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「め」


2000年鑑賞作品

名探偵コナン 瞳の中の暗殺者
2000年 分 日本 カラー
監督:こだま兼嗣 脚本:古内一成
撮影: 音楽:大野克夫
声の出演:高山みなみ 山崎和佳奈 神谷明 山口勝平 茶風林 緒方賢一 岩居由希子 高木渉 大谷育江 高島雅羅 林原めぐみ 塩沢兼人


2000/5/14/日 劇場(錦糸町シネマ8楽天地)
この「名探偵コナン」はテレビでも劇場版でも今回が全くの初見。というのも……そう、声優塩沢兼人氏の突然の訃報に接して、どうしても観ておかなければ、と思ったのだった。映画に興味が独占されてから、TVアニメはすっかり観なくなってしまったけれど、それでも変わらずに唯一大好きな声優さんだったので……。

と、そんな理由で観たのにもかかわらず、その面白さにすっかり驚いてしまった。塩沢氏が扮する白鳥警部の台詞が発せられる度に泣きそうになって困ったけど……。いや、この「名探偵コナン」に関しては、本当に大人のファンが多いという事を聞いていたけど(実際職場の先輩もファン)納得である。緻密なストーリー展開と、膝を打つ推理はもちろんだけれど、なんといっても小学生に身をやつして恋人の蘭ちゃんを見守る、その中身は高校生のコナン君、そのなぜかエロティックにも思える設定にドキドキしてしまう。小学生姿でも中身に大人を見てしまうから、キメキメの表情やスケートボードで助けに行くアクションが物凄くカッコよく映っちゃって困っちゃうんだなー、これが!

しかしこのサブタイトル「瞳の中の暗殺者」を見た時から絶対そうだと思ってたけど、やっぱりそうだよね?これ、大林宣彦監督の'71年作品「瞳の中の訪問者」を意識してるよね?かの作品は手塚治虫「ブラック・ジャック」の“春一番”を原作としたものだから、そこに間接的なオマージュを感じるし。「瞳の中の訪問者」は角膜を移植された少女が、その元の持ち主である殺された女性が見た殺人犯が角膜に焼きついていて……というもの。本作の、犯人が銃を撃つ手助けを意図せずともやってしまった蘭ちゃんが、そのショックで記憶を失ってしまう。しかし、その恐怖はしっかり脳裏に焼き付いており、犯人の顔も見ているはず……という展開にほんのちょっぴり重なるものを感じなくもないし。

犯人は左利きというヒントと、最後の最後まで犯人は警察関係者だと思わせたまま引っ張っていき、本当に意外な人物が犯人であった結末。もちろん意外な人物が犯人、というのはセオリーだけど、これは本当に読めなかった!いや、もともと私は推理なんて大の苦手なんだけど。左利きを示すヒントとなるシーンも、まるで強調する事なくさらりと描いていくので、コナン君に後から言われて、えっ!?あっ!そう言えば!と驚いちゃうんである。能力ある外科医から故意にひきずりおろされてしまう蘭ちゃんの心療内科医がその人。

クライマックスの、トロピカルランドでのバトルは圧巻でしたなあー。こればっかりはやはり実写では出来ない迫力。もちろんCGとか特撮使えばやれるんだろうけど、それをやると、ああCGだとか特撮だと思っちゃうもんね。特製スケートボードに乗って、遊園地のアトラクション内の通路をジャーッ!と駆け抜けてゆくコナン君がもうカッコイイー!!彼の行動が常に一点、“蘭を助ける”ことに集中しているのがゾクゾクきちゃうんだよなあ!たとえあのお気楽探偵小五郎のクサいプロポーズの台詞と同じであっても、「好きだからだよ、お前が。世界中の誰よりも」とこう、しかも危機一髪の時に言われちゃあ、キャーもうダメって感じ。思えばこんなコテコテの台詞は、いまやアニメでしか聞く事が出来ないもんなあ……。

大体が、女って割とショタコン気味なところが絶対あるから(それとちょっとレズ気味……というのは「オール・アバウト・マイ・マザー」のマヌエラの言葉だ。これもほんとそうだよな)、潜在的な母性感覚なのかも判らんけど、とにかくこのコナン君のキャラ造形はそういう女の心理の琴線に触れまくってくるんだよなあ……それも、いまだにやっぱりどこかで夢見てしまう、守ってくれる強い男性、自分を誰よりも愛してくれる男性という要素を、かなり臆面もなくきっちり抑えてくれちゃうもんだから。それでも蘭ちゃん自身も正気に返ればカラテのチャンピオンでメチャ強いというのはまさしく現代の女でさすが!なんだけどね。

塩沢さんのこともあるけれど、今更ながらこの面白さにもうちょっと早く気づきたかったなあ、と思ってしまいました。★★★★☆


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