この間ねー、カニ担当のK君からお手製のイカの塩辛をいただきましたですよ。
つっても、二人に断わられて、回ってきた三人目が私だったわけですけどね、ええ。
いいもんね。別に気にしないもんね。三番手だろうと何だろうと。
それに、その日は土曜日だったしね。皆まっすぐ帰れない用事があったのよ。いいわね。
私には、そんな用事なんてなーんもなかったもね。
で、いただきました。タッパになみなみと。
見た目はねー、色合いもあんま良くない。黄土色、って感じ。しかしですね。
私ね、感動しました。
この○○年の人生、食べてきた塩辛の中で、
一番ウマかったよぉ……。
塩辛って、手作りすると、こんなに美味しいものなの……。
塩は控えめだから2、3日しかもたないけど、肝の濃厚な味が絶品なのよ。
これでごはんをガツガツいけるというより、もうそれだけでガツガツいけるぐらい。美味い。
薄皮もちゃんとむいてあって。キミってマメな奴だね。見た目は歌舞伎町にいるホストみたいなのに。
いやあ、ホントに感動しちゃいましたよ。こっちから再度リクエストしたいくらい。つーか、女の私の立つ瀬ないよなー。ま、最初から立つ気もないけど(座ったっきり!)
ところで話は変わりますが。イセエビは、とにかく活きているのがウリなのですね。店頭のおがくずの中でゴソゴソ動いて客を引く、働き者のイセエビ君なわけです。
でもねー、最近こんなクレームの電話が多い。
「イセエビ、あがってる(死んでる)よー」「全然動かないよー。あがってるんじゃないの?」
いえいえ、違うんです。この寒さのせいです。イセエビ君は、あんまり寒くて、ぢッッ、と固まっちゃってるんですよー、そこんとこは人間と同じなんですよー。
寒くて動かないイセエビ。うーん、ちょっとカワイイかもしれない(おかしいか?私。)
イセエビといえば、ここで以前書いたことあったかなー。活きてるイセエビをそのままゆでようと、熱湯の中に入れると、キー、キー、と鳴くんだっていうんですよ!私、その話聞いた時凄いショックで……“鳴く”じゃなくて“泣く”に感じちゃって、うわー、そんなの、絶対食べられない!と思ったんだけど……。
でも、イセエビって美味しいですよね……。
うう、でも活けモノを、刺し身で食べるのも、私出来ない(汗)。
活きてる状態で、頭と胴体をぶちッとちぎるなんて、出来ないいー。
でも、他人にやってもらうと、その、この世のものとも思えぬ幸せな甘味に、我を忘れてかぶりつくんですけどねー。
最近、築地、テレビを中心に凄い露出してますよねー。一種のブームなんでしょうか。
その影響で、一般の方たちが、いろんなお店に長蛇の列を作ってます。
今までは大体、テレビに出る店というのは決まっていて、それは役割分担というか、つまりテレビに出てお客さんがワッと押し寄せても対応できる店、という前提があったのですが、
最近の築地ブーム?のせいなのか、マスコミさんも今まで紹介されていないお店を開拓したいのか、もう手当たり次第にお店がどんどん紹介されてるんですよね。
普段はのんびりとお客さんの相手をして、注文ものんびりと出すようなお店に、ズラーリと人が並んでる状態。
えー、絶対ムリだよー、あの店に並ぶなんて、ありえないよー、あれじゃ、1時間待ちじゃきかないんじゃないの?というような……確かにあのお店は美味しいけど、でも、のんびりとした雰囲気こそが、良かったのに。
何か、淋しくなっちゃいます。そりゃ私はそんな、築地のお店を色々食べているわけではないけど、河岸の人が排除されている感じがしちゃって。忙しい河岸の人は行列に並ぶなんてこと、絶対しないですからね。
河岸にあるお店なのに、河岸の人のためのものではなくなっている感じ。それが、何か、哀しいというか、淋しいというか。
河岸の中には中国人はじめ、外国人がたくさん働いていて、まあ、不法就労者も結構いるらしいんですね。
何年かに一回、こうした一斉摘発があって、急に河岸の人口がゴッソリ減ったりするわけです。
でも、不法就労とはいえ、マジメに働いていた人たちばかりがいなくなるような感もあって。
中国人同士でのやっかみや密告で、そういうことになったりもするらしいのです……。
話題を変えましょ。
お客さんに、お惣菜屋さんがいて、ですね。しょっちゅう天かすをくれるんです。
それも毎回ハンパな量じゃない。ビニール袋にぱんぱん。
毎日出るものだから、仲買のお店、順繰りにくれているのかもしれない。
いや、いいんですけどね。ありがたいんですけど。でも天かすって、別にそんな欲しいものでもないでしょ?
直接受け取るエビ課のイガさんはいつも、帳場の私たちのところにニヤニヤしながら持ってきて、そして毎回同じことを言います。
「味噌汁に入れると美味いんだよねー」
……そう言いながら、持っていかないじゃないっスか。
どうも私は貧乏性なので、捨てるということが出来ない。皆いらないって言うし。鮭屋のしゃけこさん(嵐ファン)のところへたまにおすそ分けで持っていきますが、これもまたあまり毎回だと悪い気がして……そう、そんな欲しいものじゃないしね、これって。
これをもらうと、私はバカのひとつおぼえのよーにお好み焼きばかり作るのです。
朝食がお好み焼き。……胃にもたれる……材料はゴーカだけど(もらったエビとかホタテとか)。
しかも、毎日天かすたっぷりのこんなもん食べてたら、太るし、顔に吹き出物は出来るし……。
天かすって、なんか、料理のバリエーション思いつかなくって。たぬきそばかお好み焼きや焼きそばに入れるくらいしか、思いつかない。
なんて感じで、天かすをどっさりもらうたんびに困ってたんですけど、ある日、ふと、思いついて、天かすでレシピをネット検索してみたら、実にいい料理を見つけました。
「なんちゃって揚げだし豆腐」
めんつゆでお豆腐を煮て、天かすを入れてひと煮立ちさせ、しょうがのすりおろしで味をととのえる。これでOK。早ッ!
青のり、一味唐辛子、ねぎみじんなどがあれば更にヨイ。
うーん、超カンタンな上に、やけに美味。ホントに揚げだし豆腐の味(よりちょっとしつこめ)。ビールにピタシ。
残ったら、翌朝あっためて、ちょいと玉子など落して半熟にし、ご飯にぶっかけて食べるのもイイ(ウマそうでしょ。ウマいんだな、コレが)。
……しかしこれもひたすらやってたら飽きてきちゃった。胃にもたれるのは一緒だしさ。
次、天かすもらったら、もうどうしよう。
あれ?これって、“河岸のおはなし”じゃなかったっけ……。なんか、“きょうの料理”みたいですなあ。
でも、ちょっと場内は心配。
ここもものすっごく古いからなあー。
排水管が壊れているのか、屋根に穴があいているのか、こういう豪雨になると、ところどころでどじゃーっ!と雨漏りしているところがあったりするんで。
ううむ……。休み明けが怖い……。
そういえば昨日、その台風の到来におびえつつ、お昼休みに休憩室でテレビを見ていたら、「どっちの料理ショーSP」で、関口さんと三宅さんが場外市場をお買い物してましたね。
先週、店から事務所(場外にあります)にあがってきた先輩が、「今、どっちの料理ショーの撮影来てるみたい」と言っていたのはコレだったのね。
いつもは出る店は大抵決まっているんだけど、今回は公平にするためなのか、場外の全店をほぼ網羅していたようで、かれこれ築地に7年近くも居座っている私も興味深く眺めておりました。
24時間すし屋の台頭で、今やスッカリすし屋横丁と化してしまったと思っていても、やっぱりいろんなお店があるものね、と改めて思ったり。
7年もいても、入ったことのある店や食べたことのあるメニューなんて、ほんのちょっとしかないんだもん。
しかもさすがテレビ、やけに美味しそうに見える……。
でも、どんなに美味しそうに見えても、やっぱり築地は高い!大体1000円は当然こえるもん。通常食べるお昼に千五百円も払えないよー。週一でもキツい。……ま、セコい話だけど。
気のせいか、そういう定食屋に来ている人たちって、外からのエリートサラリーマンやリッチなOLさんが多い気がするしさッ(完全にヒガみ)。
昼休みといえば、雨が降っている日は、私の先輩、「雨だよねえー」と言うのです。
当たり前だって?ちゃうちゃう。そこで返す私の言葉は「……豊ちゃんですか?」
「判る?(嬉しそう)」いや、判りますって……。毎度ですから。
雨の日は、豊ちゃん(カウンターのみの洋食屋)では、お味噌汁がタダなのです。
というわけで、昨日も先輩はあの雨の中、豊ちゃんにいそいそと出かけたのでした。
やっぱりメンコロ食べたのかなあ……。
私も豊ちゃんのカレー食べたいなあ……。
並びのカレー屋、中栄さんのカレーより、甘めでどろりとした豊ちゃんのカレーが好みなのです、私。
でも、最後に豊ちゃんでカレー食べたのって、いつだったっけかなあ……。
そんな河岸もそっりゃあアテネには盛り上がっているんですわ。朝の早い河岸&仕入れに来る人たちは、世の人たちよりもっとヒドい寝不足になって、もうフラフラ。
男子柔道で銀メダルをとった泉選手が青森・大間のマグロ漁師の息子だという話題でいち早く盛り上がるあたりは、やはり河岸っぽかったりして。
そうそう、うちのお客さんで、水泳でぶっちぎりの北島選手の実家のある荒川区の商店街、その精肉店の隣の隣にあるっていう魚屋さんがいるんです。ここ1,2年の、活躍し始めたあたりから、そのたびにすっごい騒ぎで大変なんだよ、といつも教えてくれてて、世界新とった時は祝い鯛を贈ったとかなんとか。うちの仕入れじゃなかったけど(笑)。それにしても、はあ、オリンピックで金を二個もとっちゃうとはね!
そういえばオリンピックが始まってから姿見せてません……大変な騒ぎになってるんだろうなあ。
それにしても、東京でもこういう郷土愛みたいなものってあるのね、なんて思うのは、イナカから東京に出てきたような輩にとっては、東京の人っていうのは、イコール都会人で、そういうイメージがあんまりないから、って偏見だけど。でも異国の土地で頑張って頂点を極めたっていう意味で、イナカモンが東京で錦飾った、みたいな感じと似ているのかもしれないなあ、なんて思ったり。
さあ、オリンピック見て、もう少し頑張ろ……まだまだあっついけど。
今回のウチの店の回りはやけにマグロ屋さんが多いんですよ。
こりゃお正月にマグロを買うのにお便利♪なんて思ってるんですが。仲良くなれば安くしてくれるかしらん。
マグロをのせた荷車は重いせいなんだろうなあ、進むのが遅いので、この通路はしょっちゅう渋滞起こしてて。
でも、マグロには気をつけなくちゃ。こんなコチコチの冷凍マグロが足に落ちてきたらホントに骨折しちゃうし、とけかけの尻尾に上着が触ったりしたら、もうなまぐさーい匂いがいつまでもとれなくなっちゃう。
ま、梅雨から夏にかけてのこれからの季節は、自分自身が魚くさくなっちゃうのはしょうがないんだけど。
そ、そうだ!なまぐさいなどと言ってはいけません。魚くさいのです。おんなじだって?違うのッ!
はー、それにしても茂助の草餅はおいしいなあ。
茂助は場内にある、お団子で有名な和菓子屋さん。でも私はここの草餅が一番大好き。ああ、幸せ。
あと、市場内じゃないけど、築地の交差点に建ってる共栄会ビル一階の、自動ドア入ってすぐのところに売ってる、くるみ大福も大好きなんだあー!
いつも買ってるのに、ここの店がいまだに何て名前なのか、知らないのだった。もうくるみ大福に突進だから。
うーむ、河岸にいても寿司なんて全然食べないのに、ヘンね(笑)。
とある日。
「おはようございまーす。魚Kさん。今日は?」
すると魚Kさん、ピッと私に人差し指を向けて
「ゴールドアイ」
「……は?」
「金目だよ、金目鯛」
まあ……60点ってとこですかね……。
先日、場外にある事務所から場内の店に向かう途中、そうですね……朝6時前ぐらいですかね、覆面パトカーが横を走っていったんですよ。
あれ、覆面パトカーっていうんですよね?普通の乗用車にパトランプが乗っかってるやつ……違いましたっけ。
わー、刑事ドラマみたい!とワクワクして場内に入りますと、もうその話題で持ちきりでした。
何でも、仲買の某店に強盗が入ったとか!
しかもその人は女性で、突きつけた包丁で店の人の首を切りつけたとか!!(ひえっ)
そしてそして、マグロをかついで逃げたとか!!!
……ん?
マグロをかついで逃げた?
「あのう……マグロって、あのマグロ?」
「そういう噂」
うっそおー。だって、マグロって、マグロって何キロあるのよ!何百キロって世界でしょおー!
エビ担当のIさんがニヤニヤして言いました。
「マグロ、食べたかったんかねえ」
違うと思います。
まあ、あれかな、メジマグロとかそういうのかな。いやでも、それ目当てに(でしょう、河岸だもん)強盗に入るくらいなんだから、やっぱり本マグロ?まさか!
話変わって。
常連のGさんが、ポットにコーヒーをいれて持ってきてくれました。Gさんが行きつけの場内の喫茶店、センリ軒のコーヒー。
私たちがみすぼらしーく缶コーヒーなんかを飲んでいるのが、コーヒー好きのGさんには見てられなかったらしく?「今度、美味しいコーヒー持ってきてやっから」と、ホントに持ってきてくれました。
ひゃー、さすが本物の?コーヒーは違う。いや、それにしても本当に美味しい、この香り、味。
「Gさん、美味しいですねえー」
「でしょ?ここのコーヒーは美味いんだよ」
「ところで、ねえ……Gさん、センリ軒って、アップルパイが美味しいって聞いたんですけど……」
「…………それは何、また持ってこいってこと?」
えへっ
期待して待ってまーす、Gさん♪
5月の連休に場内の店舗移動があり、その場所が先日決定いたしました。
豊洲への市場移転問題もあってのびのびになっていた店舗移動ですが、ようやく決定。私にとっては初めての店舗移動です。
なにせこの不景気なので、店舗移動の費用が出せずに店じまいする仲卸もかなり多いとのこと。
「三分の二ぐらい減ってくれれば助かるのに」だなんて、怖いこと言わないでくださいよー(涙)。まあ……確かに本音だけど(汗)。
帳箱がもうベッコボコになっているので、これ新調してもらえるかなあ、ワクワク、とか思っていたら、予算がないから直して使うことに。あうう。これ戸も満足に閉まらないのにい。
そ、それに帳場二人の容積増加?のせいなのか、なんだか最近窮屈で……。
某仲卸さんのところみたいに、広々で靴で上がる絨毯敷きで、冷暖房完備の帳箱がいいなあ、とか言ってたら、「じゃ、そこ行けば」と冷たくあしらわれました。冗談だってば……。
店の位置も決まって、新店舗での営業のシュミレーションなど進む中、鮮魚のD君が突然大声で叫びました。
「新店舗の近くの売店に、チョコレート売ってるかなあ!?」
あ、あのね。そんなこと真剣に叫ばないでよ。
彼は無類のチョコ好きで、毎朝自分の分と、皆やお客さんの分までも律儀に、でん六のピーチョコを売店から買ってきてくれるのです。売店のオバチャンともすっかり顔なじみの常連さん。
確かにそのチョコ目当てに来てると思しきお客さんもチラホラ……「魚勧める前にチョコレート食わせろ!」と露骨に言うスーパーの店長までいる始末。D君が風邪で休んだ時は、「今日はチョコないの?」……うーむ、彼の存在感よりチョコレートのそれの方が大きいらしい……。
案外、男性の方がチョコレート、好きですね。かなり年配の方も喜んでつまんでいきます。肉体労働で体が欲しているのかな?
最近のヒットは、エボダイをエロダイと聞き間違えたこと。え?面白くない?その時は転げまわって笑ったんだけどなあ……。