「へ」

２００４年鑑賞作品

変態熟女　発情ぬめり
２００３年 60分日本カラー
監督：山﨑邦紀　脚本：山﨑邦紀
撮影：小山田勝治　音楽：中空龍
出演：鏡麗子　風間今日子　佐々木基子　平川直大　柳東史　兵藤未来洋

２００４／５／25／火劇場（渋谷アップリンクファクトリー／２００３ＰＩＮＫ　ＦＩＬＭ　ＡＲＣＨＩＶＥＳ）
あー、ダメだ、やっぱり。周囲がこんなに笑っているのに、笑えない。うぅ、こういうのって、苦しいよー助けてー。話はわりと凝っているというか。はあ、ピンク版「ブレードランナー」ですって？ネット上に気まぐれに現われて男を誘い、その一回だけで寝た男を自滅させてしまうほどの強烈なセックスを授ける完璧ボディーの女は、この世にもたらされたセックスレプリカント。そしてそのレプリカントに人間的感情が生まれるように“進化”させた新型レプリカントの男はしかし、人間的感情をもたらされたがゆえにレプリカントと人間との間のアイデンティティに揺れ、女レプリカントに挑まれたセックスで陥落し、彼女を救おうと生みの親である博士に会わせるも、その博士も彼女のセックスに溺れ、自滅してゆく……うーむ、こう書くと何だかとっても傑作のような気がしてきた。でもダメなのよお、何か知らん、引いちゃって。相性だわ、やっぱり相性。私は山﨑作品と相性が悪いのよお、きっと。

何かものすっごくワザとらしく女王様臭をぷんぷんさせて現われる女レプリカントがまず、ぞぞぞとくる。確かに作られたレプリカントにピッタリ。あごのたるみが気になるなあ……でもこの女上位！な感じといい、ハデな顔つきといい、その巨乳はちょっと大きさが片ちんばだけどビンビンに張りまくってて、まるでツクリモノみたい。うん、確かに彼女のキャラがあってこそのこの物語というのは判るのだ。

男レプリカントの方がねえ、これがねえ……引いた原因かもしれない。彼はなまってるの。それがやたら劇場内の笑いを誘ってたんだけど、この中途半端な東北なまりが、私にはどうにもこうにも……だってこれ、あ、そうそうチラシには青森弁と書いてあったけど、言っとくけど青森弁なんてものはありません。津軽弁か南部弁でしょ。それに青森の言葉では絶対ない。トークショーでは秋田弁と言ってた。うーん、つまりはそういうアバウトなイメージでの東北なまりなんだろうなあ……うう、東北に住んでた者としては、違う違う、ぜえーったい違う！という憤りで（いや何も、そんなことで怒ることもないんだけどさ……素直に笑えばいいんだけど）引いてしまうんだな。ああ、私って心が狭い……。

展開としては、この女レプリカントにダンナをたぶらかされた女が彼女を見つけ出して復讐をせんと、この女レプリカントに自滅させられた男と共に彼女を追い求める筋なんである。この男はもう、あのレプリカントじゃないと絶対ダメだと言い、女はそんなことはない、と彼の前に自らの生身をさらす。男はあんなこと言ってたくせに、目の前のオ○コが最高じゃー！としゃぶりつく……だけど、肝心な時、いざ挿入しようとすると……勃たないのだ、コレが。目の前の女にはちゃんと興奮しているし、この女も彼のモノを勃たせようといろいろとつくしてくれる、なのに、最後の最後に勃たないのだ。あー、つまりあのレプリカントに吸い尽くされてインポになっちゃったんだな、カワイソウに。

冒頭、この男がレプリカントとセックスしている場面が出てきて、そこから物語は始まってる。いかにこの女レプリカントが手練かというのをじっくりと見せる。フェラでイキそうになるのにじらされてじらされて「イかせてくれよお、頼むからあ！」と何度も泣きを入れるこの男が笑わせる。女はさも楽しそうに笑ってじらしまくり、そして最後の最後、彼女の武器に入れてぐりんぐりんやられ、男はたまらず昇天する。……そっれにしても、この男の情けない顔ときたら……割といい男なのに（「痴漢電車　快感！桃尻タッチ」にも出てた、あのシゲさん似の男優ね（笑））。
何というか、それまで見慣れていたセックスシーンにおける男女が逆転しているようなイメージ。女レプリカントが俺様な感じで、彼女に征服される男が女のようによがってて。あ、ということは、女ってやっぱりセックスの場面では男に征服されているという先行イメージはやはりあるのだな。そう考えると、これって女こそが痛快に感じる話なんだろうけど……でもこーゆー女は同性としてちと生理的にヤだしなあ。

博士は新型の男レプリカントと会って狂喜する。東北なまりも人間に近づいた証拠、人間でもレプリカントでもないと悩むそのアイデンティティの発露に、まさに進化した！と喜ぶわけ。で、博士、もっと人間的な悩みを引き出そうとこの男レプリカントに女房をあてがう。つまり、博士はこの男にとって親も同然、ということは女房は母親も同然。近親相姦させて、罪の意識の発露をうながしてみようというわけ……カワイソ。

博士の女房がね、ちょっとエロティック。登場シーンはホント唐突で、女レプリカントがそう、これは洋ピンものの迫力のセックスシーンで圧倒したあとに、唐突に、場面が和に切り替わるのね。この博士と女房のシーンに。その唐突さにはかなり虚をつかれて笑っちゃうんだけど、その後も唐突にこの二人が絡みだす。博士がまるで意味もなく唐突に彼女を賛美して、和服をぐいと引いてオッパイ出して、彼女を卓の上に押し倒す。足袋の白さも何だかエロ。この女房はまさに生身の女そのものの色香で、博士はこの女房に心底ホレているから、レプリカントなんかに堕とされるとは思ってもみなかったのだ。
アイデンティティなんてそんなことなーんにも悩んでない、アッケラカンとセックスを楽しむ女レプリカントを不憫に思って博士に引き合わせたはずのこの男レプリカント、博士が彼女にアヘアヘと陥落させられ、新型レプリカントは失敗だった、みたいなことを言うのを聞いて愕然とする。こうしてただでさえグラグラだった男レプリカントのアイデンティティはがらがらと崩れ去ってゆく……気の毒に。

博士は生身の女にこだわっていた自分を否定し、そして人間的レプリカントをも否定する。そろって聞き耳を立てていた女房と男レプリカント。女房の方は割とアッサリと聞き流している。しかしもう男レプリカントは呆然自失である。うーむここもまた女性上位。でもそれって、“人間的”であることが押し出されている男とそうではない女、という分け方をしているような気もするわけでさ。男にとって永遠に判らない女、みたいな。それは女にとってだってそうな筈なんだけど、そういえばそれってあんまり言わないな……たとえそうでも、女はそんなこと気にもとめてないということかしらん。

こうして書いてみると何だか面白いのに……何かノレないのだ、ゴメン！★★☆☆☆

変態未亡人　喪服を乱して
２００３年 59分日本カラー
監督：山﨑邦紀　脚本：山﨑邦紀
撮影：小山田勝治　音楽：中空龍
出演：川瀬有希子　里見瑤子　佐々木基子　柳東史　平川直大　なかみつせいじ

２００４／５／25／火劇場（渋谷アップリンクファクトリー／２００３ＰＩＮＫ　ＦＩＬＭ　ＡＲＣＨＩＶＥＳ）
この日は二本ともこの山﨑監督の作品。で、山﨑監督作品というのは初見だったのだけど……うーん、私はどーも笑えない。つーか、別に笑わなくてもいいんだけど、あまりにも周囲が爆笑だったもんだからアセってしまった。え？え？これそんなに笑えるの？可笑しいの？と焦りまくる私。
二本ともかなり哲学的な匂いがするのよ。その哲学と、何たってピンクだからそのギャップがギャグになる、ということなんだけど、それは私には高度なのか？？前日観た、バカバカしい「痴漢電車　快感！桃尻タッチ」はもんのすごくウケたんだけどなあ。
いや、バカバカしいという点ではこの山崎作品だって充分にバカバカしいんだけどね、確かに。まあつまり……私とは相性が良くないのかなあ。

でもま、二本のうちどちらかといえば、こっち。私が学生時代に勉強してたことに何となくひっかかってくるのがツボといえばツボだったから。それは神秘の女陰（ほと）パワーである。い、いや、ホントにそんなのがあったわけじゃないけど（汗）。大地震による津波を、女たちがすそまくって止めたって？「確かに女のまたぐらじゃ、表の歴史には出てこないわね」なあんて言ってるけどさあ……。まあでも確かに日本の古典の古典を探ると、原始の源としてそういうエロが語られているじゃない。古典の古典はそう……現代の文学よりびっくりするほどアケスケで、私はそういうのをミョーに喜んで拾っていた記憶がある（笑）。だからそんなのを思い出しちゃったのね。
巫女さんの里見瑤子のソコから、彼女が気持ちよくなるとパアーッ！と光があふれてくる。で、その光は人々を癒す。反対にレイプまがいのことなんかしちゃうと、怒りの光で相手の男をインポにしちゃう。で、彼女とセラピストの女医さんは、この女陰パワーのことを歴史的にとか科学的にとか大真面目に論じているんである。はあ……。

おっと、それは物語も佳境になってからの話だったわ。始まりはこう。あ、始まりのシュールさは結構好きだったな。それはポストの脇に男がぼーっと立っている。彼は「自分はいてもいなくてもいい存在、まるでポストみたいに」そんなことをモノローグしている。そこに喪服の女がやってくる。彼女は手紙をポストではなく、その横にいた彼の口元に差し出してくる。「ポストかと思った」
そして彼を誘う。「私、ヤリマンなの」と。
ヤリマンは別として、この男とポストの描写のシュールな哲学っぽさは、結構好き。あのね、この後も哲学は満載なの。セラピストの女医はずーっとカフカの「変身」を朗読し続けてるし。でもそれが私の中ではどーもスベっていくんだけど、これは好きだったな。あともうひとつ。喪服の女はダンナが死んでから一年もたつのにまだそんなカッコしているのね。一緒に住んでる義弟が「兄さんが死んだのがショックなのは判るけど……」と言うのに返して「このカッコしてるとやたらとモテるのよ」とあっけらかんと返す。これは哲学じゃないって？いや、これもちょっとした哲学のような気がするのよ。

義弟はヤバイところからの多額の借金を抱えてて、コワい男が取り立てにやってくる。義姉がそのカラダで利子分はチャラにしてやっている。この取り立ての男、コワモテで思いっきり脅すくせに、彼女とのセックスでは鉄棒にくくりつけられてＭになり、もだえまくるの。アホや……。
まあ、そう。この喪服の女は、いつでもＳである。あのポストの男もいたぶりまくる。その部屋にはＳＭ器具がいっぱい。訪れた友人の巫女さんは「さすが、ヤリマンの部屋ね」と感心する。友人に対する言葉か……。
えっとね、つまりこの義弟は義姉さんにホレてて、だからいろんな男とヤリまくる彼女を心配してこの巫女さんに相談するわけ。この義弟も何だかなー。何か心理的トラウマにとらわれてるのかしんないけど、時々発作みたいにほっぺた抑えてカクカクしちゃうの。ちょっと面白いけどね。大丈夫かあー？

友人を心配してやってくる巫女さんなんだけど、ヤリマン哲学をぶちあげる彼女を説得することは出来ない。
うーん、このヤリマン哲学が。彼女はダンナが死んだ後、雑踏の中でふと考えたんだって。無数の男たちがこっちに向かって歩いてくる。みんなチ○コをぶら下げてる。いや、チ○コが歩いているんだって。皆チ○コをぶらさげてて、皆マ○コを持っている。……以下省略。
……まあ、哲学だけど。でもやたらとチ○コ、マ○コと連呼されると、いくらピンクでも何かちょっと、引くわね。それでなんでヤリマンになるのかよう判らんが、まあつまり自分の存在意義を究極の形で見つけたということなのかなあ。

セラピストの女医さんによって、自分の女陰パワーを改めて認識した巫女さんは、この友人を立ち直らせようと決心する。その方法がね、その方法が……あのう、レズってますけど。で、巫女さんの女陰パワー発射！喪服の彼女はその光にすっかり改心（ええー？）。でもそれは「女同士でもいいのね」そういうことで決着しちゃうのお？

ポストの男はまさに、そのチ○コによって“発見”されたわけであって……改心した彼女にもう見つけられることはない。待ち続け待ち続け、そしてその姿は風に消え去ってゆく。
うーん、何か、ノレない。哲学と神秘でつながってはいるものの何かバラけてて、今ひとつ中心に向かって収斂していく集中力を感じないせいかな。★★★☆☆

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