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「お」


2023年鑑賞作品

大阪古着日和
2023年 98分 日本 カラー
監督:谷山武士 脚本:谷山武士 廣川祐樹
撮影:森山将人 音楽:MANTASCHOOL
出演:森田哲矢 光石研 花梨 東ブクロ 森島久 熊手萌 森田啓二 田仲俊博 内藤久純 前田健太 緒方美穂 井口裕弘 戸田克 杉本義訓 森島悠輔 森島弘明


2023/4/24/月 劇場(渋谷ホワイトシネクイント)
後からこの映画の成り立ちを知ると、元となった光石研氏主演のYouTubeドラマ「東京古着日和」のことも、本作の主演のさらば青春の光の森田氏のことも知らずに足を運んだ自分にビックリしてしまうが、でもこんな風に情報を入れず(無知や不勉強に対する言い訳(爆))、時間や場所のタイミングで出会う映画の面白さは、まさにここにあるんだよなぁと感じる。
だってもしこの元のドラマを見ていたら、舞台が大阪に置き換わり、主役が森田氏に置き換わったことに違和感を感じたかもしれないし、さらば青春の光や森田氏のことを知っていたら、芸人さんの劇映画芝居ということに、ドキドキしたかもしれない。

そのどちらもなく、とても居心地のいい映画だったから、後からいろいろ情報を知って、驚いたり、興味深く感じたり。そもそも総合芸術である映画は、そこからさまざまな興味を引き出すという最大の特徴があって、私はまんまとそれに引っ掛かった訳だ。
ファッションに無頓着の私は古着のことも当然全く知らず、その魅力にもピンときていなかったし、私のような人間が古着なんていう奥深いファッションに触れてはいけない、みたいな気持ちもどこかであって。やっぱオシャレな、イケメンさんや美人さんの世界だと思っていて。

だから、というのも失礼かもしれんが、光石氏や森田氏といった親しみやすい風貌の男子が、まるでガンダムや鉄道の奥深さを語るように、キャッキャキャッキャと古着談議に花を咲かせることに、キュンときたというか、ああ、いいんだ、もしかしたら私のようなヤボ女子でも、古着オシャレとかに興味持ってもいいのかもしれん!と思わされた。

なんていうか……映画なんだけど、映画的ハードルを感じさせない。まるで、週末の深夜に?みながらゆったりドラマを見ているみたいな雰囲気。最初から松重さんのあの「孤独のグルメ」を即座に想起したんだけれど、そもそもが光石さん主演のドラマだということも知らなかったし……でも実際の元のドラマを見るとより一層、あれだよね!と思ったり。
そのあたりは、もっと情報を掘って行けば、たどり着くのだろうか??かのドラマは料理に対して、そしてこっちは古着に対して、本人のモノローグで展開していくというスタイルがまさしくで、そしてもう一つ、先日の入院中にアマプラで見ていたトモロヲさん主演の「名建築で昼食を」も思い出したんだよね。本作中、森田氏が古着ショップのアルバイト、ナナとデートめいた散策をする、植物園の建物が有名建築家の素敵なそれだったりとかして。ああ、バイプレーヤーズだよなあと誰もが思うに違いない。

映画となった本作では、光石氏は脇役、というにはメインすぎる脇役だが、森田氏演じる本人役の、芸人の森田が古着屋(というより、不定期に開くイベント的場所)で出会う、そこでアルバイトをしているナナの叔父、という設定。YouTubeドラマの古着好きの設定はそのまま引き継ぎ、光石氏もそのとおり、若い頃からの古着好きだという。
古着好きというのは本作の主演の森田氏もそうで、ナナを演じる花梨嬢も、彼女自身の実際のキャラクターをそのまま反映されている面白さがある。ナナに付された、コラージュアーティストというのは実際にそうだというし、森田氏に関しては実際のコンビ、実際の本人、舞台映像も見せてくれるというスリリング、だから実際の相方も登場するし、ネタとして芸人あるあるなんて見せてくれると、ドラマ仕立てだけど、まるでセミドキュメンタリーのように感じる瞬間もあって、面白いんだよね。

極めつけは森田氏のお父さんが実際に登場すること。観ている時にはその素人くさい可愛らしさで、もしかしたら、と思わなくもなかったけれど、実家の蕎麦屋、というのもすべてコミで本人役、だったとは!!
息子が大枚はたいてプレゼントしたビンテージ古着スウェットを可愛らしく着こなすお父さん、いい味出してる!!

それだけじゃない。そうかそうか、メイン舞台となる古着屋さんの店主も、実際の人物。なぁるほど。古着のみならず、スニーカーもえげつないビンテージコレクションを所有していて、劇中の森田氏は、そしてメイキングを見ると実際に、引くぐらいそのすごさに圧倒されている。
そしてそして、劇中の森田がナナが探しているレアものトレーナーを探し回る、大阪の古着屋さんめぐり、当然実際の店、そしてきっと店主も実際の店主さんなのであろう。森田氏のお父さんの味のある芝居のように、実際に商売している、古着を愛している、生きた人たちの心あたたかな芝居は、芝居じゃなく、古着を通して確かにここに息づいている温かさを感じて、まさしくこれぞ、ほっこり、してしまう。

テレビも見なくなってしまって、すっかり世の中の情報から取り残され、続々出てくる芸人さんたちにはもはやひと昔前からすっかりついていけなくなってしまった。なのに、さらば青春の光、さんは、知っていたんだよね。コロナ禍以降、数十年ぶりにラジオに戻ってきて、そこで彼らの単独ライブのCMに繰り返し遭遇していたから。
そこでコンビ名だけ知って、見たことも聞いたこともなかったんだけれど、こんな出会い方をして、本当に不思議な気持ちだった。まさにラジオCMで聞いた、単独ライブを、劇中で再現した形であったにしても、拝見する形になるなんて。相方さんも、ああこういう方なんだ、とかさ。

実際のYouTubeドラマはシンプルに、古着屋めぐり、古着との出会い、店主との古着談議、てな感じらしいのだが(ちらっと確認しただけなので……)本作は、淡い恋の予感もあり、何より、あちこち遭遇する飲食店の食べ物が、おいしそうでおいしそうで、困る!!
モノローグもそうだけど、だからこそ「孤独のグルメ」を思い起こさせたんだよなあ。古着に関しては奥深くて興味深いけど、やっぱり全然知らない世界だから、講義を拝聴しているような気持で見ているけれど、海老天のせカレーうどん、カレーつけ麺に温泉卵、あらびき、ほそびきが選べる手打ちそばに天ぷらセット、純喫茶のオムライス、ああたまらん。

そして何より、森田氏、光石氏が古着屋アフターの興奮冷めやらぬままに、しかも初対面なのに一気に意気投合した直後になだれ込む味のある居酒屋、壁の手書きメニューが全部気になりすぎる上に、そこからのチョイスがすべて絶妙、彼らがウマいと言わなくても、もうウマいでしょ、と判っちゃう。
海老の紹興酒漬け、本格麻婆豆腐、ほっとする粕汁、テキトーに思いついて注文したチャーハンさえも、すべてがむちゃくちゃウマい!

あのシークエンスは、加えて森田氏、光石氏の、恐らくだけど、アドリブの丁々発止、まさに漫才、その場で作った漫才みたいなやりとりがたまらなく面白くて。実際の年齢は、親子ほどとは言わないけど、いや、そう言ってもいいんじゃない?20ぐらいは離れてるよね??と思うし、森田氏が光石氏の大ファンで、っていうのをメイキングで見ちゃったりもしたんだけれど、でもすっごく、いいキャッチボール、いや、もっともっと、プロ同士の真剣勝負の面白さ、なんだよね!!
こういうの、すっごく、嬉しくなる。なかなか、映画というカテゴリーの中では見られないよ。そして、映画というカテゴリーだからこそ、こうした奇跡のカップリングも実現した訳だし!

おっと、ちょっと脱線してしまった。そうそう、おいしそうなのよ、もうとにかく!!そういう意味では本作は、モノローグ形式とバイプレーヤーズ仲間で頭に浮かんだ「孤独のグルメ」に、やっぱり通じるものを、意識的に作ってるんじゃないかなぁと思っちゃう。
まず登場したのがうどん屋だというのは大阪だな、と思ったら、森田氏の実家として蕎麦屋がメインの存在感を発揮するという意外さがいいし、純喫茶のオムライスてのは、名古屋を想起させる、西日本の喫茶文化を強く感じさせたりもするし。

こうして書いてみると、ドラマ仕立てにしてはいるけれど、結局やっぱりそんなことはどーでもいいのだろう(爆)。まぁでも、劇中でのステージ上で披露したネタ、芸人あるあるとして、打ち上げと称しての合コンがバレてイイ感じになってた女の子にフラれる、というのは実際あるのかもしれんし、それを下敷きに本作のプロットが組まれたのかもしれないけれども、そうだとしても、やっぱりどーでもいいのだろうと思うよ。
森田とナナのほんわりとした、デートと言えるような言えないような、大学の先輩と後輩がたまたま時間があって時間つぶししているみたいな、緊張感も特段ない、それこそが居心地がいいわけだし。

でも一応は劇中の森田氏は、この出会いにヨッシャ!と思ってて、だから相方の合コン暴露にイカったし、ラストチャンスに、レア古着プレゼントを模索したりしたのだけれど……。
でもそれは、映画として作る上での、あくまでシークエンス作りであったんだろうなと思う。

元のYouTubeドラマがそうであったように、あくまで古着愛なんだもの。それが判らないまま遭遇して、なんか判らん居心地の良さにほこほこしたけれど、いろいろ事情?が判っても、やっぱりそうだよね、と思う。
メイキングで森田氏が光石研ファン発動バクハツしているのが、可愛くて、そして嬉しかったなぁ。私も光石研ファンだから!!

光石氏が語るように、かつては古着は安いもの、安くてファッションを楽しめるものだったんだよね。でも今は、ビンテージという名のもとにとんでもない値段が付く。大人の楽しみとして、買うか否かの逡巡の楽しみ、というのが本作にでも描かれているけれど、これはなかなか……どうなの、と思う部分。
古着に限らず、あらゆるものに関して、大人になってからでなければ楽しめないものになることは、それこそ世代関係なくの交流が出来なくなってしまうもんなぁ。★★★☆☆


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