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「や」


2014年鑑賞作品

やま猫作戦
1962年 95分 日本 カラー
監督:谷口千吉 脚本:関沢新一
撮影:小泉福造 音楽:佐藤勝
出演:佐藤允 夏木陽介 伊吹徹 田崎潤 中丸忠雄 山本廉 平田昭彦 沢村いき雄 中谷一郎 大木正司 田島義文 砂塚秀夫 中山豊 星由里子 水野久美 清水由記 三井紳平 古田俊彦 宇野晃司 加藤春哉 小川安三 堺左千夫 長谷川弘 林沖 草川直也 天本英世 桜井巨郎 大前亘 小沢一郎


2014/1/28/火 劇場(渋谷シネマヴェーラ)
“猫”がついてるだけで、足を運ぶな(爆)。うわっ、やべっ、戦争映画だよー、と思ったが、戦争アクションというべきか。
今はこういうの絶対作れないよなー。だってこれ見てる間もメッチャヒヤヒヤした。中国の人が怒って暴動が起こりそうで(汗)。
いやー、これは中国の人には見せられないな。いや、見せられるかな??うーん、どうだろう……。

こういう映画が今は作れない、というのは、人道的、社会的にはまっとうなのかもしれないけれど、でもヤハリ、自由度という点ではつまらなくなってしまったのかもしれない。
今でも年に何本かは戦争映画が作られるけれど、決まってヒューマニスティック。よもや戦争映画でこんな荒唐無稽な、まあこういうのをB級というんだろうな、そんなアクション映画は絶対作れないもんなー。
大体、この谷口千吉という監督さん、私初めて。いや多分(汗)。それなりに本数撮ってるから、ひょっとしたら何か見てるかもしれない(汗汗)。
八千草薫の旦那さんだというのは知らなかった……そうだったのかあ。

戦争映画、ということでヒヤリとしたが、とりあえず知った顔の佐藤允が出てきたのでホッとする。若手側のメイン、夏木陽介は若すぎて顔が判らん(爆)。
てゆーか、佐藤允をがっつり見ること自体、初めてに近いような気がする。なるほどなるほど、こういう映画に出ていたから、なかなか彼を見る機会がなかったのかもしれないなあ。

ザ・男臭さ。ホントに体臭がスクリーンから匂いそうな気がする。いや、別に汚い意味じゃなくて(爆)。ほんっとーに、男!!!って感じ。
軍隊の中のはぐれものである一色中尉。はぐれものだから中尉以上にいけない。
ガチガチの軍隊の中で、濡れ衣かもしれない敵前逃亡を負わされて、戦友の射殺命令が出た、それを彼は断った。そこからはぐれものになったという過去が後に明かされる。

今では彼はそんなことはしない。「そうすれば、他の誰かが殺すだけだ。一か月ぐらいぶらぶらして、見つからなかったと言えばいいんだ」。
ちなみにその時の“他の誰か”が同期の大田原少佐。演じる中丸忠雄。名前に見覚えめっちゃあるから、多分沢山見てる人なんだけど、前述のようにこういうタイプの映画をほとんど見ないもんだから、あんまりピンとこない。

それにしても佐藤允である。男臭さを前面に出すにも程があり、大体上着の前が全開である(爆)。そらまあ、全開にすべきほどの素晴らしいお身体である(照)。
とにかく超人なのだが、クライマックスになるにしたがって、ギャグかと思うぐらい死なない。何百人対二人とかになっても、アホかと思うぐらい彼に銃弾が当たらない。
まさにこれぞ、B級アクションである。まあだから、中国の人も怒らないかもしれない(爆)。

そもそもどーゆー話かというとである。時はザ・戦時中。場所はザ・中国大陸。
日本の軍隊が駐留しているこの地で、親日中国人の組織体などもあったりして、奇妙な均衡を保っている。冒頭なんぞは、「いつも玉子を売りに来る子だから」と中国少女をトラックに乗せたりしている。

彼女と顔なじみになる若き若葉少尉こそ夏木陽介であり、この少女は星由里子である。
へーっ、星由里子!しっかと中国語流れる美しさだから、中国人キャストかと思った。
これだけ中国中国なのに、中国人キャストは名前から見るにひとりぐらい??これも今じゃ出来ない所業だよな……。

やっぱり若き少尉だから、どこかまだまだ判ってないというか。一緒に最前線に来た平良少尉(伊吹徹)ともども、最前線に来たことに少年のように浮き立っているんである。
てか、“最前線に来たことに浮き立っている”ということ自体に、ショックを受ける。今より当時に近い時代に作られた映画だもの、今では考えられないようなこうした価値観が実際、あったんだろうと思う。
勿論、そんな夢想ヒロイックは劇中、どんどん崩されていくことにはなるんだけど、最前線でバリバリやることにワクワクしている若き青年兵の姿に、今の時代のゆるい日本人である私は、戦慄してしまうんである。

そう、でも勿論、どんどんそんな理想(?)は崩されていく。赴任直後に「自分の兄にそっくりなんであります」と頬を紅潮させて話しかけてきた「可愛いな」と二人の頬をゆるませた年若い通信兵は、その日のうちに中国人ゲリラ部隊に殺されてしまう。
これを皮切りにする形で、この地の日本軍を翻弄してきたゲリラ部隊、竜ゲリラと呼ばれる組織にことごとくやられていくんである。

せっかくとらえたゲリラの一人も、潜伏場所を吐かせようとしていたところを、日本軍に殺されたという形をとって恐らく仲間内でやられた。
最前線にワクワクしていた平良少尉は、ひそかに敵に潜入せんと画策していたスキをまんまとやられて自分の部隊を全滅させられ、それが故に敵前逃亡の濡れ衣を着せられた。
頭のカタい、ガチガチの日本の兵隊たちは、愛国心あふれるゲリラたちに翻弄されっぱなしなんである。

そうなんだよね。今の時代の目で見るからかなあ。我が地を占領しているにっくき日本の兵隊たちをメラメラと憎む、中国ゲリラたちの気持ちをついつい考えちゃう。
最終的には荒唐無稽な、死ななすぎるにもほどがあるだろアクションについ笑っちゃって、アクション映画としてのさっぱり感を面白く感じるものの、なかなか難しいかなあ……と思ったりする。

救いは、夏木陽介扮する若葉少尉が、憎からず思っていた中国少女、星由里子とあくまで個人的な気持ちを交しあうところかなあ。
でも、あの殺された捕虜が彼女のお兄ちゃんであった訳で、彼女は日本人にお兄ちゃんを殺されたと思ってて、それを、アジトの場所を知りたいのに殺す訳がない。それが知られて困るのはどっちだ、と若葉少尉から諭されただけでアッサリ納得、彼と倒れ込んで濃厚キッスするのは、ど、どうなの(汗)。
うーむ、やはりやはり、今じゃ絶対出来ないぜ、こーゆー映画(汗汗)。確かにそれだけ二人は純粋なんだけどさあ……。

なんてクライマックスに行く前に、結構いろいろ、笑わせてくれる場面がある。
ガチガチの日本軍人ってーのはわりかしトップのメンメンだけで、その中に若きエリート、若葉や平良も含まれているんだけれど、その下のやさぐれ軍人たちの描写がなかなか楽しいんである。
こーゆーのも、現代の映画事情ではやっぱ、ナカナカ、難しいだろうなあ……。彼らの花札賭博に目を光らせる平良に対し、一緒に楽しもうとやってくるはぐれ者一色中尉。
懲罰の腕立て伏せを喰らうやさぐれたちを気楽に見舞い、上官に電話でオイッチニーの号令を聞かせて、ちゃっかり休ませちゃう茶目っ気がたまらない。佐藤允、めっちゃカッコイイ!

しかもゲリラの襲撃を見抜き、オイッチニーの号令に合わせてババン!と倒しちゃうカッコ良さ。うーむ、これをカッコイイと思っちゃうのはヤバイのだが。
戦争アクションを素直に楽しめる時代ってのは、当時以外には難しいかもしれんなあ……。

射殺命令が出た平良を救い出すべく、若葉と一色が敵方に侵入するんである。てか、言い忘れてたけどこのおカタい平良は、色っぽい芸者の染丸とストイックな恋仲なんである。
いやー、この時代だから、見えないトコで何かがあったのかもしれんが。と思わせるぐらい、染丸を演じる水野久美が尋常じゃなく色っぽすぎるっ。

敵方に落ちた平良、そして若葉や一色は、男一匹だけならば真っ赤に燃えた鉄棒を掴んでみせることも出来るが(いや、そんなことが出来るのは、やっぱり一色だけだ……)、愛する女をヒドイめに合わされちゃあ、陥落するしかないんである。
平良はなんたっておカタイから、そんな自分のふがいなさに男泣きする勢いなのだが、そこではぐれ者、一色中尉がね、恋に落ちたんだから仕方ないとか、まあそんな具合のことを言うのよ。
すんません、正確になんて言ったのか忘れたけど(爆)、これはね、はぐれ者一色中尉じゃなきゃ言えない台詞よ。男として、人間として、それは当然のことだ、というそういう気持ちが、そこには込められていて、グッとくるのよねーっ。

てか、染丸はいちいち敵の切り札に落ちすぎだけど。てか、最終的に死んじゃうし。
えーっ、死んじゃうのかよ!!でも考えてみれば、代わりと言っちゃなんだが、若葉と恋仲になった中国少女は生き残って彼らと共に逃げ出したんだから、日中関係を考えれば妥当な選択なのか……いやでも、彼女は仲間を裏切る形で日本人側についた訳だし……うーむうーむ。

しかも染丸の死に方は、確かに泣ける……死体から武器をとって愛する人に手渡して、撃たれて死んじゃうという、あまりにもあまりな最期。
しかししかしそれが、ビックリするほどアッサリしてて、え?ホント?ホントに死んだの??とピンと来なくて、最後まで、彼女を救出に行く場面を待っちゃったよ。染丸ちょっと、不憫すぎるなあ……。

つか、この中国少女、名前さえ与えられてないしさ(爆)。演じる星由里子は可愛かったけど……。
なんかこうして書いていると、あれだけ煽って書いてた主演の佐藤允の記述が少なすぎるが(爆)。
あれっ、おかしいな、彼はホントに印象的で、クライマックスの中国ゲリラとの攻防戦なんて、だって3人対数百人、1人味方への報告に抜けて2人対数百人になって、それで勝っちゃうんだよ??

もう途中からはマジありえない描写よ!途中までがそれなりに作戦勝ちのようなところがあったから、途中からのなし崩しが、そ、そりゃないだろ……と思っちゃう訳(爆)。
中国人軍勢殺されまくり。う、うーむ、やっぱりやっぱり、中国の人には見せられん(爆)。だってこれだけの同胞を見捨てる形で星由里子、日本人側についてるって、マズいよなー。

しかも一色中尉、死んじゃうし……えっ、死んじゃうのかよ!あれだけありえないぐらい死ななかったのに、マジで!
……まーつまりは、これだけ中国人民を死なせたんだから、メイン中のメインの一色中尉を死なせる形でしかバランスがとれなかったのかもしれんなあ……。

人間道を貫いた同期と反対の道を行って出世した大田原少佐が、あれだけ一色のことを苦々しく思っていたのに、いまわの際の彼に死ぬな、死ぬなと涙を流すシーンは、ベタながら、うう、こーゆー男同士の友情シーンには女は勝てないわと思っちゃう。
それは、射殺命令が出た平良とそれを命じられた若葉の若きオノコ同士のシーンもまたそうで、まーこれが、ホンットにイノセントでほっぺた赤くなっちゃうぐらいの純粋さでさ。

それは双方ともに、この地で愛する人を得て、日本軍人としてではなく、その人を優先して行動することになるという点で、大田原、一色たちの、軍人としての生き方とは違ってて。
これはナカナカ戦争モノとしては問題点を示しているのかも??

いやー、しかし……佐藤允は、凄いな。こういうタイプのスターだったんだな。
なかなか観る機会がないもんだからさあ、もう、どうしよ、この年になっても奥深き日本映画の世界は知らないことだらけだよ!!!★★★☆☆


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