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「や」


2018年鑑賞作品

やっちゃ場の女
1962年 91分 日本 カラー
監督:木村恵吾 脚本:田口耕
撮影:宗川信夫 音楽:小川寛興
出演:若尾文子 叶順子 手塚央 信欣三 清川玉枝 藤巻潤 宇津井健 根上淳 村田知栄子 潮万太郎 水戸光子 穂高のり子 紺野ユカ 大山健二 森矢雄二 吉葉司郎 飛田喜佐夫 小笠原まり子 竹里光子 長谷川峯子 村田扶実子 高村栄一 武江義雄 酒井三郎 杉森麟 原田玄 谷謙一 小山内淳 穂積明 楠よし子 中田勉 藍三千子


2018/4/4/水 劇場(神保町シアター)
築地のやっちゃ場が舞台となっていると知り、飛び上がって観に行く。青果市場は数年前にエアコン完備の設備に建て替えられて、魚市場だけが古く取り残されているので、恐らくこの当時はその古いままの状態だったろうが、何より心躍ったのは俯瞰で示される場内への入り口というか。
〇号館、という数字の入った名前で9棟、組合やなんかが入っている建物が立ち並んでいるんだけれど、まーそれが、当たり前っちゃ当たり前なんだけど、今とおんなじ!手前にある秤屋さんも今もある!ストライプのひさしが張り出している感じもおんなじ!(今ボロボロだけど!)ポストの位置もおんなじ!ただし今は角型ポストなのが、丸ポスト!!うわー!!

まさかあのひさしの一角に、立ち飲みで一杯飲ませる(当然、朝のうちだ)場所があったなんて知らなかった。物語の最後、気合をつけるためにヒロインのゆき子はコップ酒を一杯頼む。はいよ!とドン!と置かれたなみなみのコップからこぼれる酒。これは、天丼屋でドン!と置かれるおみおつけが同じように無造作にこぼれちゃうのとおんなじ。
そう、築地はそんな場所……なのは、今はそうでもないかもしれないけど。ぐいっとあおって、「小田新ね」と言い捨てていくゆき子、つまり、ツケといてということだろう、カッコイー。この時の彼女の心の中にはさざなみが立っているが、でもこの喧騒の中、彼女は小田新の主人として胸を張って生きていかねばらならぬのだっ。

と、ハイ、終わり、となりそうになった(爆)。築地の物語とはいえ、その現場が出てくるのはそう多くない。あの俯瞰の図とかセリの場面とか、今はなき佃の渡し船とかはもちろんリアルだけれど、恐らく店先の様子はセットだと思われるし(違うかな?)。
だっていきなり、ゆき子のお母さん、死んじゃうんだもの。もともと血圧が高く、この日も朝から店には出ていなかった。ゆき子が女だてらにテキパキ奉公人(この言い方も当時ならではよね。でも今でも番頭さんとか言うかもしれない、築地では)に指図し、強気でイイものを競り落とす。

お母さんはそれでも電話で娘と密に連絡を取り、「あら、もう切っちゃったよ。あの子はいつも一方通行なんだから」とお母さんは言うけれどもいや何、そのせっかちで気が強くて、「うちは売掛はやんないよ!現金商売だからね!!」(これ大事よねー)と跳ねのけちゃう強さは、実はソックリなんである。
そして血圧高いのに娘に隠れてコッソリ店先で一升瓶を傾けて酒飲んじゃって、倒れちゃってそのままお陀仏になってしまう。血圧の高い母親を案じていた娘に隠れて、があだになった形。でも先述したように、物語の最後にはゆき子もぐい、とコップ酒をあおるんだから、やっぱり親子なのだ。この築地では、それぐらいの勢いがなければやっていけないのだ。

前半は、突然死んでしまったお母さんの通夜がばたばたと営まれるところにかなりの尺が割かれ、そこで人間関係もサクサクと明かされていく。ここにはいないお父さんを呼びに行く。女の元に出奔してしまったんである。ゆき子は娘らしい潔癖さでそんな父親を許せないでいる。
物語も後半になって、いや実は、お母さんは三番目の子供を出産した時に難産で、手術して「女でなくなった」から、仕方なかったんだと、納得していたんだと、でも周りがうるさくて父親は出て行かざるを得なかったんだと、そんな説明がおばさん(父親の妹)からなされるのだが、まーこれは、かなり微妙な話である。

それこそ当時ならばすんなりと、ああそうなんだ、父親もその恋人も悪い訳じゃなかったのね、みたいに受け取られたのかもしれんが、どど、どうなんだろう。そもそも、恐らく子宮摘出ということが「女でなくなった」という表現になったのだろうが、それ自体今はNGだよねー。子宮がなくたってセックスは出来るもん(爆)。
子供が産めないという意味合いだとしたら、恋人のお時さんはおんなじぐらいおばちゃんな訳だしさ……。もう、すんなりと、他に好きな人が出来ちゃったから、と言う訳にはいかないんだろうか。いや、そういうことだと思ったから、ゆき子は父親とお時さんが許せなかった訳なんだけれど。

おばさんからは、こんな時だから何も言うなと言われたのに、お時さんと対峙した途端にあなたのせいで、あれ以来お父さんに会わずに母は一人で死んでいきました、とか言うから結構ビックリする。まぁー、それこそ時代というものなのだろうなあ。お時さんは当然平身低頭である。
お父さんはその時釣り旅行に出かけていて、帰ってきても通夜には顔を出さない。出せないというか、ゆき子と対峙して、俺には敷居が高い。お前たちからお父さんはいないものと言われて、その通りだと思っているから、と穏やかに言うんである。
ゆき子は憤るんだけど、彼女の言うことは、やはり矛盾が多いんだよね。あんな人には会いたくない、来てほしくないと言いながら、こんな時だからとか言うし、普段はしっかり者のチャキチャキ娘なのにメチャクチャなの。それが娘の複雑な心理というところだろうか。

奉公人の精一という青年、これが恋のさや当てである。ゆき子を演じる若尾文子に比すれば、藤巻潤はかなり年若に見えるが、これは若尾文子のカンロクのせいだろうか??妹の叶順子演じる早苗との方がしっくりと年恰好が似合っている。
実際、早苗は精一にご執心である。てゆーか、BGであるこの奔放な妹は、私が誘ったんだから来てよ、そんなことほっぽってさ、いいじゃないの!!みたいな、もーすんごい、自分に自信満々のお嬢さんなの。ハッキリ言って家でも甘やかされてるしさ……。

いや、むしろ甘やかされていないのはゆき子一人で、ゆき子自身も早苗や弟の一郎に口うるさくはするものの、おこずかいを渡したりなんだりと、甘やかしちゃってる。
お母さんがいる頃から、ゆき子も第二の母みたいな、自分自身が小田新のあととりだからという自覚があったせいなのか、二人とはきょうだいというより、完全に保護者って感じなのだ。だから、早苗が精一のことが好きだと判った時、姉ならば女として闘ったかもしれないけれど……。

しっかしこの早苗という女の子はまー、自分勝手っつーかなんつーか。タルイから遅刻するぐらいヘーキみたいな感じで、ファッションショーかと思うようなファッショナブルなワンピースに毎日靴を女中さんに指示して持ってこさせて、……そらこーさせてしまったお母さんなりゆき子が良くなかったと思う(爆)。
一郎もかなりの甘やかされっぷりだとは思うが、これぐらいの年頃の男の子はこんなもんだ、と思っちゃうこと自体、やはり男尊女卑の感覚にマヒしちゃってるんだろーか。

早苗はゆき子と精一のある場面を見てしまう。隅田川の花火の日である。どんな場面を見てしまったのかは、明確には示されない。その場面を見てしまった早苗がヤケを起こし、以前からモーションかけてきていた上司とねんごろになってしまう。
自分から「ぐでんぐでんに酔っぱらってやる!!」とか言ってたくせに、ホテルで目を覚ますと「ひどいわ、酔わせてこんな……」とか取り乱して泣きだすのにはアゼンとするんである。こらこらこら、キミが自分でそう宣言したんだろーが。明らかにこの上司がキミと何をしたがってたくらい、判ってたじゃないのさ。

でも実際、この上司が言うように「意外だったな、君は百戦錬磨だと思ってた」と観客である私も思ってた……この台詞の意味はつまり、処女だったと、そーゆーことだろーな。なかなかに生々しい台詞だ……。
んでもってもう穢れた体になってしまったと思い込んだ早苗は、今まで寄り付きもしなかった父親の家を訪れ、目を盗んで睡眠薬自殺を図ってしまう。あのクスリはお時さんが、あの通夜の夜、冗談交じりに「あなたが帰ってこなくても、私には行くところがあるんですよ。あの世にね」と薬を見せた、あれだったんじゃないの??と思ったりする。
連絡を受けたゆき子が早苗の元に急行すると、妹から激しく抵抗され、初めてゆき子は彼女の想いを知り、あの場面を見られたことを知り……。でも、何をしてたって、言うんだろう。多分、キスぐらいだったんじゃなかろうかと思う。

ゆき子は見合いをしてるのね。見合い相手は宇津井健!!その見合いに「精ちゃんが判断して」と連れて行ったのは、ゆき子はきっと、止めてほしかったに違いない。
でもさっぱりとした気性で、もう何回もお見合いしてるんですよ、と笑い飛ばす建築技師のこの青年は、とてもイイ感じだった。精一のことを思っていても、ゆき子もまた心の中に残るものがあった。
「私、結婚する。だからあの日のことは、誤解しないでもらいたいの」早苗のために、何気ない感じで精一に言うのに、彼もまた、その想いを言いたいのに言うことができない。

でもゆき子が建築技師に会いに行くと、五回目の見合いでようやく結婚が決まりましたよ、と快活に笑われちゃう。「遅かったのね、私あなたにもらってもらおうと思ってきたのよ」「本当ですか、そりゃ早まったな」その後友達同士になりそうなぐらいの、この大人の男女の快活な会話が好ましい。
宇津井健はこういうイメージなかったなと思う。そして彼が、早まったな、というのは、その、結婚を決めた相手ともうキスしてしまったんですよ、とあっさり言い、二人して笑いあっちゃう、っていうところなんである。

この台詞があったから、ゆき子と精一がナニしてたのは、キスシーンだったんじゃないかと思っちゃうのね。それこそたったキスぐらいで、早苗は自殺未遂をはかり、ゆき子は妹を思って精一への想いを封じ込め、そしてキスで結婚話もくつがえせなくなっちゃう。
最後のそれは笑い話に収めているけれど、それぐらいの重さを、この当時には持ってたのかと。早苗なんてさ、いかにもイケイケな女の子で、スケスケのネグリジェ(てのも今は聞かないよなー)姿からムッチリと出てる太ももがエロ過ぎて、通夜の雑魚寝のシーン、精一がよろめきそうになるとか、めちゃくちゃ生々しいのにさ、キスひとつで……って。

全体の印象は、とにかくくっちゃべって、バンバン進んで、ゆき子がうるさーい!!と何度も叫ぶぐらい、きょうだいも奉公人たちもワイワイ騒いでて。女中さんが隠れてビール飲んでるところにゆき子が帰ってきて慌てるところとか、好きだなぁ。
あの長屋の感じとか、今も築地、佃近辺には少し残ってるけど、ノスタルジックだよね。花火が見渡せる物干し台とかさ。早苗があのネグリジェ姿で精一や弟や奉公人たちとトランプに興じて、弟にプロレス技かけられておパンツあらわになり、奉公人が思わずその股をのぞき込んだところを蹴られるとか、もう爆笑!

個人的にはしみじみ暮らしている、日陰者のお父さんとお時さんに胸を打たれる。早苗をしばらく預かることになってお父さんが「あいつもお前たちの仲間になれたようで嬉しいんだろう」と言うのが心に染みるのだ。
お母さんが死んで、いろいろあって家族の絆は戻って、ゆき子も早苗も一郎も、いわば大人になって、その事情を理解できるようになった。でもお母さんはいないし、でもでも……みたいなさ。★★★★☆


柔らかい檻 ( 疑心乱交 闇夜にうごめく雌尻)
2018年 85分 日本 カラー
監督:竹洞哲也 脚本:当方ボーカル
撮影:創優和 音楽:與語一平
出演:辰巳ゆい 青山はな 黒木歩 竹本泰志 世志男 吉田俊大 山本宗介 森羅万象

2018/9/12/水 劇場(テアトル新宿/レイト)
うーん、ハードボイルド。集められた腕に覚えアリの殺し屋たち。しかも仕事を終わるたび、顔を変えてメンが割れないようにしているという。す、すごい、そんなマンガチックな設定を、めっちゃハードボイルドに進めてく。
毎回顔を変えるなんて、めっちゃお金かかるわ、それだけ凄い大金のかかる大仕事ばかりなのかとか、ヘンなツッコミをしたくなるほど、めちゃめちゃハードボイルドである。

てゆーか、私は頭が悪いので、この犯罪組織の仕事のやり方っつーか、仕切り人がいて、依頼人がいて、なんか横やりが入って、でもどうやら内部に裏切り者がいたらしくて……みたいな構成そのものに、やっべ、なんかどうなってるのかよく判らないよーっ、と焦り出しちまうんである。
そんなに悩むような構成でもなかったのかもしれんが、顔を変えて、前とは違う名前で、でも一緒に仕事をするのは三回目で、初めて仕事をする相手と思っても顔を変えているんだからそのあたりも怪しくて、なんていうことになると、やっべやっべ、顔を変える前のエピソードとかそれぞれに出てきちゃったら、もう私マジ判らなくなるよーっ!とそんなことにもならないのに、すっかり腰が引けてしまうヘタレなんである。

だって冒頭、主人公の松田が恋人らしき女となんかやるせない刹那の別れと、下だけ脱いだセックスをした時に、彼の顔を映さず、そして女は、顔を変えるのかとか、変えたからとか、なんかそんなことをすがるように男に言って、既に私の頭はコンランし、つまり彼女は顔が変わる前から彼の恋人なのか、それともこれから変わることを恐れているのか、そもそも顔が変わるって、なんなん!とこの時点では全然判らなかったから、すっごい身構えて観ちゃったんだよね。

んで、待機しているおっちゃんがいる。凄く不遜なおっちゃんで、最後までそのオーバーアクトに、キャラだと判っていてもイラッとする、というか、ゾワゾワするというか、そーゆー演技は舞台でやってよと思うというか、いや、今どき舞台でもあんな大げさわざとらしい芝居はないっつーか、まぁつまり、私はこのおっちゃんにかなりかき乱されてしまった訳。
してやられたのかもしれない、確かに。松田もこのおっちゃんこそが裏切り者じゃないかと疑ってたし、仲間が次々死んでいく中で、結局は彼を最後までパートナーとして、まぁ利用ではあるけど、選ぶ訳だし。

ヒロインは辰巳ゆい。大体ヒロインは最初から登場と思っていたら、先述したようにまず登場は松田の恋人で、次はラーメン屋を隠れ蓑に暗躍する(それにしても、ドンと置かれたラーメンはマズそうだ……)仕切り人がスカウトしてきたのが、ニーハイブーツがエロい年若い美女で。なんかみんなして重要っぽい感じで出てくるので、どれ、どれがヒロインなのっ、と思っちゃうんである。
まぁそれだけ、色んな女性キャラに重きを置いて描いてくれているということなのだろうが。

とゆーのも、珍しく私には、名前に見覚えがあったのだ。それでなくてもピンク映画は女優の入れ替わりが激しいし、あまり観る機会もないから余計だし、ということで、ほとんどがはじめましての女優さんだったんだけど、彼女の名前に見覚えがあって、そのタイトルも印象的だったから覚えていた。
青春Hリーズの「若きロッテちゃんの悩み」。その面影を探しながら見ていたけれど、思えばあれも7年も前の作品なのだ。実に7年ぶりにスクリーンで対峙した彼女は、頬がふっくらと年相応な感じになっていて、風貌だけでなく芝居もトンがってた7年前と比して、いい意味で熟成され、重厚になっていた。

つまり私が印象深く彼女のことを覚えていたのは、おっぱいが美しかったこともあるが(爆)、芝居が上手かったから、なんだよね。
見ていてハラハラするような台詞回しの女優さんが正直多いピンクの中で(まぁ私が見たのは青春Hだけど)、すんなりとしていた。そして本作の彼女は、じわじわと怖さをにじみ出してくる、怨念ただよう女、だったのだ。

まー、言っちゃえばさ、ここまで裏切り者捜し的なことで盛り上げといて、まぁ、その流れとは関係ないにしても、でも幽霊オチかよ!!という気分は、ちょっとするかなぁ、と思う。まぁつまり、その裏切り者探しの中に突如割り込んできた幽霊譚、という感じである。
取引が突然何者かによって邪魔され、真相が判らないままでは依頼人とはうっり接触をとるのも危ないし、山深い中で携帯もつながらなくて仕切り人との連絡も取れない中、とにかく事態が動くまで待機しようということになって、たまたま通りがかった女を拉致し、その家に身をひそめることになるんである。

女が彼らを案内した家は、一人で暮らしているというには不自然なロッジ。彼女が言うには、保養所なのだがシーズンオフなので管理を任されているという。
家についてから一人なのかと確認するってのも随分のんびりしてるなと思うし、数人が問題なく暮らせる食堂や寝床があるっていうのも、出来すぎている。勿論、この女が外に通報なぞしないよう、監視が張られているのだが、それにこだわるのはあのオーバーアクトおっちゃんのみであり、もうさっそく、いただいちゃってるんである。

ピンクだからさらりと見てしまったが、後に松田が言うように、この異様な状況をさして怖がりもせずに受け入れている彼女がだんだんと不自然に見えてくる。
そう、ピンクだから、さらっと見ちゃうんだよね。レイプなんて、いわゆるピンク要素を満たすためにはフツーなんだもん。それが落とし穴だったというのは、ちょっと新鮮かもしれない。

松田は割とフェミニストで、迷惑をかけてしまった彼女をいたわり、手を出させないから、とかいうが、既に手が出てるし、その後もこのオーバーアクトおっちゃんが暴走していろーんなことしてることに全然気づいてなくて、ついには仲間のニーハイブーツ嬢ちゃんをおっちゃんのレイプの末に死なせちゃうしさ。
この嬢ちゃんもかなりのバックグラウンドがあるようで、顔を変えて、てゆーか、過去回想では、前はかなりおでぶちゃんだったっぽいからもう別人になって、恋人だか夫だか判んないけど、ウラミのある男をブチ殺し、その後、殺し屋稼業に転身。

ナイフを得意とする彼女と、ピストルを振り回すおっちゃんはことあるごとに男たちの挽歌よろしく(たとえが古い)ナイフと銃を突きつけ合うのだが、そのアクションが若干ニブくて、結構ガクッとなる。
アクション映画を見慣れていると、ちょっとしたスピードの鈍さにやっぱりガッカリしちゃうんだよなぁ。

ニーハイ嬢ちゃんは勝機を見出しながら、一度はエロい喘ぎ声を出してこのおっちゃんにヤラせちゃうあたりは、やはりピンクかなぁ、と思う。その美しい太ももで首を絞めて形勢逆転かと思いきや、結局このおっちゃんに殺されてしまうのは残念である。殺し屋同士の腹の探り合いがひとつの見どころだったから、彼女がレイプの先にあっさり死んでしまうのはあまりに惜しい。
もう一人、ひん死の状態で常に逃げたがっていた青年もワケアリ感マンマンではあったが、結局は彼は幽霊女にたぶらかされて、哀れ仲間割れに巻き込まれてしまう。

幽霊女、それが、辰巳ゆい、なんである。あの拉致された女。保養所の管理人の女。ただただ被害者に見えた彼女が、妙に落ち着いていることが松田にとって気にかかり出し、そして松田にとって実はここは、故郷だったから、捨てた故郷だったから、次第に過去があぶりだされてくる。
おにいちゃん、おにいちゃん、とリフレインされる過去の声、ダムに沈められた町。死んでしまった筈の、幼馴染の女の子……。

とはいえ、正直、ちょっと唐突感は残るかなぁ、と思ったりする。だってハードボイルドだったのにさ、みたいな。ひん死の青年が突然、全裸の彼女に乗られて生気を取り戻して一緒に逃げちゃったりするしさ。
えー、恋愛感情も全然なかったじゃん、こーゆーのをピンクだからとしてほしくない気がする、竹洞監督にさ!

だってもう、ラストは、ぐるぐる逃げ出せない、どこに行ってもおにいちゃん、とささやく彼女が先回り。んでもういつのまにやら全裸でセックスだし、時間はもう、てゆーか、最初からもう、彼らはダムの底に沈んでいたのだろう。だから携帯なんて通じる訳ないし、最初からお兄ちゃんが帰ってくるのを手ぐすね引いて待っていて。
あ、でも、松田氏が結局は裏切り者だったという展開だったんだよな、あの恋人とこの先安寧な人生を夢見て、彼はしてはならない裏切りをして、でもそのためではなく、永遠に姿を消した。うーむ、どちらかのテーマにしてほしかった気もしたりして。

すごーく気になったのは、劇中、辰巳ゆい嬢が弾いているピアノ。私が20年前ヤフオクで一目惚れして落札し、実家においてあるピアノにソックリなの!もうボッロボロなのだが、とても愛しい素敵なピアノで、毎回調律さんに苦労してメンテしてもらってる。
ブラウンの木目が美しく、猫足が優雅なアプライトピアノ。ルビンシュタインという今はない掛川の小さなメーカーが作ったピアノ。同じじゃないかと思うのだが、そうだとしたら、かなりレアだと思うのだが!譜面立てのすぐ下に刻印しているメーカー名にカメラが寄るなんて必要は当然ないから確認が出来ず、凄く悔しい、気になる、気になるー!!★★★☆☆


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