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もういちどみつめる
2025年 113分 日本 カラー
監督:佐藤慶紀 脚本:佐藤慶紀
撮影:喜多村朋充 大渡仁 音楽:中野晃汰
出演:筒井真理子 田万作 にしやま由きひろ 徳永智加来 中澤実子 吉開湧気 リコ 内田周作 川添野愛
本作を製作したきっかけ……監督さん語るところの、少年法の厳罰化の年齢引き下げへの疑問というのは確かに、一部の残虐な犯罪、パーセンテージとしては決して多くない、その一部を全部とひとからげにすることで、子供への、ひいては人間への信頼自体が揺らぐという本末転倒は、感じるところがある。
本作の片方の主人公、未成年ギリギリのユウキにその社会問題が投げかけられる。少年院に入っていたという彼が犯した犯罪は、後に明らかになるところによるとオレオレ詐欺。
それをバラした従兄弟の健二はそう言ったが、強調する意味合いで、わざと古い言い方をしたように思う。振り込め詐欺、というハッキリと社会問題化した言葉でならば、ユウキがこの腐った社会の被害者であることは明らかに判るのに、彼はわざとそれを避けて、その犯罪に手を染めるやつらこそが社会悪、という意味合いで使ったに違いないのだから。
そしてユウキは、母を自殺で亡くしている。しかもそれは、薄々気づいているだけで、父親からうすぼんやりと北海道にいるなどとウソをつかれ続けていて、まぁグレて、少年院行っちゃって、父親とも上手くいっていない。
その父親は、横領事件をおこした過去があり、気丈にユウキを育てた母親がその後自殺してしまった、という経過が判ると、父親がユウキとの関係に悩んでいることは判るけれど、そりゃなぁ、という気持ちにもなるが、ユウキのバックグラウンド、ちょっと盛り込みすぎかも……という気持ちもちょっと、頭をかすめたりもする。
そのユウキが訪ねてくるのが、この山深い森の中でキャンプ場を営む叔母の典子。この映画に足を運ぶ決め手になったのが、典子を演じる筒井真理子氏。彼女が出ているのなら間違いがないという確信。
典子は一見して普通の、……普通というのが何を指すのかと言われるとアレだけど、普通の女性。後に、彼女の友人であるご近所さんの明夫がユウキに語るところによると、人の表情を読むのが苦手で、言葉をそのまま受け取ってしまう。だから言葉に出さなければ伝わらないのだと。
ユウキとの仲がなんとなく縮まりかけた時に、彼がたわむれに冗談を言った時、その冗談は典子にとってはウソであり、ふざけられたという裏切りなんであった。
これもまた、近年ようやく理解が広まりつつあるハンディキャップで、典子を演じる筒井氏は素晴らしいセンシティブを見せる。でも、正直明夫から明かされなければ判らないし、それも後半に至って唐突な感じで、それまでは人見知り程度にしか見えなかった……のは、私が鈍感だからなんだろうけれど。
でもこの、障害(と言ってしまっていいのかという迷いもある)もまた、社会的問題提起を強く感じるから、ユウキのそれとぶつかり合いさせるのは意義あることだけど、咀嚼しきれずというか、これもまた、盛り込みすぎかなぁ……という気持ちが頭をもたげてしまう。私の理解力不足なんだけれど。
生きづらさvs生きづらさ。典子とユウキの間はなかなか縮まらない。そもそもユウキは何を思って典子の元に来たのか。それはラストのラスト、後半四分の一ぐらいになって、それまでただただムッツリだったユウキが急に喋り出すようになる感覚があり、かなり唐突感は否めないのだが……。
そこでユウキは、先述のような事情があった頃に典子の元に預けられて、典子との思い出が、彼にとっては、自分をただ受け止めてくれたという感覚だったのか、鮮明にそれを覚えていて、だから典子に会いに来たんだと、本当に最後の最後に、言ったのだった。
それまでは、母親の行方、その死の真相が知りたいのかと思っていたし、実際それもあるんだろうけれど、彼の中ではきっと折り合いがついていたんだろうし、だけど父親に対しては反発しか出来ないし、どうしたらいいか判らなくなって、この森の中の叔母さんに会いに来たのかなぁ、なんて。
典子は今は一人で暮らしているけれど、大学生となって離れて暮らしている一人息子がいる。ユウキを預かっていた時、この息子、つまりユウキの従兄弟である健二はユウキと仲良くしていた。
その記憶があるから、健二が夏休みで大学の友人たちを引き連れて帰省してくればそりゃぁ、典子は一緒に遊べばいいでしょうと言うが、そう簡単にはいかないんであった。
これは、なかなか難しいところである。同郷の友人というんだったら、会いたくないなら会わなければいい。でも親戚であり、ユウキは今、健二の母親である叔母に世話になっているのだから。
健二はいかにもイケてる大学生で、仲間たちに紹介するよ、一緒に飲もうぜ、と言ってくる。ユウキのこの時の心情はどうだったんだろう。ユウキは最初から最後直前まで、ほぼ同じ低いテンションで、むくれてプイと行ってしまう、という描写が大半を占めていて、本当に後半数パーセント、急に喋り出したみたいな感覚があるのがもどかしくて、もっと彼の感情の手がかりが欲しかった。
典子は、ユウキの母親である自身の姉と仲が悪くて、姉の自殺に際して、自分のせいかも、自分が冷たくしたからかもと悩むのだが、それをユウキに吐露しても、それに対しての彼の感覚は判らなかった。
この姉妹の葛藤をせっかく典子が告白したのに、それに対してのユウキのリアクションというか、理解している感じが感じられなくて。
ユウキは典子の“普通ではなさ”を、彼女の友人の明夫から聞くけれど、でも結局、それを理解し、受け止めることはない、というか、出来ない。彼自身が大きな問題を抱えて苦しんでいるのだから、そりゃぁ出来ない。
それは判るのさ。だったらそれを、双方で確認し合い、理解し合あわなければ、このキャラクター設定は実を結ばないのでは……と思ってしまう。
めちゃくちゃロケーション美しいし、丁寧に撮られた時間の経過に心満たされる。その中で、典子もそうだけれど特にユウキは、この繊細な年頃でめちゃくちゃ考えるところがあっただろうという印象は与える。
10代の時間の経過って、典子の世代、つまり私らアラフィフのそれと、ぜんっぜん、違うんだもの。長く、濃密で、感じやすくて、傷つきやすい。もしかしたら、二人の描写に違和感を感じたのは、これもあったかもしれない。生きづらさ、という点で同じでも、生きてきた経験値で、その感じやすさは全然、違うと思う。もちろん個人差はあるけれど……。
従兄弟の健二がわっかりやすくヤなヤツなのが残念だったが、健二が連れて来きた大学生仲間の女の子、希少な苔を探している由香理の存在が、かき回すことになる。
山深い、森の中、希少な苔。つまり、生きづらい苔。ユウキ、典子、そしてこの大自然の苔、ということが、本作の成り立ちなのだそう。本作はこの奇跡のような自然ロケーションが主人公と言えるほどだし、その自然の中でもマジョリティー、マイノリティーがあるという切り口というのは思いがけないが、なるほどと思わせる。
でも……それを語る、イケイケ大学生チームの中の、理解ある女子、という形で、しかも後半になって突然登場される戸惑いは正直、ある。
ユウキにとって、幼い頃の遊び相手、上手く社会で生きてこられなかったユウキにとって、もしかしたら理解者になってくれるかもという従兄弟の健二が、その再会の最初から、覚えてる?イエーイ、みたいな軽さ、表面上は仲良くしようぜ、みたいな感じだけれど、違う世界に生きてきたユウキが上手く立ち回れないと、途端に牙をむく。
でもそれは……自分の世界、大学生活のテリトリーを、荒らされるかもという幼稚な恐れから発していたんだろうと考えると、つまり、苔女子の由香理がユウキに肩入れしていると彼は感じて、激高したんだろうことを考えると、ユウキ以上に幼いかもと思ったりして。
でもまぁ、この女子は、反則だよね。希少な苔を語らせて典子とユウキに反映させるなら、後半に唐突だし、理解ある可愛い女子大生キャラは、扱い注意だと思う。
この展開までに、ユウキと典子の関係性は、めちゃくちゃ丁寧にゆっくり、ユウキは母親の真相を知りたい、その鍵を握ってる典子、その姉妹関係の複雑さ、典子の疾患、ユウキの犯した罪、その後上手くいかない人生……メチャクチャある中に、それをじっくり描いている中に、希少苔、いいでしょ!みたいにあっさり割り込まれちゃうと、ここまで恐る恐る、壊れそうな関係性を構築した展開はなんだったの……とちょっと思っちゃう。
それに絡む従兄弟の健二にしても、もうこっからのスタンスはいきなり民放ゴールデン帯ドラマみたいだしなぁ。
描きたいこと、社会的意味合い、とても重要性があると思うし、ちょっと見たことがないぐらいの素晴らしいロケーションと美しい映像が素晴らしかった。私が鈍感なんだろうと思うけれど、ユウキと典子の判り合いが唐突過ぎる感じがしてしまったし、ユウキの雪解けが特に突然で、いきなり笑顔でいきなり喋り出してビックリ、って感じだった。
こういう塩梅は難しいんだなぁ。ユウキの心がほどけだしたのが、苔女子との対話からなんだろうけれど、従兄弟の健二がヒドいこと言うのを遮ってユウキを守ることで存在意義を持たせただけのように思えてしまう。こんな女子に心奪われるのなら、男子は相当ダメだよって、思っちゃう。
ロケーションと、ユウキと典子の中盤までのじりじりするほどに近づけさせないスタンスがストイックだっただけに、その後急速に、お姉ちゃんとの思い出の、埋められた缶の中の宝物を見せるなんていうベタな展開になったり、苔女子が登場しちゃうともうダメだなぁと思ってしまったり。
もったいない気持ちが正直。社会派と自然ロケーションを融合させるのは、相当難しい。逆のベクトルで最強なのだから。★★☆☆☆
プラス1というのは、サークルの中でちょっとネジが飛んでいるような女の子、ミナミの彼氏で、彼はシェフだというのだけれど、これもまたそう語られるだけで仕事の場面なぞ一切出てこなくて、ミナミとセックスばっかりしている。
でもこれが実にあっけらかんとハッピーで、結婚というストレートな幸せに突入するのが、うじうじしてばっかりの残り四人に決定的な啓示を与えるのが面白くて。
またまた見切り発車してしまった。整理していこう。ちょっとね、面白い設定と、意外な結末だったのだった。もうオチバレで言っちゃうと、ぜぇったいにすべてがハッピーエンドで決着すると思っていたのが、うじうじ男女四人はいずれもその恋心が違う方向に交差してしまって、失恋してしまうのであった。
ウッソー、誤解が絡まっているだけで、きちんと確認すれば二組とも両想いだと思っていたのに。
そもそもの始まりは、優吾がサークルに来なくなったことであった。それを、彼に恋する初美は自分のせいだと思っている。優吾とサークル室で二人きりになったとき、初美は胸キュンで、いつもと違った服、イイねと褒めた。優吾はチクショウ!と心の中で叫んで踵を返して出ていき、そこからサークルに来なくなった。
心の中の声が、初美には聞こえてしまった。他人の心の声が聞こえる。すべてではない。好きな人だけ、しかもその心が強く動いた時だけ聞こえるのだ。だから前後の感情が判らず、でも自分のせいだと初美は思い込んでしまう。
そしてもう一人の女子、藍もまた、特別な能力がある。今自分が行くべきか否か、ゴーかストップか、それがまるで信号のように、赤く見えたり青く見えたりするんである。
後にこの能力を告白しあった時、すべての人のそれが見えたんだったら、占い師として稼げたのに、と自嘲気味に笑い飛ばす。そう、初美も藍も、自分にとっての恋する相手に対してしか、それが発動しない。でもそれって本当に正解を示しているの?勇気がない自分の気持ちが反映しているんじゃないの??
あれ、これって、最近観た映画の設定に似てる!と思ったのであった。「か「」く「」し「」ご「」と「」他人の気持ちが見えてしまう高校生たちの、だから一歩を踏み出せない、甘苦い傑作であった。
本作はこの映画よりも先に作られているけれど、そもそも人気小説が原作であったのだし、ここからアイディアをいただいたかも??などと勝手に想像して楽しい気持ちになる。男女の友情と恋心がこじれるあたりもなんだかそんな感じがするし……。
見てる時にはさ、恋心を言えないだけで、初美と優吾、藍とミチタカは両想いだとばかり思っていた。いや、鑑賞後に至っても、そうだったんじゃないかと思ってる。女子二人が意を決して告白して、それぞれにフラれたという結末に至っても、そうじゃないかと思っている。
藍は新入生の時、酔った勢い、というか、それを口実に、ミチタカの部屋に転がり込み、セックスした。しかも藍はそれが初体験であった。このシークエンスは本作中で一番好きかもしれない。好きな人とセックスしたかったのだ。でもそれを、申し訳なさげなミチタカに、経験して見たかっただけ、とうそぶいた。
バカ!バカ!!ここまで勇気を持ったなら、なぜそれを突破しないの!!
ミチタカもまた経験があるという感じじゃなく、近くに住む兄の家にダッシュでコンドームをとりに行ったり、いざ自分でそれを装着する時、藍に背中を見せて余裕がなかったり、めちゃくちゃ初々しいのだ。この時の感じで、ぜぇったいミチタカは藍を好きだと、好きになったと思ったのに……。
そして優吾である。優吾が好きなのは藍なんじゃないかと、やたらと周囲が邪推し、……結局それはホントだった訳なんだけれど、だからこそチクショウ!を初美は聞いてしまった訳なんだけれど、本作の面白いところは、確かにその時はそうだった、ということが検証的に描かれつつも、でも今の彼の気持ちはその時とは違う、と思わせてくれること。
“特殊能力”を持つ女子たちが、悩みながらも恋する男子たちにアタックするまでに至る成長物語を見せる一方で、男子二人の気持ちの変遷が、こちらが予想していたのとは真逆の決着に至ったのがビックリで、恋は判らんなぁという切なさで。
ピンクだからもちろん、セックス場面はふんだんにあるんだけれど、リアルなそれとして提示されるのは、ほとんどないというのも、ピンクの面白いところ。初美が優吾とのそれを妄想するシークエンスはそりゃ主演だから最も長いんだけれど、長いだけに、その締めが、優吾のチクショー!で締められるのがとても辛い、切ないのだ。恋する相手とのセックスを妄想して、オナニーもしちゃうというザ・ピンクの展開ながら、結局それって……一人モンが一人の部屋でやるやつじゃん、と思っちゃう。
そして、藍もまたそうである。経験したかっただけだから、とうそぶくそれは、処女を捨てたセックスであり、痛くて死ぬかと思ったという彼女にミチタカはうろたえるけれど、その後はまるで、まるで恋人同士のようにじゃれ合うもんだから、なぜ藍がミチタカに気持ちを伝えられないのか、よく判らなかったし、想いを伝えてフラれるだなんて、本当にビックリだった。
ミチタカは優吾にやたらと、藍のことが好きなんじゃないかと探り入れていたのに。つまりそれって、おめーが藍を好きだってことじゃないの?そうだったのに、友人を思って封印したってこと?バカバカ!!
藍は初美のことを思い、自分が先に失恋し、初美に行ってこい!と背中を押す。その前にね、あのネジのゆるんだミナミちゃんよ。うわ、そうか、しじみ氏か!実に40超えて、いやこの時はまだ40前か、ゴメン、とにかく女子大生役、すげー!なるほど、めちゃくちゃ深みがあるわ……。
インスタントラーメンサークルの活動で、一番イキイキとしていたのは彼女だったと思う。ミチタカが主導権を握っていたけれど、明らかに腐ってるんじゃないかという危ない激辛ソースを、口飲みで飲んじゃって、ダラダラ垂らしながら、エヘヘ、みたいな、怖い怖い!
恋人とはセックス場面が大半なのだけれど、あれこれ面白い描写があるのよ。恋人君がバックから彼女を突きまくって、金縁の眼鏡を何度も飛ばしまくったり、フェラやってる途中に彼女のケータイが鳴って、思わずかんじゃったのか、イッテー!!となった彼に構わず、あ、ごめーん、てあっさりしてたり。
極めつけは、そのワザはどこで覚えたの、と恋人から、これは単なるイチャイチャコミュニケーションで聞かれたのに、前カレ!と威勢よく、しかも二度も答えちゃうのも笑ったなぁ。彼氏、ズコーン!と倒れちゃう。ズコーン!て!昭和かよ!!
うじうじ若者四人組に比しての、一見して幼稚に見えるぐらいにラブとセックスが結びつているこの二人こそ、愛こそすべてを体現しているんである。
そんな二人がズコバコヤリまくるのは、ボロボロに亀裂が入ったきったないソファーに、ボコボコに傷がついている冷蔵庫、ラックにぐちゃぐちゃに衣類が放り投げられている部屋、あのアイテムは用意されたものなんだよね??
いやさぁ、初美とミチタカの部屋も登場するんだけれど、大学生の一人暮らし部屋、という感じにそれなりに整えられていたのに比して、テキトーっつーか、とにかくあのきったないソファーに驚愕しちゃったからさぁ。あれはわざわざ持ってきた感じがしちゃったからさぁ。しかもあれはどうやら……銭湯に出かける彼らの台詞から推測するに、彼氏じゃなくてミナミちゃんの部屋、なのか??すげー!
で、そう……ハッピーエンドは、ミナミちゃんとその彼氏、セックスに充足し、この幸せを続けるためには、と二人してひらめいちゃって、九州と東北のそれぞれの親に挨拶しに行くから、と退部届と退学届けをミチタカに押し付けて、ラッタッタ、と旅立つ。最高すぎる。
ミチタカはずっとミナミちゃんに翻弄され続けているのがこれまた最高で、最初にミナミちゃんが登場した時には、この子が彼らの恋愛事情、セックス事情を引っ掻き回すのかと思ったら、ぜぇんぜんで、ミナミちゃんは彼氏とヤリまくりのラブラブで、そのシンプルなラブが、うじうじしまくりの四人を動かすのであった。
明らかにヤバい女の子だし、しじみ氏はさすがベテラン、嬉々として演じてサイコー。その振り切り方が、恋愛は素直に、好きな人と、一緒にいたいってこと!というのを、示してて、翻弄される女子たちが、結果的に、あの子、いい子なんだよね、と同性として認めるに至るのが、とてもイイ。
だからこそ、背中を押されたのに、二組とも撃沈してしまったのがメチャクチャ予想外だったけど……でも、初美が聞いた声、今はまだ、というのが未来への期待、希望になっていたと思うので、良かった!★★★☆☆