home! |
TEAM NACS FILMS N43° ヤスダッタ3D
2009年 分 日本 モノクロ(一部カラー)
監督:安田顕 脚本:安田顕
撮影:音楽:
出演:安田顕 安田こずえ 安田唯乃 安田和博(デンジャラス) 安田大サーカス(団長・クロちゃん・HIRO) 安田弘史
それは、映画、という前提よりも、映像、というそれに対しての強さだったように思う。
映画としてならば、それこそファンサービスさえも全くさしはさまなかった音尾作品の方が、ベテラン俳優の投入や美しいロケーション、人間性に根ざしたドラマ、といった点で“らしかった”と思うんだけど、もしかしたらそれは、彼らが得意とするドラマ・バラエティでも今までやってきたことじゃないかな、とも思ったんだよね。
安田作品の映像へのこだわりは、でもまあそれも、ひょっとしたらアマチュア作品が陥りがちなネタではあるかもしれない。
ドライなモノクロ、その中に印象的に残される赤、闇の中の怪物の恐怖、いわゆる特撮や特殊メイクの魅力に自分自身が実に楽しげに身を投じていて、ああ、彼は、映像を作る、という今回の企画の根本的なところを凄く理解してるなあ、と思ったのだ。
アマチュア作品が陥りがちな、と言ったけど、だからかもしれない、初期の塚本作品なぞを思い出してしまったのは。
壊れゆく肉体、壊れゆく感情。なんといってもモノクロ。そして荒々しく走ってゆくカメラ……すんごく、塚本作品を思い出してしまった。だからそれは、自分だけの映像を作ることへの喜びも含めて、なんだけどね。
ファンイベント上映の時には、安田作品にだけ観客の質問が集中したように、やはりその“熱”にいやおうなしに吸着されてしまうものはあったと思う。
そう、あのイベント上映の時、非情なラストに「エーーーッ!?」という悲鳴があがった、今回の劇場公開ではさすがにそんな過剰な反応はなかったけど、でも二回目見てもあのラストには、心の中で悲鳴をあげてしまった……まあ、ベタではあるんだけどね。
でも、そのイベントでファンから指摘されたように、あれはやっぱり、狼男とかフランケンシュタインとかから影響された、人間ではない哀しさ、なのかなあ?
そう言われればナルホドと思ったけど、もう私は、塚本作品ばかりが頭にこびりついてしまったからさあ。
でもヤスケン自身はうーん、どうなんだろう。3D、ってのはあからさまにマトリックスだし(劇中にも、弾をよけるのけぞりでパロってるし)。
ヤスダッタ、というのはインドに実際にいる苗字なのだとヤスケンは言っていたから、ひょっとしたらそのあたりからのインスピレーションが発展したのかもしれない。
インドで発見された原因不明の奇病、ヤスダッタ。それを発見した教授の名前がつけられている。
日本で発見されたヤスダッタは森の中に潜み、その目撃情報を得て捕獲隊が乗り込んでいる。くだんのヤスダッタ教授も来日してくる。
ちなみに、森の中のヤスダッタも、ヤスダッタ教授も、捕獲隊の隊長も、みーんなヤスケンが演じている。まさに、ヤスケンによる、ヤスケンのための、作品なんである。
それだけでなく、彼以外の役者はみーんな、“安田”なんである。ラストクレジットの安田オンパレードには思わず笑いが起こり、それをネラったんじゃないかとも思わなくもないんだけど、でもそれにしても、ナイスアイディアである。
実はこのナックスフィルムのルール、メンバーを出演させる、っていう一番基本を知らん顔でスルーしてるんだけど、脚本が出来上がった時点でスタッフがそれを諦めたらしいし、メンバーからギモンを呈されてもヤスケンは「だって、ヤスダじゃないじゃん」のひと言で収めてしまったつーんだから、スゴイ。
だからある意味、この作品が本当に純粋に、誰からもジャマされず、彼のやりたい世界観を作り上げたものなんじゃないのかな、と思うのだよね……だってやっぱり仲間を出しちゃったら、なんとなく馴れ合いな雰囲気は出ちゃうんだもの。
そもそもファンイベント向けだからと、それを前提にベタベタな内側作品を作ったのが大泉さんやモリーダーであったならば、それに反した一番がヤスケンであり、次点が音尾さんであったのかな、と思う。その点、シゲちゃんはやはりどっちつかずで、ちょっぴり“残念”なのかも(笑)。
で、その全員安田のキャストだから、ほとんどが外から呼んだ役者なんだよね。
外から呼ばなかったのは、ヤスケンの親御さんぐらい(爆)。あのたどたどしいレポーターが、まさか彼のお父様だとは、高校の友人、そのみ様が送ってくれたメイキング番組のDVDを見なければ判らなかった。しかもそれも、ヤスダテレビという放送局からのニュースだという徹底ぶりである。
更に安田大サーカスの三人、デンジャラスの安田和博と、キョーレツに目を引くキャラが目白押しである。
私的には安田大サーカスの団長は好みなので嬉しいが、やはり場をさらうのはあの独特の高音のクロちゃんで、この緊迫感のある世界観で、奇妙なテンションを加えている。
デンジャラスは、オバマ大統領ソックリさんのノッチによるフィーバーでスッカリ再起を果たしたけど、この作品が作られた時点では、まだまだそんな感じじゃなかったはずだよね?そのあたりに、ヤスケンの強さを感じるなあ。
思えばあの大ケッ作「マッスルボディは傷つかない」で、なかやまきんに君を迎え入れたりもしてるし、ヤスケンはクラそうに見えて、外からの起用が上手いというか、積極的なんだよなあ。というか、もしかしたらヤスケン作品の特殊性を、仲間内だけでは支えきれないってことなのかも!?
森の中に潜んだ“ヤスダッタ”を、自分の夫だと名乗り出る女性、そして幼い女の子。
それを目にしてから、ヤスダッタは心の奥底にしまった記憶を取り戻し始める。そう、森の中に響き渡る「やっちゃうよ」を聴きながら……(爆)。
ここが唯一、ファンサービスの場面で、彼は、何?出稼ぎにでも出てるの?様々な職業を遍歴してるんだよね。
最初はフツーにオフィスでパソコンを叩いてる、と思ったら、ビルの清掃人になって、巨大な掃除機を扱いきれなくて、自分が床でマイケル・ジャクソンみたいに背中でくるくる回ってる(笑)、街角で鶴田浩二ばりにムード歌謡「やっちゃうよ」を歌ってる。
それぞれの場面で必ず、彼は懐から妻と娘の写真を取り出して、感慨深げに眺めているんである。そしてどんなきっかけだったのか、何が起こったのか判らないんだけど……彼は今こうしてヤスダッタとなり、追われた森の中に潜んでいるんである。
全裸でひび割れたような、痛々しく恐ろしい風貌、いかにも人間の時の記憶は失われた、というのを醸し出している。
しかしそんな彼が唯一つられるのが、とっくりとおちょこのセット、つまり、熱燗の香りだというのが……そういやあここも、ヤスケンのキャラを十二分に反映しているんだよな。
妻はそんな夫に必死に呼びかけ、ケンちゃんなんでしょ?一緒に帰ろう、と抱き締める……。施設に隔離された彼は、ヤスダッタ教授の希望により、研究解明のためにインドに連れて行かれる算段がどうやらついて、最後の食事ぐらいは、と妻が一人、鎖につながれた独房の彼に会いに行く。
彼女は信じていたんだよね。彼は自分たち妻と娘だけは、判ってくれてると。
そう思わせるような描写だった。妻の呼びかけに彼は森の奥から出てきたし、「やっちゃうよ」の自分の声にも耳をそばだてたのだもの。そして妻との最後の別れに、彼女の抱擁に身を委ねたのだもの。
でも、「逃げて!」と叫んだ妻の手によって放たれた彼は、森の中のような、ケモノのスピードで研究所を疾走した先に、彼の愛する幼い娘が廊下に佇んでて、ふと立ち止まるのだ。
いぶかしげなような、愛しげなような、なんともいえない、読みきれない表情で四つんばいのまま静止する彼。
しかし、背後から追っ手が駆けつけた瞬間、彼は残虐な笑みにも見える、鋭い牙を見せ付けるようにむきだしにし、画面から瞬間的に見切れた。
ブラックアウト、キャーッ!という絹を引き裂くような悲鳴。
それはきっと、それを目の当たりにしてしまった妻の悲鳴。
娘は声も出せずに、彼の牙の元に、倒れてしまったのだろう。
ヤスケン自身が妻と娘を持ち、しかもべったりの家庭人であることを考えると、そのバックグラウンドを糧にこの物語をつむぎ出したことは、結構凄いことなんじゃないかと、思う。
こんなに妻と娘を愛している男が、それを失ってしまう、人間ではなくなってしまう恐怖。
それをヤスケンは恐らく、その幸福を大事にしているからこそ、その恐怖を思いついたんだろうね。
そこんところが、ヤスケンらしいネガティブさなんだけど(笑)。
でもそれこそが、クリエイターということなんだと思うんだよなあ。★★★★☆
そうそうそう、ジェットコースターといえば、竹中直人自身が演じる甦った落ち武者が最終的に「俺はジェットコースターに乗りたいだけなんだ!」となるのには爆笑!800年の時を越えて甦ってそれかよ!みたいな。
って、おいおいおい、つまりはどーゆー話なんだってば!
ふう、最初から脱線しまくってしまった。しかしまあ、女子高生と落ち武者とは、どーゆーアイディアの発端なのよ。しかしそこが全ての成功のカギ?かも!そして山形、これも成功のカギ?かも!
やっぱりねえ、地方にロケを求めるならば、その地方であることの個性を全面に出さなければならない。平家の落ち武者が東北の果てで無念に死んだ、その徒労感がこののどかな風景の中に沈殿していること、そして何よりのどかな山形訛り。これよ。
女子高生たちを助ける(時には見放す(爆))、この地をこよなく愛するアホの三太郎が、非常に愛らしい山形訛りを繰り出し、彼と親を亡くした寂しさを共有する成海璃子嬢演じる美香代が彼の言葉をマネするシーンなんて、可愛くて微笑ましかったもん。
えーと、だからどーゆー話かといえば、まあ、落ち武者よ。落ち武者の里なのよ。この御釈ヶ部村ってのはね。そこに歴史研究会とは名ばかりの、お気楽なセンセーの縁結び参りが目的の、女子高生4人を引き連れた一行がやってくる訳よ。
ボロいバスに揺られた彼女たちと平行して、この村の呪われた過去が語られていく……。
愛する女、光笛と手に手を取って逃げてきた落ち武者、葛貫は部下のウラギリに遭って、村人たちに光笛をさらわれ(……きっとその後、陵辱されたんだろうなあ……)、自らは穴に落とされて生き埋めにされてしまう。
ちなみにその部下、竹中直人演じる山崎田内左衛門は、なんたって竹中直人だから、アッサリ村人たちにスコーンとやられてあっという間に死んじまうんだけど(笑。こーゆーあたりが竹中直人なんだよなあ)。
観光客を呼び込みたい御釈ヶ部村は、アホの三太郎の家が代々守り続けてきた、そして今は三太郎がそれを守ることを誇りにしている祠をブチ壊してスーパー祠に建て替え、ここを一大落ち武者アミューズメントパークにすることを画策。……って、どー考えてもそんなアイディアで人が来るとも思えないけどね(爆)。
しかし三太郎が恐れていた通り、この神をも恐れぬ所業で800年の決壊が破れてしまう。もう落ち武者がわらわらわらわら甦ってしまうのだ!
そして運命のいたずらか、はては運命そのものなのか!?美香代は光笛にソックリだった。生き返りだと信じた葛貫は、彼女と永久の夫婦になるため、共に黄泉の国に旅立とうとするのだが……。
後半には沢村一樹と成海璃子がシリアス面を存分に出して演じるので、結構泣ける方面のドラマチックになるものの、それまではもうハチャメチャ!
てーか、これ題名からして「スクリーム」の山形版?だよねー、絶対。かの「スクリーム」が往年のホラー映画のパロディ、というかオマージュであったのと同じく、本作ももうメッチャ「悪魔のいけにえ」だし、「死霊のはらわた」だし(笑)。
まあ、私もどこまでちゃんと判っているかはビミョーなところなのだけれど……女子高生がチェーンソーを振り回して落ち武者とマジ対決する場面は、ホラー映画のパロディよりも「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」を思い出しちゃうあたりは、私、ダメかもしれない(爆)。
でも美少女がセーラー服でチェーンソー片手に戦う姿は美しく、ここは萌えたなあー。後は大体がもう、クっだらねー!の連続だからさ(笑)。
大体、温水さんが、温水さんの役柄で出ているというのがさあ!
女子高生たちを落ち武者サプライズで迎えるために村が呼んだ“ご存知温水洋一”なんだけど、村人たちからは誰あいつ扱いで、華がないとかショボイとか(実際どう言っていたかはイマイチ忘れたけど(爆))エラい言われようで、それを影で聞いていた温水さん、なにげに傷ついちゃう(笑)。
俺様Tシャツ着て、バカヤロー、俺は温水だ!とキレまくる温水さんは、温和で弱気な(失礼)普段の彼のイメージからは思いも寄らない。ううーむ、いいのだろうか(笑)。
そして彼が一番最初、真っ先に落ち武者の水色ゲロの餌食となり(このあたりは「エクソシスト」だろうか……)第1号のゾンビになってしまうのであった。
この後、村人たちは次々にゾンビになっちゃうんだけど、それがさー、「御意」「御意」とつぶやき続けるゾンビなのよ(爆笑!)。もう、しまいには、ギョイーッ!ギョイーッ!なのよ(大爆笑!)。どーゆーゾンビなのよそれって!
しかもね、なぜか髪がボワーッと、盛大に生えるのよ。ついでに眉毛までボーンと生えるのよ。だから温水さんなんて誰だか判らなくなって(爆)。
これってさ……とにかく温水さんに対する描写が失礼すぎるんだけど(笑)バーで彼の悪口を言っていた村人たちも「全然印象違う」「すげー、落ち武者っぽい」と大絶賛?
しかし彼らはその直後、温水さんのゲロに遭い、第2号、第3号、第4号……のゾンビとなってしまうのだが……。
そしてね、そうそうそう、肝心の落ち武者よ。無念の死を遂げた葛貫、そしてその部下たちが次々と甦る。
というか、一番最初に甦っているのが山崎なんだけど、彼が「おーい、みんなー」とにこやかに手を振っている、その手の振り方、ミョーにスナップが柔らかに効いているあの振り方はまさに竹中直人、なんだよな(笑)。で、仲間達にも「あのバカ……」とつぶやかれるあたりが(笑)。
だけどさあ、葛貫は彼のウラギリを覚えていなかったの?山崎のせいで彼はあんな目に遭ったのに、「お前の忠誠を忘れていないぞ」なんつって、アッサリ仲間に加えちゃうんだもんなあ。
それにしても、やたら髪の色のハデな落ち武者に甦ってるんだけど(爆)。演じる役者たちがマジモードなだけに、そしてこののどかな田舎町だけに、それが笑える。
そうそう、夜間のクライマックスバトルに至るまでは、昼日中の明るい中での落ち武者さんたちなのよね。それがなんかシュールというか、ヘンな画でさあ(笑)。
しかもね、甦った彼ら、海辺でイチャイチャしていたカップルを拉致して、彼らの車で移動するんだけど……落ち武者が車で移動て(笑)。
しかも彼ら、何たって甦った落ち武者なんだから、瞬間移動とかカンタンに出来ちゃうのに、なんで車で移動よ(爆笑)。窓から入りきれない鉄の碇が飛び出てるのがまた笑えるんだよなー。
落ち武者二人に挟まれて、メッチャビビリまくって叫び続けるハデハデシノラーがまたイイのよ。
つーかもう、山崎、アホ過ぎるんですけど……。逃げ出した村人から奪ったヤンマーのキャップをかぶってご満悦って、あ、アホ……しかも足元には黄色いスニーカーまではいちゃう。大アホ……そりゃー、村人にアッサリ倒されちゃうのもムリないよなー。そんでもって「俺はジェットコースターに乗りたいだけなんだ!」だもん。
そして、三太郎である。彼はね、本当に純粋な村の青年。両親を亡くしてボケ気味の祖母と二人暮し。客なんか来る訳ない寂れた散髪屋を営んでいるのね。
彼が「髪が痛んでますねえ」とか言いながらカーラー巻いているのが、蝋人形みたいなブキミなマネキン……。この不気味な人形は結構あちこちにあって、センスのかけらもないっつーかー、この村の落ちぶれ加減を絶妙に示しているのよね(笑)。
でね、祖母が由紀さおりなんだけど……もうこれがこれが、絶妙中の絶妙なのよ!なんかね、そのボケっぷりも、ぽよーんとしててカワイくてね。
いつもパーマを当てる時に頭にかぶせるスチーマーを引きずって歩いているのだ。しかもなんか、フランス人形みたいなカッコしてさ!
しかししかし最後には、彼女の歌う「老人と子供のポルカ」が落ち武者に対する必殺攻撃になるっていうんだから、なんなんだ!「老人と子供のポルカ」て!スビスバー、パパパヤーだわよ!しかもそれが三太郎を慰める子守唄て!どんな子守唄よ!
しかし由紀さおりの柔らかな歌声で歌われちゃうと、そうかなと思ってしまう。竹中直人が彼女にはどうしても歌ってほしかった、というのがナルホドと思っちゃうのよねー。
ほかにも村人たちが歌う数々のオリジナルソングにも大爆笑でさー。「山形の夏の天気はわがらねえー」判らないなら歌うなー!! もうちょっとしたミュージカルなのよね。
おっと、忘れそうになってた。なんたって女子高生VS落ち武者なんだから。
四人の女子高生は皆個性的、グラビアアイドルをやってて超ナルシストのコ、ドライで冷めてて、しかしクライマックスでは落ち武者相手にチェーンソーで闘うクールビューティー、そして今時こんなケータイ?てな大型携帯電話を、アンテナやらナビやら必殺光線ビームやらを手作りしてしまう電子工学系少女。
その中にいて美香代は一人、地味でフツーの女の子って感じなのだが、その裏には複雑な家庭環境が隠されている。
彼女の携帯には何度も父親からの電話がかかってくるんだけど、その度に美香代はウザそうな表情を浮かべて電源を切るんだよね。でも「そんなにイヤならチャッキョにすればいいのに」「だけどしないんだよね。愛、だよね」という友人たちの言葉どおり……父親を憎んでいるわけではないけれど、許せない、フクザツな気持ちが交錯しているのであった。
それは、母親が死んですぐに再婚してしまった父親への、どうしようもなく許せない気持ち。しかしその場面でまで竹中直人はヤッてくれるんである。
父親の再婚相手として登場したのは、どこの南米人よ、という、巨乳ブリブリ日本語カタコトのケイシー。「“あの人”じゃない、お前のお母さんだ!」って、ムリムリムリ!
しかもこのケイシーをノリノリで演じているのが、えーっ!クリスタルケイって!もうどこまでもナイスキャスティングすぎるんですけど!
しかしナイスキャスティングといえば、やはり沢村一樹だったかもしれないなあ。彼だけはね、一個もコメディ演技をしないのよ。もう最初から最後まで、ドシリアスなの。
かの成海璃子ちゃんだって、落ち武者から逃げ回る場面ではかなり思い切ったスクリーム顔を見せてくれる一方で、彼だけはもう、愛する女への一途な思いと、無念な死を遂げた怨みだけを支えにしているドシリアスな訳。
しかしなんたって落ち武者のカッコにあのメイクだからさあー、なんか時々セクスィー部長に見えなくもないっつーか(爆)。
愛する女の生まれ変わりだと信じていた美香代から、「ただのコスプレじゃん!」と言い放たれて「こ、こす……?」と戸惑う場面には爆笑!落ち武者に対してコスプレって言ったってそりゃ判らんて……。
いやでもやっぱり一番のお気に入りは、マイコ演じる勝海子先生だったなあ。いやー、こんな女優がいたんだね。
もう超頼りない先生でさ、果ては生徒を置いて逃げようとまでしちゃってさ、「先生、私たちの保護者でしょ!」「私を保護してほしいー!!」……頼りなさ過ぎ!
彼女が初めて落ち武者に遭遇するホテルのロビー、次々に周囲が倒されて血の海の中、叫び声をあげそうな顔のまま倒れている彼女には笑ったなあー。ただうるさいだけのテンションじゃなくて、まあうるさいんだけど(笑)、凄く絶妙で、面白いんだよね。
しかもね、最後の最後には彼女にも先生としての見せ場があるのだ。ゾンビの群れの中でストップしてしまったトラクターを、怪力で後ろから押す彼女、発する言葉が「ちんすこうー!!!」!!??(大爆笑!)
監督からの指示とはいえ何の迷いもなく、というかここはコレ!てな勢いで叫んじゃう彼女のちんすこうスクリームにはヤラれたっ。
落ち武者に斬られて「ものすげー痛てー!」転落した崖から昇ってきて「死ぬかと思っ(落ち武者に遭遇して)とぅわー!」と言った数々の脱力名言が、さすが竹中監督でもう、たまらないのよねー。
あ、生瀬さん演じるチャッカリ者の村長にも笑ったなあ。彼は800年前に葛貫を穴に落としてミミズの恐怖に陥れた村人としても登場しているんだけど、なんたってこの強欲だけどチャッカリな村長がツボ。「あれ?」みたいなトボけた顔でちゃっかり生き残ってるんだもん(笑)。
ハーブでトリップしちゃったパンクなメンメン(この設定の時点でスゴイけど)が、バック転で後退してたき火の中に突っ込んじゃった時には、笑うのもさすがにはばかられて口アングリ!
そういう意味ではかなり残酷描写もあるんだけど、残酷さにイヤミがないというか、その辺のセンスはさすがよね、と思う。
うー、だってさ、最終的にはゾンビはゾンビのまま、穏やかなゾンビになって(どんなゾンビよ!)一年後には村の観光化も成功して、ゾンビも女子高生も、そして美香代のお父さんにケイシーお母さんまでもが集って、楽しく和やかに歌い踊ってるんだもん!
ううう、この絶対幸福、超ポジティブ感覚、スゴイかもしれない……。
それにしてもオマージュ多すぎで判らんて……。あ、でも竹中直人のブルース・リーのポーズは判った! ★★★★☆