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牝猫たち
2016年 84分 日本 カラー
監督:白石和彌 脚本:白石和彌
撮影:灰原隆裕 音楽:野村卓史
出演:井端珠里 真上さつき 美知枝 音尾琢真 郭智博 村田秀亮 吉澤健 白川和子 松永拓野 吉村界人 米村亮太朗 ウダタカキ 野中隆光 山咲美花 天馬ハル 久保田和靖
デリヘルに勤める三人の女。それなりに年を重ねた大人の女。フーゾク嬢という言葉がイメージする頭の軽そうな感じではなく(それもヘンケンたっぷりだが)、テキトーな店長(音尾琢真氏!!!)にもがっちり権利を主張する、働く女たち、なんである。
いろんな場面で彼ら男たちと女たちの思惑の違いがぶつかる。客の元への送り届け係の男の子、興味シンシンに「客とセックスして気持ちイイこともあるんですか」と聞き、彼女たちは口をそろえて一刀両断、「ある訳ないだろ、バーカ!!!」
そして客のつきが悪い結依に対して店長が「恋人みたいな気持ちにさせなきゃ。それで盛り上がって……(腰をクイクイ)なんてこともあるだろ」と口を滑らすと「何それ、ホンバンやれってことですか」と眉を逆立てる。
後にそれらの盗撮映像がYouTubeに流出、皮肉なことにそれが客を呼ぶ展開になるのだが、つまりはそれは、どういうことなのだろう。ヘタなあとくされなしにビジネスで寝られる方がさっぱりするのか、こんな“ナマイキ”なことを言う女たちを征服したいのか、あるいはされたいのか、あるいは自分なら惚れさせてやると思うのか。
……というのはかなり後になってからの、本作の引きのエピソードなんだけれど、実際はそれがホントにどうだったのか、客の心理がどうだったのかはスルーされてちょっとしたお笑いネタみたいな感じで終わってしまうのは残念だったかもしれない。
だって、この三人の女たちは、結局客たちにホレてしまうのだもの。いや、ひと口にそう言い切ってしまうのは違うかもしれない。少なくとも里枝は違う……勃たないおじいちゃんが凄くお金使って延長してくれて、申し訳なさからくる親愛から、不思議な愛情みたいな感じだったから……。でもあれもやっぱりホレていたのかもしれないなあ。
などと、ちょいちょい先走ってしまうが(爆)。てか、ここまでで名前が出ていない雅子こそが主人公、なのよね。いわゆるワーキングプア。家がなく、寝泊まりは仕事の延長でラブホとか、ネカフェなんかで過ごしている。
彼女のことを気に入って指名し続けているのは、ザ・引きこもり感満載の青年、高田。「ここ、俺のビルだから」引きこもって仕事をしなくても暮らしていけるということなのだろうか。
彼女を指名してセックスする時には必ず頼むピザは冷えてまずそう(爆)。部屋の片隅にはピザの空箱が満載である。ゴミを出す時には外に出るのだろうかなどとつまらないことが気になってしまう。まさかゴミはピザの空き箱だけではなかろうが……。
「がっつりコース、ダブルで」という割には、しんねりとこねくり回すこともなく、さっさと脱がせて「一万円足すから本番つけて」とあっさり突っ込むだけである。冒頭の内は雅子もその身体の下で無表情のまま芝居の喘ぎ声を発するだけである。
……いつから彼女は彼に執着するようになったのだろう。「行くとこないなら、ここに泊まれば」と言われた時なのか、盗撮動画が流出したことに“炎上”させてくれた時からなのか。
……いや、このあたりから彼には異質な空気が付きまとっていた。テレビすら見ずにネットの掲示板ばかりチェックしている時点で、それが「世間を見ている」と言っている時点で、あーヤバイと思ったが、彼は現実の関係が結べないタイプの、判りやすい引きこもり君、だったのだ。
まー、こーゆータイプの引きこもり君が、外にも出ずにパソコンの前だけに座ってるのに太りもせず、ギトギトもせず、ちょっとイイ感じの色男だってーのはズルいなあと思っちゃうけどねえ。ナイよと。そんなの(爆)。もちろんだからこその欠陥なのだが。
彼の何よりの欠陥は、ラブに向き合えないこと。ここに泊まればいいじゃんなんて殺し文句を言えるくせに、「セックスする時は店に電話するから」なんて興ざめなことを言う。ある日傷ついた雅子がシャワールームの高田に抱きついた時に拒否したのがひどく明確なそれであった。
一番鮮烈な印象を残したのは、先述した、客のつかない結依。幼い一人息子のいるシングルマザーだが、その経緯は明らかにされない。仕事の時には息子を預けるのだが、いかにもネットあたりで探し当てたような個人の青年と待ち合わせて、ガサガサお金のやり取りをして、ってな感じなんである。
ゲームかなんかしながら子供にコンビニ弁当食べさせたりするもんだから、この辺で虐待展開とかあるのかと身構えたら、逆であった。この青年が、少年の身体に母親によると思しき虐待の跡を見つけるんである。結依はお笑い芸人やってる客にホレちゃって、引き取りの時間にちょいちょい遅れてくるもんだから、彼は余計に心配するんである。
後述する里枝は高齢者社会だし、結依はシングルマザーが追い詰められての子供の虐待だし、雅子はワーキングプアとその相手は引きこもりだし。うわ、こう書き出してみるとすっごい判りやすい社会問題、社会派!!
そんでさ、最初こそは風俗に従事する女たちのホンネ、みたいな切り口だったのが、結局は彼女たちがそれぞれの客に、ほとんど恋みたいな、いや、まさしく恋の落ち方で、つまりそれで自らの立ち位置を見直すということだろうが、そういう展開だからさ。
ラブが見たいのは確かにそうなんだけど、個人的には、ちょっと、甘いかなあという感じがしてる。凄く記号的な社会派が、しかも三つに分断されて、より記号化の度合いが濃くなった気がするし、それなのにそれをラブで解決してしまうのが、そんなんで解決できないよ、と思っちゃうのだ。
いや、解決できないのは先刻承知、だからこそ社会派だということなのか、そうかもしれない。いやさ、女としてはさ、女を描く物語はついつい点が辛くなっちゃうのよ。
結依がホレるお笑い芸人は、実際の現役お笑い芸人、とろサーモン。お笑いに疎い私でも知ってるぐらいの、売れてる芸人さんが、イケメンさんの方がかなりがっつりカラミやってくれるもんだから、わー、こういうのは好き好き!とか思っちゃう(爆)。
だって、鎖で吊り下げるザSMもやってくれちゃうんだもの!「可愛いおっぱいだな」ってのが、妙に生々しくてね(爆)。
そう思えば、この三人の女たちは決して大きなおっぱいの持ち主じゃないんだよね。てゆーか、ブラを取る(あるいは取られる(照))場面が当然、出てくるんだけど、やあっぱ現代のブラジャーはマジック、言ってみれば詐欺だよね。見事な谷間を作ってて、おお、いいおっぱいと思ったら、ブラをとるとあれ?てな感じなんだもん。
ここが一番、かつてのロマポルとは違うところだなあ(爆)。これはまさしく、技術の進歩を見た!というところだろう……。
なんだかんだ言いつつ、実は最後にとっておいた、里枝のエピソードは結構お気に入りなのであった。妻に先立たれたおじいちゃん、金田さんが、デリヘルを買うも何も出来ず、ただただ一緒にいるだけで、延長までするのに何もせずに、更に大枚を差し出し、「仕事以外で会ってくれませんか」とまで言い……。
里枝は当然、気後れし、店長に相談して“伝説”のバイブレーターを拝借したりするのだが、金田さんはおどおどと辞退。それでも里枝が服を脱ぎ、おっぱいをなめるように優しく指導すると、戸惑いながらもついにはまるで子供のように彼女の胸に顔をうずめるのだけれど……。
里枝を演じる美知枝嬢が響いたからこそ、このエピソードが印象に残ったのかもしれない。里枝に惚れ込むあまりストーカーめいた行動に出た金田さんが、実は彼女が既婚者だった事実に衝撃を受け、「一緒に死んでください!」と首を絞めにかかるクライマックス。
逆に里枝に自分を殺すように懇願しても当然そんなことは出来ず、濃厚な感情とガチな格闘技なみの展開があった後、ぐったりた金田さんが、……ひょっとしたらもう、死んでしまったか、死にゆく過程の金田さんが、勃起していることに気づくのだ。
ハッとして、彼と自分の下着を脱がせ、腰を沈め、まるで、まるでこの世で一番愛している人とするセックスみたいに、のどを突き出し、咆哮する里枝。
多分、多分ね、あの時金田さん、もう……。まあちょっと、この展開は男の夢として?見覚えのある感はあったけど。
パトカーが来て、連行される里枝の美しさときたら、なかった。妻がこんな仕事をしていること自体知らなかった夫のマヌケ顔の前で見せるあの、神秘の笑顔ときたら!
男性クリエイターが未知の女性を描いている不満はちょっと先述したけれど、ちょっとここは、リスペクト(?とは違うかな、上手く言えない)を感じて、グッときたなあ。
ラストは、そんなこんながあってデリヘルが潰れ、雅子は恋した相手、高田とお屋上で、生まれたままの姿になって、とてもとても情熱的な最後のセックスをして、事務所に戻ってくる。
最後に店長と仕事として、コントみたいなセックスして、夜の街にさまよい出る。あの、盗撮動画を投稿したウラギリ者の青年に偶然行き会う。拾われる。また、風俗の仕事へと彼女は誘われるのだ。別に絶望でもない。ただ彼女の生きる道として。
個人的には、ナックスの末っ子、音尾さんの濡れ場シーンが、照れちゃって見てられない(爆)。
うーむ、私はドラマとかなかなかチェックできてないので、もういい歳の音尾さんだからこーゆーこともふつーにやってるのかもしれないけど、やだー、タクちゃんが女の子のおっぱい、乳首なめてるとか思っちゃって、もー、やだー(照照)。★★★☆☆