、これは魚のウロコだ!」(笑)
うーん、河岸の春の会話である。



さて、私ん家に友人が飲みにいらっしゃるというんで、刺し身をメインにつまみを用意。
友人は一人。そして私。
河岸の人間がつまみを用意するとこうなるんである。どう考えても二人分じゃない。

電話して、誰か呼びたいよねー、っと酔っぱらって彼女のダンナを引っ張り出そうとしたが、オトナな対応をされてしまった……。

そういやあ、あのべっぴんさんのバイトさんは私と同様「毎晩飲みます」「ビールを控えなきゃと思うんですけど……」等々の発言を聞くに(お客さんとの会話を盗み聞き(爆))相当に飲みそうなので、ぜひとも仲良くなってこういう場面で呼び出したいところなのだが(ついでにフランス料理の一品作ってほしい♪)、お誘い出来るほど親しくなれていない。
べっぴんさんなので、私臆してる(爆爆)。
この飲み会は、酔っぱらいさん二人で、ピアノとヴィオラのデュオがクライマックスとなるのだが、そうなると河岸の話でもなくなるので(まあほぼ垣根がなくなってるけど……)それはまた別の話。

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やっぱ今は朝ドラ、「瞳」ですよねえ。
ドラマを見るとちょいちょい築地でもロケをやっているようなんだけど、そんな気配もない。というか、営業時間内に撮影が出来るとも思えないけど、休日とか昼過ぎを使っているのかなあ。まあ、セリ場面は別としても。
ああ、ヤスケンが撮影してるところとか、見たいのになあ!
でもね、「築地といえば」と紹介されるセリは、今はもうマグロやクルマエビなど数品目しかないので、ウチの店なんてほぼ関係なくなっちゃったんだけど。
瞳ちゃんがバイトする食堂がある通りは店も含めて当然セットなのだけど、確かにあんな店はありそう。探しに来る人いそうだなあ。
でもああいう場内の食べ物屋さんは、いまはどこも一般の人や観光客でいっぱいで、あんな風に河岸の人だけで埋まっているところなんて、まだあるのかしらという感じだけど。

そう、そんな気配、ホントにないのよね。作品のポスターとかも貼ってない。「天国は待ってくれる」や、これから公開の「築地魚河岸三代目」のポスターは早々に貼られていたのになあ。
まあ、メインの舞台は月島だからなんだろうけど……。
それにしてもこのドラマを見てると、ホントにもんじゃが恋しくなる。あ、あとレバフライも久しぶりに食べたーい!


2008/2/24/日

かもめさん。

このほど二人の社員さん、一人のアルバイトさんが決定。ここしばらくギリギリの人数で乗り切ってきて、皆に疲労がたまってきたところなので一安心。
河岸で働きたい人はきっと沢山いるだろうと思うんだけど、その需要と供給が上手くいかないのか、あるいは河岸と相性が合う人はやはりカワリモノが多いのか?募集をかけてもこなかったり、来ても数日で辞めてしまったりが多くて。
どうか、今回の新人さんたちは相性が合いますように。

そして、配送のアルバイトに入ったのは何と!女性なのです。そりゃ河岸にもターレをバリバリ運転して、重い荷物もドカドカ積み込むおねーさんたちはいるけれども、ウチの会社では初。
しかもかなりのべっぴんさん。まるで出版社の面接にでも来たようなインテリジェンス。な、なぜ河岸に?と思ったら、彼女は料理屋を開くのが夢で、河岸で魚の勉強をしつつ、開店資金を稼ぎたいらしい。河岸は超早朝の肉体労働ってことで、時給は高いですからねえ。
その彼女の熱意に期待し、採用決定。男子たちはべっぴんさんに浮き立ち、女子たちも事務の募集もぱったり途絶えていたから久しぶりの女子にウキウキ。

河岸で働きたいと思っているお方がいたら、案外フツーにネットや雑誌の求人やハローワークに出しているので、探してみては?
河岸の仕事につきたいけどどうしたらいいのか判らない、なんていう話をよく聞くものだから。全然、間口、広いですよ!






真っ白い羽根、鳩胸ならぬかもめ胸の曲線、細すぎる赤い足。
妙にかもめさんに心癒される、今日この頃なのです。




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先日の土曜日はその新人さんを受け入れる環境を作るために、事務所の机を動かしたり、作業着の手配をしたりしていたらすっかり遅くなり、一杯呑んで帰ることに。
場外にあるウチの事務所のすぐ近く、ちょっと路地を入ったところに串揚げを出してくれる一杯飲み屋があり、非常にまったりくつろげるので、ちょっとお気に入りなのです。
海鮮丼もやっているのだけど、他のハデな寿司屋に客をとられて、こんな路地には入ってこないと、ご主人、ブツクサ。
しかし、そう言う一方で、マスコミに出すことなどは全く考えておらず、というかどっか毛嫌いしている感じで、まったりと営業を続けているから、こっちもまったりべったり呑み続け。しかもいまだに、店の名前も知らない(爆)

その日は、ちょっと常識では考えられない、メカジキの刺し身があるというので頂く。メカは焼き物が基本、脂分がこれだけ強いと相当新鮮でなければ刺し身は厳しいはず。
いやこれが!真っ白の外見はいかにも脂ギトギトで、確かに食べても凄い脂なんだけど、脂の旨みが感じられるのは新鮮ゆえ。辛口の日本酒が進む。
常連さんが差し入れてくれたという、フグの唐揚げなんぞも出してくれる。つまりタダ。ぶつ切りのフグデカすぎ。超ウマイ。



そして、今回のヒットは、「今日しか入ってない」という、エンガワの串揚げ。
エンガワも脂分のイメージ、それを揚げ物にするなんて考えられないんだけど、これが最高、ウマいの。さっくりした衣の下のトロリとしたエンガワ。思いがけない絶品。

そしてなぜか、アポロチョコと天然酵母入りパンをお土産にもらい、お店を後にする。うーむ、以前呑みに来た時も、なんでだかキムチを4キロももらったしなあ。この店は副業だと言うご主人、本業はなんなのだ、気になる。河岸にずっといるお人ではあるらしいのだが……。

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しかし翌日曜日、目覚めてハッと気づく。手に持っていた筈の紙袋を持って帰ってきてない。別に貴重品は入ってない。洗濯するつもりだった作業着の上下とタオル。あ!でも惜しいのは、どうでしょう祭りで購入したオリジナル長Tッ!
どこから持っていなかったのか全然覚えてない……そんなに呑んだかなあ……。
お店に確認するのは休み明けになるから、とりあえず東京メトロとJRに問い合わせてみる。東京メトロにはメールで問い合わせして、JRには電話をかけてみる。

「あのお……23日の夜なんですけど、グレーの紙袋で、中に青の作業着とかが入ってて……」
調べてくれる間、しばしの待機。すると、「23日に届いた中だと、ちょっと、ないようですねえ」ああ、やっぱり……。

「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」「あ、山下と申します」
「山下、絵里さんじゃないですか?」「!!そうです……」
「紙袋の中に、預金通帳を入れてませんでしたか?」!!!

そ、そういえば、事務所の机の中に入れっぱなしだったもう終わった古い通帳が片づけ最中に出てきて、紙袋に放り入れたんだっけ……。でもって、置き忘れていたのは降車駅のホームで、日付けが変わってから回収されたので、24日付けになっていたのでした。
うう、良かったけど、メッチャ恥ずかしい。私、以前にも今はなき中野の映画館に、その時は現行の通帳を三冊も落として、こんな風に「山下絵里さんですか?」と電話口で言われたことあったもんなあ……。通帳は鬼門なのかッ?


2008/1/27/日

ぐるぐるだて巻き。

今日のオススメはメジだよ!と言っても、魚屋さん、何となく乗り気じゃありません。
今日のはホントに脂乗ってるって、とちょっと切れ目を入れて見せてあげたりしても、
「メジと書くと売れないんだよね。でも本マグロって書くのも気が引けてね」との弁。
ううむ、なるほど。今や本マグロという言葉が、一種のキメ台詞になっちゃってますもんねー。大間の本マグロなんて大変、天井知らずで。
「ウチなんて本マグロって書いちゃうよ。だって間違いじゃないじゃない。その子供なんだもん」
そこへやってきた、もう一人の魚屋さんはあっけらかんとおっしゃいました。

確かにメジは若いから、大人になったマグロより脂の乗りが少ないことが多いけれど、だからといって必ずしも大人のマグロがメジより脂が乗っているという訳でもない。それに、脂が乗っているからといって、それだけで美味しい訳でもない。
このあたりがなかなか消費者に伝わりにくいことに、先の魚屋さんは悩み、後から来た魚屋さんは割り切っちゃっているという訳です。今はお店とお客さんのやりとりがない時代だから、そのあたりは難しいのね。そんな私もすっかりスーパー派だしなあ、ダメダメね。
でもホント、美味しいお魚を食べたいと思ったら、地元の魚屋さん(お寿司屋さんや、居酒屋さんでも)と仲良くなるのが一番の早道だと思われます。雑誌やテレビなんてね、信用出来ないってこと、ここにいるとよーく判るんだから。






荷受への支払いに来た、6号館からの眺め。
土曜日はお寿司屋さんに大行列です。







今は一番寒い時期。屋根があるだけで吹きっさらしのアウトドアな河岸、帳場では毛布でぐるぐる巻きになってます。
去年までは普通の膝掛けを用いていたのですが、世界フィギュア観戦用に買ったハーフケット(そのまんま、半分の毛布)が大変あったかくて、実に重宝してます。それまで必需品だったカイロがいらなくなってしまったほど。
しかしこの毛布を腰にぐるぐる巻きにしていると、「だて巻きみたい」と言われました。
あら、それはちょっとカワイイかもと、だて巻き、だて巻きと喜んでいたんだけれど、ある日言い間違って「だし巻き」と言ってしまい、爆笑。うーん、だし巻きは美味しいよね。だて巻きより好きかも。
しかしある日、立って毛布を巻いているところにお客さんがちょうどやってきて言いました。「何、土俵入り?」

ガ、ガーン……。

せめてだて巻きでとどめといて……。


2007/11/3/土

河岸にいると得意になること。


出勤時間の築地場外。
夜が明けるのが大分遅くなってきました。


年末商材の情報が出てくるこの時期。
今年はですねえ、カズノコが凄い高くなるんですって。
なんと、前年比キロ千円アップ!つまり、よく出回っている500g入りの味付け加工品は、500円の値上がりです。
しかし、殆んどの人が一年に一度しか買わないから、毎年、こんなもんだったかしらと思って買っていくのかもしれないけど。
んー、でもやはり、年々カズノコを食べる人は大分減っているようで、今年は殆んど受注生産のような状態になるんだそう。作りゃ売れるという時代は遠く過ぎ去ったらしい。それを象徴するように、品物のいいカズノコを作っていた加工業者が潰れてしまったし。
何か、寂しいっすね。そりゃ私だって年末にしか買わないけど、カズノコ好きなのになあ。
つっても、めんどくさがりだから、味付けの加工品しか買わないけど。今どれぐらいの人が、塩カズノコを買っていって、ちゃんと自家製で作るんだろ。



パック加工のシメサバを購入。
以前、短期のスポット商品で入った型のリニューアル判であります。
しかしこれ、明らかに前とモノが違う。
青々とした美しい皮目はツヤッツヤのプリップリで、骨側の身もしっかりしてて、脂のノリが程よい。
聞くと、前はノルウェーからの輸入モノだったのが、今回は国産品を使っているんだそうで。
ノルウェーのサバは脂のノリの良さがウリのブランドが定着してて、焼きや煮ではとっても美味しいんだけど、生食となると、やはりあまり脂がキツくない国産の方が向いているってことなんだろーか。
こりゃこれからの季節、熱燗に最適と、20Pを一気に買った。重い。
しかし、大変幸せな気分になったのであった。
私、ホントに酒のアテにシメサバさえあれば、満足なのさー。



この間ふと、河岸にいると得意になることを発見。
発泡スチロールがこすれる、あのキューキューという鳥肌の立つ不快な音に、慣れちゃってるわ。
ごらんのように河岸はいたるところ発泡だらけ。水氷を満たす鮮魚には欠かせないし、保冷性がいいから、冷凍モノにもよく使うし。
で、この発泡の荷物を河岸の男どもは手荒に積み上げていくから、始終キューキュー、キューキューと、昔ならば耳をふさいで鳥肌立ててたあの音が響き渡っているのだけど、今は全然平気でアクビなんぞをかみ殺しているんであった。いや、仕事中にアクビしてちゃいけないけどさ。
でも、こんなこと得意になってもしょうがないけど。


next!