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「け」


2009年鑑賞作品

獣になった人妻
2008年 分 日本 カラー
監督:佐藤吏 脚本:佐藤吏 小川隆史
撮影:飯岡聖英 音楽:大場一魅
出演:千葉尚之 友田真希 那波隆史 結城リナ 神崎純一 夏井亜美 マイケル・アーノル


2009/6/21/日 劇場(テアトル新宿/第21回ピンク大賞AN)
2008年度新人女優賞を獲った友田真希は、新人といいながら今年37歳、まさに熟女なお姉さま。ピチピチの若い女の子が入れ替わり立ち替わり現れるピンクの新人女優の歴史の中で、恐らく史上最年長じゃないかなあ。
同い年じゃんと思いプロフィールを調べてみると、私と生年月日が一日違い……それでこの違い。うーむ年齢だけで熟女の称号はやはり得られないらしい……。

彼女もまた、あまたのピンク女優たちと同じようにAV女優のキャリアを積んで来た訳なんだけど、それも30を超えてからのスタート、まさに熟女一本でやってこられたお方というだというのも異色。
ならばそれまで一体、何をしてきた人なんだろう?あの落ち着きっぷり、あの色香。はたして……。
それにしても今回の新人女優賞三人は、三人ともどもこれまでのピチカワ系とは一線を画してて、裏街道系??なんつーか、ピンクもまた女の強さがモノを言う時代なのかもしれない。

この作品がもうひとつ異色なのは、彼女が女優さんの中ではメインなれども、彼女主演、ではないことなんだよね。いかにもウダツのあがらないチンピラ青年、英夫(千葉尚之)が主人公なんである。
でも今回の上映作品はどれもやはり、実際は男性が主人公であるものが4本中3本を占めていて、ただ女優を華として撮るピンク映画という枠から離れて面白い作品が生まれているように思う。製作本数は少なくなっていても、どっこいそうしてピンクは質を保っているのね。

でね、この英夫、なあんか見たとたんに私、あ、ヤスケンに似てる、とか思っちゃった(爆)。ちょっと髪を黄色くしているあたり、若い一時期のヤスケンにミョーに似ている気がしちゃってさあー。
私よくこういうこと思うんだよね。以前もやけにシゲちゃんに似ているなあと思った男優さんがいたし(爆)。
まあ、そんなことはどーでもいいんだけど。彼はね、ホント、ウダツが上がらないのよ。冒頭いきなりアニキの女、まさみに手を出しちゃって落とし前つけろ、とこうなる。

それもさあ、「絶対に手を出しません!」とか言った次のカットでもう、彼女とアホみたいにもりあがっちゃって、上半身ハダカに落書きとかいっぱいされちゃって、ちょんまげに結われちゃって、さらには彼女の腕と合わせてハートマーク描かれてデレデレしちゃったりして、もうアホったらないの。
こりゃあ危ないなと思っていたら案の定、彼女を送っていった先であっさりヤッちゃって、冒頭は彼が布団の中で目覚めて、昨夜を回想して青ざめるところから始まるのね。
彼女から「昨日は私のオッパイいーっぱいなめてたくせにぃ」とか次々追い討ちかけられるたびに、画面のこちら側の彼は、白目むいたりムンクさんになったりシャレコウベになっちゃったりと、畳み掛けるギャグで笑わせてくれる。
もうこの時点でこの作品のカラーは決まったなとは思ったけど、まさかあんなブラックな結末が待っているとは思わなかった。

懲りずにもうイッパツと覆いかぶさったところで、帰って来たアニキにどつかれる。アニキは英夫彼と交代して彼女をタップリ堪能した後、提示した落とし前ってぇのが「明日までに10万用意しろ」って、安ッ!
まさみが「あたし、そんな安い女じゃないよお」とふくれるのも無視して「こいつが用意できるのはそれが精一杯だ」な、なさけねー……てーか、アニキそれは優しすぎないかい?
かくして英夫は10万を用意するために放り出されるのであった。

パチンコで稼ごうかとフラリと入るも、次のシーンでは悄然として店を出てくる。なんともダメ男なのよね。
小銭しかない状態で空腹に耐えかねた英夫は、定食屋で髪の毛が入っていたと言いがかりをつけて食い逃げしようと図るも、出てきた親父さんがつるっぱげ(爆笑)。
「……おいしいと言おうと思って……」な、なんとゆー情けなさ……。
しかしその英夫の目の前で、まさに食い逃げをした女がいた。白いワンピースに白い大きな帽子、いかにも裕福そうなその女につられて英夫も飛び出した。その女はたかこ。英夫が金がなくて困っていることを知ると、「あなたに100万あげるから、言うことを聞いてくれる?」と驚愕の申し出を!

英夫の頭の中に、アニキに10万、自分に90万の図式が浮かぶ。このマンガチックな絵が彼にやけに似てて、可愛くも噴出しちゃう。
しかも物語が展開していくほどに、3千万、1億と金額が膨らんでいって、彼はそこからマイナス10万の金額をいちいちその絵で想像するもんだからさあ(笑)。これって今までのピンクでは見たことのない構成で、面白い。
たかこの別荘であるという豪邸でシャワーを浴びさせてもらっている英夫、するとそこに、一糸まとわぬ姿のたかこが入ってくる。思わず取り落としたタオルが彼の××××に……「ナイスキャッチ(笑)」あ、アホ……。

まあ、そんな具合に性欲満点なお年頃の彼は、こんな美しい熟女とヤレることに興奮、もーそりゃー、二度三度とヤッちゃうんである。
「やっぱ、アレっすか?若い男と遊びたいってことッスか?いや自分、全然いいッスよ。奥さんみたいなキレイな人とヤレるんならいくらでも」
アホ満開の彼に、たかこは寂しそうな微笑を見せた。「私、夫以外の男の人とセックスしたの初めてなの……」そう、彼女は口も使ったことのないウブなセックスしか知らなくて、それどころかセックスがこんなに気持ちいいものだということも知らなかった。
しかも婿養子の夫は、彼女の父親が死んでから浮気し放題なのだとため息をつく。だから自分は家を出てきたのだと。
そして彼女は一計を案ずるんである。それは狂言誘拐。身代金を持って自分を助けに来てくれたなら、まだ夫の愛は残っているのだという賭けに出る。そしてその賭けに彼女は勝ったかに思われたのだが……。

この夫、外見はクールで有能な社長の顔を持ちながら、愛人である秘書とねばっこいセックスを繰り広げるような男。妻が家を出たといってもまったく動じることもなく、「こういう時のためにアイツにやった携帯にGPS機能をつけているんだから」と心配する風もない。
それどころか、たかこにノセられた英夫が「カネを持ってこなかったらこの女、ぶっ殺す」とすっかり誘拐犯気取りなのに対して「ならば殺してくれないか。そうしたら1億払う。その後の始末もこちらが請け負う」と信じられない提案をするんである。
しかし更に信じられないのはこのアホの英夫で、1億という途方もない金額に頭がショートしちゃって、それなら自分は9千9百90万円……などとまたしても頭の中で引き算の計算(笑)。たかこを花瓶でぶち殺す妄想までしちゃって、「いい花瓶ですね、有田焼ですか?」どう見ても西洋陶器だろ……(笑)。

たかこがかわいそうになった英夫、あんなヒドイ夫とは別れた方がいい、と真実をぶちまけるも、たかこは逆ギレして、あの人がそんなこと言う訳ないでしょ!と英夫を追い出してしまう……。
つーかさ英夫、その前から早くアニキに返す10万が欲しくて何気に無心するあさましさでさ。それをたかこは全然察してくれなくて、しかもこんな展開になってしまっては「10万だけもらえませんか」と言ったらそりゃたかこも逆ギレする訳さ。
だってまさか本当に夫が自分の死を望んでいるなんて思わないから……でもそのあたりがやっぱりお嬢様なんだよなあ。

しょんぼりと豪邸を後にする英夫、万事休す、アニキから電話がかかってくる。焦る英夫だけれど、焦っているのはアニキの方である。「この町を出ろ!」
アニキったら、夫の元へと帰ろうとしていたたかこを轢いちゃったんである!この突然の展開にはアゼン!
だ、だって、それまではずーっと電話の向こうだったアニキとその恋人のまさみが、突然トラックに乗って登場したかと思ったら、ドン!とたかこを跳ね飛ばしちゃうんだもん!
しかも「だから運転しながらしゃぶるのイヤだったのよ」とまさみが言うせりふに更にアゼン!アホかお前らー!!

しかも彼ら、遺体をズルズル引っ張っていって、茂みの中に放置しちゃう。それだけでもアゼンとしていたのに、更にアゼンの結末が用意されている。
夫がさ、たかこの携帯にGPSをつけてるって言ったでしょ。英夫に渡る筈の1億円が入ったアタッシュケースを持って、黒づくめのデカイ外国人の男が降り立ったのは別荘じゃなくて、たかこのGPSを追跡してきた、その茂みだったのだ。
そこにはホームレスの男が遺体がくるまれたビニールシートをはぐって、たかこが身につけている貴金属をガメようとしている。これを演じているのが国沢実監督だってのも!
黒づくめの男、このホームレスに向かってアタッシュケースを差し出す。えええ、1億円は彼に渡るのお、と思ったら、パカリとあけたその中はカラ。え?と思ったら、思ったら……ホームレス男の頭に銃が突きつけられ(!)カットアウト(!!)うっそお!

いやー……アホアホな話かと思ったら、なんか一気にブラックな……すごい畳み掛けたなあー。ビックリ。★★★☆☆


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