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「へ」


2016年鑑賞作品

変態だ
2015年 76分 日本 カラー
監督:安齋肇 脚本:みうらじゅん 松久淳
撮影:角野広和 音楽:前野健太 小野瀬雅生 サワサキヨシヒロ 梅津和時
出演:前野健太 月船さらら 白石茉莉奈 奥野瑛太 信江勇 Shige 玉手峰人 山本圭祐 ウクレレえいじ 田口かすみ 岸波紗世子 宮藤官九郎 市川しんぺー 星野恵亮 桜井秀俊

2016/12/15/木 劇場(新宿ピカデリー)
完全にタイトル買い。勝手にナンセンスバカな映画を想像して行ったので、若干の肩透かしを食らう。惹句としては“サブカル界を代表する二人が仕掛けた青春ロックポルノムービー”ということらしいので、これが案外真剣なのかもしれないと思ったりもするが、いや、ナンセンスバカなつもりで作っているのかもしれないとクライマックスのハリボテ熊との対決で思い、でもそれはヤハリ単に予算の問題かな……と後戻りしたりする。
あああ、まあつまりつまり、私はコレをナンセンスバカな映画として観たかった、勝手な期待をしていた。だって、ポスターの、黒皮パンツに亀甲縛りのゆるんだ体形の男、そりゃもうそんな妄想を掻き立てるじゃないですか!!
でも確かに、雪山でSMプレイをするってんだから、やっぱりナンセンスバカなのかなあ。芝居がマジ、ガチマジのせいかなあ。いや、時にコメディというものは、芝居はきっちりマジであることが大事だったりするからそれは……いやいや、コメディではない?判んない!!

……だからこれは、ロックポルノムービー、ということらしいので。いや、青春ロックポルノムービー、か。みうらじゅん氏が常に青春というものを重要なテーマとしているってことは……確かに聞いたことがあったような。
みうらじゅん氏はどこかでアンテナを共有する誰かと組んで面白いことをやろうとする、そんな人のように思える。一人でも十分個性的だけれど、何か、ユニットを組んで立ち上げる、みたいなイメージ。
田口トモロヲ、いとうせいこう、そして今回の監督さんもまた、そういうことなのだろう。そしてそれはいつでも“サブカル界を代表する二人”なのだ。音楽、映画、伝統文化、そう書くと何かとってもオエライ感じに思えるけど、その外れたところをこすってる、みたいな独特さ。

本作の主演のお名前に、聞き覚えがあったことも足を運んだ理由の一つだったけれど、思い出せないままに観終わってしまった。前野健太氏。後から「ライブテープ」の人かあ……と判って少々げんなりする。ごめんなさい、失礼ね。いやあれは、映画の作り方としてのアレだと思うので(爆)。そのせいであれ以来、松江監督の映画には二の足踏む様になっちゃったし(爆爆)。
まあとにかく、「ライブテープ」のあの人かあ、という、懐かしいような苦いような気持ち、なんである。

劇中、彼は大学時代のロック部から夢を諦めきれず、細々としたミュージシャン生活を送っている、という役柄である。彼自身がどの程度の位置にいらっしゃるミュージシャン様なのか判らないので(……どうも、おどおどしちゃうな(汗))これが、これがお似合いとかうっかり言えないが(爆)。
売れない俳優や売れない芸人以上に売れないミュージシャン事情というのは未知なる世界なもんだから。いや、売れないなんて、言ってないか、別に(自爆)。

劇中、前野氏演じる“不合格通知”君は結婚し、子供ももうけて幸せな生活を送っていて、他にバイトをしているような様子もないのだから、ミュージシャンというのは、ある程度コアなファンがつけば、顧客相手の自営業のようなものなんだから、案外やっていけるということなのかもしれない。
いや、前野健太氏はきっと、もっとずっと素晴らしいミュージシャンなのだろう、知らなくてすみません(爆)。

物語の冒頭、後にピンの不合格通知君となる彼は、“二浪して二流大学に入学”する。世の中には誰もが知る一流大学のほかに二流三流と呼ばれる大学があまたある、のだろう。
でもさ、だからといって悪い学校とは限らないと思うんだけどなあ……と、二流三流と言われるだろうが、自分の大学がとっても好きだった私は思ったり(爆)。“東京に出るためだけに”とこういう言い方をするのが、私はあんまり好きじゃないの。ひがみ&マジメさんなの(爆)。

そんなひがみ&マジメさんにとっては、大学生活はバンド生活のためだけにある、という彼らの“青春”に、まあありがちよね、ゲーノー関係の人って、大抵そういうことだったんだろうと思いながらも、結構イラッとするものを感じるんである。その時点でマジメさん、この映画にノレない、失格!!というところだろうけれど。
入学式に遅刻した彼が、チビだけどやたらダイナマイトボディなアフロ先輩に引きずり込まれたのが、大学のロック研究会。いかにもタバコ臭そうな狭い部室で、おっさんくさい先輩たちに取り囲まれて、モテなさそうなギャーン!なロックを奏でる。

それでもそれが彼にとって唯一の生きがい。仙人のような部長が逮捕され(あれは何?大麻でも育ててた?)、アフロ先輩が就職で、彼にボーカルのお鉢が回ってくる。
モテるためにはラブバラード、と、方向転換したことで彼の人生は変わる。先輩たちは型どおり就職したものの、彼だけが“不合格通知”をソロで引き継ぎ、ミュージシャン人生。何年後かにライブハウスに見に来てくれた先輩にカラまれる。お前がミュージシャンになるなんてな、あのカラスみたいなファンとはまだ切れてないのか。不倫だろうが!って。

かなーりイケてない風貌の主人公だったので、結婚!不倫!!ってことでえーっと思う。そのすぐ後に、めちゃくちゃおっぱいがデカい、安めぐみが脱いじゃったみたいな癒し系エロ妻と、エロエロキスを執拗に連発するセックス場面を、照れちゃうぐらいロマンティックに接写し続けるので、キャーッ!!と思う。いや、今更何言ってんだ(爆)。
でもね、この場面だけが、カラーなのさ。後から、妻が登場したらカラーになるのかな、と思って待ってたりしたんだけど、ほんっとに、このエロでハッピーなセックスのところだけだった。
寝てもボリュームが減じない!おっぱい、恥ずかしげに感じてるキュートなロリ顔、ほんのりかぶさるぼかし!!うーむ、今更エロにドキドキするのもアレだが、一歩間違えればブリブリになりそうなこの若妻がかなりカワイイので、血迷いそうになった。いや、一歩どころか充分ブリブリだわな!

そして赤ちゃんまでもうけて幸せいっぱいなのに、コイツはSM女王様の薫子と切れていない。もともとはこの奥さんも愛人の薫子も、彼のファン。一体どうやったらこんな逆方向同士と恋愛関係に陥れるのか。
いや、薫子とは恋愛関係だったかどうかは……。モノローグで、「このカラスのような女に、自分のMを見出されてしまった」みたいなことを言ってて、つまり性癖をさらけ出せる相手であって愛はない、ということ?

……実はこのあたりにこの映画の真実があったのか。だって雪山でのクライマックスで、女王様だから今までは決して口にしなかったこと……なぜ私じゃなかったのかという言葉を薫子は絞り出しだのだから。
いつでも女王様として優位に立って、彼を従わせていた筈が、一番芯の部分で、彼女こそが奴隷だったということで。

てな具合でうっかり先走るが(爆)。そのクライマックスが訪れる問題の場所が、もー、めっちゃ雪深い山の奥で。スキーリゾートとかかと思ったら、ほんっとうに雪山の中の、村の憩いのステージみたいな場所で、ラーメンが最初から売り切れてる出店が一軒、集まってくるのはせいぜい10数人。だって座席が雪で埋もれてるんだもの!これ、芸人さんがよく言う“営業”よりキツい!
一緒に出演するミュージシャンの中に、不合格通知さんのファンで、影響されてこの道に進んだんです!!という女の子二人組がいる。その名も“現金書留”。ネーミングセンスも影響されたのか……。

彼女たちの出現によって、“不合格通知”君が意外にそれなりなのか……と思いはするけれど、マネージャーという名目で同行してじっくりSMプレイすることしか頭にない薫子がさえぎっちゃうから、まあなんともね(爆)。
そして極寒の地獄ステージに立った不合格通知君は、こっそり足を運んだ妻の姿を客席に見つけて動揺、一曲歌っただけでステージを降り、「鉢合わせする訳にはいかない」と薫子の手を引っ張って、どんどん、雪山の奥へと入っていくんである。

動揺していたのか、それともただ自暴自棄なのか、どこかで雪山の中でSMプレイという頭が残っていたのか。
こんなハズじゃなかった、私と心中するつもりなのか、奥さんとしろ!と怒鳴り散らしているうちに、自分が奥さんになれない、奥さんに負けてる本音が出てくる薫子、演じるさらら様が、彼女こそが一番ガチにマジ芝居なので、なんか深刻になっちゃった感は、あったかなあ。
雪山でぶるぶる震えながら、結果的には露出バッチリの女王様ルックで、自分で亀甲縛りした(!)彼をいたぶりまくり、そして泣きながら……バックで彼のナニにまたがる、あのほのかなぼかしの哀しさよ。

そして失神した後に目覚めた彼と、ハリボテ熊との見るに堪えない(爆)バトルがあり、彼女はどこに消えたのかと思ったら、そう……ここもカラーだったのだ。ほんの、数十秒ほどのカラー。
熊に食い荒らされたのであろうと思われる、内臓を無残にあらわにして、でもやけに穏やかな顔で眠ったようにこと切れている女王様。カラーにした場面に何の意味を持たせたのか。幸せか、不幸か、あるいはグロか。

赤ちゃんはいたハズだけど、泣き声とくるくる回るおもちゃが吊り下げられたベビーベッドだけ、というのも、この幸せ家族が妄想チックに思えなくもなく。そこまで考えるのは、ちょっと親切すぎる深読みかな??
だってさ、ちょっとガッカリ感は否めなかったもんなあ。ゲストのクドカンが豪華すぎるよ。ステージの共演者、ウクレレえいじはほどよい感じで素敵だったけど(笑)。★★☆☆☆


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