home!

「く」


2019年鑑賞作品

クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 失われたひろし
2019年 100分 日本 カラー
監督:橋本昌和 脚本:うえのきみこ 水野宗徳
撮影:梅田俊之 音楽:荒川敏行 松尾早人
声の出演:小林由美子 ならはしみき 森川智之 こおろぎさとみ 木南晴夏 小島よしお ぺこぺこ りゅうちぇる 大塚芳忠 銀河万丈 大塚明夫 渡辺久美子 島崎信長 悠木碧 あいみょん


2019/5/22/水 劇場(TOHOシネマズ錦糸町楽天地)
オトナ帝国を頂点として、原監督によるクレしん劇場版のあまりのクオリティの高さに、その後原監督が退いて以降どうにもピンとこなくて、かなーりしばらくクレしんからは離れていたのだが、なんか今回はやたら評価の高い声が聞こえてくるので……あーっ、なんか我慢できなーい!!と思って足を運んだら……。
うわ、うわうわうわ、良かった……劇場すくまで待ってて……。実際、ゴールデンウィーク時を過ぎても近場の劇場はずっと満席状態で、で、この手の作品って客足が良くても結構ばっさり公開切られるから、見れないかもと思っていたのだが……やはり評価の良さも後押しをしたのかも。こんなに長い間公開されているというのも。

水曜休みになんとかがら空きの劇場に当たることが出来て。だってもう、嗚咽なんだもん。号泣どころじゃない。いやー……参った。
それこそオトナ帝国をちょっと思い出した。結婚や家族というものへの押しつけの価値観に懐疑的な独女の私だが、クレしんを見ると素直に、家族っていいなと思っちゃうのだ。

原作者が亡くなってしまってクレしんも設定だけ残したサザエさん化の道をたどってはいるが、サザエさんが今や望むことのできない大家族形態であるのにくらべて、クレしんの核家族状態はやはり現代社会を映していると思うし、まぁ今時はなかなかみさえのような専業主婦は少なくなってきているにしても、もはや御伽噺となってしまったサザエさんと比べれば、ずっと現代の家族像であり。
だから劇場版で繰り広げられる荒唐無稽な舞台設定を見せられても、やっぱり核がそこにあるから。彼らに素直に家族愛を見せられると、不意打ちのようにカンドーしてしまうんである。

テレビアニメの方は見ていないし、先述のように劇場版からも長らく離れていたので、本当に久しぶりである。私はドンカンなのでしんのすけやひろしの声優さんが替わったのは知ってるが、全く違和感なく見られてしまう。
ルパンがクリカンになった時も世間の評価は散々だったが、私には全然聞き分けられなかったぐらいドンカン。いやー、どこが違うのかと思うぐらいというのはいかにもドンカンだが、でも声優さんってやっぱり凄いと思っちゃう。私の中のしんのすけでありひろしそのまんま。

結果的には家族愛なんだけど、今回に関して言えば、どこかひろしとみさえが恋人同士に戻ったような感がある。それもちょっと新鮮でステキである。
なんたって新婚旅行、なんだもん。みさえが探してきた格安ツアーに、そういえば行ってなかったな、とひろしも乗り気になり、シロまで含めた家族全員での遅まきながらの新婚旅行。

ずーっと見てきたクレしんだけれど、考えてみればしんのすけは5歳、ひまわりは産まれたて(今回、授乳のシーンもあるから余計にそれを感じさせる)なのだから、新婚旅行に行けてなかった、遅まきながら子連れで、と言っても全然違和感ない筋立てなのだよな。
ずーっとずーっと四半世紀以上もしんちゃんは5歳のままだから、そらぁちょっと不思議な気はするが(爆)。

だからね、だから……みさえとひろしは本当に好き合っているんだなぁ、好き合って結婚したんだなぁ、って思って。それはあの大傑作「オトナ帝国」でも恋人同士からの回想で散々泣かされて思い知らされた(爆)ことだったんだけど、今回はなんたって新婚旅行だし、お互いラブラブして観客がハズかしくなるような場面が頭からお尻まで満載でさ。
しんのすけも勿論大活躍なんだけど、今回に関しては彼はワキ役。みさえが主人公であり、愛する夫を奪還する物語にもう、もうもうもう、大号泣、なのだ。

そらね、家族としての愛、夫としての価値、ということを一応は言うよ。一応。しんのすけもひまわりもシロもとーちゃんのためにメッチャ頑張るしね!!
でもやっぱり基本、みさえのひろしへの愛、なのだ。それをくじけかけても奮い立たせて、あの人は私だけの夫、ぜぇっっったいに奪還する!!!と立ち直るみさえに号泣なのだ。

オーストラリア(多分。地名とかかなりあやしげなパロディ)で最初のうちはベタなツアー観光をしていた野原一家。金環日食での記念写真がメインで、タキシードとドレスも用意されていて、なんたってみさえはそのためにダイエットも頑張ったぐらいだから気合が入ってた。
でもまぁ、お決まりのすれ違い。夫婦ゲンカ。ひろしだって遅まきながらの新婚旅行にワクワクしていたから、本意じゃなかった。お互いカン違いにも気づいて、仲直りしようと思った。花束を持って、ミュージカルよろしくみさえの元へと駆けていくひろしが、連れ去られた。

その前に、本作のもう一人、というか、もうひとかたまりの主人公、トレジャーハンターたち、そのうちのヒロイン、木南晴夏嬢がスリリングに声を当てる、しんのすけが言うところの「運の悪いおねえさん」インディジュンコ。
ひろしが狙われるのは、この地のお姫様のお婿さんが献上される時に、お宝が下される、それを世界中のトレジャーハンターが狙っているのだと。それは巨大なエメラルド、らしい。

結果的に巨大なコアラの排泄物なのだが、エメラルドであることは間違いないのかな??ぜってーグレートバリアリーフなのだが、ギャグというより責任追及されないようにパロディ的に言い換えていたり、なかなか苦労のあとが見られるのだが(爆)。
仮面族という現地住民を、フィクションとはいえかなり荒唐無稽に描いているからそのへんは気を使ったんだろうなぁ。

インディジュンコだから、とーぜん、インディジョーンズである。トレジャーハンターというのも、とーぜんである。それ以外にもきっと色々オマージュがあるに違いないが、知識と記憶力とドンカンさ(先述)にかけては右に出る者はいない私なので(汗)そこはカンベンしてください(爆爆)。
インディジョーンズなんてね、クレしん世代の今の親御さんにとっても遠いでしょと思うが、この日、がら空きの劇場に来ていたのをちらりと見たら、おじいちゃんと孫娘とおぼしきでね!おじいちゃんはきっとドンピシャでね!きっとおじいちゃん、孫娘そっちのけで号泣してただろーなー。

誤解のケンカをしたまま、ひろしがお姫様の花婿として連れ去られてしまうんである。だからお互い、後悔がある。謝りたいと思ってる。
ジュンコは、あなたの夫は美人のお姫様に娶られて何不自由ない生活を保障されている。あなたたちの元に戻るなんてことはないだろうと言う。まぁ、ジュンコにとってはどっちでもいい、とりあえずひろしを自分の元に引き寄せて、お宝をもらう権利を得られればいいんだから。
しっかしこのドジっ娘うっかり娘は、このために充分に準備してきた!!と何度もエラそうなこというのに、スカばっかりな訳さぁ。

実際、これまで数作しか見ていないにしても、こんなにも徹頭徹尾、みさえがヒロイン、いやさ、ヒーローとこの場合言うべきだろう!!という作品は初めてなんだよね。
しかも、新婚旅行で、家族愛ももちろんあるけど、彼女にとっては愛する夫、それ以上に愛する男を奪還する物語であり、記念写真のために用意されたドレスを着て、ジャマだからとすそを引きちぎっておみ足を出して突進するのが、たまらない、たまらないんだよー!!

だってさ、ひろしがさ、彼だって必死に脱出しようとしていたけれど、もうどうしようもなくなって、愛する家族を、愛する妻と子供たちと愛犬を、自分のために危険にさらしたくないと思って、したくない芝居して、自分はカワイイお姫様に見込まれて何不自由ない生活をするんだと言って、決死の思いでひろしを救いに来たみさえたちを追い返す。
あの場面、私ら観客だって判っちゃいたけど、でも洗脳されてるのかなぁとか、もしかしたらと頭の片隅で思っちゃったりもして。

何も言えずに扉を閉ざされて、みさえがさ、その後……しんのすけとひまわりの耳をふさがせて、ひろしに対してばかやろーっ!!!と絶叫するのにも涙がこぼれたが、その後、何事もなかったように笑顔で、ひろしを奪還しに行くことを子供たち、シロ、そしてジュンコに高らかに宣言するのには、もうもう、涙が、涙が、止まらねーっ!!
「パパはそんなことを言う人じゃないでしょ」私たち家族を守るために言ったんだと、当然のように笑顔でしんのすけを諭すみさえだけど、あの絶叫場面を見てしまえば、みさえが不安と恐怖にいることを観客は判っちゃうし、それでも母親として笑顔でしんのすけたちに何でもないよ、パパを迎えに行こう、というのがさ、もうもう、……たまんないの!!

今回はそんな感じで、みさえとひろしの愛の物語が一番のメインで泣かせるのだが、でもやっぱりそこは、しんのすけ、なんだよね。しんのすけが絶対に諦めずに、ジュンコを助けに突き進んでく。
ドジで運がないながらも一応トレジャーハンターのジュンコだから、野原一家と衝突しながらも彼らを運命の場と導いていく。最終的にはジュンコはみさえをはじめとした野原一家の愛の強さに感服して、一時はお宝を諦めて(結局ちゃっかりゲットしてたけど)、協力するまでになる。

いや、みさえの想いに女として心震わされた、というのが一番しっくりくるかなぁ。本当にみさえは諦めず、強く、夫を救い出すところにこれ一番のドレス姿で、その裾をビリビリと破った姿が、傷だらけ、泥だらけの姿が、これ以上なく、美しかった。
そしてさ、ひろしと対峙して、こんなカッコで……と恥じ入るみさえに、きれいだよ、と照れながらも、言うんだもん!!もうもう、たまんない!!(号泣)

今回はみさえが主人公、母親としての顔も見せる。手ごわい仮面族相手の厳しい闘い。子供たちを巻き込む訳にはいかないと、妹を守って、というこれ以上ない口実でしんのすけたちをとどまらせようとするのだが、しんのすけの台詞が、もう滝のように号泣させるんである。
「だったらかあちゃんは誰がおまもりするの?オラがかあちゃんをおまもりする!!」号泣!!!!!ひまわりもシロもそんなお兄ちゃんを持ってとてもたくましく、そうだ、シロは今回、マジに大活躍だったなあ。水没して死んじゃいそうになるところを、彼?が逃げ道を見つけたんだもの。シロ、カワイー、大好き!!

お姫様はぜぇったい、、本当にカワイイお姫様じゃないだろーなーと思っていたら、巨大コアラだった(爆)それはそれで、なかなか可愛かった……かな?めちゃめちゃリアルにコアラ描いてて怖い感じにしてるのが、良かったなーと思う。
きっとこのお姫様は孤独だったんだと思う。そこまで突き詰めて描写はしなかったけど、なんか、この巨大コアラ姫が、切なかったな。しんのすけが彼女を最後説得している場面が、おちゃらけてなかったのが、作り手側のそういう愛を感じたし。★★★★★


トップに戻る