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「け」


2023年鑑賞作品

激突!殺人拳
1974年 91分 日本 カラー
監督:小沢茂弘 脚本:高田宏治 鳥居元宏
撮影:堀越堅二 音楽:津島利章
出演:千葉真一 山田吾一 中島ゆたか トニー・セテラ 遠藤太津朗 石橋雅史 千葉治郎 志穂美悦子 鈴木正文 川合伸旺 風間健 角友司郎 ユセフ・オスマン 風間千代子 汐路章 大前均 天津敏 渡辺文雄 川谷拓三 チコ・ローランド 片桐竜次 野口貴史 白川浩二郎 山本麟一


2023/4/26/水 録画(日本映画専門チャンネル)
コロナ禍で、CS放送の千葉ちゃんのこのあたりの時代の作品を何本か観る機会があり、これが関根さんがモノマネしてた千葉ちゃんかぁ!と感激したものだが、その中でも特に本作はその特徴が色濃い。別日の放送回でまさに関根さんが本作を語るトークゲストに招かれていたから、ホントに本作が関根さんの中でも一番ぐらいのザ・千葉ちゃん作品なのではないかと思われる。
いやー、ムチャクチャすぎてどこから語っていいのか判らんが、せっかくの志穂美悦子氏が男にやられっぱなし(ヤラれっぱなしというか)のはキー!悔しい。けど、ミニスカのストッキングのおみあしが、ぱんつ見えそなギリギリで大股でバタバタ暴れまわるのに、お、おぉぉ、とコーフンしてしまう。いやいや、どんなとこから書き始めてんのよ。

結構複雑なドラマなんである。しかも国際的である。日本に留学している某国石油会社の令嬢、その父親の暗殺、令嬢の誘拐、その奪還に千葉ちゃん、香港パートも用意されるぐらい。なのに、すべてが日本語であることにツッコんだらいけないのだろーか。

いやー、ツッコみたくなるだろ。留学しているっていうんだから令嬢のサライが日本語を喋るのはまだいいとして、そして彼女を迎えに来る本国のバヤンがカタコトの日本語を喋るのもまだいいとして、香港パートも、豪華客船で待ち構えている本国の黒幕、副社長のジャードまでもが日本語、微妙なカタコトなまりの日本語なのは、な、なんなの。
しかも時々母国語(中国語や英語)をまじえるという訳の判らなさで、実際の台詞は日本語で喋らせて、アフレコで中国語なり英語なりにしたらいいのに、これはツッコめと言わんばかりじゃないのと思うが、まー、そーゆーインチキくささが当時の映画の魅力だから、これも楽しんで、嬉しくて、やいやい言ってるだけなので。

この国際的暗躍の物語の前に、千葉ちゃん演じる剣琢磨(つるぎたくま)の登場から始まるのだが、彼は沖縄空手で次々と相手を絶命させた志堅原(しげんばる)なる死刑囚に、その執行の直前に、教誨師として面会に来るんである。実は志堅原の弟と妹に脱獄を依頼されていて、その妹が志穂美悦子って訳。
志堅原は一目で剣が空手の達人であることを見抜き、今まで出会ったことのない歯ごたえのありそうな相手に、狭い牢獄の中で手合わせを願う。剣の仕事は彼を脱獄させることだったから、一時仮死状態になる一撃を加え、死刑執行の直前に意識不明になるように仕掛け、救急車で運ばれるところを襲って奪還、という、思いもよらないスリリングな物語のスタートなんである。

剣には相棒がいて、劇中でちょこっと語られるんだけれど、シンガポールで剣に助けられたという、ラクダと呼ばれる中国語なまりのへっぽこな男である。でもこのラクダが泣かせるんだよな……。
本作はちょっとテキトーなぐらいにバンバン人が死ぬ、つまり剣がぶっ殺すわけなんだけれど、そんな剣をラクダはターレン(大人、ということかな)と子供のように懐きまくって、慕いまくっている。

ラクダは剣のためなら、マジで死ねるぐらいの気持ちだったんだろう。実際、「俺の命はターレンのものよ」という台詞もあるのだから。その道行はラクダの気弱さが時に出てコミカルなこともあるんだけれど、そんなラクダを剣も子供のようにあしらったりするんだけど、でも判ってるじゃん。ラクダは剣を死なせたくなかったから……。
剣の命令は絶対だけど、それも彼が殺されるかもと思ったら、その絶対を破らざるを得なかったんだよ。それは、敵の五竜会にとらえられた剣を救うために、サライの居場所を漏らしてしまったラクダ、というシークエンスで、剣はメッチャ怒って、破門にしちゃう。なんかこの時、判っちゃったんだよなあ、きっと次のシークエンスで、ラクダは剣のために身体を張って、死んでしまうって、そしてそのとおりになっちゃう……。

言いたいことから言っていくと訳判らんな(爆)。えーと、なんだっけ。そうそう、志堅原とそのきょうだいよ。つーかさ、剣は正義なのか悪なのかよく判らんのよ。前半は、ハッキリ、ヒドすぎるのよ。志堅原を脱獄させ、香港への密入国船で逃がす。志堅原の弟と妹がやってきて、後金は待ってくれないかという。激怒した剣と彼らの闘いになる。
あの志堅原のきょうだいたちだから確かに使い手ではあるんだけれど、野獣のような千葉ちゃんにかなう訳もなく、弟君は哀れ、投げられた先が窓、高層階から転落して死んでしまう。この時点で、うっわ、これはないわと思い、次のシークエンスで剣は妹の志穂美悦子をあっさりヤクザに売り飛ばしているから、うーわー、これはナイわ、クズじゃん、クズ男じゃん!!と思っちゃう訳で。

実際、剣のキャラのありどころはかなり難しいと思う。相棒のラクダにとっては神様のような存在。それは、圧倒的な強さ、自分を助けてくれた、というのも相まって、まさに神様。
でも剣は、少なくとも冒頭のシークエンスでは金の亡者的なキャラで、後金を待ってくれというきょうだいに激怒し、弟を、事故的とは言え葬り去って妹が泣きじゃくるのもかまわず、300万のカタにと売り飛ばすとか、ひっど、ひどすぎ!!とか思うのだが、ことサライの救出に関しては、腕の立つ男として活躍しちゃうしさ。

まぁ、そもそも、サライ誘拐を持ちかけられた五竜会、その窓口となっていたヤクザの牟田口にナメられたことで逆ギレしたような形で、サライを保護している正武館に乗り込んだんだよね。
こーゆー、道場空手っていうもんがどんなに頼りないものか教えにきたった、とか、散々クサして、次々に門弟をぶっ飛ばし、しかし、道場主の政岡には、かなわないのだ。

一見、ゆるキャラぬいぐるみみたいな(爆)、腕と足が短くてどうも頭身がおかしい(爆爆)、正拳突きの拳がクリームパンみたいな(爆爆爆)政岡なんだけれど、どうしても勝てない。
でも、政岡も、自分と対等に闘った剣を買って、サライの用心棒として雇い入れる。剣の父親と政岡が知己だということもあったのだけれど……大陸で、スパイ扱いされて非業の死を遂げた父親、というエピソードが挟まれ、おやまぁ、こりゃあ、物語に大きく影響するかと思いきや、全然ならない(爆)。
まさに、ここだけだったよね……剣の怒りのパワーが、時に非情なまでのそれが、こんな、パーソナルすぎるところにあったのに、それっきり、まるでこの語りがなかったかのように、触れないあたり(爆爆)。

ヘンにこんな人情噺を挟んでくるのが、もったいないというか、めんどくさいというか、いらないじゃん、と思ったんだよなあ。正義か悪か、どっちなのと思ういい加減さが、こんな浪花節で更にかき乱されるのは、それこそめんどくさい。その拳だけで、その都度、彼だけのものさしで、正義も何も関係なく選択して進めばいいじゃない、と思っちゃったからさ。

その時々に、彼にとっての正義は、あるのだと思う。客観的に見たそれではなくてさ、彼にとってだけの正義。
あのかわいそうなきょうだいに対しては、剣の正義は発動されない。マフィアによって利権を奪うがために罪なき人の命を奪い、その令嬢を手の内にすることには、怒りを覚える。

ホント、志堅原きょうだいたちは気の毒で仕方ないけど(爆爆)。ホントにね、あんまりなのよ。そもそも、妹の志穂美悦子氏は、売り飛ばされてからこっち、なかなか登場しない。あの志穂美悦子が、売り飛ばされて終わりかよ!?と心配しかけたところで、香港に逃亡した志堅原が、その地の九龍街を牛耳っているディンサウに見いだされ、女をあてがわれる場面で、流れ着いている妹に遭遇するんである。
ディンサウは香港男なのに、日本的浪花節に弱いヤツで、志堅原きょうだいと剣の運命的な敵同士の物語にカンドーしちゃってさ、自身は五竜会に雇われたのに、志堅原きょうだいと剣の対決をプロデュースしちゃうのよ。それを邪魔する五竜会にブチ切れて、皆殺しにしちゃうんだもの、これは仁義なのか??仁義やりすぎじゃないのか??

まぁ……そもそも、そんなこと言ってもムダですがな、って世界観ではあるんだけど(爆)。ヒロインはサライ(中島ゆたか)であるんだろうけど、志穂美悦子氏、五竜会側のミステリアス美女、楊紀春(風間千代子)と、いろんなタイプが勢ぞろいである。まぁ、結果的に彼女たちは添え物で、男子アクション支離滅裂大暴走!という感だったけど、まぁそれが楽しいのさあ。
次々に増えだすキャラ強めの殺し屋たちのメンメン……巨漢のムスカリ、盲目の盲狼公、いろいろ登場しすぎて、結果頭に残らない(爆)。サライを救出に行くのにロープでクライミングとか、崖の上からはるかかなたの海面にドボンとか、目まぐるしいアクションにめくらましされて、もう、正義どころか、展開すら判らなくなる(爆)。

ラストはまさに極めつけ、ゴーゴーの豪雨、嵐、スリリングなアクションシーンを演出したかった、ということなんだろうが、あまりの暴風雨過ぎて、千葉ちゃん、志堅原に扮する石橋雅史氏ともに目があいてないしさ(爆)。
結局この、男同士の闘いが互角すぎることに業を煮やして、石油会社側がピストルぶっ放しちゃったもんだから、ああ、男同士の、殺し屋同士の闘いを邪魔しやがって!!と、この闘いをプロデュースしたディンサウが激怒して、彼らをぶっ殺しちゃうのには、えーえーええー!!何何、純粋少年の想いでセッティングしたあなたが、めっちゃ短気で人ぶっ殺すか!!と、もうどうツッコんでいいか判らん状態(爆爆)。

しかも、この後がヒドすぎる。あまりにも決着つかん、お兄ちゃんの窮地を、と飛び出してきた妹、志穂美悦子、がば!!とにっくき剣に抱きついて、私ごと刺して!!…………はぁあ!?バッカじゃないの!!??なのに、なのに、刺すの、刺すのよ、このお兄ちゃん、バッカじゃないの!!
だって、千葉ちゃんは主人公だから、死ぬ筈ない、もうそれを言ったらミもフタもないが(爆)。妹ごと串刺しにして、あまりに辛いけれど本望を遂げた、と思ったお兄ちゃん、なのに剣に返り討ちにされちゃう。

しかもそれが、これは、これはないわ……。首をガッ!とつかまれ、引きちぎる。引きちぎって、何あの肉片、何!!恐る恐るググってみたら、うぅ……やっぱり……のどぼとけを、引きちぎったということらしい……イヤー!!もうーイヤー!!R指定R指定!!あり得ん!!何それ!!そこまでやるか!!そういや、サライを襲った男の金玉ぶっちぎったシーンもあったっけ……うわー……。

暴風雨の中、致命傷を負ったと思ったのに結局一人生き残り、サライとディンサウに支えられる剣、立ち尽くす三人。それでエンドとは……ボーゼンとしちゃったわ。
なにこれ、正義があったの?千葉ちゃんのアクションを見せるための作品だったのかもしれんが、それならそれで、この衝撃をもちょっと整備してほしい……。ムチャクチャすぎるだろ!!だってだって、ペニスやら喉笛を、その手でもぎ取るんだよ、血だらけで!!R指定どころじゃねーだろ!!(言っときますが、怒ってるんじゃなくて、喜んでるんだよー)★★★☆☆


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