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「え」


2010年鑑賞作品

エッチな襦袢 濡れ狂う太もも
2009年 分 日本 カラー
監督:池島ゆたか 脚本:後藤大輔
撮影:長谷川卓也 音楽:大場一魅
出演:日高ゆりあ 真咲南朋 上原優 野村貴浩 なかみつせいじ 柳東史


2010/5/16/日 劇場(テアトル新宿/第22回ピンク大賞AN)
さすがミスターピンクと言われるだけの量産監督だけあって、池島作品の安定感は相変わらずさすがやなあ、と思う。観ていて全然ハラハラしない、ダレない、ブレない、揺るぎない。とても安心感がある。
勿論、こうした量産しているからこそ、その中にはトンでもない作品もあったりし、過去にも大いに驚かされたりもしたのだけれど、本作はほおんとに安心して見られたなあ。映画とはかくあるべきものヨというのを、余裕で示しているような感じがあった。

ヒロインを任された日高ゆりあ嬢がまた、安定感バツグンなんだよね。彼女は正直、そんなにお顔立ちのいい女優さんではないと思うんだけれど、コメディエンヌとしての才能を感じるのよね。
コミカルな台詞やコメディ演技が、与えられている感がなくて、とてもなじんでて、歌うようにしっくりくるんだよなあ。……そんなとこ、なんかちょっと由美香さんを思い出させるところがあるんだよね。
私だけかなあ?そんなこと思うの。でも、ホラ、おっぱいがちっちゃいところも似てるし(爆)。

そうそう、それこそそれをネタにしちゃってるのよ。彼女は行きつけのスナックで寄せた胸元をあらわにして「もお〜ハタチ過ぎてから急におっぱいおっきくなっちゃってー」などとブリブリ言ってオッチャンたちをメロメロにさせるのね。
ボインボインと言って親指で押したり(拇印だわな)、おっぱいはおとうちゃんのためにあるんやないんやで〜という、あの月亭 可朝の名ソングを歌ったりという、いかにもオヤジを喜ばせる小ネタまで駆使してさ。
でもね、ベッドインする場面でウキウキとブラを外すと、その下から寄せに寄せたヌーブラが!これには思わず噴き出しちゃったなあ!そして彼にウソを告白する時「私、おっぱいちっちゃいの」見れば判るって!

その彼、というのは、今回男優賞をとった野村高浩氏。ほんの少ししかピンクを観ていない私でも、彼は結構観ている覚えがある。あ、そうかあ、「姉妹OL 抱きしめたい」でデビューなら、ホントに結構前から見ているんだ。
彼はその両方の八重歯が本当に印象的だよね。だからバカっぽかったり子供っぽかったりする、軽い役柄がハマるのだろう……本作もまさにそうだし、ラストのいいシーンは別の役者(だよね?)に持ってかれてるぐらいだしさ。
でも今回のPGのベストテン号の写真に使われている、八重歯の隠れたアンニュイな表情の彼は、全然印象が違ってちょっとオッと思った。こういうイメージでもきっと何本も演じているのだろうなあ。ちょっと、興味をひかれる。

で、そんな彼の役柄は、すぐお腹を下す弱気な取り立て屋である。なんたって本作のシナリオタイトルが「嘘つき女と下痢男」だってんだからインパクト大である。
元は高校教師であったという彼は、どう堕ちたのか今はヤクザ、間では行かないな、せいぜいチンピラといったところで借金の取り立てをしている。
しかしお腹がピーゴロゴロと言っちゃって、ちょっと待ってろ!と内股で階段を駆け上がっていく時、なんとまあ取り立て回って500万も入ったセカンドバッグを置いてっちゃって、その取り立ててた相手に当然、持っていかれてしまうのであった。

これはヤバイ、足におもりをつけられて東京湾にドボンだ!と青くなった彼は、何とか200万までは都合をつけるものの、あとの300万がどうしても集まらない。
思い余って元カノに電話をするも、和風デリヘル嬢になっていたその元カノに四方字固め(フェラしながら足で乳首をこちょこちょやる……って、あーもう、書いてるだけでハズかしいわ!)をやられてすっかり昇天し、金を借りるどころかまた呼んでネというメモを残されてトンズラされてしまったんであった。

すっかりヘコんだ彼がバーで出会ったのが、ヒロイン、日高ゆりあ演じる愛子なんである。二人は意気投合し、ホテルでエッチしちゃう。
去り際彼は、いくらか置いていこうか、とありもしない見得をはろうとするも、その時彼女は何を思ったか、私、お嬢様だもん、おこずかいいっぱいもらってるから、などと断わる。
彼もまた何を思ったのか、オレも成城のボンボンだから、などとウソをつく。
この時点でお互いに惹かれていたから、自らを繕うためについたウソだったのか、はたまた今の自分の哀れさを人に知られたくない故のウソだったのか……。
次に再会した時、お嬢様からなら300万を引っ張れると考えた彼の更なるウソに、彼の結婚をちらつかせた甘い言葉にぐらついてしまった彼女は、コツコツ貯めたなけなしの300万を差し出す決意をしてしまうんであった……。

そう、彼女はお嬢様なんかじゃない、それどころか年齢も「……3?」と三つ指を立てて、人からは23歳だと思われるように仕向けているけれど、本当は33歳なんである。日高ゆりあ嬢が33歳のハズはないが(26歳だよ、まだ……23ぐらいのサバはおかしくないわな)、しかも子持ちで夫に先立たれているという女を、見事なリアリティを持って演じているのが凄い。 確かに見ようによっちゃ見えなくもないかも……(爆)。

彼女はね、何かというとドラえもんを持ち出すんだよね。クーラーもついていないボロアパート(とも呼べない、せいぜいコーポみたいな……)でスリップ姿であぐらをかいている彼女は、路地から入ってきた新聞勧誘に「(クーラーがないのは)難病で、皮膚が乾燥すると死んでしまうの」とか、「(新聞をとらないのは)私、活字を読むと目が爆発してしまうの!」とかムチャムチャなことを言うんである。
しかしこの時の、そんなムチャな日高ゆりあは実にサイコーで、まさに歌うようにホラをふいている様が実に達者でさ!

で、活字を読むと……とか言っていながら、ドラえもんが全巻揃えてあるのね。それを突っ込まれると、「弟の形見なの。ドラえもんを読みながらバイクを飛ばしたりするから」
いくらなんでもこれもジョークだと思って笑って見ていたら、弟の部分が夫に変わっただけで、本当だってあたりがスゴいんである。
んでもって、その夫との間に出来たこましゃくれた息子は、イケメンのお父さんが出来たらどうする?とハシャいでいるお母さんに「そんな夢見るより、地道に働いた方がいいと思うよ」などと切り返すもんだからこれまた噴き出しちゃうんだけれど……。
でも後に電話で「お母さんが幸せになるならいいと思う」などと言い直すんだから、泣かせるんである!!

勿論、そのイケメンのお父さんってのが、彼、幸之助(あ、役名言ってなかった)。チ○ポに大きなイボがあるのが特徴というあたりはいかにもピンクらしい(ボカシでも判るあたりがね(爆))。
でもラスト、実に1年を経て再会する二人、彼がヤクザのアニキにボコボコにされて顔は変形し、一年の間に身体を駆使して働いて金を貯めたってことでたくましくなり、ってことで、つまり、彼を彼と証明させるものは、ジャイアンのナゾナゾと、何よりそのイボチ○ポだってところがね、ピンクの要素を上手く使ってて、泣き笑いさせるんである。

そうそう、だって愛子も幸之助の元カノと同じ、和風デリヘル嬢なんだもん。だから同じワザを使うから、彼があれっ?てな顔をする場面も可笑しいのよね。
でさ、愛子に借金を申し出るのにまあ壮大なウソをついてさ、彼の方が彼女よりよっぽどウソつき男でさ、会社設立のためだとか、親には見得があるから言えないとか、結婚して幸せになろうとか、まー、嘘八百これでもかと並べ立てるのだ。

でも愛子は……信じちゃうのだ。親一人子一人、貧しい生活の中で身体を張ってこつこつ貯めた虎の子の300万、彼に差し出す決意をしてしまう。 それは決して、お金持ちの息子だと信じていた彼と結婚して、玉の輿に乗ろうという気持ちではなかったと思う。なんかね……私、彼女はどこかで感づいているようなところがあったんじゃないかなあ、とも思うのだ。
いや、それはうがちすぎだろうか、ヤハリ。ただ、彼の広げる大風呂敷がでかくなればなるほど、そうとは知らずとも自分のつまらない嘘がいたたまれなくなったのは事実、だろうなあ。

だから通帳を差し出す時、彼女は全てを話す決心をしたんだけれど、思いがけずそこに邪魔が入る。
彼のチンピラアニキが登場、なんとご都合主義な感じには、幸之助の元カノであり愛子の同僚のデリヘル嬢の、そのお兄ちゃんだったという……ちょっとありえないけど(汗)。でも、二人のウソが一気にバレるのに、これ以上のシチュエイションは確かにないかもなあ。

愛子がね、なぜドラえもんが好きなのかっていうのがね、それはもともとダンナが好きだったっていうのもあるだろうけれど、その中で彼女が好きなのはジャイアンだっていうんだよね。実はジャイアンは優しいんだよ、妹思いだし、と。

そして何よりイイのは、チンピラアニキにボコボコにされて、更にお腹もピーとなってトイレに閉じこもった彼の、そのドアの外で彼女が独白するシーン。この通帳がどこでもドアだったのだと、ここを通過しなければその先に出て行けないと(ちょっとニュアンス違ったかも)。
つまりさ、それを彼に渡そうと思ったのは、玉の輿とかそんなんじゃなくて、ここから先に行こうっていう、決意だったんだよね。
そして……なんとまあ、ファンタジック。まるで彼女の言葉が魔法の呪文だったかのように、トイレの中から彼の姿が忽然と消えてしまうのだ。

出会った時と同じように、バーでオッチャン相手におっぱいネタを披露している愛子。そう、あの時と同じように、横顔を隠すようにして座っている男。
もう閉店という時、彼がナゾナゾを仕掛けてくる。「東京タワーより高く飛べる方法は?」愛子はハッとした顔をして「その場でジャンプすること。だって、東京タワーは飛べないから」
でも顔を向けたその男は、愛子が思っていた人とはまるで違う顔で、からかわないで!と激昂するも……でも、でも、それはやはりあのバカで愚かな、でも愛しい幸之助なのだ!

いやー、なんかザ・ウェルメイドだった。この筋を追ってしまうと全く物語に関係ない、バーのマスターを演じるなかみつせいじ氏の怪演っぷりにさっぱり触れられないんだけれど(爆)。
常連客の女に殆んどゴーカンまがいに押し切られて結婚しちゃってさ、カウンターの下でイイことされちゃって、幸之助がドアを開けて入ってくると、快感の絶叫を懸命に受け答えに変えようとするのにはもう大爆笑!ほおんと、物語の筋には関係なのに(爆爆)食いまくりだって! ★★★★☆


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