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2023年鑑賞作品

ベイビーわるきゅーれ2ベイビー
2023年 101分 日本 カラー
監督:阪元裕吾 脚本:阪元裕吾
撮影:伊集守忠 音楽:SUPA LOVE
出演:高石あかり 伊澤彩織 水石亜飛夢 中井友望 飛永翼須 橋野純平 安倍乙 MIZYU RIN SUZUKA KANON 渡辺哲 丞威 濱田龍臣


2023/3/27/月 劇場(新宿ピカデリー)
最高!大好き!!前作に出会った誰もが、本作の製作に心躍り、待ち望み、いそいそと足を運んだに違いないであろう!!スマッシュヒットではあったけれど、2が作られるとは嬉しいオドロキ!!
しかも大シネコンの新宿ピカデリーにどでかいパネルがどーんとそびえて、あぁ、前作に出会えてて良かった。シネマロサという場末感漂う(褒めてる)道に外れた(褒めてます)映画館にかかっていたのは大いにうなずけるようなインディーズ魂バクハツの超個性派作品だったけれど、でもこれだけ愛しく面白く、メチャクチャみんなが熱狂したからこそのスターダム。駆け上がっていったのが目に見えるよう。

もうこの勢いで、3も4も作ってほしい。一見ゆるふわ女の子二人がピカイチの殺し屋、社会に順応できない二人であるからいろんなトラブルに巻き込まれる、そしてクライマックスは超壮絶な、カッコよすぎるアクションで手に汗握らせる、この構成が根底にあれば、いっくらだって痛快な物語が産み出せそうだもの!

前作、というか、後続を作るつもりはきっとなかっただろうから、この二人の女の子の、ゆるゆるだらだらな生活とメチャクチャカッコイイ銃撃戦と格闘アクションに度肝を抜かせるだけで、本当にそれだけで充分だった。充分に魅力的だった。
でも確かに、これだけの二人をもって次を作るなら、彼女たちに対抗するだけのキャラを持って来たくなる。なるほど!なのだ。シスターフッドに対抗するのはブラザーフッド。彼女たちプロの殺し屋の下請けのバイト殺し屋、しかもこっちはブラザーフッドっつーか、実の兄弟、ということなんだよね?

お兄ちゃんの方は初見だが、ラストクライマックスでまひろを演じるほれてまうやろ!!と女子が叫びまくっちゃう伊澤彩織嬢とサシで格闘アクション見せまくってくれる、それだけのアクション実力者である丞威氏。
そして弟はあらまぁ、濱田 臣君。お顔の甘い端正さはそのままに、ちょっとびっくりするぐらいガタイが良くなって、ちょっとバカな、お兄ちゃんを慕ってやまない弟君をいじらしく演じてくれる。

それにしてもの、ちさと(高石あかり)とまひろの可愛すぎる同居生活(もう、同棲生活と言いたいぐらい!!)よ。カラフルでガーリーな雑貨が雑多に積まれながら、その一角にはトレーニングで殴りまくるための人形が置かれ、時にまひろはぼっこぼこに殴りまくっている、そのそばのソファではちさとがダラダラしてるとか、もう萌えまくりすぎる。
ちさとの方は徹頭徹尾可愛い女の子で、まひろよりは現実社会に適応できる側面もあるのだが、まひろはちさと以外とは暮らしていけないんだろうなーという不器用さを時折見せる一方、二人でいる時にはもう甘甘で、時に聞き取れないような舌ったらず会話が可愛くてたまらんのだ。二人して口の周りをべたべた汚しながらパフェを食べまくるとかもう、可愛すぎる。

そのシークエンスでは、数年前に入らされたジム、請求のお知らせを見もしないで捨て去り、実に400万ちかい督促状が来たっていう、可愛すぎる場面とは真逆なエピソードをぶっこんでくる。
殺し屋協会の保険とか、規律を守らないとグレードが下がるとか、殺し屋協会の手帳にこまごまと書かれているのを上司が二人にくどくどと説教するとか、面白すぎる。日本的会社体質を、こともあろうに殺し屋、しかもそれも殺し屋協会なんていう、こんなところにまで日本的組織体質を盛り込んでくるのが面白すぎる。

しかして二人はそんな難しいことは当然頭パンクで、しかし延滞金は払わなきゃと、すげーな、400万近い請求を払うだけのお金が、そうか、殺し屋だから報酬も、と思うけれど、結果的にはそれですっからかんになっちゃっての、バイト生活になる訳か。極端すぎる。
しかも、銀行にギリギリに駆け込んだら、世を騒がしている銀行強盗に遭遇しちゃって、3時までの支払いに間に合わせるためにとひと働きしちゃったら、条項に触れちゃって謹慎になっちゃう。仕方ないから商店街で着ぐるみのバイト、でもそれをちさとが町将棋ですっからかんにしちゃったり。

一方の、ブラザーフッドである。冒頭は彼らから始まる。連絡ミスか、指令ミスか、指示された場所にいる筈のターゲットとは違う、でももうやるしかないとぶっ殺しまくって、ギャラはないし、手間はかかるし。
下請けの哀しさ、しがない定食屋でマネージャーの赤木さんに愚痴りまくると、彼は言った。トップの殺し屋を消せば、そのポストが空いて上にあがれると。それは結局都市伝説に過ぎなかった、というか、ちさととまひろの強さに勝てるなんて、彼女たちの仕事をいっぺんでも見ていたら、思う訳がなかったのだ。

でもラストシークエンスで二組が対峙した時、ちさととまひろは、彼らの強さを認め合った。同僚だったら、仲良くなれたかもしれない。仲良くなれたかも、だなんて、まるでティーンエイジャーみたいだけれど、実際彼女ら、彼らは、そんな場所にいまだ、いるのだもの。
手ごたえのある実力伯仲の相手とのバトルは、その先に負けた者たちの死が避けられないものであることが判っていても、手ごたえのある相手とのバトルに、心底楽しいと思った。
それは、本当に死ぬかと思うほどの闘いだからこそだったというのは、マゾかおめーらと思うが、フィクションの世界はそれぐらい徹底してなければならない。死んでもいいからこの場所から抜け出したいと思って、勝負をかけた相手との闘いなのだから。

そんなしびれるクライマックスに至るまでには、もう愛しすぎるエピソードが満載である。めっちゃ好きだったのは、ちさととまひろの着ぐるみバイト先での、おっちゃん(渡辺哲)との会話から、「花束みたいな恋をした」を鑑賞しての……というくだり。おっちゃんが花恋を絶賛し、観てないなんて人生損する、みたいに言われて二人観るんだけど、なんかピンと来ない。
私が、花恋が全然ピンとこなくって、世間の大絶賛についていけなかったもんだから、なんかちょっと溜飲が下がったっつーのもあるんだけれど、でも彼女たちのピンとこないポイントはこじらせおばちゃんである私のそれとは違って、恋愛って大変だね、天竺鼠のライブには行ってほしかったな、なんていうぼんやりさで、それがなんとも良くて。

私が勝手にこの二人にそーゆー、腐女子的気持ちをもって見ちゃうからってのもあるとは思うんだけれど、そうであってもなくても、少なくとも今、異性恋愛に価値を見出していない女子たちにとって、異性恋愛至上主義みたいな花恋のピンとこなさが、そうそう、そういうこと!!めっちゃわかるー――!!と思っちゃったんだよね。
作り手さん側がそこまで考えていた訳ではないだろうけれど、こじらせ独女は勝手にちょっと、嬉しかったなあ。

殺しの仕事をした後に、始末をするスタッフがいるんである。ちさととまひろが依頼以外に、勝手に義憤を感じてヤリまくるもんだから、後始末スタッフはいつもおかんむりである。その関係性も丁寧に、それでいてコミカルに、コントみたいにじっくりと笑わせてくれる。

規律規律でキュウキュウに言い募る田坂は、ほんっとウザいわ!と思うんだけれど、ゆうりとまことブラザーズを自分の油断で逃がしてしまい、追った彼らから撃たれてしまい、瀕死の状態で新人スタッフに、自分が死んだ後の始末について指示する場面に心打たれまくる。
でも銃弾は急所をそれてて、次のシークエンスでは、ワッハッハー!!とあっさり生還してるんだけどね!!あービックリした!!だってこのシークエンスで、ちさととまひろも顔色変えてブラザーズを追いかけていくのだし、マジで田坂さん死んだと思ったのにさ、あービックリした!!

だからね、なんか勝手に、誰も死なないんじゃないかと、思ったのだ。設定はなかなか物騒だけど、ゆるふわだるだるな女の子二人が実は殺し屋、なんてさ、もうその一発の魅力でいいじゃんか、と思いそうになった。
そんな訳ないのに。第一作の、バッキバキ殺し屋稼業を見せられていたのを忘れたのかっ。

ブラザーズをたきつけた、とゆーか、下請けであえいでいたのは、彼らをマネージメントしていた赤木さんも同じだったのだもの。殺すか殺されるか、なんていう究極だったのに、結局は都市伝説だったのに、下剋上に賭けた。
でも確かに、最初のアタックは、彼女たちにあっさり制圧され、もうちょっと手ごたえのある相手寄こしてよね、なんていう余裕っぷりだったのだが、ラストシークエンス、まずまひろが腕を撃たれて倒れて動かなくなり、えっ、えっ、えーっ!!とゆーところから始まる四人の壮絶バトル。

ハイになっていることもあるだろうけれど、本当に楽しい、楽しい、特にブラザー側がそう、何度も言った。ちさととまひろも、もし出会い方が違えば仲良くなれたかなぁ、なんて、油断すれば命とられるような場面で言い合った。
ブラザーズの弟、そしてちさとが動けないような重傷を負い、まひろとお兄ちゃんが、ここは、銃を持たないリアルファイトになったのは……。私がちゃんと認識していなかったのかな、弾が尽きたのか、どうだったんだろう……。

でも、なんたってベイビーわるきゅーれの魅力は、伊澤彩織氏の魅せる、小柄な女子のキレキレなアクション!!だぼだぼのパンツ、目元まで隠れる金髪、大柄男子とガチでサシの格闘、ギャップ萌えがたっぷり詰まってもう、シスターフッド、女子萌えは最高潮さぁ。
動けなくなったちさとのほっぺたを、血だらけになった手でぷちゅっと潰して、ちさとの白いほっぺたが赤い血で塗られる。そしてまひろは、私に賭けろと言い、まかせんしゃい、と軽く言い放ってバトルに向かうのだ……カッコよすぎだろ!!

誰もが思っただろうけれど、やっぱりやっぱり、どうしてもしょうがないと判ってはいても、シスターフッドの二人が、ブラザーフッドに、心通い合わせたのに、その直後に、銃弾を撃ち込むのは、やっぱり、辛かった。
どうしようもない、もしここで仏心を出せば、彼女たちが彼らに殺される。判り切ってる。彼らのマネージャー、赤木さんはすでに彼女たちによって消されたのだから。

そして、彼女たちがやらなくても、規律を犯した彼らには粛清の命が既に下っていた。そう思うと、ちさととまひろが、そんな屈辱の手にかかるより、真剣に、そして楽しく闘った相手として、対等の闘いの対価として、彼らを真に倒したのは、良かったのかとも思ったけれど……。
オリジナル第一作はあっけらかんと楽しめたのと対照的に、ちょっと、ちょっとちょっと、切ない哀しいなあ。

いい感じに緩急があって、ぽっと落としどころがある、ふっと脱力するシークエンスが設けられてるのが、メチャ好きだなあ。上手いわぁ、もう。
死んだと思って、自分も死んだと思って、カッコよく後輩女子に指示をしていたのに、実は生きていて、上司の手土産のプリンを食べる、そのどーでもいいダルダルなやり取りとか、メチャクチャ好き。可愛くて愛しくて、結構残酷で哀しくて、めっちゃくちゃ、イイんだよなあ。★★★★☆


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