home!

「わ」


2005年鑑賞作品

ワースト☆コンタクト
2005年 93分 日本 カラー
監督:多胡由章 脚本:サタケミキオ 渡辺武 祭文太郎
撮影:小松原茂 音楽:遠藤浩二
出演:哀川翔 板尾創路 有坂来瞳 酒井敏也 佐戸井けん太 宮本大誠 曽根英樹 翁華栄 白石朋也 殺陣剛太 小野敦子 我修院達也 ベンガル 団時朗 曽根晴美


2005/9/8/木 劇場(テアトル新宿/レイト)
あ、久々の哀川翔主演作だ!しかももうすぐ上映終わっちゃう!とか慌てて観に行ったんだけど、そんな観に行くこと、なかったな……。うー、映画は相性とは思うが、正直引きまくり。だってつまんないんだもん。いや相性だとは思うのだが。
こういうのって、関西系ベタなギャグの感覚が、どうも性に合わないせいなんだろうか。いやどうもそれだけではないような気が……。

極道SFなんて銘打っているだけあって、基本はくだらねえー、という魅力、その面白さだと思って、私としてもその面白さを期待して足を運んだんだけど、なんだろ。
最終的には何か壮大なテーマっつーか、やたらマトモなこと言うんだよね。
「同じ生き物同士で殺しあうのは地球人だけだ」とか。
いやまあそりゃそうなんだけど。そりゃ人類の至上命題っつーか、深刻なテーマであることはもちろんなんだけど、こういう映画でそれを言うか?って感じでさ。しかもあまりに単純にベタすぎる言いようだ……。

でね、くだらねえーという魅力一点に絞って、もうギュウギュウに追及してほしいんだけど、キャラを広げすぎなの。多すぎなの。ちょっと欲張りすぎなの。だから意識が分散されちゃって、余計に、すんごく引いたところから見ちゃう。
基本は、20年ぶりに会った極道と宇宙人、なんだけど、そこに子供が入り込んで、更に極道の女が入り込んで、極道を使う組の、その組織の思惑、極道が誘拐事件を起こしたとカン違いして手柄を立てようとする悪徳刑事、とかなんとか、もう広げすぎなの。かといってストーリーとしてフクザツで面白くなったかっていうとそんなこともなく。だったら別に極道SFってことにしなくても、フクザツな人物で語る映画にすればよかったんじゃないの、とあちこち気を引き回されるだけに中途半端な気がして、そんなことを思ってしまう。
哀川翔さあ、これでもう極道役は打ち止め!って言ってるんだって?ええー!?やめてよー、よりにもよってこの作品で打ち止めなの?しかもどうしてやめちゃうの?哀川翔から極道役をとったら何が残るのよ!(いや、そりゃ言いすぎだが……)

板尾創路扮するカワダという“宇宙人”「カワダやなくて、カアダ(アクセントを直すとこう聞こえる)や」と再三訂正してくる、どう見てもホームレスのおっちゃんが子供をさらおうとしているところに、ヤクザの取り引きに行く途中の哀川翔扮する生垣幸太郎が遭遇するところから始まる。取り引きのこともスッカリ忘れて子供を救おうとこのおっちゃんを追いかけまわす幸太郎。このおっかけっこもかなり意味なく長くて飽きる。無事子供を奪還した幸太郎、処置に困って彼の女の家へと向かう。
そこに振り切ったはずのおっちゃんがいきなり現われる。「どうやったら追いつくんだよ!」「テレポーテーションや」「息あがってんじゃねえか!」ああ……こういう調子でこの映画は進んでいくのか……こういうトコで笑えないとキビしいな、とそろそろ気づくんである。

そこでおっちゃんは、自分は宇宙人で、20年前にこの少年と交わした約束を果たしにきたんだ、という。しかしよく名前を確かめてみると人違いだった。おいおい、人違いて……ここも笑かすところなんだろうが、どーも笑えない。しかしおっちゃんは“イケガキコウタロウ”を探しているといい、差し出した古い絵は幸太郎にとって思いっきり思い当たるものだったのだ。そう、幸太郎こそがこの宇宙人と20年前に出会った少年だったのである。
「地球では20年立つとこんなに成長するんやなあ!」などと感心するオッチャン。でも回想シーンを見る限り、このおっちゃんもまた20歳分ぐらい若い設定になっている気がするんだけど……。
しかも、20年前に見たところ小学校3、4年っていうような設定は、哀川翔じゃちょっとムリがあるのでは……哀川翔のカンロクじゃ、30代ってな設定はもはやキツかろう。
して、幸太郎はその時ケガをしたおっちゃんを助けてて、そのお礼に願いをかなえてやる、と言われていたのだった。幸太郎と、その時一緒にいた幼なじみの佐藤君は、地球の滅亡を願うんである。肥満児でイケてなかった幸太郎と、いかにもひよわな佐藤君はこの時点で人生に絶望していたらしい。おっちゃんは、そうすぐに叶えられるほど簡単な願いではないから、一度自分の星に持ち帰って準備する。でも必ず戻ってくるからと約束して去っていくんである。
そして20年後、おっちゃんは幸太郎たちの願いをかなえるために、地球にやってきたというわけ。

ところでね、幸太郎は人違いされた少年とこのおっちゃんと共に、彼の女である香奈のマンションに転がり込むわけ。実はその時、香奈は組長の臼井とSMプレイに没頭中である。幸太郎は本家の大親分に見込まれていて、それを疎む臼井は幸太郎が成績をあげるであろう今回の取り引きをジャマしようとたくらんでいて、香奈もまた金に目がくらんだか、この組長の情婦になっちゃってるんである。
幸太郎は死神と呼ばれるほどの厳しいヤクザ人生を歩んできた人で、それはつまりは、それだけ突っ走っちゃう熱さを持っており、彼を買っている大親分にしたって、結局はこういう男は手元に置いて利用するに限る、とか思われている程度なんである。冒頭、幸太郎がうたた寝をしている時に見ている夢が象徴的なんだけど、組のために、一人で中国人マフィアを皆殺しにした幸太郎、結局「お前はやりすぎだよ」と味方から撃ち殺されてしまうという夢だったりし……。

しかし臼井が幸太郎をジャマしようと送り込んでいるのが我修院達也っつーのはこれもまたあまりにベタっつーか……この人はうまいこと使わないとただのベタなキャラにしかならんから、もうここではただただうざったいだけでさ。香奈を演じる有坂来瞳はこの作品での紅一点、しかも幸太郎とおっちゃんにずっと絡んでくるメインの役どころであるんだけど、この女がまたうるさくてさあ……。もうずーっとキレまくってて、ほんとうるさいの。カンに触るとかいうんならまだいいんだけど、ずっとキレたテンションの叫びまくりが、単純にうるさくて、もうちょっと緩急なんとかならんのかと、見ててうんざり、疲れてきちゃう。紅一点がこうだとさあ……ただでさえ、男世界の映画に女が一人入り込んだりすると結構うっとうしいのに、なんか余計にガックリきちゃう。

香奈は臼井を急いでベランダに隠して幸太郎たちを迎え入れるも、なんかみんなまったりと落ち着いちゃって、すき焼き食べようとか言い出して、一向に出て行く気配がないから、香奈は焦りまくる。その頃手柄を立てようと幸太郎を追っていた刑事たちが彼が子供を抱えて車に乗り込んだのを見て、こりゃあ誘拐事件だと早合点してこの部屋の向かいのマンションの部屋、ボケちゃってるおばあちゃんのところに乗り込んで監視してるのね。「事件を未然に防ぐだ?バカを言うな。それじゃ俺たちの手柄にならないだろうが!」と先輩刑事はほくほくと、「これでこの誘拐事件を解決したら、俺たちは国民栄誉賞モノだぞ」と。いや、……そういうことで国民栄誉賞なんかにはならないだろー。
この刑事たちのエピソードはやけに作りこんでて、面白くした自信のあるところみたいな印象があるんだけど、正直、余計な気しかしないんだよなー。このマンションに次々とやってくる人たちが皆、おばあちゃんの息子の一郎になってしまい、「また一郎が増えたな」なんて言うギャグも、それまでのギャグがスベり通しだから今ひとつ笑えないのよ。呼んで来た中国人スナイパーが少年が銃をいじくって遊び出したのを焦って取り返そうとしたらおばあちゃん撃っちゃうし、話の展開上とはいえ結構シャレにならん。

あ、そうそう、この少年がこの向かいの部屋に間違って戻ってくるっていうのがね、このご都合主義だけは許せなかったのよ。いや、建物を間違うっていうのはアリだと思うんだけど、この少年にすき焼きのためのネギを買いに行かせた幸太郎たちが、この少年がいつまでたっても帰ってこないことに、まさにいつまでたっても気づかないんだもん。その前段階で幸太郎がおっちゃんとの再会に興奮しちゃって、取り引きのことをスッカリ忘れていた、っていうくだりがあり、それはまあギャグってことでそれなりに笑えはするんだけど、この伏線があるから、帰ってこない少年のことも、ずっとずっとずーっと忘れてて、あー!!そういやあ戻ってきてない!みたいな今ごろかよ!みたいな落としが絶対あるんだろうなとすんごく待つわけよ、こっちとしては。だって気づかないなんてありえないじゃない。しかしそのありえないことがしれっと起こるのよ。それに対するフォローも何にもない。ギャグにもせずに流して当然のようにラストを迎えてしまう。おいおいおい、幸太郎、お前この少年をさらわれたと思って救出したんだろうが。しかもおっちゃんがすき焼き食べたいって言って、ねぎがないすき焼きを食べさせたら地球人の恥だとか言ってたくせに、結局少年が帰ってくるのを待たないままねぎナシのすき焼き食っちゃってるしさ、なんで、なんで気づかないんだよ!つまりはね、ここで少年が戻ってこないことに気づいちゃったらこの後の話の展開がスムーズにいかないってことなんだけど、でもそれだけの理由で!?これだけキャラふくらませて、話をフクザツにさせといてこんな一点を見逃すの?もー、ぜったいありえないって!

こんなどー見てもそこらへんのおっちゃんが宇宙人だということを子供の頃の幸太郎がなぜ信じたかっていうと、おっちゃんの傷に彼が言うとおり牛乳をかけたらあっという間に治ってしまったからなんである。牛乳をかけたら治るというのもそれほどギャグとして笑えないアホな設定だけど、どうしてもこのおっちゃんが宇宙人だということを信じようとしない香奈に信じさせようと、おっちゃんの太ももにグサッ!と包丁をつきたてる幸太郎ってば……。
しかし、ちょうど牛乳が切れている。それはあの少年が飲んじゃったからで、このあたりで気づいてもいいんじゃないかとしつこく思う。
果たして幸太郎は急いでコンビニで牛乳を買ってくるも、その間に逃げようとしている香奈に遭遇する。慌てて彼女が逃げていった屋上には、ベランダからほうほうの体で逃げ出して、しかし手にかけていた手錠がそこにおいてたなんかにかんじゃって、情けなくも動けなくなってそのまま寝てしまった臼井がいるんである。
まあ、どういうことか察知しちゃうんだよね、幸太郎は。

で、そこには幸太郎に呼び出された幼なじみ、佐藤君もいる。佐藤君は今は警官になってて、うじうじと離婚のことで悩んでいる真っ最中である。香奈のお腹の子も(あ、そうそう、妊娠してたのよ)自分の子ではないんじゃないかと疑う幸太郎。香奈も「判んない、ごめん……でもこの子に罪はない。殺すなら、この子が生まれてからにして」と。復讐を誓い、皆殺しにしてやる!と息巻く幸太郎を佐藤君は必死に止めるのだ。普段は手にしたこともないであろう腰の銃を彼に構えて。そのやりとりの間はおっちゃんは取り残されっぱなしである。いや実は幸太郎が買ってきたのは低脂肪乳で、「低脂肪やないか!」とキズが治らないおっちゃんはイライラ。二人の熱き友情のやりとりに、「あのお、お取り込み中すんませんけど牛乳……」「ホント哀しいわ。無視されてる俺がな」などとマヌケにウロウロ。まあこのあたりはちょっとだけ笑えたかな。
おっちゃんに請われて牛乳を買いに走る佐藤君。しかしその間に、あのおばあちゃんが誤まって殺されちゃう事件がおき、それにしてもこの刑事さんたちもこの少年が誘拐された(と彼らが思い込んでる)コだってことを全然気づかないのも、幸太郎がこの少年のことをスッカリ忘れているのと同様あまりにヒドいご都合主義である。彼らはこれを幸太郎の罪になすりつけようと画策、少年もそれにアッサリ賛成するというのも、お前幸太郎に助けられた(っていうのは少々誤解があるけど)んだろうが、とかなりアゼンとする部分があり……。

で、牛乳を買って戻ってきた佐藤君、幸太郎が彼らに濡れ衣をきせられて銃を向けられている場面に遭遇し、しかも幸太郎が俺はそんなことしてないと再三否定するんだけど、仲間との板ばさみ、というか元来の人間的弱さが露呈しちゃって、「俺は警官だ!」と彼もまた幸太郎に銃を向けてしまう。幸太郎、組の人間と自分の女に裏切られた時にはもうすっかり人間不信になっちゃって、でもそこを幼なじみの友情に助けられたと思っていたのに、アッサリこんな具合で、「もう誰も信じられねえ……」とつぶやき、おっちゃんが止めるのもむなしく、銃撃戦に!刑事たちが繰り出す弾丸がスローモーションになって、警視庁のマークが入っているのは少々笑えるが、その弾丸がスローモーションのまま、こともあろうにおっちゃんに命中!瀕死のおっちゃんに慌てて駆け寄る幸太郎と佐藤君、大量の牛乳をじゃばじゃばかけるもさすがに致命傷で、おっちゃんは息絶えてしまう。
あ、そうそう、言い忘れていたけど、おっちゃんが殺されてしまうと、おっちゃんの星が地球を滅亡させる、という警告があったんだよね。んで、おっちゃんがこときれると、地球がぐーんと宇宙のかなたから俯瞰で示され、地球より数倍でっかい隕石がぐーんとばかりに飛んできて、まるで地球をバットかなんかで飛ばしちゃうみたいに、どっかーん、と飛ばしてしまい、ジ・エンドなんである。

この展開の間にも、取り引き場所に現われない幸太郎をじりじりと待つ大親分と中国人マフィア、というシーンもしつこく挿入され、あるいは臼井の手下で使われてた我修院や、幸太郎をねたんで単独行動していたヤクザやらという描写も、別になくてもいいんじゃないかっていうか、クドいんだよな。あらすじ書いてるだけでやんなっちゃうぐらい。結局なあんか、すんごくゴチャゴチャした印象しか残らなくって、もっとくだらなーくバカ笑いさせてほしかったなー。

ホントにこれで、最後の極道役なの?★☆☆☆☆


トップに戻る