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桃色女体図鑑 (恋愛図鑑 フってフラれて、でも濡れて)
2015年 70分 日本 カラー
監督:竹洞哲也 脚本:
撮影:創優和 音楽:與語一平
出演:友田彩也香 加藤ツバキ 樹花凜 横山みれい ダーリン石川 イワヤケンジ 倖田李梨 津田篤
公開順序からいえば私は後の方から見てしまって、確かに時間軸、構成を考えればそうなのだけれど、二作を見ると交互に頭を巡らして楽しめる見事な人間模様と構成に感嘆せざるを得ない。メインキャラが、定まらない魅力というのがあるんだということを、二作通して観て改めて実感する。
本作でまずヒロインとして語られるのは、「艶色」でもスタートを任される、ピンク女優、聡美。「艶色」の時に付き合っている助監督との恋は、共演男優との大失恋の後の成り行き、と語られていたから、当然その大失恋が描かれることは予想していた。
これがねぇ……これが、男性が書いている脚本とは思えないほど(失礼!!)ほんっとうに、女子としてこーゆー男子サイッテー!!と共感するヤツなの。まぁ、男子側に自覚があるということなのかもしれないけど(爆)。
付き合いも長くなり、年齢的にも結婚を望み始めた聡美に途端にメンドくさくなり、現場でケンカを吹っかけて彼女を泣かせ、役者なら仕事しろよ!と罵倒する男。
スゴいのはその直後、憤然と車を降りた彼が、やったった!男の不誠実を役者としての誠実でごまかしたった!とうきうきスキップで表現することなんである。ななななんと(汗)。
「艶色」で、女優を現場で罵倒した男優というレッテルから仕事が干されたことは判っていたたものの、こーゆー彼本来の気質がそもそもスタッフたちにも知れていたということなのだろうと合点がいく。
男優は数が少ないから重宝されるけれども、ピンク映画の世界で大事なのは女優に他ならないのだから。
その相手の女というのが、「艶色」の方ではこれぞワキ中のワキ、聡美が琢磨との別れの後、成り行きで付き合った助監督、良がたった一本監督を任されたけれどハズしにハズした、素人女子大生のAV作品に出ていた理佳である。
もうほんと、「艶色」ではまさにAV出演場面だけなのが強烈なインパクトで、うーうーうー、という喘ぎ声って、聞いたことない。琢磨が携帯のバイブ音とソックリだというのには思わず噴き出すが、でもそんな彼女を面白いと言うのなら、その面白さこそを愛してくれればよかったのだ。
結局、琢磨も言い、理佳のかつての同級生であるイケイケ女子、凜も言う、面白いね、っていうのは、逃げなんだよね。自分の価値観では理解できない、ハッキリ言っちゃえばつまんないヤツと思う相手に、優越感から、自分とは違うという点からの表現で、面白いね、と言う。
凜が言うように、琢磨はそこからの変貌を期待していたのだろうが、自身育ててるつもりが、彼女を委縮させるばかりだったのだから、おめーがなんの手腕もなかったってことだし、そもそもこの面白さを、本当に理解なんかしてなかったってことだよ!!
そーゆー意味では凜は意外に、イイヤツである。「艶色」では、彼女の姉の房子の方に、てゆーか房子を演じる加藤ツバキ嬢にすっかりホレこんでしまっていたから、姉に敵対するイケイケ妹に私まで敵対する気持ちだったんだけど(爆)。
明らかに住む世界が違う、というか、生物学的に違うというか(爆)な理佳に、場数とギャップ萌えの伝授をする。私が力になるから!!と押し出すのは、結果的には実を結ばなかったけれど、彼女のアドヴァイス自体はある意味では的を射ていたと思うし、案外純粋な友情を感じたんだよなあ。
凜が場数として理佳に紹介したのは、凜の姉と結婚することとなるキャベツ農家の跡取り息子、義男である。凜のアドヴァイスに従って真っ赤な勝負ブラジャーを身につけ、ちょっと触れられるたびにボタンを押されたサイレンのようにああんああんと言う理佳には爆笑してしまう。
それを、真正エロ女として軽蔑する義男に、おめーぜんっぜん女見る目ねーな!!と憤慨しちゃうんである。だって義男はホントの真正エロ女である凜を、それは自分を武装している弱さだと思い込み、まだ女の喜びを知らずに言われた通り一生懸命アンアン言っている理佳をそれ通りに受け取ってしまうのだから!
あーもう、ガッカリガッカリ。同性から見れば、理佳はつまんない女どころか、めっちゃ可愛い、チャーミングな、本当の意味での“面白い”女の子なのに!!
「艶色」で最高にホレこんだ加藤ツバキ嬢扮する房子と義男のお見合いは、義男から色目を使われてウンザリしていた凜の画策があったらしいが、なんでそれをわざわざお姉ちゃんに言うかなー。
このマウントとる態度がそらーお姉ちゃんにとってはムカつく訳だが、結果的に、そう、私が先に観てしまった二作目で、妹が画策した義男との見合いを結果的には受け入れた房子が、妹は得られなかった女の幸せを(まあこれも、今の時代単純に言うのはどうかとも思うが)ゲットした訳なんだけれど。
でもそうか、こういう経過だったのかと、思う。ただ単に、自由奔放な妹に対して、それゆえつまづいちゃった妹に対して、してやったった!とダンナとのラブラブと大きなお腹を見せつけていただけかと思っていたから。
妹からの払い下げ(ヒドい言い方だが……)ならば余計に、あんたはじゃあこれ以上の幸せを手にできるのか、おめーが捨てたゴミは意外に拾いもんだったってアピール、相当に強烈だもの。
物語の最後は、やはり聡美に戻ってくる。思い出のように、時間軸を戻して。
これがピンク映画であり、劇中劇というか、劇中映画というか、役者として奮闘し、でもその中で恋人同士で、台詞の中に愛の真実と虚像を同時に感じ、ぶつかり合う役者、そしてスタッフの姿に、観客としては、ファンとしては、グッとくるものを感じずにはいられない。
なれ合いの関係で、現場では彼女相手にはマエバリをしなくなる琢磨。「仕事では勃たないから」という聡美のモノローグにひどく哀しい色合いを感じてしまうのは、深読みしすぎなのだろうか。
だって、彼女との共演に関しては、という意味付けを感じたし、つまり、新鮮な出会いである他の女優とならば違う、ってことなんでしょと思うからさ……。
「艶色」にも確実に、如実に感じた、ここには本気のセックスがひとつもない、芝居や打算、感じないままだったり妄想の中のそれだったり。本気のラブのセックスが、愛し合ってるセックスが一つもない哀しさ、なのだ。
ことに理佳、彼女は処女のままAVに出て、プライベート処女で琢磨と付き合うことになるけれどもイマイチ喜びを感じることが出来ず、それは自身に問題があるのだと言われて、好きでもない男の前でエロを演じて……。哀しすぎるだろ……こんなにカワイイ女の子いないと思うのに。みんな見る目がなさすぎる!!
聡美が言う、コンドームを使う男への、困るから使うんでしょ、と言う吐き捨て。私ら世代では、女が妊娠しちゃうことによって、社会との接点を断たれるぐらいの、いっちばん、結婚や出産、子供を持つことへの希望が持てない世代だったからさ、何てゆーか、複雑な気持、なのよ。
うちらは、なんとか結婚も出産もせず、子育てという女が陥らなければならないとされていた地獄にどうやって落ちないで、人間らしく生きられるかを、必死に模索している世代(そーゆー輩もいたということさ。誤解を招くもんね、こーゆー言い方しちゃうと)なのだよ。
聡美はピンク女優という立場もあって、女性としての生き方、仕事の先行きも考えての切羽詰まり方。凜、その姉の房子、ずっとランク外の女であったと自嘲する理佳……誰もが、私の中にいる、頑張って生きてきた女性の中にいる苦しさだと、思う。
改めて、この二本を続けて観たい、と思う。公開順序からすれば間違ったのかもしれない(汗)と思うと余計に。
でもでも、これは本当に……凄い二作=一本の完成作品だと思う。千差万別の魅力を放つ、すべてがメインを張っている女優さんたちの素晴らしさよ!!★★★★☆