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「ろ」


1999年鑑賞作品

ローカルニュース
1997年 65分 日本 カラー
監督:中村義洋 脚本:中村義洋
撮影:鈴木謙一 音楽:原田智弘
出演:長谷巌一郎 足立紳 細川徹 佐藤晃子


1999/4/7/水 劇場(BOX東中野)
ああー、この脱力するおバカな感じがたまらなく好きだー!もしゃもしゃのアフロなアルバイト、糸やんと草野球のかっこしてだらだら仕事する金やん。みんなすぐ「……やん」をつけられちゃう所も妙に好きだわー!レポーターの女性も一見感じがよさそうに見えて、イヤな追加取材をサボッちゃったりして、それを追及されても涼しい顔してたり、忍者の村の取材で待ち時間にピンクの忍者スタイルのまま、たばこふかしてたりするふてぶてしさがイイ。そんでもって、おぼれた糸やんを「お見舞いにも行かず」さっさと帰っちゃうあたりも!

そう、この女性レポーターがなぜすっぽかしたかというのは、逆立ちダイエットの映像が流れた時に発覚するのだけど、実践させられるこのレポーター、その逆立ち運動がキツいのもそうなんだけど、その苦悶の表情がずっと連続して撮られていて、妙にエロティックなのが何とも可笑しいのよね。彼女もそれに気付いていたから追加取材を嫌がったんじゃないかなあ。

一人まじめに仕事をしたいディレクターの中川なんだけど、彼もまたなんだかズレているんだよなー。喋る文鳥を取材に行って、その文鳥を逃がしてしまい、そのショックで倒れたその飼い主の女性といい仲になっちゃう、クサい描写がドンピシャ!布団に寝ている女性が泣き伏すカット、彼が彼女をなぐさめようと顔を覗き込むと、なにやら危ういポジションになってしまうカットを、ワイドショーの再現写真みたいにパッ、パッと映し出していく。ワイドショー……違うな、そんな洗練されてない(笑)。再現“写真”ってあたりが程よくアナクロでピタシ!

ローカルニュース特有の、自然光が柔らかく入ったようなピントの甘い画像、そのなかで大まじめに(!?)展開されるキテレツニュースの数々……。逆立ちダイエットの先生が、妙に気合入ったエアロビクスのインストラクターみたいないでたちなのも笑えるし、その先生が取材に来た金やんに「こないだ試合した……」と話し掛けて、じつは草野球仲間だったという、これまた脱力する縁がイイ。追加取材に来た先で、そこが初アルバイト先にも関わらず、金やんのいい加減さの波長にすっかり同調した糸やんが、スタンバイもてきとーに肩車してバスケットボールしてるとことか、レポーター待ちの時に、その先生まで加わってバスケはじめちゃうとか、とにかくそのやる気のなさがおっかしくてたまらない。

しかしなんたって可笑しいのはその忍者村のコリュウグツ(漢字が判らない)のエピソードで、「これは出来ないでしょう」と言われたことにプライドを傷つけられたんだか「いや出来ますよ」と言う忍者村の人、しかしやっぱりそれをやるのがイヤで事故にあったフリをするという凄さ!そしてその代役にかの糸やんが指名されるわけだけど、このコリュウグツ、太いホース状のものを頭からかぶって水に潜り、深い水の底でも歩けるという代物で、それだけでも充分キッチュなのに、一瞬成功したかに見えたのが、上から水がごぼごぼと入ってきた時には、危機感よりもう可笑しさの方が先にたっちゃって大笑い!

こういうおバカな脱力映画が日本でも作られるなんて、なんて頼もしいんでしょう(!?)★★★☆☆☆


ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズLOCK STOCK&TWO SMOKING BARRELS
1998年 分 イギリス カラー
監督:ガイ・リッチー 脚本:ガイ・リッチー
撮影:ティム・モーリス・ジョーンズ 音楽:デビッド・A・ヒューズ&ジョン・マーフィー
出演:ジェイソン・フレミング/デクスター・フレッチャー/ニック・モーラン/ジェイソン・ステイサム/スティーヴン・マッキントッシュ/ヴィニー・ジョーンズ/スティング/P・H・モリアーティ/ヴァス・ブラックウッド/レニー・マクリーン/ジェイク・エイブラハム/ヴィクター・マグワイア/フランク・ハーパー/スティーヴ・スウィーニー

1999/8/23/月 劇場(シネセゾン渋谷)
うー、私って、頭悪いー……と思わず頭を抱えてしまった。この作品、実に6組プラスαもの男達が組んづほぐれつするのだが、それが冒頭であれよあれよと……多分私以外の人にとっては手際よく……提示され、みんな一様にダークな衣装で、年格好や人数が似ていたりすると、も、どれがどれやら、誰が誰やら頭が混乱してしまって……そのせいでもないんだろうけど、途中10分かそこら眠くてたまらなかったりして、そうしたらますます訳が判らなくなって泣きそうに(!?)なってしまった。いや、すべての登場人物が超個性的なのは判っているんだけど、みんながみんな個性的だと、かえって横並びで判りづらかったりするのよ……って、言い訳以外のなにものでもないよなあ……。

スローモーションや逆回し、ストップモーションを使った編集と、ガンガンに流れる、ほとんど途切れのないUKロック。いわゆるいまどき感覚の映画そのものだが、他の何かに似ているということはなんとか避けることが出来ている独特のオフビート感。笑えないけどなんとなくユーモラスな空気(この、笑えないってあたりも確信犯的)。冷静なのにやけに残虐な手口を使うアフロヘアのアフリカンアメリカンなロリーはその背の低さだけでなんとはなしに可笑しさをたたえているし、借金取りたて屋のビッグ・クリスは、どうやら父子家庭で小さな息子を相棒に仕事をしているのだが、狂暴なやり方をするわりには汚い言葉にはやけに過敏で……つまり子供の教育上良くないということなんだろうけど、この仕事を見せること自体、はなはだ教育上よろしくない気がするが……その一言を聞いただけで逆上して相手を半殺しの目に合わせたりする。この作品はいわゆるギャングものなんだけど(うーん、どちらかというとチンピラものかしらん)、それゆえどうしても避けられない残酷さを逆手にとって、ユーモラスさに転換し、ギャングもののリアリティを損なうことなく、物語を楽しく追う事が出来る。これって、なかなか上手い、と思う。そういえば、監督であるガイ・リッチーは、こうしたギャングのコワさを追えば追うほど、リアリティに迫れば迫るほど、可笑しさが出てくるものだ、というようなことを語っていたように思う。そうだとすると逆説的に、実に“教育上よろしい”映画なのかもしれないなあ。カッコツケが過ぎると滑稽になるのと似ているかも。ある種の宝田明!?(んなわけない)

主人公というべき、エディ、ベーコン、トム、ソープの四人組。彼らが大物、ハチェット・ハリーにギャンブルをしかけて逆にハメられて膨大な借金をかかえてしまったことから始まる。ラスト近く、彼らのうちの一人……エディだったか……が言うように「俺らは何も法を犯していない」訳で、この四人組が盗むのは他の組が麻薬で稼いだ金をさらにまた他の組が盗んだものであって(も、この辺から頭混乱状態)、しかもその金はまた他の組に盗み出され、一緒にあった麻薬や銃が一番まずい人物にまわりまわって(麻薬は先述したロリーのもとに行き、自分のものであった麻薬を売りつけられたロリーは激怒!)6組の男達が時間差攻撃で衝突しまくる。いや、正しく言うと、エディたち四人組はその輪からいったん外されて、気がついた時には彼らの行く先々には死体の山というありさま。展開の複雑さ(私にとってだけか……しつこい)の中にあって、エディ達のこの災難?は実に判りやすく笑える。また死体だけだ、もう、勘弁してくれよ、てな表情をありありと見せる彼らの哀れさ情けなさは天下一品!

ラストのオチもまたふるっている。唯一この事件に関係するものである銃を手放したがらない一人に、他の三人が川に捨ててこいと口を揃えて言う。その直後、ビッグ・クリスが盗んだ金を入れていたバッグをかえしにやってきて、中には金ではなく一冊のカタログが……その銃はとんでもない値段のつくお宝物のアンティークだったのだ。川に捨てに行った一人が、橋の出っ張りに乗ってしまった銃をもういちど取ろうと無理な格好で手を伸ばしているところに、焦りまくった三人からの携帯がかかってきてさらに固まっているショットがストップモーションでカットアウトされる。さて、彼らはこの銃を取り戻して大金持ちになれたんでしょうか?

ただ銃をぶっ放してクールさを気取るのではなく、観客の知的さに挑戦するかのような(私は負けた……)練りに練られた脚本が圧倒的。こういう映画では仕方ないのかもしれないけど、Fワードがあまりに耳障りだったが……。★★★☆☆


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