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「つ」


2003年鑑賞作品

妻と女の間
1976年 111分 日本 カラー
監督:豊田四郎 市川崑 脚本:八住利雄
撮影:岡崎宏三 長谷川清 音楽:佐藤勝
出演:三田佳子 大空真弓 酒井和歌子 仁科明子 梶芽衣子 田村高廣 篠田三郎 岡田裕介 荻島真一 森本レオ 高杉早苗 曽我廼家明蝶 木内みどり 真咲美岐  辻萬長 木島新一 秋本羊介 伴藤武 吉見哲 斉藤美和 桐生かほる 田中文子 粕谷正治 溝口順子 アミアツ子 瀬戸内晴美 丹波哲郎


2003/9/26/金 東京国立近代美術館フィルムセンター
豊田四郎と市川崑の共同監督、ということに、かなり興味をそそられてしまった。豊田作品はあまり観てはいないけれども、でもこの組み合わせが異色だっていうのは判るもの。監督のカラーはもちろん、年齢だって軽く10は違う二人。最初は豊田監督作品として作られたこの映画に助っ人との形で市川監督が参加した、らしいけれども、どういう経緯でそういうことになったんだろう?

確かに全体的な見え方としては、豊田監督の描く色艶、である。官能的と言ってもいいぐらいの、息を呑む艶っぽさ、美しさ。その息詰まる展開を時々ふっと解放するかのように、軽妙に笑わせる部分が差し挟まれ、それは即座に市川監督を連想させる。そこまでハッキリと役割分担されたわけでもないんだろうけれど、でも何か、そういうのが想像されて楽しい。市川監督のカラーそのものを受け取って洒脱に笑わせてくれるのが田村高廣で、もう彼のオチャメなカルさったら、スラップスティックみたいな可笑しさで、最高なのだ。

豊田監督のカラーは女性キャラすべてにしっぽりと行き渡っているけれど、特に素晴らしい色っぽさの三田佳子に驚く。三田佳子がメインの映画って、そういえばこれまで観る機会がなくて、私にとっての彼女の印象って知的でもっとカタいイメージだったから。年下の男との情事、年上の女のたまらない色香。この年下の男が彼女から「こんなおばあちゃんなのに……」と言われながら(お、おばあちゃんて……30代そこそこなのにい)彼女を離したがらないのがすごおく良く判る。だって女の私が見たって、ドキドキするほどの女っぽさなのだもの、和服のいでたちが匂いたつような色香に包まれる、こんな女優、現代にいるだろうか。帯ほどきのあーれーといい、かなりねっとりと描写するラブシーンは、ため息もの。ねっとりとやるんだけど、いやらしさではない。官能的というのはこういうことなんだわあ、と思うのだ。

四姉妹の物語で、三田佳子は長女の安澄。あとの三人は……キャストクレジットの順序どおり、年齢の順序どおりだと思うんだけど間違ってたらごめんなさい。お顔の面識がない女優さんもいらっしゃるもんで……(こういうことにはひたすら自信ナシ)。二女の優子が大空真弓。三女の乃利子が酒井和歌子。四女で安澄の養女になった輝子(ここが、自信ない。劇中ではようちゃん、と呼びかけていたのになぜ故輝子なのか……?)が仁科明子。間違いないかな??

安澄の年下の恋人、というのが、篠田三郎演じる研一である。三田佳子もそうだけれど、篠田三郎も“年下の男”っぷりが実に素晴らしい。充分大人なんだけど、彼女の前ではどこかやんちゃさを残し、力づくで、頼もしさよりは愛しさがつのるような。四女の輝子が研一にホレているもんだから、今は輝子の母親の立場である安澄はひたすら苦悩するんである。年恰好でいえば輝子の方が研一に似合いだし、周囲も輝子と研一の結婚話を勧めてくるし。何より娘(妹)を傷つけてしまうことを非常に恐れているのだ。つまり隠れながらの逢瀬で、おびえている安澄、というのが、これまた殊更に色っぽさをそそる。いつもため息をついているような声もそそられる。和服の上からぎゅっと抱きしめると、華奢な体の上にしなやかな布地のしわがよって、たまらないものがあるんだよなー、ホント。きれいに手入れされた爪や、きちんと結い上げられた髪の毛、すんなりとのびたうなじ。研一がそこに唇をはわせるのも、そりゃはわせたくなるわさと思う色っぽさ。反物が迷路のように所狭しと垂れ下がる中で彼女を追いかけ、捕まえ、抱きしめ、唇を奪うシーンなど美意識万点の官能さ!はあぁ、たまらん。

研一にホレている輝子は幼さが残る若さで、女優を夢見るお嬢さん。ホレているというのもどこか恋に恋する感じが強く、若さゆえの純粋な情熱で、まっすぐに研一にアタックをする。でもすべてがバレた時、彼女はヤケ酒をかっくらい、安澄と大喧嘩をして家を飛び出してしまう……。しかしこの時点では彼女はまだまだ甘く、姉たちの家や、果ては義兄の愛人の家までも転々とし「行くところなんていくらでもあると思っていたのに、案外ないもんね」とあっけらかんと言うのである。こりゃあっさり家に帰ってくるかもね、と思っていたらそうではなく、しばらくたったあと彼女は銀座のバーで働いているところを研一に発見されるのである。この時の輝子は大人っぽいメイクにすっきりとした黒のファッションで、それまでのふわふわしたお嬢さんぽさとまるで違ってオッと思わせる。傷をひとつ知ったイイ女になっているのだ。そして彼女は自分のことを思ってくれる本当の相手の存在に気づく。染物師の友四郎(荻島真一)である。これから本当の愛を知っていくのだろう。

お嬢さん、といえばそのお嬢さんの気質ゆえに輝子以上に傷ついてしまうのが三女の乃利子。演じる酒井和歌子(だよね、だよね?)の、三田佳子とは対照的な清新な美しさの人妻っぷりが、名うての編集者、三谷の目に止まってしまうのである。読者として投稿をしていた彼女をこの三谷が呼び寄せる。最初の対峙シーンでは「ちょっとスカート短かったかしら……」なんていう心のつぶやきのインサートのコミカルさに、市川監督のカラーが見え隠れするけれど、その後はこの乃利子のマジメさが彼との情事にのめりこませ、深刻になってしまうのだ。
この三谷役は森本レオ。このサイテー男が実にヤラしく似合っている。ホント、ぶん殴りたくなるぐらい。彼はインタビューの仕事だといって彼女を記者として連れ出す。自ら車で迎えにきた彼に、この時点で乃利子は予感したのか、戸惑いの表情を見せる……だってその車というのがやけにせせこましくって、つまりは運転席と助手席、それだけで妙に接近する形になってしまうから。案の定彼は「取材の約束までまだ時間があるから」などとぬかし、「山の方に行ってみませんか」と、猛スピード猛スピンで車を走らせるのだ。スリリングというより怖いぐらいで、何かもうほとんど拉致って感じ。しかし予感は最高潮に高まっていく。一目見た時から好きだった、とこれまたぬかしやがり、あとから思えば嘘八百のことばかりを並べ立て、キスをするまえにベルトをはずすというナンジャソリャの鬼畜ぶりで彼女にせまる。彼女の方もまた「そんな予感はしていたんです……」と待っていたかのように彼を受け入れるんだけれど……。

真剣になってしまった彼女に言い放つ、こやつの台詞がサイテーなのだ。お互い浮気同士でしょうと。僕のことをひどいと言うのなら、だんなさんと別れて僕と一緒になるまでの覚悟があったのですか、と。火遊びだの火種のためのゲームだの、キザというよりもはやしゃらくさいことばかりを並べ立て、ビールを片手に遊びなれた風に余裕の笑みを浮かべながら言うコイツの憎らしさ!確かにコイツの言うことは判るんだけど、「あなたもそのあたりはすべて判って乗ってくれているのだと思っていた」と言う一方で「やっぱりあなたはお嬢さんなんだな。そこが良かったんだけど」などと矛盾を平気で言いやがる身勝手さにカーッと頭に血が上ってしまう。嗚咽が止まらない彼女に、こんなヤツのために泣くことなんてない!と叫びたくなってしまう。ああ、でも確かに女は愚かなのだ……この場合。だって確かに状況的にもどう見ても、火遊びでしかなかったのだもの。しかも彼女の夫は彼女のことをきちんと愛してくれていて、子供にはまだ恵まれていないけれども家庭的に何の問題もなかったのに。彼女は自分も長姉のように自立した仕事が出来ると舞い上がって、足元を見ることを忘れていたのかもしれない。そうだ、安澄が、乃利子にではないけれどやっぱり自立した彼女に憧れるとポロリと言った二女の優子に「女が一人で生きていかんならんということは、大変なことよ」と言っていたのだから……。

すべてをだんなに隠して、今までどおり幸せに生きていこうと決心した乃利子。だんなのために美味しい料理を作ってあげようと張り切って買い物をして戻ってきた彼女にだんなは言う。「最近、記事は書かないのか。書いているときのお前は美しかったけどなあ」乃利子はたまらず涙を流し、だんなにすがりつく。……うーん、いいシーンだ。いいだんなじゃないの。判ってたけど。確かにサエないけど、でも何の打算も疑いもなく、彼女のことを愛してくれる。ちょっとジーンときちゃったなあ。

で、ひたすらコメディリリーフになっているのが二女夫婦。二女の優子がこの四姉妹の育った京都の紙問屋をついでおり、彼女の婿に入った夫、政之が先述した田村高廣で、こやつがおちょーしもんの浮気者で東京に愛人を囲っているんである。この愛人というのがなんとまあ、梶芽衣子。怨のこもった目がオソロシイが、しかし彼女は意外に、このあたりは乃利子と対照的に、愛人としての去り際を判っていて、カッコいいのだ。政之もまた、三谷とは全然違うタイプではあるけれど、やっぱり男の身勝手さは同レベルだから、自分がそこまで執着していたのに、愛人の英子の方が“のめりこんでくる”と(でもそれも、彼の方の勝手な思い込みだけど)うっとうしく感じだすんである。なんとゆー、身勝手なやっちゃ!しかし憎めないのが彼の凄いところなんだけど……ホント、何で憎めないんだろ。とにかく、彼のそういう気持ちの変化を察した英子は涙一つ見せず、さっと荷物をまとめ、合鍵と一言だけの置手紙で姿を消すのだ。確かに、都合のいい女かもしれないんだけど、浮気相手の前でじくじくと泣いていた乃利子と比べ(いや、乃利子はホント可哀想なんだけどさ)カッコいいんだよなあ。つまりは、男の方は自分の欲望どおりやりたい放題であるけど、女は傷を負い、その分だけ大人のイイ女になっていくというカッコよさなんだと思うわ。

四姉妹の母親が突然死んでしまい、彼女らに残された形見分けが波紋を呼ぶ。それは何と男と女が絡み合う、春画が施された着物。真面目一徹のように見えた母親の意外な品に姉妹らは一同、顔を見合わせる。そこへ見知らぬ老紳士からだという花が届けられる。二女の優子は、素性の判らない人からの花など供えるわけにはいかない、ときっぱりと言い放つ……ひょっとしたら、二女には少し、思い当たるところがあったのかもしれない。見知らぬ老紳士からの花。そして同じ姉妹でありながら、長女の養女になった輝子にも思いが及んでしまう。ひょっとしたら、もしかしたら、と思う。恋や愛に苦悩する彼女たちの血は、この母親から受け継いだものなのだ、きっと。

ラストがあまりに唐突でビックリ。自分の可能性を試したい、と研一に涙ながらひと時の別れを伝え(この攻防も、かなりの見もの)、日本の和服文化を伝えるべくニューヨークへと旅立つことを決意する安澄。で、二人の別れの場面から切り替わり、飛行機が飛んでいくワンカットでいきなりエンド!えッ?こ、これで終わりなの??オイオイ!い、潔すぎ……。

瀬戸内晴美(寂聴)の小説が原作で、彼女もチラリと尼僧役で出演。何かモノスゲー重くてドップリの主題歌が胃もたれ。そこだけ女任侠ものみたい??★★★☆☆


釣りバカ日誌14 お遍路大パニック!
2003年 116分 日本 カラー
監督:朝原雄三 脚本:山田洋次 朝間義隆
撮影:近森眞史 音楽:岩代太郎
出演:西田敏行 三國連太郎 三宅裕司 高島礼子 浅田美代子 加藤武 國村隼 鶴田忍 小野武彦 西田尚美 さとう珠緒 濱口優 笹野高史 中本賢 斉藤洋介 間寛平 有野晋哉 松村邦洋 笑福亭仁鶴 谷啓 奈良岡朋子

2003/10/4/土 劇場(上野セントラル)
何でまあ、こう毎年観ちゃうのかしらん(笑)。しかし今回は、前作まで三連投であった、私も結構お気に入りの本木克英監督ではない。え、まさか降ろされた?わけじゃないわよね(笑)。替わりにバトンを渡されたのは、朝原雄三監督。んん?聞いたことがあるような、ないような……と思っていたら、「サラリーマン専科」の監督さんだったのね。あれは好きだったんだよなあ。同時上映の「虹をつかむ男」のシリーズ化がコケたもんだから、これもまたシリーズ化の筈がぐずぐずになって終わっちゃったけど、加勢大周のぼけっとしたぼんぼんぶりや、三宅さんのとびきりの可笑しさが好きだったもんだから。「サラリーマン……」のシリーズ化が実現していたら、朝原監督も押しも押されもせぬ監督になっていたかもしれないのに、ままならぬものよ。

しかしこの人も生え抜きの松竹の監督さんなのね。本木監督で最後かと思ってた。本木監督より思い切った手法をバンバン使ってくる。バトンタッチされたという気負いもあるのかもしれないけど。みち子さんの、のぞき部屋かよ!っていうような、照明を落とした中、ピンクのハートが撒き散らされるCGには思わずツッコミ入れたくなる(笑)。面白いけどね。でも、いきなりステージング!の西田&三宅のロックンロールの唐突さは、グー。無表情のバーテンダー(有野晋哉)までがノリノリになり、なぜかそのカウンターからホーンセクションが出てくるところとか、往年の音楽アイドル映画っぽいじゃない?まぁ、松竹と言うよりは東宝系かなとか思うけど……何にせよ、古きよき時代の映画を思わせる雰囲気。

なんといっても真のエンターテインメントメンであるこの二人がノリノリなのだから魅せないわけないし。思えば三宅裕司は監督の「サラリーマン専科」つながりのキャスティングかもしれないなあ。実際この人の可笑しさというのは、舞台とテレビだけに発揮されるのは絶対にもったいない。ホントそれこそひとつのシリーズを任せられるだけの実力がある人なのに、あー、「サラリーマン専科」がコケたのは実にもったいなかったのよね。そして西田敏行は、これはもう「ゲロッパ!」を即座に連想させるパフォーマンス。実際、「ゲロッパ!」の後作品なんだから当然か。彼の病気の回復を待って撮られた本作だけど、「ゲロッパ!」よりも病気の跡はくっきり、はっきり。何か顔どす黒いしさあ。それにその見るに耐えないブヨブヨの体は今回が一番最悪。病気っぽさが凄い出てるもん。コメディとして脱いでるのは判るけど、正直毎回引くんだよなあ……この体を見せられると。

今回驚いたのは、毎回ハマちゃんに散々苦労させられて太田胃散のお世話になりっぱなしの課長、谷啓が次長に昇進(!永遠に課長なのかと思ってた!)し、営業三課から去ってしまったこと。えぇ?もしかして谷啓、本作を最後に引退……とか。だって本作でもいつもよりぐーっと出番、少ないしさあ。で、彼の後任が海外支社でバリバリやっていたという岩田で、これが三宅裕司。仕事に厳しいはずの彼も、あっという間にハマちゃんのペースにはまってしまい、ウソの忌引届をわざわざ「釣りのため」の休暇届にしてハンコついちゃうようなお人よし。思いっきり二の舞だわ……。最後には岩田は結局鈴木建設を辞めちゃうからこの課長のポストはまたしてもあいてしまうんだけれど、でもいくらなんでも一度昇進した谷啓が戻ってくるってことはない……よねえ。

後半はこの岩田のエピソードで話が転がっていくんだけど、前半は釣りバカらしく、地方のロケーションたっぷりに、ハマちゃん&スーさんの、お遍路にかこつけた釣りの旅、である。いやいや、かこつけたなんて、そんなこと言っちゃいけない。実際スーさんは釣りをぐっと我慢して(そうだ!スーさん、ホントに釣りしてない!)お遍路して心穏やかになることに努めてるんだもの。ハマちゃんのせいでぜっんぜん穏やかにならないけどね。ま、ハマちゃんのせいだけにするのも可哀想だが……途中出逢った昔の知り合いの社長さんは、自分が会社を倒産させたこと、社員を路頭に迷わせたことを悔いてお遍路しているとか言いながら、若いおミズの女の子を二人もお供に連れてる、なんて場面もあったし(あの時のスーさんのぼーぜんとした顔!!)。でも、やっぱりそのほとんどはハマちゃんのせいよ。特にきっぷのいい女トラック運転手、みさきと出会ってから。ハマちゃんはその色香に一瞬惑わされそうになって(これはちょっと信じられない描写。だってハマちゃんはみち子さん一筋だからさあ)それをとめるべく蚊帳の中での大騒動は、も、ほとんどスラップスティック。危うくハマちゃんの不倫の危機をスーさん体当たりで阻止するのであった!

このみさきを演じるのが高島礼子。水産会社のトラック運転手であり、実家の小さな旅館の手伝いをし、そこで一人息子を育てている。夫はナシ。劇中でもしっかと出てきたけど、「呑」のCMのイメージからくる、和服でしっとり、なイメージがあるから(極妻もあるにはあるけど……あんまり板についてない気がする)、タクシーに追い越され、バッと降りてきて窓をココココン!と叩き、キッと睨みつけてビシッと言い放つあのカッコよさに、え?高島礼子に似てるけど……などと、ちょっと一瞬、信じられないような気持ち。しかしこのカッコよさがキマッてるんだなあ。前作の鈴木杏香よりバリバリにキマッてる。

彼女の息子はこの自然豊かな土地に住んでいながらテレビゲームばかりやってて、表情も乏しいし、母親をうっとうしがっている。……などという描写は、山田洋次脚本、だよなあ、と思う。引きこもりの青年を出してきた前作でも思ったけど、いつでもムリムリ現代社会のひずみを入れてくるんだよなあ。この「釣りバカ」にだよ?いや、破綻しているわけじゃないから別にいいんだけど、そんなの自身の「学校」シリーズで好きなだけやればいいじゃない、などと思ってしまうのも事実で……。だって「釣りバカ」じゃどうしたってそんなに掘り下げるわけには行かないじゃない?カラー変わっちゃうし、何より時間がないし。そうするとすごおく中途半端なことになっちゃうのよ。今回だってこの男の子がなぜ客たちの宴会が気になったのか(旅館ならそんなことしょっちゅうあるはずじゃない?)とか、見も知らぬおっちゃんの釣りの誘いにあっさりと応じるのも何だか不自然だし。そりゃ釣りをはじめちゃえばそこは男の子、夢中になり笑顔を見せるのも判るんだけど、大体こんな風にカンタンだったらそりゃ母親だって苦労していないんじゃないのと。つまりそこが“男親が必要”だという根拠なのかなあ。それを描いているのだとしたらいくらなんでもちょっと単純すぎない?

一応、でもこれは伏線、ってヤツだったんだろう。だってすぐ後、ちゃんと男親が出来ちゃうんだもんね。岩田がこのみさきに一目惚れしちゃうから。ハマちゃんを訪ねて東京の鈴木建設に来た彼女を見て、そわそわしっぱなしで食べていたコンビニのそばを引き出しにしまうあたり爆笑モノ。このあたりの表情の変化やしぐさの絶妙さはさすが三宅さんなんだわ。ちょうどハマちゃんは福島への出張でいなくって(西田さんの故郷ではないですか。帰ってきた時ちゃあんとお国言葉で話すのよねッ)、岩田は嬉々としてみさきを、案内と称して引きずりまわす、って状態でしょう、あれは。寄席とか思いっきり退屈そうなんだもん、彼女。果ては深夜の二時まで酒に付き合わされて……というのも彼女がさすが高知の女、酒にめっぽう強くってつまりは岩田の方がつぶれちゃったわけで、彼女に介抱されながら自宅に送り届けてもらうというヘタレっぷり。こりゃ彼女の方はカンペキあきれ返りまくったろうなあと思うんだけど、でもお互い子供のいるバツ一同士ということが、彼の寂しさ、哀しさが判るから、ベッド脇の娘さんの写真をじっと見つめたりして、確かにそんな予感はあったのだ。

岩田の方は翌日、朝からもうおかしくて、すっかり恋する男モード。働き者の彼が、昨日突然早退した時点でおかしかったのに、突然の休暇願いを突きつけて飛び出してしまう。最初こそ怖がっていたものの、今では皆でこの岩田課長を慕う営業三課のメンメンはハマちゃんがいじめたんだろう、と非難ゴウゴウで、しまいには皆で取っ組み合いの大ゲンカ!
ミニプラモのコレクションを蹴散らかされて「ガンダムがー!!」とキレる濱口や、同じくバルーンアートをやられて「私のプードルがー!」と悲鳴をあげる珠緒ちゃんが、この営業三課の平和っぷりを物語っているわけで。あー、それにしてもやっぱりやっぱり珠緒ちゃんは可愛いなー。既に可愛い、という年ではないというのに、ホント可愛い。皆でハマちゃんに詰め寄る時も、一番前に陣取って机にひじついて手にあごをもたせかけながら、ハマちゃんのせいよ、だなんて、あの濡れてキラキラしている瞳に言われたら、もうあーん!って感じよねー。「そういえば、課長、四国行きの飛行機の時間、聞いてましたぁ」と胸のところで手をお姫様みたいに組み合わせて言うブリブリがきっちり似合うなんてかわゆすぎるのだ。シビアな西田尚美もイイけど、彼女ちょっとかすんでたなあ?

で、岩田が向かった先は当然、みさきのいる高知。無精ひげに目も血走って、彼女がバイクで通る橋の上でぼんやり待っている岩田の姿はかなり、コワい。まずは定石どおり断られ、自らの宣言どおりに橋からドボン!泳げない彼は、さっそうと飛び込んだ彼女に救助され、めでたく生還。「バカやねえ、ほんとに」と岩田の首をかき抱くみさきの表情は愛しさにあふれており、お、これは……と思っていたらその通り、岩田は会社に戻ることなく“寿退社”をファックスで告げるのだった。いいねえ、やり手の男性社員の寿退社!素敵じゃないの。魚も釣れるし、野菜も採れるから充分生きていける。何よりここには愛がある。だなんて言ったっていうんだから、ほおんと、素敵じゃないの。彼女の息子があっさりなついたらしいのはやっぱりちょっと単純よねとは思うけど……。二人でダサダサの柄のおそろい半ズボンはいてバイクで二人乗りして、ラブラブ。岩田は水産会社の仕事にありついたらしく、今までのように閉じ込められたオフィスで窮屈そうにしていたのとはうって変わってかっちょいいぞお(水産関係に弱い私……)。

よさこい祭りの見物人の中に高知県知事の橋本大二郎氏が(ピンボケ気味で)いたのと、(おそらく)三国さんのモノマネして喋る西田氏のシーンの微妙さが気になったわ。★★★☆☆


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