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「ち」

1999年鑑賞作品

痴漢電車 下着検札(「痴漢電車 朝の悦しみ」に改題)
1984年 64分 日本 カラー
監督:滝田洋二郎 脚本:木功
撮影: 音楽:
出演:竹村祐佳 螢雪次朗 竹中ナオト


1999/2/28/日 劇場(亀有名画座)
と、と、とんでもねー!何だこれは一体!全く嬉しくなっちゃうくだらなさととんでもなさ!大体、“まん拓”って言葉が出たとたんドヒャーだったが、その本人を捜すのに、ちゃんと写真があるのにもかかわらず「まん拓を取り捲りますよ!」と意気込む探偵は一体なんなんだ!“クリトリスのある部分に黒真珠が埋まっている”(不可能だと思うなあ……)というそのまん拓は、矢印模様みたいな白抜きの真ん中に黒い丸点がどーんと映っているというまさしくキワモノ。この探偵が変なカラー電飾で飾り付けられた事務所で出前のラーメンを啜りながら見ているテレビには、まんま松本清澄という“松木清澄”が映っていて、その怪演は竹中直人!いやー、やってくれましたねというぶっ飛びようで、あの下唇をべろーんとだした顔のままで「15年ぶりじゃのお」と女の股の中を覗き込むは(膣の中を覗き込んでいる目を内側から映しているというその奇想天外でかつくだらない発想とチープな作りがまたたまらない!)つついてもだえさせるは、ついには調子に乗ってヤっちゃうはのはしゃぎぶりにはもう爆笑!密室殺人をあっさり自殺と断定した松木氏、「私は今嘘をつきました、さてこれをご覧の観客のみなさん、謎が解けたかなふわっははははー!」とカメラにどんどん迫ってドアップになるところもまたしても大大爆笑!しかしほんとに可笑しいのはここからで、黒真珠捜索の一件から手を引いた松木氏がテレビでしっかり黒真珠の指輪をしているのを発見した探偵と助手、いきなりエアロビクス始めて、一体なんなんだあー!?と思ったら、探偵さん、助手の女性に「締まり具合はどうだ?」「ばっちりよ、スッポン並み」ま、まさか!?その“締まり具合”をアレで試した後、松木氏が乗っている満員電車に乗り込む二人(大文豪が満員電車に乗るってことは……ま、やっぱり痴漢が趣味なんでしょうね)。松木氏が痴漢してくるように誘発し、しっかり指を入れさせたところで探偵さん「そこだ、頑張れ!」と尻を押して助力する!またまた内側カメラがご登場で、黒真珠が“スッポン並みの締まり具合”にみごとはまって黒真珠奪還に成功するとみるや、探偵さん、幅広テープをそこにばっと貼るんだものー!まったく、とんでもない映画を観ちゃったよ!★★★★★
懲役太郎 まむしの兄弟
1971年 87分 日本 カラー
監督:中島貞夫 脚本:高田宏治
撮影:赤塚滋 音楽:菊池俊輔
出演:菅原文太 川地民夫 佐藤友美 女屋実和子 安藤昇 天津敏 葉山良二

1999/6/22/火 劇場(新宿昭和館)
ずっと観たいと思っていた「まむしの兄弟」シリーズ。予想外に良かったのが、ゴロ政を慕う弟分、勝に扮する川地民夫で、それまで私は川地民夫を意識して観たことはなかったんだけど(ひょっとしたら初見?かもしれない)彼の愛すべきバカさ加減が非常に愛しい。バカと言えば兄貴分である菅原文太扮するゴロ政も充分バカなんだけど、この勝、基本的知識常識に関してもバカで、何かというと「……って何ですのん、兄貴」と聞いてくるのだ。この、兄貴を盲目的に慕っているところが実に愛しい。しかしこの二人、いわゆる相棒ものにあるような、同性愛的な空気はまったくなくて、私はそういう雰囲気が好きなものだから本来ならガッカリするところなんだけれど、不思議と気にならない。この二人の関係性って、なんだろう、なんか、本当にバカ同士がバカやってつるんでいるというような、どこか小学生の男の子っぽさ、なのかな。

冒頭、出所してくる兄貴を迎えに出てくる勝。おそろいの黒の上下を用意し、チャップリン・ハットにはムショに入った回数分だけビールの王冠で飾り立てているというオバカぶりである。さすがにゴロ政はそれをすぐに取ってしまうのだけどね。黒づくめの二人は、さながら「ブルース・ブラザース」だあな!おそろいの赤い鼻緒の下駄がこれまた微笑ましく、肩で風切ってあちこちでケンカを繰り返し、金なんて持ってないから無銭飲食し邦題である。そんな時、両親ともに失い、屋台をやってけなげに弟、妹を育てている少女に出会い、そして彼女を施設に入れてまともな生活をさせようとする女警官にも出会い、ひと悶着。彼にとって警察だの施設だのは宿敵に等しいものなのだ。

しかしそこはバカだから、この少女を助けてやりたいと思っても、せいぜいが強盗で金を奪い、彼女にくれてやることぐらいしか思い付かないのだ。しかしこのへんがやはり愛すべきバカ、なのだよなあ。ハクづけに刺青を入れるしかない、なんて言って、二人して全身に刺青が施されたかと思ったら、ラスト、ケンカに大マケして帰ってくる二人に降りかかる豪雨にその刺青が溶けて流れ落ちてしまう(つまり描いてたのだな)こっけいな哀れさは、ほんと愛しいのだな。

ブルドッグみたいに狂暴で精悍なんだけど、ちょっとコミカル入った菅原文太もまた、“いい年して……”といったバカさかげんがピタシである。このコンビもまた、「昭和残侠伝」シリーズの高倉健と池部良、「悪名」シリーズの勝新太郎、田宮二郎と並んで日本映画の宝よのお!★★★☆☆


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