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兵隊やくざ
1965年 102分 日本 モノクロ
監督:増村保造 脚本:菊島隆三
撮影:小林節雄 音楽:山本直純
出演:勝新太郎 田村高廣 滝瑛子 淡路恵子 成田三樹夫 北城寿太郎 早川雄三 仲村隆 藤山浩二 夏木章 螢雪太朗 森矢雄二 渡辺鉄弥 九段吾郎 内田朝雄 山茶花究
興奮しすぎて先に行けない。もう悶絶の台詞、シークエンスのオンパレードで、いちいち5回ぐらい巻き戻して見ては、はあぁ、とのえち(愛猫)を抱きしめてイヤがられてしまう私なのである。
特に、有田上等兵のことが大好きすぎてムチャをする大宮二等兵に、上等兵殿が、「バカだな」と苦笑気味に言うのがもうもう、だーい好きなんである!!こんなこと言われたらもう、ほんとに死んじゃうんである。
田村高廣の声が本当に素敵。全編のナレーションも担当しているから全編悶絶である。大宮を可愛いヤツだと言い(これも悶絶死)、傍若無人な彼を全力でかばって、彼の前でだけ笑顔がこぼれる田村高廣の細身の端正さ。
それに対照的な、マッチョだけど少年のように瞳をキラキラさせるカツシンのかわゆさ。もうこれに萌えなくてどーするってーの!!
ああもう、マジで私を殺す気か!!と……全然進まないけれども(爆)。でもなんたってスタート、恐らくシリーズ化なんぞはこの時点では考えられていなかったであろう本作、それだけに二人のラブをこれでもかとつめこんだのかしらんと(いや違うだろーが。後世の腐女子はもれなくそう感じるにしても……)思うぐらい。
つまりはそれだけ、戦争、軍隊というのが、追い詰められまくる場所だったのだということを示しているのかもしれない。もう当然カラー映画の時代に、兵隊やくざはモノクロを貫く。
第一作である本作のオープニング、スタッフ、キャストクレジットの前に、荒野に軍服のまま朽ち果てる兵隊たちの無残な死体(というか、もはやガイコツ)という、ひどく生々しく、ゾッとさせる描写で、なんていうか、………もちろんエンタメなんだけれど、すっごく問題提起、戦争ももちろんだけれど、軍隊という理不尽さ、それはきっと、公開された当時の時代の社会の理不尽さも当然思い起こさせるものを、すっごく意欲的に感じさせる。
シリーズ物の第一作というのは、やはり特別だなと感じる。有田上等兵殿が年季を重ねているのに昇進していない理由が、“大学出のエリート”という言葉で片付けられるけれど、つまり、自分を失ってなくて、この時代のこの社会のおかしさに落伍することで抵抗している。
軍隊の中のエリートになりえたのに、自らそれを放棄して、だからこそめっちゃ対照的だけれど、根本的な価値観を同じうする大宮と出会ったことは、まさにまさに、運命の出会い、運命の相手、恋の相手だったのさー!!
……また我を忘れてしまった。まあとにかく、大宮は入った時から問題児で、いわば教育係として有田上等兵があてがわれた。暴れ馬のような大宮には、頭のいい有田上等兵、という思惑が上層部にはあったのかもしれんが、思いがけず恋に落ちる二人。いやいや(爆)。
「上等兵殿はなぜ自分に親切にしてくれるんですか」とかさー!もう、少女漫画の後輩が先輩に問うよーな台詞じゃんか!!
私の腐女子感は間違ってないよ、絶対!!だって、本作だけじゃないもの、彼ら二人をまとめて受け入れて、二人がセットじゃなきゃヤだもん!とゆーマドンナはさ。
いわゆる慰安婦だよね、軍御用達の遊女たちである。記念すべき第一回マドンナは、淡路恵子大先生である。
最初はとにかく女を抱きたいと言ってはばからない大宮二等兵(でも一番大好きなのは上等兵殿だもんねー!!)を懐深く受け入れた姐さん、といった感じだったのだが、大宮を探しにきた有田上等兵、もう二人セットになっちゃう、二人じゃなきゃヤだわ、てのは、もーさー、腐女子ですよ。判ってらっしゃる。二人セットでなきゃ、この二人はダメなのさってことを、姐さん、判ってらっしゃる!!
有田上等兵は酒や女というより、とにかくこの大嫌いな軍隊から早く抜け出したいことを考えている、一時的な欲望に溺れない頭のいい人だから、特にこの後私が目にするシリーズでは大宮が女に溺れても上等兵殿はそんなシークエンスはなかったと思うのだけれど、本作では、ちょっと、ちょこっとだけ、ああ、ヘソ酒をお召し上がる!
ヘソに注がれた酒は下に流れるからつまり……イヤー!!しかしそれは、大宮が「気が乗らない」と上等兵殿に払い下げたというあたり(爆)。
大宮は、この時激しく落ち込んでいた。新兵を死に追いやってしまった。軍隊の理不尽な暴力に、大宮のような男はヘーキだけれど、大抵のフツーの男の子は耐えられない。脱走の果ての自殺は珍しくない。
でも、脱走兵を探しに出て、大宮がうっかり呼びかけたことでおびえ、自殺したという結果になってしまったことで、大宮はひどくひどく落ち込んだ。シャバではやくざ稼業をしていた彼は、人殺しは二回目だと上等兵殿に告白した。でも一回目は死んで当然の悪人だった、でも……と、子供のようにうなだれるのだ。
確かにエンタテインメント映画だし、あばれまくるカツシンに楽しませてもらえる映画だけれど、そのスタートである本作で、改めて、戦争、軍隊、それが示す普遍的な人間社会の理不尽さを、痛烈に描いてくれるのが、腐女子が時々ハッと立ち返る素晴らしさ、なんである。
有田上等兵が、大宮をかばうこと再三で、周囲にそれを納得させるためには、上等兵殿が大宮を制裁するべき、という展開には、心打たれたなあ。
上等兵殿は、軍隊が大嫌い、殴られたことはあっても、殴ったことは一度もない。昇進試験にわざと落ちて、ぐうたらを決め込んでいるのは、一日も早く年季を終わって除隊し、日本に帰りたいから、なんである。
そんな、軍隊、兵隊、規律なんてものに一切背を向けて、でもそれを気づかれないように上手くやってきたエリートさんが、大宮と出会って、どうしようもなく惹かれて、心配して、上官から、大宮を周囲に納得させるために制裁を、と言われた時の上等兵殿の苦悩と来たらさ!
一発、竹刀で殴って、もうそれ以上出来ないの。悄然と踵を返しちゃうの。上等兵殿の事情と気持ちを察して、大宮が自らを石でゴンゴン殴って、上官殿に進言するの!何それ!!超ラブなんですけど!!有田上等兵がそれを詰問しても、「上等兵殿がやったんでしょう」と照れたように目を合わさずに大宮は言うんである。もーコラァ!!
有田上等兵はとにかく年季を収めて除隊することを夢見ていたから、戦況が悪化してそれがかなわなくなったことに絶望する。その前に大宮はもう死ぬしかないような激戦地への派遣を命じられる。
自分と一緒に行きませんかと言う大宮に、戦死するのはイヤだからな、と拒否する有田上等兵、大宮は子供のようにスネて、俺を見捨てるのか、となんかこのあたりから妙にため口になるあたりも萌え萌えである。
実際このタイミングのあたりでは、有田上等兵はそれまで周到に、この軍隊から賢く正しくオサラバする道を進んでいたから、大宮と気が合ってて、可愛いと思ってて、離れがたいと思ってても、この忌まわしき軍隊から離脱するに勝るまでは思わなかったのだろう。
そう考えると腐女子なこちとらはちょこっとスンとなるが(爆)、気にしない気にしない!!実際、有田上等兵殿の思惑通りにはならなかったんだからさ!!
有田上等兵と一緒にいるために、ワザと愛する上等兵殿を(ああ、つい、手が滑っていらん形容詞をつけてしもうた)殴り、営倉にブチ込まれることで、激戦地に送られるのを回避した大宮。
大宮の想いに感じ入り、食事運搬を買って出る有田上等兵と大宮との、もうこれはさ、二人っきりの密室のラブでありさ!もうドッキドキだもの。いや、どんなシークエンスでも二人の場面はドッキドキだけど(爆)、でも本作の中ではヤハリ、この食事運搬シーンでの親密度合いが一番ドキドキしたなあ。
想いを確かめ合い、秘密の作戦を練り、「黙って俺についてこい!」「俺もお前と離れたくないんだ」だもの!!もうーもーうー(牛になったか……)。
なんてゆーかさ、大宮は本当に、子犬のようなんだよね。信頼する人には忠実を誓う。第一作であることもあって、彼のそれまでの来歴が語られ、ちょっとおもしろいシークエンスも挟まれる。もともとは浪花節志望で、修練も積んでいたけれど、けんかっ早いタチを見込まれてヤクザの道に入ってしまった。思いがけず、その浪花節の師匠が慰問に来て再会、大宮は逃げたがっていた同僚を師匠に頼み込んで託す。
失敗しちゃうんだけど……なぜ、自分も一緒に逃げなかったのだと後に上等兵殿が大宮に聞くと、変装してこそこそ逃げるなんてことはしない、堂々と大手を振ってやりますよ、と言った。でもさでもさ、結局上等兵殿と脱走することを選択した時はめっちゃ変装の用意もするくせに(爆)。
そ―ゆーとこが結局かわいくて、上等兵殿と共に(爆)腐女子の心もかき乱す訳さ!!女の元にしけこんでるくせに、上等兵殿に見つけ出されると、ふんどしいっちょのハダカ状態でしどけない遊女と一緒なくせに、すぐうなだれちゃう。
見つけたぞ!という上等兵殿のホッとした笑顔にもヤラレるし、そもそも、見つけたぞ!!と引き戸を開けるスピードハンパないでしょ(爆)。すぱーん!!って開けちゃう上等兵殿っ。どんだけ心配してんの、もうさあ!!
もう、言い切れない言い切れない。シリーズの第一作、いや恐らくこれがシリーズ化を決定せしめた大傑作、腐女子大興奮、そしてそれ以上に……戦争、軍隊の理不尽をまっすぐに描いた本作の功績は大きい。
シリーズ化されることで、エンタテインメントとして確立してしまう、しまう、という言い方になってしまうけれど、そういう立ち位置になってしまうけれど、その第一作を見ると、腐女子はクラクラしちゃうけど、でもやっぱり違うのだ。訴えること、本作が訴えること、それをしっかりくみ取らなくちゃ、だもの!!★★★★★
……落ち着いていこう。冒頭は次の戦地へと向かう列車に乗っている大宮一等兵(カツシン)と有田上等兵(田村高廣)が機関士を締め上げて列車の連結を外させ、脱走を企てるところから始まる。冒頭からめっちゃスリリングな映画の醍醐味!
見事脱走成功!と思いきや突然爆発!どうやら敵の仕掛けた地雷に触ったらしい。
んなわけで大けがした二人は野戦病院に担ぎ込まれちゃうから、また軍隊に連れ戻されるのは判っちゃいるが、そこで超美人のナース、緒方恭子と出会って、大宮はメロメロになっちゃう。実際、緒方恭子を演じる小山明子のまーなんとまー、うっつくしいこと!
軍に戻る前日、大宮が彼女にもじもじしながらお願いを仕掛けるからまさか……と思ったら案の定「あなたの毛をください!髪の毛じゃなくて……もう一つの毛です!!」うっわ!やっぱり!!弾除けに女のアノ毛を兵隊さんが戦地に持っていくというのは聞いたことあるけど、マジか!!
その時は顔をこわばらせて踵を返した恭子サン、しかし旅立ちの日、遠くからじっと見つめてパサリと落とした紙包みの中には……おおお!!なんと大胆な!!
てことは彼女もまた、大宮のことを憎からず思っていたということだよね??正直大宮の恋心ばかりが爆発していて、彼女の方は仕事にマジメに邁進しているようにしか見えなかったが……。
まあとにかく、そのお守りを胸に大宮と有田が送り込まれた4242部隊、通称死に死に部隊は御多分に漏れず、くっだらない縦社会が横行する相変わらずのところ。
大宮は真向から反発して最初っから数々アクシデントを引き起こし、心配する有田上等兵が頭の良さを生かして論破して、かばって。野放図な夫を守り抜く貞淑な奥さんみたい。
その中で、有田上等兵が敵ばかり作る大宮を守るために、一時的にかくまってもらうため相談したのが、本作のキーパーソン、八木曹長である。なんていうか、有田上等兵と似たところがある。冷静で、頭が良くて、情に厚い。それゆえに非業の死を招いてしまうのだが……おっとっと、口が滑った(爆)。
ちなみに大宮が敵に回す先輩兵隊さんは、悪名シリーズでもこのコンビでめっちゃ面白い絡みがあった、芦屋雁之助と芦屋小雁である。なんか悪名の時の彼らを思い出してクスクスしちゃう。
いい意味で小物として存分に存在感を発揮するのよね。態度のデカい大宮を勝手に先輩と思いこんで、風呂で背中流したり按摩したりさ。裸の男三人のマヌケな勘違いシークエンスがおっかしいんだよなあ。
八木曹長は岩波曹長と同じ官舎に同居している。水と油のように違う性格である。彼らの当番兵として詰めることになる大宮だが、最初っから岩波曹長をカモにしておいちょかぶで金を巻き上げまくるあたり、露骨だけど、大宮はやっぱり、男を見る目があるんである。
登板兵ってのはいわゆるおさんどん。炊事洗濯買い物お裁縫と、女中さん以上にくるくると働く。予想外に大宮は勤め上げるんである。
しかし思いがけない事件が。横柄な岩波が八木がいない時にこれ見よがしに連れ込んだ芸者、自分の威信を押し付けるために、女に飢えている大宮に見せつけ、聞かせつけるために違いなかったし、大当たり、大宮はたまらず“いあんちょ”に飛び込んだ。
しかしこの芸者、染子は八木と恋仲にあったのだ。また違う日、八木が染子を連れてきた時、岩波の時とは全く違う、乙女のような染子に大宮はへーえ、と感心する。子供のような彼にとって、まだまだこんな、真剣な恋愛心理など及びもつかないというところだろう。
大宮は有田上等兵に恭子へのラブレターの代筆なんぞを頼んだりしている。まるで中学生のおぼしきである。女は買うけど(爆)。
八木と染子のしみじみとしたやり取りは、一方は兵隊さん、一方は芸者、俺は絶対にお前を連れて帰ると言ったって、まるで霞のような約束なのだ。
だからこそひどく胸に迫る美しい二人のシーン。でもまさかそれが、あんなひどいやりようで破られるとは思ってなかった。
更に前線に出る。大宮は思いがけず恭子と再会する。この地の野戦病院に転属になったのだという。
敵地を攻撃したもののはかばかしい結果は得られず、年老いた男とその孫娘が捕らえられたのみ。とりあえず戦績を残さなければと、この老人をスパイに祭り上げて初年兵たちに突き殺させ、娘の方は“もったいないから”つまり……そういう意味で生かす。
やだやだやだ、だめだめだめ、そんなの、ぜえったい、やだよう!!でも確かによく聞く話だ。エンタメ映画とはいえ、これも確かに戦争映画だ。そんな場面を見せられてしまうのか……と震えていたら、わーいわーい!!そうだよね!こーゆー時は、有田上等兵だよね!!捕虜をどう扱うべきか、いわゆる軍規やプライド論を持ち出して、抗うんである。
当然それに加勢するのが大宮一等兵。同じ初年兵たちにかまわずつき殺せ!!と命令されているのを、及び腰の仲間たちに対して平然と、やめようぜ、と促して踵を返す。
彼の方が岩波よりオーラがあるからみんな従っちゃう。怒った岩波がそれなら自分がと振りかぶった時、ピストルでその場を収めたのが八木だった。岩波と八木。因縁の二人。イヤな予感がした。
その後、有田上等兵は中隊長の指示だという、上官たちからのリンチに遭い、大宮は判りやすく憤るのだが、八木は冷静に彼を鎮めるのだ。彼らに殴られて済めば、有田は軍法会議にかけられずに済む。それが判らないのか、と。
ああ、これぞ大人社会の駆け引きである。子供のように純真な大宮には、こんな風に諭されてやっと判る仕組みなのだ。
判ってしまうと、そのつまらない仕組みに彼は余計にイライラとしてしまう。捕虜になった女の子が中隊長の手込めにされそうになっているのを聞きつけて、見張りを昏倒させて逃がしてしまう。
有田上等兵はそれを聞くと、大宮の無茶さにあきれながらも大笑いする。この場面も大好き。大宮と一本の煙草を一服しあうひとときに、なんであんな、幸せそうな笑顔なの。じーっと大宮を笑顔で見つめながらさ!!もー、恋人かこいつら!!
八木は岩波に殺されてしまう。敵との激しい銃撃戦に紛れての事件だった。八木は部下たちを安全なところに待機させて、一人敵陣に突っ込んでいった。その姿を認めて、敵にやられたと思わせようとしたのだろう、背後から撃った。
卑怯者、卑怯者!!のちに語られるように、こうしたつまらない確執、本来の敵ではなく、味方の中の敵が、戦争という時代の中にはいるのだろう。
だからこれは、戦争映画のように見えて、戦争映画ではないのだ。大宮も有田も戦争や軍隊を憎んで、脱走するのが最後の目的、みたいなことが何よりの証拠だ。
荼毘に付された八木の遺骨の中から、撃たれた弾丸を見つけ出すこと。そして、岩波の拳銃を盗み出し、その弾丸が一致することを証明すること。
その間に恭子さんとの邂逅があり、大宮が捕虜を逃がしたことで無実の罪で重営倉の刑に服している彼女の弟と会わせる引き換えに、エロ中隊長が恭子さんをナニしようとしたところを大宮と有田が間一髪飛び込んでコイツをボッコボコにしちゃうっつー、事件が起こる。
さすがにもうこうなったらただでは済まない。大宮と有田はともに、もうこんなところ逃げるか、逃げちゃいますか!!ということで一致。そんときに先述した、あああの、「貴様とは離れたくない」のだ、自分もです!みたいな、もーもー、きっさまとおれはーてやつだよ。きゃー、やっべー!!
くしゃくしゃの煙草を交換して吸いながら、トラックでめちゃくちゃに逃亡する。正直この時、恭子さんを拾い上げるのが邪魔ッ!!と思っちゃうぐらい萌え萌え千パーセント。マジ死ぬ。
おっと、興奮しすぎて言い忘れたが、逃亡する前に、あのクッソ曹長、岩波に厳然たる証拠を突きつけ、憲兵隊にチクっちゃうもんねー!!と挑発して、出ていく、のだ。
殺さないのだよね。殺すほどの価値さえない、つまりそのことによって自分たちに不利がかかるのを考えれば、そんなことを犯す道理もない、というところ。確かにその通り。ただ……。
染子は悲しき女であった。訳も分からず恋しい男が死に、つまらぬ客でしかない岩波に追悼の夜に呼び寄せられて、硬い表情を崩さなかった彼女。
演じる水谷八重子の、はすっぱな外見ながら、愛する男の前ではしおらしく、大宮の前では弟に対する姉のように無防備に、そしてにっくき男の前で啖呵を切るカッコよさ。
どれがホントの染子?どれもホントだけれど……。恭子さんが徹頭徹尾、清らかで美しい教科書通りのような女性だったのに対して、これぞ女という、虹のような変化を見せてくれる水谷八重子が見事だった。
ああ、それにしてもそれにしてもである。ヤバすぎる大宮一等兵と有田上等兵の萌え萌え。上等兵殿!!マジで死にそう。★★★★☆
ああそれにしてもそれにしても。
もはや大宮と有田上等兵殿のラブストーリーにしか見えない私はおかしいのだろーか。もう最初から、そうとしか見えない。誰か私を止めて(爆)。
本作の最もラブなシーンは、もう待ちきれないから言っちゃうけど、先述した、ひっどい場面においてなんである。大宮はちょっと恋しちゃってた女の子(大体このパターン)とその父親を、日本に帰れる列車が出る駅まで送って行っている。
その間に、まあ来るぞ来るぞとは言われていたし、遺書まで書かされていたぐらいだから覚悟はしていたけれど、ソ連軍の襲撃があって、大宮が戻ってみると死屍累々、見渡す限りバタバタと死んでいる、もうもうと上がる煙が、今、さっきの、ほんのちょっと前のタイミングであったことを示している。
なんという悪運。しかし大宮はなんたって上等兵殿ラブだから、もうこの状態では上等兵殿も!!??と狂ったように死体の顔を確認して回るんである。
彼の胸中を思えば地獄のような時間である。死んでる同胞たちの顔を起こして、上等兵殿だったら、という恐怖に押しつぶされそうになりながら、狂ったように、いやまさに、狂って、上等兵殿の名を叫びながら、いや、そんなレベルじゃない、咆哮しながら、駆けまわる。
ついさっき、ちょいと恋して手まで出しちゃった(爆)、慰問団の女の子、弥生ちゃんに、大宮さん、一緒に日本に帰ろうよ!!とすわ列車に乗るかとゆー寸前だったのを、俺だけ逃げる訳にはいかない!と後ろ髪引かれながら涙の別れをした直後だった。
俺だけ、っつーのは、この場合考えられるような、仲間たちを裏切って、じゃなくて、とーぜん、有田上等兵殿を置いて逃げる訳に行かない、なのは聞かなくっても判るんである。
だっていつだってそうなんだもん。女好きのくせに、すぐヤッちゃうくせに(なのに女たちから憎まれないどころか愛されちゃうところが、カツシンにしかできないキャラである)、ぜえったい、有田上等兵殿の元に帰ってくる。
どんなに理不尽なことに腹が立っても、ケンカをしくさっても、有田上等兵殿の言うことなら聞くし、ケンカを止められれば、野生動物が暴れまくっていたとしか思えない状態でも、ふうふうとなんとか自分を抑える大宮なんである。
その大宮が。有田上等兵を愛してやまない大宮が、この死屍累々の中に有田上等兵殿がいるかもしれないと、血まなこになって駆けまわる。観客はさ、死んでる訳ないさ、だってシリーズも続くんだしとか思ってるんだけど(爆)、でも画がなんたって凄いし、もうこんなにみんなが死んじゃってるんだったらダメだと思ったのだろう大宮が、子供のように泣きじゃくって、上等兵殿の名前を呼んで呼んで……。
その時、すっと、画面の右上から、美しい男の手が下りてきて、大宮の肩をつかむわけ。それでもまだ数秒、気づかずに泣きじゃくっている大宮が、ふとふりむくと、カット替わって、上等兵殿の大宮を見つめるお顔をとらえるわけ!
「……大宮!!」ああもー、あの声、忘れられない。たまらなすぎる。5回はおかわりしたわ!「大宮、大宮!」「上等兵殿ー!!」泣きじゃくる大宮とおでこをくっつけあい(!!!!!)がっしと抱き合うこのシーンは、もはや私の妄想ではないでしょ!
え?不謹慎??そうかもしれないけど……極限状況だからなおさら、妄想も爆発しちゃって、てゆーか、大宮の子供のような泣き声と、あのいい声で大宮に呼びかける有田上等兵、音声だけでもあらぬ画をああもう、あざーっっす!!すよ!!おい妄想女、なんとかしろ……。
このシーンが良すぎて、筆を費やしすぎてしまった(爆)。いきなりどーでもいーことに戻るが、本作品の有田上等兵=田村高廣は、ちょっと髪が伸び加減で、好みとしてはボーズの方が良かったかなあ。こんな短期間に集中的に撮っているし、映画黄金期だから、なかなか合わせるのがムズかしいのかもしれない。
で、まあざっと物語を追うと(ようやくか……)前半と後半でくっきり分かれている感じ。そう、あのラブなシーンを境目にして、である。
前半は、いつものように大宮と有田上等兵殿は一兵卒としてのらりくらりと軍隊生活を送っているけれど、先述のように玉砕ムードが漂っている。でも二人だけは、俺たちは死なないもんねー!!みたいなことを、相変わらずラブなムードで言い交してる訳。
でもあんな壮絶なシークエンスが中盤にあって、たった二人生き残って、どこともしれず逃げていく先で、本作のキーワードとなる、満人ゲリラの襲撃に遭う。前半シークエンスの慰問団にいた父と娘も、後半助けを求めてくる北満にいた開拓団も、そのために命からがらになっており、軍隊に助けを求めてくるんである。
もはや勝ち目のない戦争だということが判ってきている時期で、軍隊としては玉砕直前、前半シークエンスでは迷い込んできた慰問団からのはぐれ娘をてごめにしようとしたり、後半シークエンスではもう玉砕するから助けられない、というのを有田上等兵殿が同胞を見捨てられないからと、ムリを言って最小限の陣営で救出に向かう。当然大宮も一緒である。
この後半シークエンスでは、殲滅された軍隊からの生き残りである二人が、満人ゲリラに襲撃され、運よく撃退、そのアジトに残されていた日本軍から略奪した制服やら武器やら何やかにやを失敬し、にわか将校に変身して、別の隊に潜り込むんである。
大宮は、また軍隊に入るスか、てな具合でおかんむりだが、終戦直前、日本は敗色濃厚、どころか、もう玉砕するしかないところにあって、敵対国よりも地元ゲリラの方が危険な状況、というのは、こうした娯楽映画といえども、当時の時間に近い時代に製作されたリアリティがひしひしと迫るんである。
それまでは二人とも一兵卒に過ぎなかったのが、ニセ将校になったことで、コントみたいな展開が続々と。当然、そのほとんどは大宮だが(爆)。
大学はどこだと言われて苦し紛れに東京大学(!!)、科はどこかと問われて、捜査一課と答える大宮に有田上等兵は始終ハラハラ。しかしそんなざっくばらんさが上官からも部下からも慕われたのは、それこそもはや玉砕するしかない空気感の時だったからなのかもしれない。
思いがけない、敵ゲストである。あーもう、私大好き、成田三樹夫っ。かつて二人を苦しめた憲兵が、「俺もお前たちと同じだよ」と偽っている身分は、しかし彼らとは逆に、下の身分にしている。
彼が言うところによると、今の状況では位が高いほど、ヤバい。敵国に捕まったら、捕虜になるのは下っ端であり、位が上ほど問答無用に殺されるのだと。な、なるほど、そうかも……。
前半シークエンスでは奇跡の生き残りであった大宮と有田上等兵だったから、ニセ将校になってからの面白シークエンスを笑いながら見ていたけれど、確かに、そうかもしれないと思ったところから、緊張して対峙し始めるんである。
冷たい美貌(なんたって成田三樹夫だもぉん)の元憲兵の彼は、しれっと二人を脱走の計画に誘ったりもするのだが、上等兵殿がきっぱり断っちゃう。大宮は当然、上等兵殿の言うことは聞くから(爆)。
大宮は単純だから、ちょいちょい上官とのトラブルを引き起こすのは毎度のこと。前半シークエンスでも、日本への帰還をエサにして、上官たちだけを“慰安”しろと慰問団の娘、弥生に強要したゲスどもをぼっこぼこにしたが、彼自身が同じ目的で夜這いしようとしていたんだから(爆)。
後半シークエンスではとにかく、ニセ将校が板につかなくて有田上等兵殿を再三ハラハラさせるのが腐女子はキュンキュンしまくるのだが、思いがけずその素直な性根が、玉砕直前でささくれだった兵隊さんたちの心をいやすんだから、ホント、上手いんだよなあ。
そんな具合にハッキリ二分割されている構成なんだけど、前半の胸が詰まるようなシリアスから、コントみたいな偽装将校で乗り込む後半の構成がホンットに引き込まれる。
そして後半、前半のあんな目も覆うような残酷な場面はないにしても、ゲリラからの執拗な襲撃に怯えながらの同胞たちを救出に行く中で、お互いニセモノ同士である青柳と対決し、仲間に対して信頼を得るかどうか、というスリリングな展開に心打たれるのだ。
つまりはさ、肩書なんて必要なのと。その人を信用するか否かじゃないかだと。大宮も有田上等兵もニセ将校だったけど、誠実かつ自由な気風で兵隊さんたちの心をつかんでいた。青柳の暴露で一度は心揺れたにしても、有田上等兵の魂の説得に、誰もが従ってくれたんである。
小さな坊やが頑張って歩く姿に涙しちゃうオバチャン(爆)。その行軍でラストっていうのは、厳しいこの時代、戦争末期の時代を描きながら、見事に希望のある未来を描いてくれているんだよね。
このシリーズから何十年と経っているけれど、本当に普遍な価値観を語ってくれているし、女好きなのに有田上等兵が大好きな大宮が可愛くて仕方ないし、有田上等兵が素敵すぎてマジ死ぬし(爆)、何この奇跡のシリーズ!!!と思う。
今の時代に戦争をテーマにした映画を作ろうとしたら、こういう映画は絶対に作れない。湿っぽいばかりでリアリティもない(画的リアリティはやたらあるが)ものしか作れないのは、時代的に仕方ないのなら、今それを作る必要があるのかと思っちゃう。
あ!言い忘れた!!私、有田上等兵殿の「バカ!」が大好物なのだが、本作でもありまする。
部隊に紛れ込んできた女性、男どもはピチピチの慰安婦がきた!!と色めき立ち、大宮も「ここで女が抱けるとは」と神様に感謝するというバカっぷりだが、当の大宮が連れて来たのに女性だと気づいていないことに、有田上等兵が「バカ」と軽くいなすあの感じ!!あの「バカ」の響きの絶妙さ!!
もーねー、有田上等兵殿=田村高廣が大宮=カツシンにくだされまする「バカ」の愛しいバリエーションには、ノックダウンされまくりなの!!おかわりしまくって、全然進まなくて困ってるわ!!
★★★★★
そして3回目はラストだ。ソ連軍の攻撃から女子供を先に逃がすために上層部と大喧嘩して、二人と心を通わせてきた珠子をトラックに乗せる。有田上等兵に背後を守らせて、大宮は珠子を押し込んだついでにそのまま乗っちゃう。そしてそのまま走っていくトラックの荷台でチュッチュチュッ!おいおいおい、有田上等兵置き去りにしてなにやってんだ!!と気をもんだのも一瞬、ハッと気づいた大宮は、珠子から、私より有田さんが好きなの?とこれ以上ない切り札の台詞を浴びせられてもへのかっぱ、まったく迷いなく飛び降りて、「上等兵どのー!!!!」全力疾走!!てめーら愛し合ってんな!!
そして二人向かい合うのがラストなのだが、日本だからハグはしないが、笑顔で見つめ合うだけなのだが、あああ、心の中ではギュッと抱きしめ合ってる、このヤロー!!
……はい、すみません。もう最初に言っておかなきゃ、途中で立ち止まっちゃうと、話が進まなくなるんだもぉん。
しかし、先述のように大宮は、カツシンが実に楽しそうにイキイキと演じるように、ザ・女好きで。まあね、なんたって女に飢えてる軍隊という舞台背景だからにしても、大宮は正しく女好きな訳なんだけれど、でもそれよりなにより、上等兵殿!なんだもの。彼と一緒にいることこそが大事なんだもの。子犬のようにかわいい瞳をキラッキラさせて、上等兵殿―!!大宮!!死ぬわ!!
……だからこのあたりにしておかなきゃ。えーと、今回、おっ、と目を惹くゲストさんがいる。田中邦衛!!あの突き出た唇!田中邦衛が演じる沢村と二人の出会いは、冒頭、脱走した有田と大宮がつかまってブチこまれた軍の刑務所の中である。二人、というか、大宮の方ね。二人は房を分けられたから。
沢村はケチな盗みを重ねてここにいる訳なのだが、後に、なぜそんなことをしていたのかが判る。だってここでは奇妙なほどの模範囚、そんな模範囚になれるぐらいなら、最初からそんなケチなことしとかなきゃいいじゃん、と思う訳さ。
大宮が、カツシン味タップリに、この刑務所の中でも反抗心むきだしにして、目立つことばかりすることを心配して、食事を削られた彼にこっそり自分のご飯を分けてやったりする優しい男。……だから、なあんか、この時点でイヤな予感はするわけ。ああ、きっと、今回は彼が死んじゃう役割なんだと。
当たっちゃうんだよなあ。兵隊やくざは、戦争、軍隊の舞台を借りた、社会の縮図。形骸化された上下関係に押し込まれて、理不尽な思いをする現代社会の息苦しさを、水戸黄門的勧善懲悪の気持ちで二人がぶっ飛ばすのだが、なんたって舞台は戦争、軍隊なもんだから、生々しく、痛々しく、心が痛い爪痕を残す。
沢村はまだ新婚の恋女房を片時も忘れずにいる。ケチな盗みを働いていたのも、現地人とこっそり取引して、より金になるヒスイをため込む戦法で、その時期が来たら、一日も早く帰れるように準備してる。「俺は久子をもっとかわいがらなきゃ死ねねえ!」と大宮に血を吐くように告白するんである。
ちなみにここは、最初の刑務所じゃない。沢村はいい子ちゃんしておべっかつかって刑務所を出た。
その後、有田上等兵と大宮一等兵はまたしても脱走を試みて見事に失敗、今度こそは銃殺刑だと覚悟したところで、有田上等兵の大学時代の友人が上官として事に当たったことから、最前線に送り込まれるにしても命拾いをした(ちなみにこの時のやりとりが、一回目私が死んだ場面である(爆))。その送り込まれた先で、沢村と出会ったんである。
現地に向かう列車に、しつこい客から逃れて飛び込んできたのが珠子である。助けてくれた二人とすっかり仲良くなり、「お店に来てよ。うんとサービスしちゃう!!」と、彼女はこの激烈な戦時中の中で、不思議なぐらいあっけらかんとしている。
戦争という時代の中で、戦地である外地のあちこちを、激しい前線を追うようにして転々としてきたのだという彼女は、最終的に日本に帰れるという段になってもなんだか乗り気じゃないし、この時代、この仕事、故郷から遠く離れてこそ、妙に生き生きとした女の魅力にあふれている。
その裏にどんな人生があったのか、特段明かされはしないものの、彼女が有田上等兵と大宮一等兵という、一風変わった組み合わせの二人にホレこんで、まるで「はなればなれに」みたいな組み合わせでさ。
時代や情勢を一時忘れたかのように楽し気に酒を酌み交わし、ちょっとエッチなことをしちゃったりするのが、夢のようで。
それに比しての、沢村の女房への純愛。それまでしたたかにおべっかを使って世渡りしてきたつもりだった。そう、つもりだった、ということなのだ。佐々木班長は、非情、いや、自分勝手、いやいや、勘違いヤロー!とにかく、ああ、サイテーなことに、沢村がこっそり隠し持っているヒスイを奪う、ただそれだけのために、彼を撃ち殺してしまう。
しかも計画的、用意周到、勝手な行動をしている大宮一等兵を監視に行かせるという命令のために呼び出し、呼び止め、ヒスイのことを正し、卑怯なことに背後から彼を撃ち殺す!
監視当番に当たっていた有田上等兵は銃声を聞き、駆けつけて沢村の死体を発見する。班長は、逃亡しようとしたから撃ち殺した、としゃらりと言い放つ。釈然としない思いを抱えて沢村の死体を運ぶ途中で、カモをゲットしたご褒美で外出許可をもらっていた大宮一等兵の帰りに行き合う。
思いがけない沢村の死に呆然とする大宮は、彼が打ち明けてくれたヒスイのことを思い出し、遺体を改めてみるが、当然、ないのだ。もし、本当にそういうことなのだとしたら、絶対に許せない!
大宮は五右衛門風呂に入浴中の班長の三助を務めつつ、なにげなく脱ぎ捨てられた衣服をあらためると、ヒスイが入っているとおぼしきお守り袋があり、大宮がそれを手に取っただけで激高した班長の態度で、確信に変わった。
どうしたものかと案じているうちに、突然のソ連軍の攻撃。こうなると慌てふためいて逃げ出しちゃう班長に心底失望、いや違うな、失望っつーのは、期待していたのに、ってことだから。やっぱりそーゆー奴だったんだなという、判っちゃいたけどなガッカリ感。
こういう非常事態にこそ指揮をとらなければいけない班長が逃げ出したことで、有田上等兵と大宮一等兵は、彼を討つにはこの時しかない、と、特段言葉を交わさずとも、通じ合ったんだろうなあ。こーゆーところも、腐女子が萌えるところよ(爆)。
班長はヤハリ、珠子のところに逃げ込んでた。彼女には確かに執着していたし、内地に連れ帰るんだと言っていたし、本当にホレていたんだろうけれど、彼女の心をとらえるまでには至ってなかったからさ。そこに有田上等兵、大宮一等兵が彼を探し当ててくる。
……正直、有田上等兵が班長を問答無用で撃ち殺したのは、ショックだった。そりゃ、沢村のことを考えれば、こんなヤツ死んで当然、キチクめ!!とは思うけれど、これまで何作か見てきた中での有田上等兵は、その選択をしたのを見たこと、なかったからさ……。
本当に数作しか見てないから、私がビギナーなだけなんだろうとは思うんだけど、心優しき有田上等兵が、どんなにキチクな相手であり、そして相手から銃口を向けられ、つまりは正当防衛という形ではあるものの、しっかり、はっきり、殺す意志で撃ち殺したのが、なんかホントに、ショックで……。
ああ、私は、甘い、甘かった、んだろうなあ。特に本作に関してはさ、戦争、軍隊に設定を借りた腐女子のためのラブラブシリーズだ!!と狂喜しまくってさ。
もちろん、戦争や軍隊に対する強烈なアンチテーゼを毎回感じて、背筋が伸びる気持ちになるのはあったにしても、有田上等兵は、演じる田村高廣は、心優しい上等兵殿、という大前提があったから……。
まあその前に、大宮一等兵がコイツをボッコボコにしてるんだけどさ(爆)。でも、ボッコボコにするのと、撃ち殺しちゃうのとは、全然違う話だからさ……。
ソ連軍が攻め入ってくる。「生きていてもどうせソ連軍に殺されるんだよ」と、やけに静かに有田上等兵は言った。それは班長が自分の職責を自覚してまっとうしようとした場合であり、しようとしなかったからここにいるんであり、つまりは、ソ連軍の代わりに自分が成敗した、という意味合いにもとれちゃって。なんだかここだけ、私の好きな、ラブな有田上等兵と違う気がする!!少し、悲しかった……。
気を取り直す。もう最初に萌え萌えポイントで熱く語っちゃった通り、傲慢な上層部をぶちのめし、女子供を避難させる。それには、沢村のヒスイが媚薬として大いに役立つんである。
ああ沢村。田中邦衛が演じるもんだから、哀切さがずっと後まで充満して、引きずっちゃって。そして先述でしつこく言っちゃった、上等兵殿が相手はキチクとはいえ、問答無用で撃ち殺してしまったショックもあったりして、すこぅし、いつもとは違う感慨の兵隊やくざだったかもしれない。
つーか私は一体何を求めてるんだ(爆)。腐女子混乱しすぎてるわ(爆爆)。★★★★☆
本格的な殺し屋映画、ガンアクション、肉体アクションというのは、気鋭のクリエイターによって時々唐突に現れる。「メランコリック」が記憶に新しいところでもある。オフビートな面白さという点でもちょっと共通しているけれど、かの作品と圧倒的に対照的なのは、あちらは男の子映画、こちらは女の子映画。
そう!私の!!大好きな!!!女の子の映画!!!!!はぁー、これを見逃ししそうになっていたとは、なんという私は愚か者!!
殺し屋を生業にしている女の子二人、高校を卒業すると同時に、それまでは寮に入れてもらっていたのに、社会人になって自立しなさいと、追い出される。生業の殺し屋として給料はもらっているのに、社会人になれ、というのは理屈としてはおかしいのだけれど、いわゆる、一般社会を知らないというのは良くない、バイトという形で社会人として世の中と関わりなさい、ということ。
……というのは物語的な後付けとゆーか、アルバイトしながら殺し屋稼業、時にアルバイトを優先しちゃったり、殺し屋気質がアルバイト中や面接中に出ちゃったり、といった面白さに付与するアイディアだろうが、確かにこれは、なんとまあ秀逸なアイディアであろう!
女子高生で殺し屋やってた時は、かわゆい制服姿で路地裏で標的を仕留め、先にチケットを取ってて良かったね、と二人連れだって映画を観に行く、なんて女子高生ライフを送っていた。こう書いてみてもアゼンとするような、鮮烈なアイディア、画にしたのを見ても鮮烈なシークエンスである。
アイディアは面白い映画の必須条件だが、それを実際に画にして見た時に、そのアイディアが何倍にも増幅する魅力を放った時、もうこれは、大成功中の大成功なのだっ。
バディものでは必須ではあるにしても、素晴らしく対照的な二人で、素晴らしく魅力的な二人、なんである。ちさとを演じる高石あかり嬢のヴィヴィッドな美少女っぷりには完全にノックダウンである。
彼女はバディとなるまひろ役の伊澤彩織嬢に比して、いわば通常の女優さんであり、彼女のアクションはガンアクションのみ(のみ、というのもヘンな言い方だが)なのだが、伊澤嬢がガチのスタントウーマンで、めっちゃ素晴らしすぎるアクションを見せてくれるだけに、ちょっとでもショボければガッカリだし、対等なバディものにならない。もちろんそれは、監督さんの演出、作劇、編集の手腕であろうけれど、あかり嬢の超絶メリハリのきいた凄みのある芝居が大きく作用している。
ああでもこれも、演出の妙味、だよな!!そうしたメリハリが明確なちさとに対して、コミュニケーション能力に難を持っているまひろはローテンションのまま推移するし、だからこそアクションシーンで爆発する、また全く別のメリハリがある訳でさ。そう思うと、なんと上手いキャラ設定というか、配置というか!!
まひろにはすべての女子が、キュンキュンホレてしまうであろう。ぜえったいに、女子にキャーキャー言われるタイプである。そしてそーゆー女の子は総じて、自身それに気づいてなくて、無駄に自己嫌悪に陥ったりしてる訳である。あなたねー、めっちゃカッコいいよ、もう、女の子はみんなホレちゃうよ!!(それが誉め言葉なのかどうかは判らんが……)
“コミュ障”と自身も落ち込み、そしてちさとからも糾弾されるまひろだが、その格闘能力は天下一品で、世渡り上手であるちさとに比して確かに不器用だし、メイドカフェのユニフォームの似合わなさとか、痛々しくなるぐらいなんだけど、もうこれぞ、ギャップ萌え。不器用な無造作な普段と、悪党どもと闘うアクションのかっちょ良さとなんというギャップ萌えよ!!
てゆーか、お給料制で殺し屋稼業をきっちりとこなしていれば、特段問題もないぐらいに、二人は実力があったし、だからこそ社会人になれと追い出されるまでは、何の問題もなかったのだろう。
まひろの内向的な性格=コミュ障が目立つものの、そつなくバイト先にもなじむ社会性を持つちさとこそが、本来の殺し屋稼業から逸脱するトラブルをさんざん持ち込むんであって、結局この二人、イーブンなんじゃんというあたりが可笑しい。
でも一見して、ちさとがバイトもこなして社会性を持っているのに対して、バイトの面接さえ受からず、自分は社会的にダメな人間なんじゃないかと落ち込んでいくまひろという図式で、うっかりそうだよねーと観客側が受け入れそうになるんだけど、いやいやいや。
二人の生業は殺し屋であり、それを全うしないで社会的正当性を確立しているちさとの方が評価される?いやいやいや、そもそも殺し屋を評価するって何??いやいやいやいや、これはそーゆー全きエンタメなんだから!!と、楽しい混乱に陥りまくる。
本当に秀逸なアイディアと、それを体現してくれるキャラ立ちまくりメリハリ聞きまくりのヒロイン二人の魅力バクハツよ!!
まひろを演じる現役スタントウーマンである伊澤彩織嬢の存在そのものに、本当に嬉しくなった。不勉強ながら彼女の存在は知らなかった。てゆーか、現代のスタントマン、スタントウーマンの現状を全く知らないからさ。
私の青春時代、ジャッキー、ユンピョウ、サモハン、アクションが出来るスターが当たり前のように活躍していた時代、それこそが!!と思っていたから、もうなんか、嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。
不器用で内向的なキャラと爆発するアクションのギャップ萌えも当然あるが、もうなんか……ホレちゃうよ。だってお顔立ちも可愛らしいし、その可愛らしさは、派手なそれであるバディのちさとと対照的なのもイイ。
この二人のだらだらとした生活といい、仕事や信条でぶつかり合うところといい、キャラと共に価値観や展開も真反対で、なのに二人でいると最強だし、二人でいるとほっこり居心地いいし、時にケンカしても、それがお互い意地っ張りだったってことを自覚していて、特にまひろがちさとに意を決して謝る場面の萌え萌えさ!もう涙出る!!恋愛以上の愛だと思っちゃう!!
本宮泰風氏が出演していることが、ほんっとうに、大きな存在感である。Vシネ王である彼は、その殿堂入りである哀川翔氏がその域に達した後に見せてくれたような、セルフパロディ的な役柄で大いに楽しませてくれる。
これは、その位置を確立した人でしかできない芸当だし、それを、新進の才能あるクリエイターの作品に面白がって参加してほんっきで、マジで、シリアス極道演技でわらかしてくれるのが、マジにサイコーでさ!!
言葉通りにしか受け取れない、おつり200万円のジョークや、「俺は油なんか売ってない」というツカミから始まって、稼げるシノギの偵察で入ったメイドカフェで、最初こそニコニコ楽しんでいたのはムリしていたのか。
バカにしてんのか、ふざけんなコラァ!!と突然キレる、改めて思い返せば短い出番なんだけど、確立された本宮泰風というスターのセルフパロディを、めっちゃ楽しんで演じている感じが素敵!!
そのダメダメ親分は居合わせた新進バイトのちさとによってぶっ殺され、その手下どもとの対決がクライマックスとなる。つまりは、殺し屋としての仕事じゃなく、こらえ性がなくてやっちまったちさとの後始末である。
ちさとは対社会的能力はまひろに比しては充分にあると思われるのに、実際に社会に出る場面がまひろよりは多い分、こうしたダメダメもあるということは、二人は確かに対照的だけど、意外に似た者同士というか、どっちもどっちというか(爆)。
本当に、絶妙なんだよなあ。二人は一時、バイトと生業への立ち向かい方、社会への適応不適応もあってケンカになって、ケンアクになり、一緒に仕事をするなんて状態にすらなくなってしまう。
殺し屋としての仕事を全うしているけれど、社会人としてのバイトがまるで続かないまひろ、バイトが優先になってしまって、そもそもの生業より社会性が人として大事なんじゃないかとまひろとのケンカ状態から思っちゃうちさと。
うーむ、殺し屋よりそりゃあさ、と現実常識に立ち返って思ってしまっては、本作のエンタテインメントとしての、フィクションとしての楽しみから離れちゃうんだけどさ!!
でもなんか、そんな風に、実際の常識から離れて考えちゃう、そんなチャームが二人に、そしてこの物語世界にあるんだもの。正直、ババアの耳にはなかなか聞き取れない早口の台詞回しにちょっと、ちょっと待って!!とも思った部分もあったさ。でも、めちゃくちゃ、良かった。やられちゃったなあ。何より伊澤彩織嬢のアクションが何より素晴らしくてうっとり見ちゃった。ほんっとに、ジャッキー映画にコーフンしてたあの時を思い出したもの。
そして彼女のバディとして、女の子もクラクラ来ちゃうような、なるほど、舞台で禰豆子を演じた!想像するだけでワクワクするわ!!とゆー、もうなんつーか、キャラくっきり感ハンパないちさとをえんじる高石あかり嬢の強烈なツンデレ感よ。マジこの二人最強。まひろは女の子のセンパイ愛心をくすぐるし、ちさとはそんなセンパイ愛に完璧な相手である美少女であるしさ!!
一時はケンアクになり、仕事以外でトラブルを抱え、、組織側で、この二人を無理に同居させるのは良くないのかも……と二人に打診するラストである。もちろん、この場面に呼応するケンアクだった時点での、同じ喫茶店、同じスタッフとの会合、というスタンス。なんかもう、笑っちゃう、嬉しくっちゃう。
ケンアクだった時には、もう思いっきり、違う方向向いてた。だから、組織側でも、もうこの二人ではだめかと思った。でも、同居を解消してもいいのだという提案をすると、二人顔を見合わせて、……その答えは明かされないままラストクレジットに至るけれど、あの二人の、絶妙なないよね、という、顔!ああ、女の子ラブ!女の子バディラブだわー!!★★★★★