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壷姫ソープ ぬる肌で裏責め
2009年 分 日本 カラー
監督:加藤義一 脚本:城定秀夫
撮影:創優和 音楽:レインボー・サウンド
出演:持田茜 藍山みなみ 合沢萌 津田篤 THUNDER杉山 岡田智宏 なかみつせいじ サーモン鮭山
あああー!!一番重要なクライマックスだったそうなのだよ!なのでこの感想を書くこと自体非常にためらったのだが、でもまあ……自分自身のデータベースとして。
いや、ていうか、それ以前にポレポレ東中野でかかっていたこともいまさらながら知ってショック。私が頼りにしている情報のとこではそんな告知はなく、ということは私は去年も(一回もピンクを観れなかった)そうした失態を多々犯していたのか!ショック、ショック、大ショーック!うう……なんということだ……。
と、今更悔やんでもしょうがない。これから特にポレポレは気にしてよう。次回は6月にあるそうだし……。ということで、本作はそういう前提で書いているのでどうかお許しを。
なもんでね、私はこの作品、そしてヒロインの最も素晴らしかった部分を見逃しているせいであろう、なんか、へー、これが一位なんだー、意外―、って感じだったのだ。そりゃ、後からそのシーンの重要さをいろいろ読んでみれば、そう思うのは仕方ないであろう(泣)。
なもんで、本作に関してヒロインである知美役よりも印象に残った、というかバッチリ可愛かったのは藍山みなみ嬢であった。
そんな訳でますますピンクを観てない私は(しつこい……だって久々のショックだ……去年、観れないなあ、観れないなあと思ってたんだもん……)久しぶりに彼女を観たのだけれど相変わらずとても可愛くて、すっかり嬉しくなってしまったんであった。
あの餅スベなお肌や黒々たっぷりなロングヘアの、しかも無造作なキュートさは相変わらず。私はこれまで彼女の作品をほんの少ししか観てなかったから、そして久しぶりに観たということもあったから、ロリな印象ばかりが強かった彼女が、なんかサバサバとオットコマエな女の子であることに意外さと、嬉しさを感じたのであった。
しかもロリな印象は外見上ではちっとも失われていない(ていうか、奇跡的なほどに変わってない!)から尚更である。
彼女は大学生らしく、レポートの締め切りがあるといってパソコンに向かうシーンがある。恋人からそんなのいーじゃん、とちょっかいを出されるのを、もうヤメてよ、ホントに!と本気で怒って振り払うシーンが良かったんだよねー。なんたってピンク映画だし、彼女のこのロリで甘い外見だから、二度三度とチョッカイ出されたら、もおーしょーがないなあー、てな感じで応じるのかと思っていたから。
ま、作品の冒頭は朝起きぬけの彼女、麻理子に、徹夜で漫画を仕上げていた潤二が、いいだろ、学校なんか休んじゃえよ、とまとわりついてくるのを、それこそもぉー、しょうがないわね、と受けるという、ま、お決まりコースだったからさ。
でも彼に甘い顔を見せたのはこの一度きり。彼女の部屋に転がり込み、家賃も生活費も払わず、大学を中退寸前でエロ漫画を描いてなけなしの金を得ているものの、その金をすぐにパチンコやらソープやらスッてしまうという彼を、彼女はたたき出してしまうんである。
そう、エロ漫画。この設定はちょっと、面白かった。潤二を訪ねて勝手に上がりこみ、麻理子が作っておいてくれたカレーを勝手に食べる、もう7年も大学にいるという先輩(岡田智宏、相変わらずイイ男だなー)が、「ただでさえ低俗だと思われている漫画の中でも、更に低俗だと思われているエロ漫画」とくさしてカレーをこぼす(こんなラクな感じの岡田氏は初めて見た。なんかもう、ベテランって感じになってるよなー)。
そして潤二が原稿を渡す編集者の男も「このあたりの描写、いつもと違わない?ひょっとして芸術とか目指してる?若い人はすぐそういうこと言い出すけど、違うんだよなー。君の原稿でメシ食ってる人が沢山いるんだから」と彼の方はコーヒーをこぼす。
これは方々で言われていることだけれど、確かに激減するピンク映画の現状と、そして私のようにそれをゲージュツとしてとらえたがる、ナマイキで無責任な輩に対して向けられた言葉でもあるんじゃないかと思うと、なんだかうつむいてしまう。だって私のような受け手は決して決して、100パーセント、求められる受け皿にはいないんだもの。
……ちょっと、ヘコんでしまった。でもね、そう……しつこいようだけれど、重要なシーンを見逃している私としては(しつこいわ、ホント)このやりとりが一番心にしみたんだなあ。しかもね、それを受ける彼が、あまりそれを判ってないらしいところも含めてね。
ただ……彼はなんとも憎めないんだよなあ。それはね、この日の舞台挨拶でも演じる津田氏自身が言っていたんだけれど……どうしようもないヤツだけれどアリだと、可愛いと思ってくれたらいいって(そんなニュアンスで、激しく違ったらゴメン(爆))。
確かにもうどうしようもないヤツ。大学も中退は決定だろう、漫画を徹夜で仕上げるシーンは冒頭で用意されているものの、それに情熱を傾けているという雰囲気も正直感じられず、彼女からソデにされるとソープに行って、そこで偶然再会した元カノのところに、麻理子から追い出されるとアッサリ転がりこんでしまうだなんて。
あのね、原稿を受け取った編集者からね、ゲージュツ云々に絡んでこんなことも言われたのだ。なんか、淡白だって。君だってセックス好きでしょ、だったらもっとさあ!って。
まあそれも、いかにもピンク映画らしいやりとりと言えなくもないんだけれども、でもさ、なんかそれって、セックスを恋愛とも置き換えられるような気がしたのだ。
あるいは、仕事、と言ってもいいかもしれない。クライマックスシーンを見てないので何とも言えないんだけど(だからしつこいって)本作の主眼は高校時代の甘酸っぱい青春の味と、その、永遠に忘れないであろう初恋の味(童貞だったんだから、初恋だろう)、にある訳でさ、この再会した元カノとの関係はなんか……現実味がないんだよね。
彼が回想する高校時代が、ソフトフォーカスで実に甘やかに再現されるせいかもしれない。勿論本人同士が演じているんだからイタくなりそうなもんなんだけれど、これが見事に青春の甘酸っぱさ、苦い切なさとして提示されていることに驚く。
だからこそ現実味がないんだよね……だってさ、「家庭の事情ってヤツ?」で転校していく女の子に童貞をささげて別れるなんて、ロマンチックにもほどがあるじゃないの。
そりゃあね、この時彼女は「私は初めてじゃないから」と言い、その後、この頃からの付き合いである高校教師との関係が明らかになり、その教師とのドロドロ合戦が繰り広げられたりはするけれども、でもね、むしろ既に経験のある女の子に童貞君が迎えられる、そしてその女の子との別れが待っているなんて、やっぱりやっぱり都合がいいほどの超ロマンチックじゃない。だからこそ非現実的じゃない。
この教師を含めて三人顔を付き合わせるシーンは、状況のドロドロに反してとてもコミカルだったんだよね。潤二はことの重大さにまだピンときてなくてポカンとしてて、「先生、やるじゃん」などとノンキに言うもんだから思わず噴き出してしまったりして。
でもそれこそ潤二はこの教師ほどの、死ぬほど好きになってしまうほどの気持ちをまだ持ち合わせていない、ソフトフォーカスの初恋で止まっているような状況だったんだと思うんだよなあ。
……てな訳で、もうこれ以降は全然私、言えないんでアレなんだけど。
でも、ストライプのポロシャツにジーンズなんていう、ありがちなダルダルのカッコで、恋人に追い出されても悪びれもせず元カノのところに転がり込んで、更に悪びれもせず「男と女だからね」とセックスしちゃう潤二が、なのになんで憎めなくて、カワイイとか思っちゃうんだろう。こればかりは女のどうしようもない母性本能としか言いようがない。
麻理子もキツくは当たるけれども、大量のりんごを抱えて戻ってきた潤二を結局は迎え入れてしまうのは、その一点に尽きるのだろうと思う。
「このリンゴ、マズいな……」「スカスカだね」と言い合い、残していい?と聞く彼に、「全部食べろ!」とりんごを口に押し込む麻理子=みなみ嬢に、それまで見せてきた厳しさを装いながら、彼のことが可愛くてたまらない女の子らしさが感じられて、なんだかとても微笑ましかった。★★★★☆