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「な」


1999年鑑賞作品

謎のFLYING SAUCER2
1998年 10分 日本 カラー(一部モノクロ)
監督:ホンマタカシ 脚本:
撮影:ラリー・ドルカート 音楽:永田一直
出演:坂井真紀 村上淳


1999/3/30/月 劇場(テアトル新宿)
いやあー、相変わらず思いっきりアホで嬉しくなっちゃうんである。今回は前編のラストにちらりと顔を見せて期待をあおった(笑)坂井真紀と村上淳のアホ演技が素晴らしい(笑)。よく役者さんは脚本を見て出演を決めるとか言うけど、彼らがどの辺に共鳴(笑)して出演を快諾(かどうかは知らんが)したのかぜひとも知りたいところですなあ。ぼやけたような白っぽいモノクロの原っぱに降り立った全身タイツ状態の光る白の素材で作ったあまりにもあまりな宇宙人ルックの二人、坂井真紀に殴り飛ばされ蹴飛ばされて女っぽく倒れ込み、口から流血しながら小学生のような表情で泣きべそをかく村上淳!音声を押さえてかすれさせてあるけど思いっきり日本語で(笑)「いっつもそうなんだから」「あんたが残ればいいのよ」と言う坂井真紀に英語字幕(笑)。ほんとに置いてかれちゃう村上淳がぼーぜんと空を見上げるところからカラーになると、まあまあ、あのこれ以上いんちきくさいUFOもないでしょうという銀色のFLYING SAUCERがふらふらとアメリカの空を行くという(笑)。んで、前作に出てきたキョーレツオバハンと、彼の夫が目撃談を語る……んもー、スッテッキ!★★★☆☆
ナビィの恋
1999年 92分 日本 カラー
監督:中江裕司 脚本:中江裕司 中江素子
撮影:高間賢治 音楽:磯田健一郎
出演:平良とみ 登川誠仁 西田尚美 村上淳 アシュレイ・マックアイザック 平良進 兼嶋麗子 嘉手苅林昌 大城美佐子 山里勇吉 津波信一 嘉手苅林次

1999/12/19/日 劇場(テアトル新宿)
主人公は西田尚美ではなく、村上淳でもなく、平良とみ、そう、タイトルロールのナビィおばぁなんである。なんとびっくり60年もの間忘れ得ぬ熱き思いを持ち続け、彼女を迎えに来たサンラーさん(平良進)とその恋を成就しちゃうナビィおばぁの心意気やよし!そして彼女のそんな恋心を判り過ぎるほど判っていて、大きな愛情で包み込んでいたおじぃ(登川誠仁)がなんたって最高!なんである。いや〜まったく惚れましたよ〜。

物語はこのおじぃとおばぁの孫娘、奈々子(西田尚美)が東京の生活に疲れて故郷、粟国島に帰ってきたところから始まる。グラグラ揺れる小型フェリーの操縦席で、調子っぱずれの♪ひょっこりひょうたんじま〜をしかも船内マイクで歌う(笑える)のは、二言めには奈々子に「結婚しよう!」と迫る(しかしどうやら超マジらしい)幼なじみのケンジ(津波信一)。そのフェリーにはボーッとした風来坊、フクノスケ(村上淳)、ワケアリ顔の小粋な紳士、サンラー(平良進)が乗り合わせている。彼らはまだお互いに知り合わない。しかしなんだかただならぬ予感がざわざわ……。

毎日牧場でのんびり仕事しているおじぃは、「今日は12時40分にランチを届けてくれ」(もちろんウチナーグチ(沖縄言葉)で)と、毎日微妙にランチの時間を違えて(笑)言い、サンシンでアメリカ国歌をテケテケ演奏しながら(大笑!ナイスだわ〜)今日も牛の世話に出かけていく。おじぃのめちゃくちゃジャパニーズイングリッシュな発音の、英単語まじりのウチナーグチが可笑しくて可愛くて仕方がない!ワンダフルだ、ベリーベリーハッピーだとさらりと言ってのける、ああ、こんなおじいちゃんが、いや、こんな恋人が欲しい!

そのおじぃがかの風来坊、フクノスケと出会う。牛の鳴く声がのどかに聞える中で「おっぱいの小さいのもまたいいもんだよ」なんて、一体何の話をしてるのやら?そんなおじぃに少々押されぎみながらも、フクノスケもまたマイペースで、おじぃとウマがあっちゃうんだな。そしておじぃはフクノスケを強引に家に連れ帰る。「フクノスケくんが、奈々子が好きだって言うから連れてきた。フクノスケくんは小さなおっぱいが好きなんだって」と彼が言ってもないことを言い、「俺、そんなこと言ってないじゃないですか〜」とアセるフクノスケを尻目に「またまたテレて」と意に関せずなおじぃ。あんたがワンダフルだあー!!

そんな中、ナビィおばぁはかのサンラーさんと、60年前の大恋愛が再燃焼、いや、どうやら二人の中ではその思いは消えずに常に燃え続けていたらしい。島の人たちによって引き裂かれた二人。その場にいた、まだ子供だったおじぃは、島から追放されるサンラーさんをせめて見送りたいナビィおばぁを「僕が大きくなったら結婚してくれる」という約束でつながれた縄をほどいてやる。そしてその約束どおりナビィおばぁとおじぃは結婚、おじぃは「ベリーベリーハッピーだったよ」と締めくくる。この回想はサイレント映画な映像、これもまたナイスである。

サンラーさんの帰郷を知って、過去の出来事を思い出し、これ大変と一族やら占い師やらが大集結、狭い車にひしめき合ってどやどやと乗り合わせてくる(これもまた笑える)。ナビィとサンラーさんが二人で逃げると災いがふりかかるとかなんとかいう周囲の言葉に、ナビィは彼と二度と会わないと約束するのだが、そんな周囲の騒ぎにおじぃ一人だけ泰然としている。というより、大ボケで入歯はずした顔で振り向いて(笑)、一族の人に「ふざけてんのか!」と怒られたりする。……でも、おじぃは知っていたんだよね、誰よりもナビィおばぁの心を……。

そう、ナビィおばぁが心の中でサンラーさんとの逃避行を決意していることを。数日間続いた風がやんだ日、おばぁからは何も聞いていないのに、その日はことさら「体を大事にな、ナビィ」と気遣って、いつものように仕事に出かける。いつものアメリカ国歌も今日はどこか寂しげである。昼休みの休憩、奈々子からのランチを待ちながらおじぃがフクノスケにサンシンを教えていると、サンラーさんがやってくる。「今日島を離れることにしたよ」とおじぃに告げて立ち去るサンラーさんに♪女たちは皆あんたを頼りにしてる〜、てなオリジナルソングを捧げるおじぃ。ウチナーグチが判らないから、その意味も判らず合いの手を入れるフクノスケ。ナビィおばぁを連れていってしまうサンラーさんに、お幸せに、ナビィを頼みましたよ、という意味を込めているのであろうおじぃの思いは泣かせるんである。

かくしてナビィとサンラーさんは二人手に手を取って島を去る。追いかける奈々子に「おじぃは若いから大丈夫(まあ、おばあとは10歳くらい違うんだろうけど、この年で若いといわれても……)。私は行くよ」と笑顔で言うナビィおばぁに、奈々子ももう言う言葉もなく「元気でね!長生きしてね!」と涙ながらのお別れ。そしてなんだか突然にフクノスケとラブラブモードに陥り、もう次のシーンには結婚報告、カメラがぐるりと回ると子沢山プラス妊娠中、その中で人々は歌い踊り、ベリーベリーハッピーなエンディングに、すっかり酔いしれちゃうんだな!

この人生の超ベテランな方々にすっかり押されぎみといえど、西田尚美と村上淳はいい感じ。西田尚美の、ネイティブではないものの、可愛らしいウチナーグチや、初めての普通っぽい女の子な感じが可愛らしい。村上淳は、もう“フクノスケ”という名が体をあらわす、とでも言いたい、ヌーボーとした風来坊が味わい深くてとてもチャーミング。西田尚美扮する奈々子がフクノスケとケンジ、どちらとくっつくかと子供たちがウワサしている場面で「そりゃ、先にヤッた方とだろ」とマセた少年が言うのに、幼い男の子が「ヤルって何を?」と無視されるのをいとわず二回繰り返して聞く場面は可愛くて可笑しくて大笑い!

これを言うのを忘れちゃいけない、本作で素晴らしいのは音楽!沖縄の大御所、嘉手苅林昌ら、そしてもちろんおじぃの登川誠仁による、サンシンと歌による琉球民謡はもちろんのこと、そこにバイオリンは加わるわ、兼嶋麗子の琉球オペラ?はあるわ。そして彼女の夫役であるアシュレイ・マックアイザックのフィドルによるケルトミュージックがなぜこんなにも琉球音楽にぴたりと来てしまうんだろうという驚き!これはミュージカル映画かいな!と思うほどのシアワセな音楽映画なのだ。

ナビィおばぁがサンラーさんと逢い引きに出かける、通り道の原っぱにいつもいる白ヤギさんが凄く好きだ!なんという芸達者!?ナビィおばぁを追跡してくる奈々子やフクノスケ、子供たちを、何してるんだろうねえ、なんてたたずまいで、はむはむ草を食べながらのんびり首を傾けてるような、ああ、可愛すぎる!おじぃが腰痛のナビィおばぁのためにマッサージ椅子を購入するため売ってしまう牛のセイコも、抜群の間合いで鳴き声を発するし、動物たちもが役者なんだよなあ。

ローカル映画の中で一番気を吐いているのは、そうだ、沖縄映画なんだな!いや、気を吐いているなんてそんな肩ひじ張ったところは皆無。沖縄はやはり一つの国、これが例えば大阪なんかに見られるような、東京に対する敵対心といった狭量な感覚もなく、ごく当然に自分たちの文化を誇り、それを守るなんてうがった意識のないまま、ごくごく当然に現代まで伝えている。島の半分以上の人がサンシンを弾くという事実が、それを具体的に示してくれている。映画という文化も、そんな自然な盛り上がりが感じられてとても気持ちいい。なんと素晴らしいことなんだろう!★★★★★


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