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「ち」


2020年鑑賞作品

直撃!地獄拳
1974年 87分 日本 カラー
監督:石井輝男 脚本:石井輝男
撮影:山沢義一 音楽:鏑木創
出演:千葉真一 下沢宏之 郷英治 中島ゆたか 水島道太郎 津川雅彦 白石襄 J・ハーマンソン W・ドーシー J・フェロー 斎藤一之 安岡力也 G・イリキアン B・ヨハンソン 団巌 原田力 日尾孝司 リンダ 名和宏 芹明香 室田日出男 伊達弘 沢田浩二 青木卓司 河合絃司 倉田保昭 西城正三 池部良 佐藤允


2020/5/13/水 録画(東映チャンネル)
脂乗り切った時期の千葉ちゃんの作品が続々と見られて嬉しいったら。ほほお、今回は忍者ですか。空手との違いがよく判らなかったが(爆)、忍法指導にクレジットされているお名前にめっちゃ見覚えがある。YOUが押しかける武神館の主宰者の紫のおぐしが印象強烈な初見良昭氏じゃないですかぁ。
てことはめっちゃマジやねん。空手の時とは微妙に(微妙に……)違う千葉ちゃんの気合の入れ方が楽しい。最後の方にはもはや顔芸になっている。面白すぎる……。

ところで、本作には“特別出演”で池部良のお名前である。飛び上がって喜ぶ。確かにめっちゃ重要な役柄、つーか、そもそもこの物語の起因となる人物なんであるが、思った以上に出番が少なく、前半の何シーンかで後半は一切出てこない。
「ブツは総監が金に換えて持って行った」という台詞だけで片付けられて、一切の闘いが総監が集めた腕っこきだけで展開されるといういくらなんでもの不自然さに、うーむ、スケジュール的なあるいはギャラ的な問題??とりあえず引っ張り出してという感じがしちゃったなあ。石井輝男作品に池部良ってのもかなり意外性があったし。

そうなのー。石井輝男なんだよね。オープニングクレジットの、千葉ちゃんの空手、じゃなかった忍法のカギ手でグワリグワリ見せる独特すぎる見せ方からもう、石井輝男め!!とか思う。
内容はまっとうに、麻薬撲滅のために海外マフィアからの密輸を襲って奪う、という、なんかうっかり納得しそうになるが、それって結局大金ネライなだけじゃん……。
とか思うのは、相手にした巨大密輸シンジケートの責任者、マリオ・水原(津川雅彦。違和感なくこの名前に相応しい)が、「我々を殺しても、マフィアは滅びない」という台詞が当たり前すぎるのに、ハッとさせられるから、なんである。

「非合法なやり方はヤクザと変わらないじゃないか」と甲賀に言われて警視総監は「ヤクザには義理と人情が残っている。非合法でもヤクに犯されている人たちを助けられる」と応酬し、なんか浪花節的にその場が収束してしまって、観客の私もそうかもとか思わされていたから、ちょっとホゾを噛んでしまう。
そーゆー意味では甘いことこの上ないのだが、池部良の渋さと、そもそもの事件の凄惨さに目くらましされちゃう。

そもそもの事件、とゆーのは、池部良扮する警視総監が、日本をむしばむ麻薬を撲滅したくて非合法の捜査に暴走しちゃって、有能な部下を実に6人も、むざむざと死なせてしまったから、なんであった。
非合法の捜査だし、麻薬密輸はある外国大使の令嬢を使って行われているので、ヘタを打ったら国際問題になりかねない。6人の死は身元不明の不審死という屈辱にさらされた。

んなわけで警視総監の右腕だった隼は刑事を辞め、警視総監も身を引いたんだけど、共にその事件のことはずっと心にあって……。隼は凄腕の殺し屋としてバンバン稼ぎながら(襲撃先で買収されて、両方の仕事を遂行するという“仕事のカタさ”……カタさなんだろうか……単なるズルでは……)、遺族に金を送り続けている。
だから警視総監にいよいよと呼び出された時には、直立不動になる訳で。隼を演じる佐藤允はもう……この人の殺し屋顔は卑怯だよね。「……なもんで」という口癖がクールに響く冷徹さにこの殺し屋顔はピッタリなんだけど、だからこそのギャップ萌えというか。
警視総監に対する忠誠、猪突猛進な甲賀をついついからかいたくなる茶目っ気とが交錯して、なんかたまらなくヨイ!!とゆーのも、“猪突猛進”な甲賀が千葉ちゃんで、まさにその通りのキャラだから、佐藤允のクールさと相まってイイ感じなの!

警視総監が目を付けた凄腕は二人の他に、そのけんかっ早さで人をぶっ殺しちゃって、死刑宣告受けちゃってるという桜一郎であり、この計画のために甲賀が彼を脱獄させるんである。
後から考えてみると、死刑囚の脱獄なのに、その後世間的に騒ぐとか、警察からの追手とか特になく、うーむイイ感じの設定のユルさねと(爆)。

この桜一郎はかんっぜんにコメディリリーフだよなあ。喧嘩っ早いというキャラよりは、警視総監の秘書(とゆーのはデータベースだが、おじさまと呼んでいたから姪っ子じゃないのかなあ)の美人ちゃん、恵美にご執心で、てゆーか、甲賀の柔らかく吸いつくような忍術に「スケだったらなあ。タコみたいに吸い付いてたまらん」とか言って、もはやただのエロ男なだけ(爆)。
それなりに腕が立つという設定だし、前半はそれなりに見せ場もあるのに、後半の、まさにクライマックスになるとすっかり置き去りにされ、ここに混ぜてもらえないんだあ……とちょっとかわいそうな気持ち。

それというのも、もー次々とスターが投入されるから、なんだけどね。当時のボクシング世界チャンピオンなんてのまで投入するんだもの!!これは敵方の刺客で、“ダウンしたことない”猛者であるのだが、彼を召し抱えている筈の水原に突然見限られちゃう。
いや判るよ。彼が「久しぶりに歯ごたえのある相手だったのに」という甲賀との闘いをジャマされたことを発端に反旗を翻したからなんだけど、それにしても、あれだけ腕を買ってスカウトしたのに、あっさり見殺しとは……。

いや、そーゆー、雑な部分は色々散見されるのだが、それこそそーゆーことを言い出したらつまんないんだろう。
大体、甲賀のキャラがそもそも雑だもんね。彼は忍術の家系を継ぐことを強制されることを嫌って飛び出したのに、結局忍術で生きていて、それをバカにされることを嫌うし。やたら自信満々でたった一人敵地に乗り込んで、アッサリ催眠ガスでやられちゃったりするし。バカなの??とか言いたくなっちゃうんだけどさあ。

もう一人、スーパースターのゲスト出演である。うわーうわー、倉田保昭!!伝説!!中盤はスッカリ彼に持ってかれちゃって、おいおいおい、千葉ちゃん食われてんぞ!!と思う。
役どころは、次のブツが密輸される前に、敵陣の殺し屋をぶっ潰すために、このままじゃ手が足りないと、隼がかつての道場を訪ねて応じてくれたのが後輩の彼ただ一人。“助っ人をかき集めてくる”って言ったのに、ただ一人。もーこれはさ、倉田保昭のためだけの設定じゃないの!!

いやー……まさに、ブルース・リーだわ。そのお顔立ち、ヘアスタイル、シックスパック、黒パンツ、そして何よりその研ぎ澄まされた空手!!ヤバい、これはホレる!!
ムチャな先輩のムチャな車の運転で敵地に突っ込んだ彼は、いまだローンの返済が終わっていない愛車を心配し、敵を倒し続けてついに力尽き(あれは死んだんじゃないよね?死んだんだったら切なすぎるよー)、「先輩……車の払い頼みますよ」とガクッとなっちゃうって、何よー!!

ところで、この麻薬密輸の手先として利用されているのが、先述したように外国大使の娘なのだが、“生まれついてのおし”であり、水原に盲目的に従順しているのが痛ましくてたまらない。
それでなくても本作はやたら外国女性のおっぱいポロリなサービスシーンが多く、それは殺し屋のあいかたという位置づけで、時には甲賀はすっかりそのおっぱいに目を奪われたり、欲望に負けておそいかかったり、結構ヤバめのおピンクシーンも多い。

その中で、この大使の娘、もう見た目からして薄幸な、脱いでおっぱいポロリになってもなんか寂し気なおっぱいでさ、水原の言うとおりになるしかない、言葉を発することも出来ない、一体水原のことを愛しているのか、ただ服従するしかないからそうしているのか、見ていてたまらない気持ちになる。
水原を演じる津川雅彦、こんな特殊な役柄のせいか、似てないと思っていたお兄ちゃんに妙に似ていて、声もやけに似ている。
最後の最後、彼は甲賀たちに渡さないためにクスリを断崖絶壁の下に捨て、彼と彼女も心中よろしく身を投じるのね。いわばクスリ、あるいはマフィア、組織を重んじて水原は彼女を道連れにしたんであり、なんと最後まで哀しい女なんだろうと思って……。

ラストのクライマックス、激しいカーチェイスの末、隼は甲賀を見限り、自分一人飛び出して、車はがけ下に転落。しかして後に隼に、「生きてたのか、神様みてえな奴だな」と言わせる奇跡の生還は、崖途中の木の枝にぶら下がっているというお約束中のお約束。
そしてそっからの崖登りのための鉤縄の鉤を腿に受け(痛い痛い痛い!!)苦しみまくる“ローンウルフ”は安岡力也!うわー!!てか、この設定、痛すぎるだろ!!なぜ外さない!!痛い痛い!!

千葉ちゃんがまたしても上下白、しかも上がちょうちん袖の王子様ブラウスで、しかしそれが次第にビリビリに破かれてゆき、アミアミの忍者ネットがテキトーな感じでその下の肉体をエロっぽく表現して巻き付いている、そして顔芸だし、なんかもう、いろいろヤバい!!
そして最後残るのは佐藤允とであり、ヤハリこの二人のツンデレ的なやり取りが本作の最大の楽しみっつーか、メインであったのねと改めて思って、ニヤニヤしちゃうのよね。 ★★★★☆


直撃地獄拳 大逆転
1974年 86分 日本 カラー
監督: 石井輝男 脚本:石井輝男 橋本新一
撮影: 出先哲也 音楽:鏑木創
出演:千葉真一 郷英治 中島ゆたか 志穂美悦子 名和宏 松井康子 室田日出男 舞砂里 山城新伍 畑中猛重 日尾孝司 安岡力也 白石襄 久地明 松井紀美江 東島祐子 葉山良二 佐藤允 丹波哲郎 池部良

2020/7/29/水 録画(東映チャンネル)
もー、面白すぎて疲れる(笑)。前作ですっかりトリコになってしまえば、この続編は迷わず観るに限る。特別出演の池部良の出番が少ないのも最初から分かっていれば納得できる。あ、でも今回は思ったよりも出番があったな。めっちゃカッコ良いーもうー(照照)。

タイトルクレジットの段階から、本作の見せ場をばんばん流すという大胆さというか豪華さというか。それだけ先に見せちゃっても本作で充分に楽しませるという自信の表れか。
前回の作戦に召集された同じ三人がまた呼ばれる。あの作戦後のそれぞれのその後もきちんと描かれる手の込みよう。千葉ちゃん演じる甲賀はなななんと自衛隊レンジャーとして大活躍。その様がまるで戦争コメディかのようにモノクロで描写されるのとか芸が細かい。
そしてその自衛隊で培ったワザやコネクションで武器やらセスナ(!)やら調達しちゃうというのは、そっからさかのぼって考えるとちょっと都合がよすぎたかも(笑)。

佐藤允扮する隼は相変わらず、総監(池部良)のために働くことを常に頭に置いて殺し屋稼業を続けているし、プラスワンとでも言いたいアホ(爆)の桜(郷英治)はペアリングならぬペア金歯(爆)で、惚れこまれたふとっちょおばはんとラブラブ生活を送っているところを甲賀に“救助”される。
総監が「あいつはモテモテで金儲けもやりたがらない」と言って甲賀を奮い立たせて仕向けた格好だが、実際桜とゆーやつは、こーゆーところがバカで愛しいというか、女好きなのに美醜を厭わず、自分にホレてくれると参っちゃう、そして金歯にまでしちゃうというあたりが(爆)。

このバカに付き合ってると尺がいくらあっても足りない(爆)。今回も外国人女性のおっぱいがやたら出てくる石井輝男節である。
車いす姿がいかにも人の同情を誘う、しかし風貌はザ・マリリン・モンローな慈善事業家、ザビーネ・カウフマン夫人が身障者のためのチャリティー宝石展示会のために来日する。“身障者のためのチャリティー宝石展示会”……うーむ、なんとはなしに矛盾だらけの匂いがぷんぷんする!

来日VTRを見せられた甲賀は、慈善事業をジャマするのは気が引けるな、と殊勝なことを言い、この矛盾だらけの匂いに気づいてないあたりがやはりなんだかカワイイんである。
カラクリがありあり、なんである。最終的なことを言えば、仕事を依頼してきた総監にさえ彼らは騙されている。一作目にあった、自分の部下たちを死なせてしまった、その補償金のために、といったヒューマニズムは既にすっ飛ばされている。ただ単に、悪辣なところから爽快に金を巻き上げるエンタテインメントになっている。その方がこっちとしては追いやすい。

カウフマン夫人が、幼い一人娘を帯同しているというところがミソなんである。この夫人こそが食わせ物であり、国際的な銀行を巻き込んで大バクチを打ってる訳である。
自身の胸元にキラキラ光らせている巨額のネックレスがこの度のエサである。日本の警備に保険をかけさせ、盗難に遭ったら補償金、ということにしてある。

宝石どころか、一緒に娘まで誘拐させるのは、後に狂言と判るが、そもそも総監はこのネタを流してきた相手が上官であり、その上官が保険会社の衆木(丹波先生!!)に変装していた訳で、もう最初からすべてが計算ずく。
甲賀たち三人が網走刑務所送りになるのは総監の悪い冗談にしてもほどがあるが!いや……カウフマン夫人の慈善事業がキナ臭いということをかぎつけての、この子飼いの三人を使っての大バクチということだったんだろうが。

志穂美悦子先生も登場なの!!保険会社社長、衆木に付き添う秘書的立場としてだが、なんたって志穂美悦子さまだからそれだけで済む訳もない。
だけど……その最初の登場からまるで忘れられたようにずっと出てこないので、あれ?単なるゲスト的顔見せだったのかしらん……と思っていたら、ラストのクライマックスで突然、しかもチャイナ服でアチョー!!とばかりに飛び込んでくるからもーう、ビックリしちゃう!!
それまでの三人の苦労がいきなりの華やかさですっかり徒労に終わっちゃうような……。

とゆーのは言い過ぎだが(爆)、でもめっちゃ作戦練るんだもの。最初はこんなのカンタンな仕事だと思ってた。誘拐された娘の奪還、身代金を守ること。しかし巧みに待ち合わせ場所が変更され、甲賀はなぜかアドバルーンにぶら下がって金の入ったバッグの攻防戦とかもうありえないアクションだし(爆)。
桜は相変わらずバカで、雑踏の中標的を追ってる筈が、巨乳のお姉ちゃんに気をとられて、「おっぱい大きいね」と触ってぶん殴られたり、何やってんだ(爆)。
ぽんこつ車のエンジンがかからずに貨物列車に衝突しそうになったり、盛り込みすぎ(爆)。そして上空の甲賀に気をとられて、車のまま海に突っ込んじゃう。バカすぎ(爆爆)。そーゆーところが愛しいんだけど。

桜に気を取られるな……。ああでも、これは言っときたい!バカ桜!!甲賀がカウフマン夫人のネックレス“ファラオの星”を見事盗んだ!!と思いきや、それはイミテーションだった。そりゃあんなに無造作にベッドサイドに置きっぱなしにしないわな……。それを“イルミネーション”も知らないのか、という時点でもアホ丸出しだが、甲賀が侵入のために使った超強力な接着剤を疑って、テーブルに手のひら離れなくなって!!トイレに行きたいというとフライパンを渡される(うわー!!)。
次のシーンで、手の形にテーブル板を切り取った状態でフツーに話に参加しているのには爆笑!!そのままどうすんのと思ったら、特に説明もなく、クライマックスのアクションシーンではフツーの手に戻ってるあたりが、なんつーか、いい時代ね(爆)。

だって今回は、桜は大活躍なんだもの。前作ではクライマックスで彼は排除されていたような感じだった。しかし今回は、排除される……とまでは言い過ぎだが、でもちょっとコミカルに処理されちゃうのは隼である。
戦時中セスナに乗ったパイロットだと豪語するも、“初等教育”しか受けてなくて、しかもそのテキストを読みながら操縦するというムチャさ。信じられない、トンネルに入り込んで爆走、いや、爆飛行!しちゃう!!うわー!!死ぬ、死ぬわ!!
すっかりお国のためにモードになっちゃって、目が、目がイッちゃってるんだよう……。もちろん当時はそんな時代は過ぎ去っている訳で、甲賀も桜もイマ風の飛行スーツに身を包んでいるのに、隼だけタイムスリップしたみたいな特攻スタイル、シャレになんないわ……。

で、なんかいい忘れたけど(爆)、これはつまり、金庫破りな訳。カウフマン夫人が上手いこと保険金の二重取りを、しかも子供をダシにしてやりやがって、甲賀たちは怒っちゃうのよ。
夫人は銀行も巻き込んでいる。世界一カタい金庫をもつ国際銀行で、金庫破りのプロである桜も一瞬ビビるが、プライドをかけて金庫破りに臨むんである。
カウフマン夫人の情夫である銀行社長にこっそりマイクをつけて(とーぜん、ラブアフェアなシーンよ)、金庫を開けるカチカチという音だけで桜に解析させる。カッコイイじゃないの!!

しかし難関はそれだけじゃない。監視カメラ、一瞬で黒焦げになるレーザー光線エリア、それを全部突破しなくてはならない。
内部の人間を巻き込んで数秒の“停電”を作り、なんと言ってもレーザー光線エリアをあの超強力接着剤で持ち手を天井にくっつけながら、スパイダーマンより凄すぎる腕力と持久力で進んでいくあのシーン!!

もう帰り道では桜は死にかけるのよ。だってムリだよ。行きだけで死にそうに体力消耗してるのに!!レーザー光線に札束を詰め込んだザックが触れちゃって、火がついちゃって、まさに尻に火が付いた状態!
甲賀はなんとか安全地帯に着地して、ここまで来いと叱咤激励するのだが、もう、マジでヤバい!!背中に火が回っちゃって、でもここで落下したら即黒焦げ!!

そりゃこんな場面で彼を死なすことはないと判ってはいても、さすがにこれは……。
ほうほうの体で安全地帯まで来て落下した桜の背中の火をバンバン踏みつけてもなかなか消えなくて、最終的には甲賀がしょんべんかけるという……ああ……これを笑っていいものか……アンモニアが一番効くんだってのは、今は違うんだよ……。

狼藉ものの存在に気づいた無数の敵とのクライマックスは、存分に千葉ちゃんのアクションを堪能できる……と思ったら!忘れかけていた志穂美悦子さまの登場!突然!!しかもチャイナ服!!!
なんかあぜんとしたままどーゆーことかの説明を待ってみたら、保険会社の社長の筈だった丹波先生はカツラと口ひげを取り、実は警視庁捜査一課長であり、志穂美悦子さまは香港警察勤務でシカゴマフィアを追っていたと……。

そうだ言い忘れてた。そもそもこのキナ臭い事件はシカゴマフィアの日本への進出が絡んでいると目されていたんであった。
相変わらずの石井輝男式大風呂敷国際派だなーっと(ホメてるのよ)思ってぼーっとしてたら、志穂美悦子さまはそっちですかいと!!

悦子さまは華麗なアクションでうっとりするが、千葉ちゃんはだんだんシャレにならん凄惨さになってくる。相手の腹に手を突っ込んで内蔵取り出すわ、ぶん殴った首が一回転以上しちゃうとか、ああもう、石井輝男!
追手が駆けていく途中、まさに当時の千葉ちゃんの出演していた広告なんであろう、時計のポスターの千葉ちゃんに、うん?と目を止めて首をかしげるとか、シャレてるわ!

最高に好きなのはラストである。総監にさえすっかりハメられた三人は、“休養”という名目で送り込まれるのは、なんとアノ、網走刑務所!!そこには伝説の殺人犯が終身刑で投獄されていて、牢名主よろしく泰然と彼らを迎える。
とーぜん、あの伝説のシリーズを踏襲して、千葉ちゃんが、おひけえなすって、てな仁義を切り、雪が降りしきり、その雪がラストの「完」の字を作るという、ちょっと遊び過ぎじゃないの!と嬉しくなっちゃうラスト。
だって健さんよろしく「網走番外地」歌っちゃうのよ、千葉ちゃん!これがやりたくての作劇じゃないかとさえ思っちゃう。いやー、いいもん見た! ★★★★☆


チ・ン・ピ・ラ
1984年 102分 日本 カラー
監督:川島透 脚本:金子正次 川島透
撮影:川越道彦 音楽:宮本光雄
出演:柴田恭兵 ジョニー大倉 高樹沙耶 石田えり 川地民夫 久保田篤 鹿内孝 小野武彦 鹿沼えり 魁三太郎 木村孝志 菊池建二 利重剛 山口雅巳 金内喜久夫 中真千子 松熊信義 我王銀次 坂口芳貞 玉井碧

2020/8/15/土 録画(チャンネルNECO)
その時代イケイケの時に作られた映画は、その良しあしよりも映っている文化や流行、風景の変遷の方に興味を惹かれる。
今も昔も最も煩雑な街、渋谷が舞台になっている本作は、それでなくてもここ1年ばかりでも渋谷は急速に姿を変えた(それまでも変え続けてきたし)のだから、殊更に感慨深いものがある。

84年というとまだ私は小学生か中学に入ったばかりで、渋谷なんて知る由もない訳だが、そっから3、4年後に上京した時に見た渋谷のアレコレが確かにスクリーンの中に存在していて、今はなき東急のプラネタリウムとか、今も不思議とこれだけは変わらない109とか。
必ず上から映したくなるスクランブル交差点の人込みは変わらずとも、今は大型ビジョンがもう一つ名物になっているのが当時はまだ見当たらないとか、なんかもう、ああ四半世紀が経っているんだなあと思ってしまう。

他にも、ダイヤル式電話だし、公衆電話だし、カセットデッキだし、なんである。しかしなんたって80年代、バブルに突入するべくまっしぐらに右肩上がりの84年、キラッキラで、しかもフジテレビ、柴田恭兵様!!これはもう……という感じ。
冒頭のナンパな導入がいかにもそれを示している。クラブのフロアで白上下スーツ(!)で踊りまくっている道夫(ジョニー大倉)に因縁をつける男たち。割って入る、これまた白スーツに加えて銀ネクタイ(!!)姿の洋一(柴田恭兵)。突然拳銃を突き付け、有無を言わさず発砲して店内は騒然。道夫と洋一はニヤリと見交わして逃げ出し、ハデな外車に飛び乗って渋谷の街を疾走する。
おいおいおい、何何、いくらなんでもこんな無体な殺人起こして、ノリノリの音楽でオープニングクレジット蹴散らしながらゴキゲンでドライブとか、ありえない!!と焦っていると、彼らはまるで気にせず、暴走族の少年たちがカップルの乗った車を取り囲んでいるのを発見して突っ込んでいく。

助けるという名目だが、カップルの女の子が目的のひとつ、大きな目的は暴走族の少年を一人ひっとらえれば、芋づる式に他のメンバーの親御さんたちからどういう名目でも金を引っ張れるという寸法である。
いきがっている少年たちであってもまだ未成年、親がかりである筈だという読みが当たるのは、彼らがそういう青春時代を過ごしてきたに他ならないことを想像させるんである。ちなみに冒頭の銃殺騒ぎはおもちゃのピストルに電磁爆発と血のりを使ったアトラクション。これが後々大きな伏線となるんである。

タイトルどおり、二人はチンピラ。それは、ヤクザにはなりきれないハンパモノということなのだが、この時点では二人は、ヤクザなんて古臭く縛られるものになりたくないと思っている、と思い込んでいるんである。
それでもケツを持ってくれる親分さんがいなければ、競馬のノミ屋というケチな仕事の分け前にもありつけない。たとえそれが、まんま稼ぎが自分のところにくればと夢想しても、そもそもケツ持ちがなければそんな仕事をさせてももらえない訳である。

冒頭の時点ではいかにも80年代、お気楽に享楽を謳歌するワカモンの物語、さすがフジテレビねとか思って見ていたが、後の世に感じるように、この時代はバブル前夜、いや、バブルに片足突っ込んでいる訳で、つまりはこの、あぶく銭のような稼ぎで生活できているのは、虚飾なのだ。
ただ、本作が製作された時点ではバブルとか、それが崩壊するとか、そんなことすら未知の未来だった筈なのだが、後の世から見てみると、まるで彼らがそれを予感していたように、本物でない自分たちを、この時代の象徴のように自嘲しているのが、ちょっとゾワッとしてしまうぐらいなのだ。

暴走族の少年のついでのようにピックアップしてきたカップルの片割れ、裕子(ちなみに片割れの男の子は使えないと判断したかあっさり置き去り)が、道夫と洋一にとーぜんのようにレイプされる描写にしかかるので、固まってしまう。こーゆーのも80年代カルいセックスライフのひとつかもしれないとも思うが、明らかにイヤがっている女の子を大人の男が力づくでかわるがわる組み伏せる描写にヒヤッとする。
しかしその後、洋一の女になっちまう彼女は、洋一いわく、つきまとってくると。お前が誘ったぐらいに言い、一度や二度ヤッたぐらいでいい気になるなとか突き放すんだからボーゼンとしてしまう。うーむ、80年代のマッチョ思想は独特でついていけない……。

実際、マッチョ思想だとは、思う訳。バブル、あるいはバブル前夜は、ことにその時代に金を稼ぎまくっていた男たちにとっては天国であったろう。
ただ、道夫と洋一はその中で“本物”になれずにいることに気づき始めて苦悩する。そんなこと、考えもしなかった。ヤクザに盃をもらうなんて古臭いことトンでもない。つまんない年功序列で兄さんとか言わなきゃならないなんてと、一応は道夫の方が年かさだけれど二人はまさにマブダチだから、世話になってる親分さんからその態度をたしなめられても笑い飛ばしていた。

ただ……計算外だったのは、年功序列で兄貴分格の道夫よりも、洋一の方が評価されてしまったことだった。親分が、洋一をスカウトする。盃をもらってホンモノのヤクザにならないかと。お前なら出来ると。かつてのような、入った順の年功序列じゃなく、三ヶ月の研修を経ての幹部候補生だと。
突然の、現代的ルールの導入が、洋一だからこそ用意されたことに道夫は動揺する。道夫はもう30になんなんとする。盃を受けるかどうか悩んだこともある。でももう30、19や20なら勝負が出来た。今更、10も違うヤツらを兄貴と呼ぶことはできないと思っていたから、悩みつつも今の生活を続けていたのに、マブダチである筈の洋一に先を越されたのだ。

洋一は結局裕子とイイ仲になったけど、道夫は腐れ縁的な恋人、美也がいる。なんとまあ、石田えりである。彼女ならすんなり脱いでくれそうな気もしたが、本作で一糸まとわぬ美しいヌードを見せるのは思いがけず、洋一の女の裕子、高樹沙耶の方である。ちっちゃめのおっぱいとしまった腹部が美しい。
まあそれはどうでもいいが(爆)、道夫と美也は、恋人同士と言い合ったわけではなく、美也は特に気負いもなく、他の男にプロポーズされたことさえ口にするぐらいだから、道夫が生涯を共にするタイプの男ではない、と判断していたのだろう。でも一番の理解者だった。
道夫が洋一に置いていかれ、焦りの中ノミ屋の仕事で大穴をあけてしまって、洋一経由で親分から預かっていたシャブを横流ししてしまった時、賢明な彼女は、心底心配しながらも、道夫と共に逃げることはしなかったんである。

美也は賢明だったとは思うし、楽しく生きるという道からハズれた洋一を見限った裕子もまあ自分の価値観を貫いたとは言えるけれども、なんつーか、本作においては、男同士、バディの重要性にのみ大きな重点を置き、女たちはセックスの花を添える程度という感じがしないでもない。
ただ、男たちはホンモノじゃないからさ。途中からそのことに道夫も洋一も苦しめられ、その中でどういう道を進むべきかを逡巡するからさ。

ケツ持ってくれる人がいなければシノギも出来ない。なのに盃をもらうのがイヤ。「ヤダよ。本物になるのは」というその時の台詞がどれだけ青臭いものだったか、判っていなかっただろう。
女の子たちを引っかけては、俺たちフリーのヤクザなんて言っていた。女の子たちはウソー、とキャイキャイ言っていた。つまり、そこにホンモノを認めなかったからに違いないのだ。

洋一が道夫を呼び捨てにしたことに、親分さんはけじめがないとひどく怒った。その時は神妙にしていたけれど、一度そこを辞すると二人はいかにも親友同士のように小突き合った。けじめ?けじめなんかないんだよ、俺たちチンピラには、とそれがまるで誇りのように言っていたけれど、後に、チンピラはフリーのヤクザなんかじゃなく、ニセモノのヤクザなんだと。
彼らの後輩の遊び仲間が、例のおもちゃ銃のアトラクションで本物のヤクザを怒らせて、二人がボッコボコにされた時、彼らは言われたのだ。所詮お前らはシロートだから仕方ないんだなと。ヤクザがプロで俺たちはアマチュアなのかね、と自嘲する二人がたまらなかった。

ホンモノとニセモノを彼らが思い知る場面は至る所にある。親分さんが洋一と彼の弟分、太を連れてヨットで海上に出る。そこで親分さんは海上に空き缶を投げ(ダメだよー)、それを的に拳銃を撃たせるんである。
冒頭、いかにもな80年代アトラクションとして見せたおもちゃのピストルを撃つ時の軽さとは、撃った後の反動が全然違う。ドン!!と反動を腹に受けて、洋一はまさに身がすくんだような表情を浮かべる。

だって洋一の背中に見事に描かれた刺青だって、枠線だけで、裕子がたわむれに塗り絵よろしく水彩絵の具で塗っちゃうなんて場面さえ用意されてるんだよ。刺青が中途半端なんて、まさに中途半端。
洋一が悪さして少年鑑別所から地元の小さな島に帰った時、その背中に入れ墨があるんじゃないかと噂され(当時はなかった)、母親によってハダカで島中を歩かされたエピソードが心打たれるが、裕子のは心響かなかったらしい。

裕子、てゆーか美也にしても女たちのキャラは、登場させなくてっも良かったんじゃないかというぐらい、バックグラウンドも男への執着も薄い。美也はなんたって石田えりが演じるからそれなりの執着は感じるが、それはあくまで、石田えりが演じるからってだけのような気がする。
やっぱり……時代的なものもあるし、人気者が演じていることもあるし、そこはマッチョよね。まあ柴田恭兵様の細マッチョを拝めたのは良かったけど(爆)。

親分さんから、しがらみがないから安全と託されたシャブを、こともあろうに裕子がこっそり使ってしまい、楽しくやろうって言ったじゃないの、なんでダメなの、とかワケ判らん事言い、彼女を救うためにシャブを道夫に預かってもらったのに、裕子は楽しくやれなくなってキャラ替えした洋一をあっさり捨てて姿を消す。
そして道夫は、洋一が盃をもらって彼らとの仕事を離れたことで一気に傾き、危険なレースに手を出して、シャブを横流ししてしまうんである。

道夫が逃げた。探し出さないと、お前も東京湾に沈めるぞと脅されて、洋一は必死に走り回る。最後の最後に思いついたのは、一秒待たずに変わりゆく渋谷の街を、今や一番高いところではなくなってしまったけれど、でもやっぱり最高の展望場所だとお互い言い合っていた、東急デパートの遊園地のある屋上なんであった。
まず、彼を見つけ、なんで逃げなかったんだと洋一が問うと、最後にお前に会いたかったんだと道夫は言った。あーあーあー。もう結局腐女子を喜ばせるってことかいな!ズルいわ!!

それを受けて改めて洋一は、みっちゃんを死なせるわけにはいかないと決意。どこかで何かを、根回しに行ったのは、太、太!!いいとも青年隊久保田篤氏!!なつかしー!!
閉店間際、東急デパートの屋上から二人地上に降りたとたんに、太からバーン!!撃たれた時に、あのおもちゃのピストルでの銃殺エンタメにやたら感動していた彼の姿が即座に思い浮かんだから、これは絶対仕込みだよね、だよね!!と確信はしていたんだけれど、おーーーーい、道夫ーーーーーみっちゃーんーーー。死んだふり長すぎー!!

船で逃げる桟橋までたどり着き、もう死んだふりはいいんだよ、みっちゃん、ズルいよ!!とすっかり身体から力が抜けている血だらけの道夫を、洋一は必死こいてずるずる引っ張り、倒れ、また引っ張り、倒れる。
どんどん引きの場面で、豆粒になるまで、泣き笑いのような恭兵様の台詞が後を引く形で描くから、絶対あれはアトラクションだよね!!と思ってても段々不安になり、あれ、これはマジで死んじゃった??ヤダー!!と思っていたら……。

やあーっぱり。ハワイ航路の上ですよ!もー、バブル前夜!!彼らをしっかり理解してくれていた親分さんが艦長を務めている。出来すぎ!!
ちなみにこの親分さんがだいっ好きな川地民夫で、それでなくてもこの当時のバブリーなヤクザ屋さんはやたら白の上下を着たがるが、ある場面でトップスが白レースのスケスケシャツだったのにはボーゼンとした。いやー、時代だね。
とにかく、ハッピーエンドで良かった。女は何の役にも立たなかったけど、まあ時代のマッチョ映画だからしょうがないか!!★★★☆☆


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