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「つ」


2007年鑑賞作品

机のなかみ
2006年 104分 日本 カラー
監督:吉田恵輔 脚本:吉田恵輔 仁志原了
撮影:山田真也 音楽:神尾憲一
出演:あべこうじ 鈴木美生 坂本爽 清浦夏実 踊子あり 峯山健治 野木太郎 比嘉愛 三島ゆたか 内藤トモヤ


2007/4/24/火  劇場(テアトル新宿/レイト)
寝不足をおしてレイトショーに足を運んどいてこんなことを言うのはなんなんだけど、実はあんまり期待していたわけじゃなかった。予告編で見る限りではおバカな男の勘違い、ドタバタナンセンスムービー程度かなって感じがしてたから。
しかしどうやら結構な傑作らしいとのウワサを耳にし、ホントかしらと足を運んでみたら、あらびっくり、本当に傑作!
これはさあ、あの予告編、絶対ソンしてると思うよ。だって予告編が示してる前半部分は、つまりはこの作品の前フリに過ぎないんだもん!

確かにおバカ男の勘違いだったわけだ。家庭教師をしている彼。大学生のバイトかと思ったらそういうわけでもなさそう。家庭教師だけで、あとはのんべんだらりと暮らしている風。
その狭くて小汚い部屋には教え子からの合格ありがとうのメッセージも飾ってあるけれど、彼が優秀なカテキョーかどうかはすこぶるアヤしい。だって劇中で担当しているのは二人だけで、その一方は「俺がいなくても全然大丈夫じゃん」という彼の言葉どおり、くだらないお喋りばかりしている先生そっちのけで黙々と勉強している、超優秀な男の子なんだもの。

んで、この彼、馬場先生ね、新しく受け持つことになった女子高生がすんごいカワイくて、もうひと目惚れ状態で、スッカリ恋しちゃうわけ。
本当にカワイイ子。コリャ狼の前に子羊を差し出すようなもんである。父子家庭で娘ベッタリである父親は、「そんなことはないと思いますが先生、妙なことにはならないでくださいね」としきりに心配する。そんなに心配するならこんな若い男の家庭教師なんかにしなきゃいいのにと思うのだが、まあ前半は思いっきりナンセンスタッチなので許すことにしよう。
それにこの父親もおかしいの。娘ベッタリも過ぎるんだもん。高校生にもなって、一緒にお風呂に入るんだよ!しかも彼女の方はイヤだと思っているのに、恐る恐る言い出したらあからさまに傷ついた顔をする父親に押し切れない。優しい子だとは思うけど、この父親自体がちょっと、ヘンタイとまでは言わないけど、ちょっと異常だよな……。

彼女の名前は望ちゃん。サラサラのボブカット、赤いリボンのセーラーの上にニットを合わせ、ミニのプリーツに紺のハイソという思いっきり女子高生スタイルがお人形さんのようによく似合う女の子。彼女が探し物をするためにひざまずき、お尻を突き出して太ももがあらわになるバックショット(判りやすくエロだなー)に、思いっきり釘付けになる馬場。まったく、判りやすすぎる。
誰がどう見たって、望が馬場を好きになるワケがない。しかもコイツってば、思いっきりセクハラ教師だし、そのエロな言動はあからさまで、訴えられたって仕方ないぐらいなんである。
さりげなさを装って(決してさりげなくはない)肩を抱いてみたり、彼氏の有無や好みのタイプを執拗に聞いてみたり、果ては、授業を放棄して「息抜きも大切」とか言って喫茶店に連れ出してみたり。明らかに教師としての範囲を逸脱しまくり。

しかし望が、時々は戸惑った表情を見せながらも、さしてイヤな顔も見せなかったことが、彼の勝手な妄想に拍車をかけるんである。
馬場先生の肩を揉みながら、「私って、魅力ないですかね」とつぶやいてみたり、「彼女のいる人を好きになるっていけないことですよね」と嘆息してみたり。そんなこと言われちゃあ、彼の妄想が更に暴走するのも仕方ない。見てるこっちも、ええ!?いやまさか、そんなハズはないだろうと思いながらも、彼の妄想にドンピシャに合わせて望がそんな台詞を吐くもんだから、ちょっと焦る。
しかしやはり違ったのだ。あったりまえだ。望がこの勘違い先生にイヤな顔を見せなかったのは、好きな人への恋に夢中になっててセクハラ先生のことなど、どーでも良かったからであり、彼女が口にした台詞は全て、その大好きな人への切なく苦しい恋に向けられていたのである。

というわけで、勘違いセンセイの妄想とウブな女子高生の切ない恋物語とが、それぞれ前半と後半に分けて描かれるという構成になってる。その分岐点、つまり彼女の物語に行くために時間軸が戻される場面が、志望校に落ちてしまった彼女を慰める流れから、このセクハラ勘違いカテキョー馬場ってば、こともあろうに彼女をうまーく押し倒してパンツを脱がせ、突然ドアを開けて入ってきた父親に目撃されてしまう、そんなトンでもない場面なんである!
もー、口がバカッとあいて、劇場の椅子の上で完全に固まっちゃったよ!ど、どうなるのよ!と思ったら、その画面がテレビのアンテナが壊れた時みたいにキュルキュルッと上へ上へとブレブレになって、ピーという音と共にテレビが放送開始前に流してる、あの七色の静止画面になったから、あら、ホントに上映事故かと思った。とんでもないトコで故障したなあとか半ば本気で思ってたら、そんなはずもなく、彼女の物語がスタートするんである。
それも、馬場が家庭教師に来た初日の場面がもう一度繰り返されるから、あらら、やっぱり故障して元に戻っちゃったのかしらと思わせる凝った作りである。

その後半部分では、前半部分で示された様々な場面が、彼女の視点というだけではなく、違うアングルからも捕らえられて、ナルホドと思ったり、ビックリしたりさせられたりするニクイ作り。
一番オドロキだったのは、ペン立てに差していた黄色いペンを何気なく使おうとした先生に、一瞬焦る望のシーン。まさかそれが、彼女が一途に恋する男の子を思ってオナニーに使っていたペンだなんて、思いもしない。前半、ただおちゃらけてただけじゃなかったんだなあ(失礼!)。

確かにこういう手法の映画は、今までいくつか観たことがあるけれども、その二部構成がこれほど対照的なテイストのものはなかったから、凄く新鮮に思えるのね。あ、違うや、三部構成だ。前半、中盤、後半。前半と中盤で馬場と望の視点がそれぞれ描かれ、後半の集約でこの二つが溶け合う。
前半部分はとにかくコミカル、ナンセンス。バカな男のカン違いをハハハと笑って見ていられた。彼が恋する女子高生は、いわゆるオタクが愛でるフィギュア的な要素しか持たず、だから彼女が彼に身体をゆだねる分岐点の場面で、そんなことまで許しちゃう彼女の気持ちが判らなくて、ええッ!?となったところでカットアウトされるのも上手いんである。
そして改めて彼女の側からの物語で進行していくと、彼女がいかにあの時失望し、我を忘れ、先生の不埒な行動に反応する気力さえなかったことが判るのだ。それほどまでに、好きな男の子と一緒の大学に合格出来なかったことが、絶望だった。

そもそも前半部分で、望がたった一つの大学にのみ執着している時点で、確かに判っていたのだ。志望校は向陽大一校のみ。他の大学や専門学校を滑り止めで受けるつもりもない。そこまでストイックに思いつめている。
最初、この大学にもう通っている先輩を好きなのかな、と思った。しかし彼女が好きなのは親友、多恵の彼氏である藤巻凛という男の子。うーむ、アイドル歌手か少女漫画に出てくるキャラのような名前である。
多恵と凛は中学時代からの、もう長年のカップル。だから望は二人に知られず、密かに思いを寄せていた筈なのに、いつの頃からか、藤巻は望にモーションをかけるようになる。それが、ウブな望と同じようにおずおずとした態度だから、やけにリアリティがあるんである。
当然、望は藤巻も同じ気持ちでいてくれるんだと思い、「三人で同じ大学に行こう」という合い言葉のような台詞のウラに、彼と同じ大学に行きたい、という思いを強くする。望だけが少々成績に難があるために、家庭教師について頑張ることにしたんである。実際、彼女はこのエロカテキョーの指導ながら、めきめきと成績をあげるのだ。

親友である多恵といつも行動を共にしている望は、多恵から彼氏である藤巻としょっちゅうケンカしている話を聞かされる。その度に多恵は「もう別れようかな。疲れた」「あいつ、好きな女が出来たんじゃないかな」と毎度同じ台詞を口にし、「望、凛が好きなんでしょ。あげるよ」なんて言葉まで口にするのだ。
多恵は望が藤巻のことを好きなのに気づいている。それなのにそんなことを言う。つまり、別れようとか、馴れ合いだからとか言いながら、実は余裕しゃくしゃくで、彼の方から自分をフるなんて思ってないのだ。彼に気になる女の子が出来たかもしれないと思っても、まさかそれが望だとも思ってないし、それにどんな女であっても、自分を越えるなんて本気で思ってないのだ。

多恵は望と一緒にバスに乗ってケンカ話やノロケ話を聞かせるたび、「ねえ、リップ貸して」と言う。その度に望はリップを貸してやる。彼氏とのエッチの話も平然とする多恵に貸すリップクリーム、なんかウブなエロを感じてしまう。
しかし、もしかしたら本当に藤巻君が自分のことを好きでいてくれるかもしれない、多恵と別れて自分と付き合ってくれるかもしれない、と思った時、望は「ごめん、今日リップ忘れた」とウソをつき、バスから降りて、おもむろにリップクリームを自分の唇につけるのだ。

確かに藤巻君の台詞は、カン違いにするには充分だった。三人で同じ大学に行こうという合い言葉に、「俺、望月(望)と一緒の大学に行きたい」などと更に限定して言われたら、そりゃそう思うのは当たり前でしょ。
しかも藤巻は、その台詞とともに二人きりの水のみ場で、望にお守りを手渡しさえするんである。
結局、望は落ちてしまった。その合格発表の掲示板の前で、抱き会って喜ぶ藤巻と多恵、自分にだけくれたと思っていたお守りが、親友のバッグにもつけられてた。
二人の目の前に立ちはだかって、「おめでとう!おめでとう!」と笑顔で繰り返す望のどアップ。コワいよ……。

多恵は気づかないフリしてたし、ワザと望をけしかけるようなことさえ言っていたけど、実はすっごい牽制していたんだよね。
「これからアイツの家に行ったら、またヤるんだろうな」「左胸だけ大きいのは、アイツが右利きだからだな。今日は左胸限定」なんて刺激的な台詞を望に浴びせたのは、単にノロケかと思いもしたけど、やっぱり違ったんだ。
処女の望に、「すればいいのに、セックス。どっかテキトーな男とでいいじゃん。チョー気持ちいいよ、セックス」なんて言い放つのも、多恵が望の気持ちに気づいてたと思えば、随分とヒドい台詞である。
しかも、望が楽しみにしていた藤巻のバンドのライブも、多恵は教えなかった。藤巻は望が受験勉強で忙しいからだと聞かされていた。そのことを知って、望は呆然とする。
それを、「アイツ、言わなかったんだ」と彼氏のせいにし、「やっぱりアイツ、チョーカッコイイ。濡れちゃった。あ、ゴメン」なんて言って、絶対ワザとだよな……つまり、多恵は表には出さなかったけど、やっぱり望に危機感を感じていたのかなあ。そりゃこんなにカワイイ子だもんなあ……。

望がエロ教師の馬場に身体をゆだねたのは、まさか「テキトーな男と……」てな台詞を受けてのことじゃ、ないだろうけど。
エロ馬場の場面では止まってしまったあのショーゲキの分岐点、望の視点での中盤部分で、凄まじい修羅場に突入するんである。
この場面に入ってきたのは、父親だけではなかった。望を心配して訪ねた藤巻と多恵もいた。あまりにもあまりな場面に三人、呆然と立ち尽くした。
可笑しいのは、この時父親、一度ドアをバタンとしめて、もう一回開けるんだけど、エロバカ馬場は望のパンツを引き下ろした格好のまま固まっちゃってるんだもん!アホか!少しはとりつくろよ!まあ、とりつくろったって、どーなるもんでもないけど……。
つまりここからは、エロ馬場と望の要素が等分に描かれるから、ナンセンスな要素で息もつけるんである。

当然、エロ馬場にくってかかる父親。「いや、違うんですよ、そうじゃなくて……」と口ごもるエロ馬場。何が違うんだよ……この状況で何が違うんだよ……(ひたすら脱力)。
何にも判ってない父親を、望自身が追い出そうとする。止めに入り、入り乱れるメンメン。望は多恵の頬を真正面から殴る。うろたえ、逆上し、娘を床に叩きつけてしまう父親。彼女の顔面から凄まじい鼻血が吹き出す。
ザ・修羅場だ……。
しかし、この時に多恵の本性が明らかになるっていうかさ、アンタ、絶対、望のことを心配してここに来たわけじゃないでしょ。「ねえ、なんで私、殴られたの」って、執拗に執拗に、望にくってかかるんだよ。
こんな異様な状況に遭遇して、鼻血出して呆然としている友達に、よくそんなこと言って問い詰められるよな……本当にその理由が判ってないわけ?いやいや、ありえないでしょ。判ってるはずなのに、なんてザンコクなの。
しかも、恋人のこんな非道な姿を目の当たりにしても、この優柔不断男、藤巻は迷ってるわけ?

そして後半部分、季節は巡り、大学生となった藤巻と、予備校に通い始めた望が二人で会う。
来年こそ、合格するから。でもそうしたら、多恵と気まずくなっちゃうねと、どこか探るように藤巻に言う望。
案の定、藤巻はどうにも歯切れが悪い。
望は、段々詰問口調の涙声になってくる。
「藤巻君、思わせぶりなこと言うクセ、止めた方がいいよ。勘違いするよ。私、勘違いしたもん」
これに対してコイツが言う台詞が、よりにもよってこうよ。
「本当に望月のこと好きなんだ。多恵も好き……判らないんだ。あいつとはずっと付き合ってきたし、でも望月のこと好きになってきて……今はそれしか言えない」

アホか!気持ちが定まらないうちに、ただそれを垂れ流して、そしてどうするつもりだったんだよ。正直でありさえすれば善良な人間だとでも思ってるのか。自分の中で決着もつけないまま、両方好きで、まだどっちとも決められなくて、いつか何とかなると思ったのか。何もトラブルもなく?アホか!
そんな自分勝手な藤巻の告白を聞き、望の号泣が止まらなかったのは、勿論、彼の気持ちが本気だということが嬉しかったからの筈もない。
絶望したのだ。自分がここまで本気で一途で、この気持ちだけに賭けてきたのに、人生の岐路まで決めさせたくせに、コイツはそれをヘイキでニ分割しやがって、他の女としれっとエッチまでして、それですまなそうな表情さえせずに、そんな自分の揺れ動く気持ちにだけ困っているような顔をすることにだ。二人の女にホレられることが当然だとでも思っている傲慢さにもだ。
こんな暖簾に腕押しの相手に、コイツの100倍は強い自分の気持ちを諦めることが出来ない、情けなさ、やるせなさ。

これはね、シリアスバージョンで、前半から続くエロ馬場のコミカル、ナンセンス、ドタバタバージョンでも同じことが起こってるんだよね。
馬場にはちゃんとカノジョがいる。しかも同棲してるカノジョである。望とは正反対の、すぐにでもキャンプできそうなアウトドアファッション、ふかわりょうヘアカットにノーメイク、眼光鋭く男言葉で寝起きの悪い彼を蹴り上げるようなガサツなカノジョ。……と見えるのは実は外見だけで、馬場のことが大好きな彼女は、客観的にどー見てもサエない男である彼に、かっけーじゃん、かっけー、と、あのコワイ程のマジ顔で繰り返すのだ。
言葉こそガサツだけど、彼をしっかとガン見する鋭い眼光は、つまりは彼に対してメロメロなんであり、マジで彼をカッコイイと思っているのだ。
うっそお、って感じである。このカノジョの方がサッバサバしていて(しすぎてて)彼よりよっぽどオットコマエなぐらいなのに。

例えばバッティングセンター、例えば馬場が突然始めたギター、特にギターなんて望の男性の好み(つまり、イコール藤巻)を聞いて即座に始めた下心アリアリで、明らかに稚拙なビギナープレイなのに、それでさえ、「かっけーじゃん。すぐ形になりそうじゃん」とどうやら本気で言い、本気でウットリしているらしいんである。らしい……そのオットコらしい外見がまるで脅しつけているように見えるもんだから。
でもそれも、彼女の素顔だと思うと、やけにカワイイんだよなあ。ホントにホントにイイカノジョなのだ。馬場のために何時間も煮込んだ本格的なカレーを作ったりもする。
それをこともあろうにこの男は、望の家に持っていって、いかに苦労して煮込んだか、ボクは料理をやるんですよと自慢するのだ!サッイテー!お前、五百年カマユデの刑だ!
なのにさ、帰ってきた彼女が、「カレー、全部食っちまったのかよ!」と彼にケリを入れるも、「あんまり美味しかったから……今度作り方教えてよ」と弱々しく言い訳されると「そうか。よしよし」と彼の頭をなでて、すっかり機嫌を直すんである。……うう、なんてケナゲなんだ。こんなにイイカノジョなのに、もう、バカ男!

隣で寝ているカノジョがフガッと鼻を鳴らすのを聞いて、ゲンメツする表情を浮かべるエロ馬場。
そんなことにガッカリ出来るほどの、イイ男なのか?オマエは……。
このカノジョとのデートの途中、望にバッタリ会ってしまう場面がある。そうそう、このデートで、カノジョが試着室で悩んで彼に服を持ってこさせる場面は、通常考えうるそうした場面の予測をはるかに超えていて、笑える。この踊子ありという女優さん、要、要チェックかも。
で、望にバッタリ出会ってうろたえるエロ馬場。しかし彼が思っているようなコト(なんせこの男は、望が自分にホレてると思ってるのだから!)は望は一切思ってない。確かに、「先生ってば彼女がいないなんて言って、やっぱいるんじゃん。私に気を使ったのかな」ぐらいには思ったかもしれないけど。でもその直後に「彼女がいる人を好きになるのは……」の台詞があるから、この辺の組み立て方は実に上手いんだよね。

で、エロ馬場のカノジョは彼の態度で、この女子高生、望に恋していることを悟ってしまうのだ。
「カワイイじゃん。好きなんでしょ」とまず、ズバリと言い当て、後に彼が借りてきたDVDに激しく反応し、
「今までずっと人妻モノだったじゃん。なんで女子高生モノなの。あの子のこと、好きなんでしょ!」と攻撃する。思わず笑っちゃうけど、これって的を得ているよなあ、と思ってカノジョにシンクロしてしまう。
つーか、脚本を書いてるのは男なんだから、やっぱりウワキしちゃった相手に反応してこういうことはありえるってことなんだろうなあ。ああ、なんてバカな単純さなんだ、これじゃあまりにバレバレじゃないの。

でね、後半部分、それぞれどーしよーもない男とやりあっているケナゲな女の子二人、彼女たちのやるせない号泣が交互に差し挟まれるって構成なのだ。
だから、まあ、エロ馬場はまだ、マシなんだよね。ウワキ(ってとこまでは行ってないけど……やっぱ、キモチの問題?)がバレてカノジョが出て行くという段になって、カノジョが「好きなんだよ!」とガマンしきれずに号泣して、そしてようやくようやく、自分もカノジョのことが大好きだと悟るんだもの。んで、自分まで大泣きして、本当に愛するカノジョを抱き締める。そのありえないほどの単純さは時にハラが立つけど、殆んどの部分で、愛しい。うう、こうやって女は男に騙されてしまうんだよなあ。
まあ、確かにコイツは望のこと、フィギュア的な見方でしか恋してなかった、そして自分に都合のいい物語を自分の中で作り上げていた、つまりバーチャルな浮気(恋愛ですらない)にすぎなかったわけで。
ああ、良かった。一見可愛くなくても、こんなにカワイイ、ステキなカノジョはいない、こんなコを捨てるなんてことになったら、身の程知らずにもほどがある!と憤っていたからさあ。

対照的なカラーと、それが一気に溶け合う後半、バラバラな要素なのに、そのどれもに引き込まれちゃって、ダイレクトにやられた!って気分、久々に味わったなあ。★★★★★


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