home!

「や」


2000年鑑賞作品

やくざの墓場 くちなしの花
1976年 99分 日本 カラー
監督:深作欣二 脚本:笠原和夫
撮影:中島徹 音楽:津島利章
出演:渡哲也 梅宮辰夫 梶芽衣子 室田日出男 今井健二


2000/4/20/木 劇場(新宿昭和館)
ほほおー。あの「くちなしの花」って、この映画のテーマ曲だったんだあ。もーう、絶対こいつしがないヤクザだと思わせる、チープなサングラスに腹巻きして登場する渡哲也はおおっと、なんと、おとり刑事とは!という冒頭から始まる本作は、もしかしてコミカル路線?と思っていたら、なんだかどんどこ湿っぽい方向へ……。韓国人ヤクザとの兄弟の杯、その情婦との恋、……刑事としての正義感と、彼らとの義理人情の狭間でゆれる破天荒な刑事を、渡哲也が実に野生的に演じている。

片方の手でこぶしを作り、それをもう片方の手のひらに打ちつけるという落ち着きのないクセを再三たしなめられる彼に、若い彼の、妥協できない内側のたぎる思いが現れている。老練なヤクザ(藤岡琢也、このカルいイヤラシさが最高!)と警察とのウラ取り引きがガマンならず、正々堂々と相対してくる梅宮辰夫演じるその手下に友情を感じる彼。そして自分のアイデンティティを見失うことを恐れる、韓国の血を引く情婦との恋の純粋さ、激しさ。彼女には、刑務所に拘留中のダンナ(?)がいる。それを慮って最初は同士的な結びつきなのだとお互いを見ようとしていたのが、車の中でふと目を見合わせた彼女についに激しくくちづけをする場面からそれがくずれてしまう。お互い銃創を負いながらもたまらず求め合ったり、海岸で発作的に自殺を図ろうとする彼女を波打ち際で押し倒して押しとどめ、そのまま寄せては返す波を浴びながらからみあったりする(しかしあれはさぞ苦しいだろう……)場面が報われない思いの焦燥感をあおる。梶芽衣子はこういう悲壮感漂う、過去や逃れられない背景を持つ女を描かせるとバツグンにハマる。どこか疲れた色香があるのがいいんだよなあ。

私の大好きな成田三樹夫は何だかあまりに目立たずにチョイ出でガッカリなのだけど、なんといっても喜んでしまうのは、特別出演の大島渚監督!警察本部長役で結構出番も台詞もある彼、髪も真っ黒だし、いまよりすっきりとしていて声や喋り方も若々しくて、楽しいわあ。

警察内部の汚さに染まりきれなかった渡哲也が、仲間に銃口を向けてしまう悲劇のラストまで、彼の行き場をなくしてしまった若い正義の哀しさが横溢するさまが実にドラマチック。★★★☆☆


トップに戻る