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２０２４年鑑賞作品

ベイビーわるきゅーれ　ナイスデイズ
２０２４年　112分　日本　カラー
監督：阪元裕吾　脚本：阪元裕吾
撮影：伊集守忠　音楽：SUPA LOVE
出演：髙石あかり　伊澤彩織　水石亜飛夢　中井友望　飛永翼　大谷主水　かいばしら　カルマ　Mr.バニー　前田敦子　池松壮亮

２０２４／１０／２０／日　劇場（ＴＯＨＯシネマズ錦糸町楽天地）
シリーズ三作目、ラストデイズだと思い込んでいたら、ナイスデイズだった。これで最終と言っていたようなのは気のせい？オフィシャルサイトでもどこにもラストとは書いていないような。だったら嬉しいけど！
そうだそうだ、そういやドラマも先行して始まっていたのだった、いけないいけない。普段ドラマはチェックできていないのだがこれだけはと思っていたのに。慌ててTVerで追いかけたりして。

シリーズを追いかけるのは、私はホント珍しい、ほとんどない。ここ１０年でも記憶にない。本当にこの二人に魅了されてしまって。女子二人のダルダル同居（同棲と言いたい……）生活。天真爛漫な笑顔の裏に凶暴さを隠し持つちさとと、身体能力天下一品でカッコよすぎなのに人見知りで普段の生活はポンコツなまひろと。
めっちゃ天使の可愛さのちさとに比して、マニッシュなのにほんわりしているまひろという、女子の可愛さの両極がもうたまらんくて。彼女たちが連発するビジュ爆発を、彼女たちに向かって言いたい、ホントに！

二作目のゲストも豪華だったけれど、まさかの池松壮亮氏召喚には本当に驚く。彼は映画俳優としてのこだわりがあって、作品を吟味している印象があるから。永瀬正敏氏を継ぐ人、みたいな。
いや、そんなこと言ったら、本作を選んだのが意外だという意味になっちゃうが、そうじゃなくて、作家性の強い作品を選んできた印象の池松氏が、このシリーズへの出演を選択したんだってことが、そうそう、やっぱり池松君判ってるぅ！と嬉しくなっちゃうというかさ。

だってそうよ、言ってみればこのシリーズだってめっちゃ作家性強いもの。池松氏が出てきたような作品の作家性のベクトルとは全然違うけど、強烈な作家性。
ダルダル（に見える）いかにも現代っ子（死語かな）の女の子二人が、殺し屋の仕事の場面では、目を見張るキレッキレのアクション、でも仕事が終わったとたんにまたわちゃわちゃの女子二人に戻るという、このきゅんきゅんしまくるビジュ爆発作家性映画に、池松君が、きっとめっちゃ望んで、参戦してくれたのが嬉しくって！！

池松氏が演じるのはちさととまひろの仕事を邪魔する、野良の殺し屋かえでである。まひろを演じる天才スタントウーマン伊澤彩織氏と素晴らしい格闘を繰り広げ、目を凝らして見ていたけれどほとんどスタント部分はなく、彼の顔が見えていたことに驚嘆する。
上半身裸を見せてくれる場面もあるが、見事に鍛え上げられており、ガチ本気で臨んだことが目に見えて判って、めちゃくちゃ嬉しくなってしまう。

かえではいわば、なんつーか、イッちゃってるヤツで、殺し屋仕事の詳細をノートにまとめ、反省点を書き出し、日々精進しているんである。そして記念すべき１５０人目のターゲットが、ちさととまひろが請け負ったそれを横取りする形になっちまったんであった。

かえでを演じる池松氏は終始ガチで、マジで、過去二作の有名どころゲスト役者さんにあったような、ちょっと笑わせるような緩んだところが一ミリもない。まさに、池松君なんだよなぁ。状況的にはちょっと笑っちゃうような……農協の中に殺し屋チームがいて、彼らに協力を請うているのに拒否されるとぶっ殺しちゃうような、いや、笑えないな。これを池松君がやるから、笑えなくて怖いんだよな。
こんな視界の狭い、自身の達成しか見えなくて仲間を請うたのにぶっ殺しちゃうようなキャラクター、笑えるものにしなければ、笑えない……あれ、何言ってるんだろ、池松君が怖すぎて、判らんくなってきちゃった……。

ところで、言い忘れていた、大きなこと。宮崎が舞台、なんである。つまり、ちさととまひろは出張殺人旅行に来ているんである。
冒頭、海岸で、これぞ女子二人の浮かれポンチ旅のはしゃぎよう、疲れた、もう帰りたいかもというのを２回ほど挟んで、またまたはしゃいでの繰り返しが、二人が家でダラダラしているシーンがない本作において、彼女たちの日常を垣間見られる貴重なシークエンスである。

そうなの、このシリーズの大きな魅力は、ちさととまひろの共同生活のダラダラ感。ごっちゃごちゃの部屋で肩寄せ合ってテキトーなメシやゴッテゴテに甘いスイーツを口の周りべたべたに汚してほおばったりする二人の姿が愛おしく、醍醐味なもんだからさ。
本作は出張編だからそれがないのが寂しいんだよね。でもだからこそ、なんつーか、スペシャル感がある。なんたってザ・映画俳優池松壮亮の降臨だし、ご褒美感があるんだよね。

それで言ったらもう一人、特大スター降臨である。なんとなんと、前田敦子氏。殺し屋協会のパイセンとして、ちさととまひろのしくじりのフォローにやってくるのだが、まーこれが上から目線の性格の悪い女なもんで、短気なちさとは逆毛を逆立てる猫がごとく一触即発になる。
でもこれが、虚勢を張っているだけの意外に素直な女子なことが判ってくると、見事なチームになっていくのが、ここにもまた別のシスターフッド！！と、フェミニズム野郎はムネアツになっちゃうんである。
前田氏の独特の声質が、このイヤミパイセンのキャラクターにばっちり似合ってて、そしてそれが可愛さに崩壊していくと、更にギャップでイイんだよね。

そこは、もう一人の降臨スター、池松君と真逆なところで、彼はまったく、まぁったく、印象を変えない。登場から最後まで、ヤバいヤツで、神出鬼没で、銃も刃物も格闘もプロフェッショナル、制御不能の怪物である。
こういうエンタメだから明示されなくても特に問題ないとは思うけれど、かえでのバックグラウンドは気になるところである。家族に恵まれず、友達を作る方法も判らずに育ったであろうと勝手に推測しちゃう。だって、仲間（も、ムリヤリ引き入れたのだが）が役立たずだと知ればバンバンぶっ殺しちゃうんだもの。

協会が請け負ったターゲットをかえでに横取りされそうになって、ターゲットともども取り逃がしたということで、ちさととまひろは時間外労働、その後の観光も美味しいお食事予定もパーになる。
まひろの二十歳の誕生日が迫っていて、そのことに気付いたちさとが、やべ、何も用意していない、と焦った時点では、そんな事態になるとは思っていなかった。予定通りの仕事を終えて一息つき、あと一つ簡単な仕事が残っているだけだった、筈なのだが。

もう冒頭から、焼肉に行くんだ、と二人の間で盛り上がっていて、高級宮崎牛の店を予約したんだというのが、まひろの二十歳の誕生日なのであった。結局その予約は反故にせざるを得ない……これまでの中でも最強の敵、かえでとの対決となっていくのだから。
そしてその展開の中で、ケンツクしていたパイセン女子とも心を許し合い、すべてが終わっての打ち上げは、きっと当初予定していた高級店じゃなくって、いかにもな町の焼肉屋なのが凄く良くて。これぞ、二人の世界観だし、きっと、美味しさは、変わらない、どころか、きっとこういうお店の方が美味しいのだもの！！

いきなり打ち上げまで行っちゃいけない。いろいろすっ飛ばしてしまった。かえでが執着していた１５０人目のターゲット、それまでに至る、彼の殺し屋人生の成長物語。
安い弾丸に悩まされた新人時代などあれこれが描かれる。うっかり、青春ストーリーをしみじみ聞いているような感覚に襲われるが、いけないいけない、頭のイカれた野良殺し屋の話なのだから！！

でも、なぜか捨て置けない。最後のバトルで、思う存分、まひろと死闘を繰り広げる場面に至ると、この死闘のために、この瞬間のために、彼は産まれ、歯を食いしばって生きてきたような錯覚にとらわれてしまう。

本作は、これまでの二作に比して、池松氏が参戦しているからだろうか、やけに死の匂いが充満しているというか。
ちさととまひろが、現場でそれぞれ、死んだふりをして相手を脅かすという、マジでシャレにならないことをするんだけれど、それがね、これまでの二人の感じなら、いや、本作でもそうなんだけれど、ワチャワチャでほーら騙されたみたいな、可愛さはあるんだけれど、本作ではちょっと違うというかさ。
ホントに、ヤメてよ、みたいな、でもそう言っちゃったら、本当に死んじゃうことをリアルに意識していたことが悟られちゃうから、めちゃくちゃ微妙なさじ加減で二人が、まさにその通りになっちゃうかもというギリギリの殺し合い現場でしかけるっていうのが、もう、ハラハラしすぎて！！

やっぱりこれが最終作なのかなぁ、一作目と二作目が、フラッシュバックのように描かれる。だからまひろがマジに死んじゃうかも、と心配になっちゃう訳なんだけれど、集大成としての振り返りなのかなぁと、観終わってしまえば思うんである。
そして本作の中でまひろがかえでに吐露したように、前作の兄弟殺し屋とのバトルが、不思議な友情が芽生えた、本当に傑作だったと思うし、本作の、孤独な、一匹狼のかえでに比して価値のある作品、あの二作目があったから、また大きく商業映画としてハネた、本作があったんだなぁと思う。

宮崎出張編は、宮崎県庁でのバトルとか、リゾートホテルでちさととまひろがおめかししてとか、ご褒美的番外編として楽しかったけど、やっぱり二人の世界は、まず同居しているごちゃごちゃの女子部屋から始まり、テキトー自炊やゴテゴテスイーツ、そしてうだうだゴロゴロが良いのよ。それが見たかったわけなのよ。
でもまぁ、ラストの、まひろの誕生日、町場の焼肉屋の打ち上げが終わって、ちさとが用意した、いかにも商店街で調達したいちごのショートケーキにグッときちゃう。焼肉で汚れた割りばしで、大きな口をあけてケーキをほおばる二人に、泣けてきちゃう。

てかさ、てかさ！！二十歳の誕生日なのだった。一緒にお酒の飲み始めを、二人楽しみにしていた。その最初はまさかの張り込み現場でぬるっと成し遂げちゃうのも可愛かったし、仕事が終わって、仲間もみんないて、ああ、これがビールの美味しさなんだと、ホントに判った！！っていうのが、良かったなぁ。

てか、設定上、ハタチ、そんな若かったか（爆）。そうか、確かにそういや、最初は女子高生殺し屋チームだったっけ。だったらやっぱり本作でラストなのかなぁ……寂しい！！★★★★☆

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