home!

「わ」

2023年鑑賞作品

若妻のエロティック体験〜奇妙な白日夢〜 (若妻トライアングル ぎゅっとしめる)
2019年 74分 日本 カラー
監督:山内大輔 脚本:山内大輔
撮影:田宮健彦 音楽:Project T&K
出演: きみと歩実 桜木優希音 真木今日子 泉正太郎 安藤ヒロキオ 森羅万象


2023/2/17/金 録画(チャンネルNECO)
えっ、えっ、これって、どういうこと!?妄想オチ?それとも夫の策略??はたまた妻の多重人格??
……いかようにもとれる、観客にゆだねられているのか、あるいは作り手の側には明確な答えがあったのか……。

データベースを見ると、三人の女たちにはそれぞれ、マリカ、まりか、茉莉花、と役名がつけられている。夫が呼びかける、あるいは間男が呼びかける音は同じでも三人の女がいて、でも恐らくその人格は、一緒??
そして繰り返される同じ一日。タイムループ、そうだ……「MONDAYS」の世界だ……。
ヒロインのマリカでありまりかであり茉莉花は、自分でない自分に次々と入れ替わり、同じ一日を繰り返す。一年前に再会を約束したと言って訪ねてくる田中という男と情交を繰り返す。

ややこしいのでマリカ、で統一しておくが、実際、役名でマリカ、とつけられているきみと歩実嬢が基本人格、というか、彼女こそが乗っ取られていく。
正直あと二人の女優さんは、特に二人目さんが、ちょっとお芝居がアレであり(ゴメン!!)近年のピンク作品で引っ張りだこのきみと歩実嬢の存在感によって引っ張っていく感があり、それがネラいだったというわけではなかろうが、そう考えるとこの役どころは想像以上に難しいんじゃなかろうかと思われる。

マリカと夫の那津男は一見、幸福そうな夫婦に見えるけれど、冒頭まず示されるのは、ぼんやりと料理を作り、ラップをかけたおかずをテーブルに用意してぼんやりと夫を待つマリカなんである。
そしてもう一つ、決定的に気になるのはマリカが、別人格になっても、トイレから出てきて妊娠検査薬の結果をこれまたぼんやりとした表情で眺めていることなんである。しかも、電気をつけ忘れたような、薄暗い部屋の中で。

表面的には、きちんと帰って来る夫はおいしそうに食事をし、マリカと愛し合い、マリカが物足りなくて、そのまま抱いていて、という、そんなラブラブに見えた。
確かに後から考えてみれば、夫はとりあえずセックスをして、もう疲れてるから寝るよ、ぐらいのスタンスに見えなくもなかったけれど、冷たい描写でもなく、マリカにとってはいい夫に見えたのは、彼女がそう思いたかっただけなのだろうか??
子供が出来ないことに焦って、多重人格妄想を引き起こしたのか、子供を欲しがっているのは夫だったのか、夫が浮気していると思って探偵を雇ったのは彼女の思い込みだったのか。

おっと、先走ってしまったけれど、マリカが探偵を雇っていたという描写は後半、唐突に現れる。マリカはあくまでタイムループの中に閉じ込められ、夫のために夕食のカレーライスを作り、朝食のホットドッグを作る。
ホットドッグに挟むのは、千切りのキャベツをマスタードとマヨネーズで和えたものと、魚肉ソーセージ。この魚肉ソーセージがわっかりやすくピンク的エロを演出するのだけれど、最初はナンセンスな、ペニスの形にピーラーで形作ってオナったりして、わー、ピンクやわー、と思ったりするんだけれど、結構しつこく全編通して登場することに、やっぱ意味があるんちゃうと思っちゃう。

深読みしようとすればいくらでもできる。寸止めで満足できてないマリカが、夫との出がけのイチャイチャを妄想する序盤から、ぼんやりとよだれをたれた彼女の妄想フェイスに笑わせられる中で、魚肉ソーセージは存在感を発揮する。

きみと歩実嬢はこんな具合に、よだれたれるわ、白目むくわ、変幻自在で素晴らしい。彼女に入れ替わる形で二番目に出てくるまりかさんが、ケバケバ&棒読みさんで(ホントゴメン!!)、それはそれでラブドール的エロさで良いんだけれど、メインのマリカの、リアルに苦悩する妻、一人夫の帰りを待つばかりの主婦(なかなかこの設定は今の時代、珍しいけど。これがいまだに男子の願望なのかなあ)の人間味に比するからこそ際立つのかなあ。

三人目は、これは夫の浮気相手として登場した彼女だよね??だからこそ混乱する、判らなくなる。マリカの妄想、欲求不満か、妊娠できない焦りか、精神的に追い詰められたゆえにおこった彼女の中だけのタイムループかと思いきや、しれっと差しはさまれる夫の浮気描写。
その現場はマリカのタイムループのようにドラマチックではなく、ありがちなラブホテルの一室で、あなたに会えただけで幸せ、みたいな、よく聞く、よく見た光景である。でもだからこそ、それなりのリアリティがあり、マリカのタイムループに比して、ここ一発だけ入れられるから、これは、これだけは現実かもと思わせられる。

でもその後、マリカのタイムループが繰り返され、マリカは人格は一緒のようだけれど、次々外見が(つまりかなりキャラ自体が)入れ替わっていき、その展開に翻弄されるので、夫の平凡なラブホセックスをちょっと、忘れちゃうんだよね。
これは、上手い、というか、ズルいというか。タイムループ展開の間は、マリカが夫に対してどんな感情を持っていたか判らなくって、だからタイムループ展開が終わって突然、喫茶店で探偵さんに夫の浮気調査を依頼していたことが明らかにされると、突然、あ、そういえば、夫の浮気場面、あった……と思い出す。

でもマリカが主張するのは、少なくとも二人の女だと言い、観客側には一人の女しか示されず、探偵は、あなたのカン違い、旦那さんはシロですよ、という。
そしてその喫茶店には、あと二人のマリカがいて、喫茶店のマスターは運命の恋に落ちたと言って訪ねてきた田中であり、二人のマリカは魚肉ソーセージを挟んだホットドッグを意味ありげにぺろぺろして(汚ねーな……)、マスターはにたにた笑い、真マリカは白目むいて(サイコーです)ぶっ倒れちゃう。

何度もタイムループを繰り返し、身に覚えのない旅先の行きずりの恋人、田中に抱かれながら、自分が誰だか判らなくなる不安を訴えたマリカに、田中は言った。君のいる世界が本当の世界なんだよと。安っぽい宇宙ビジュアルをピコピコと映し出すあたりの臆面のない確信犯的なやり口にバーロー(ほめてます)と思っちゃう。
何人ものマリカに、彼女自身に覚えのない一年前の運命の出会いと約束を、強姦まがいの熱烈キスからのセックスで抑え込んじゃう田中=安藤ヒロキオ氏が、なんつーか、魔術的で絶妙すぎる。
適度にイイ男、そして適度に怪しげな男。妄想の中に、タイムループの中に、現実じゃない男としていそうなアヤしさ満点で、そして圧倒的に色気があって、強姦まがいにねじ伏せられても、仕方ないかもと思わせちゃう(ダメだけどね!!)。

ところで、マトリョーシカ、なのだよね。タイトルバックにまず登場し、中盤、モスクワに出張するんだという夫がお土産に買ってきた、しかも、マリカが欲しがっていたと、そんなもんピンポイントに欲しがるかよと思うが(爆)、ひとつひとつ、中身を取り出して並べる夫。
これを寝室に置いておくと、子宝にめぐまれるらしいよ、という彼の言葉にマリカはにっこりとほほ笑んだ。あれ、あれれ、つまりそこだったのかと、忘れていた、妊娠検査薬の描写に思い至ったんだけれど……だとしたらちょっと、ちょーっと、フェミニズム野郎としてはいろいろ言いたいことはあるんだけどなあ。

でも結局、妄想だったのか策略だったのか、マリカは大きなお腹で幸せそうにダンナを送り出す。いつものように、魚肉ソーセージを挟んだホットドッグを朝食に用意して。
その直前、モスクワの出張から帰ってきた夫が暗い部屋の中にぼんやりたたずんでいた妻を見つけたあのシーンの時、妻じゃない人格をまずその目にして、驚いていたけれど、そこは特に言及されずにスルーされる。
二人とも特に、何があったかとか、何を思ったかとか言うこともなく、いつものように食事を共にし、モスクワ土産のマトリョーシカを並べ、子宝の話をする。そしてセックス。幸せな結末のように思ったのだけれど……。

そう、ここで終わっていれば、マリカの妄想オチで、まあいろいろ気になるものの、納得できなくもなかった訳さ。
でも、あの喫茶店が再登場、あれ?探偵さんによって旦那さんはシロって結果が出たし、マリカが見た二人の女とマスターは妄想だったんちゃうん、と思ってたら……。

この四人が、妄想の中のもう二人のマリカと、マリカが依頼した探偵の男と、そして何よりここに、マリカの夫が!この四人が同じテーブル囲んで!!
そして、カウンターの奥には、運命の恋人として何度もタイムループを隔ててマリカと愛し合った田中がやっぱりマスターでいて、つまり、これはつまり、マリカが、彼らに陥れられていたということなの??
このラストシークエンスの一場面一発で、えーっ!!ちょっと待ってよ!!って思って、そりゃないよ、と思って……。いかようにも解釈できるにしても、このラスト一発は衝撃過ぎるでしょ。ヤメてよー。

作り手さんの中には正解があるんだろうな……あるのかな?なんつーか、これは哲学?もう、教えてよ、って感じさぁ。★★★☆☆


トップに戻る