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「ろ」


2012年鑑賞作品

ロボジー
2011年 111分 日本 カラー
監督:矢口史靖 脚本:矢口史靖
撮影:柳島克己 音楽:ミッキー吉野
出演:五十嵐信次郎 吉高由里子 濱田岳 川合正悟 川島潤哉 田畑智子 和久井映見 小野武彦 田辺誠一 西田尚美 森下能幸 田中要次 古川雄輝 安田聖愛 星野亜門 徳井優 竹中直人


2012/1/31/火 劇場(池袋シネマ・ロサ)
世間的評価や観客のウケに反して、私はなんでか矢口作品がしっくり来なくて、これは生理的相性のようなものかしらんと半ば諦めていたのだが、ようやく前作「ハッピーフライト」でそれが払拭した気がした。
矢口監督の作品は言ってしまえば、アイディア一発勝負で後は彼の独特の会話とテンポで押し切ってしまうような感じがしてたのが、「ハッピーフライト」では、綿密な取材が物語的カタルシスとユーモアが見事に合致する結果となってて、凄く面白かったんだよなあ。

本作にしても、“アイディア一発勝負”云々な気は正直、してる。ロボットの中におじいちゃんが入る、ていう“アイディア一発”でもう勝負は決まったようにも思える。
でも真に勝負が決まったのは、そのおじいちゃんがミッキー・カーチス……もとい五十嵐信次郎に抜擢されたことであろうと思う。
あの色気たっぷりのミッキー・カーチスを市井のガンコで自分勝手なおじいちゃんにしてしまったことの衝撃!

いやいやだから、ミッキー・カーチスじゃないんだってば。いや、じゃない訳じゃないけど、違う、じゃなくて……。
イチ老人として一般おじいちゃんたちとともにオーディションに参加して勝ち抜いた“五十嵐信次郎”。
確かにこの役に、本当に素人、それこそホントにシルバー人材センターに勤めているようなおじいちゃんを大抜擢するような驚きもアリだった気がする。リアルに素人感が出る面白さが「鈴木さん」に似合っているもの。
でもそういうことも含めて、ミッキー・カーチス……もとい、五十嵐信次郎なのだよね!

しかし五十嵐信次郎っていうんだからそれが彼の本名なのかと思ったら、「デビュー当時から憧れていた名前」??それってどーいうこと?うーん、やはりミッキー・カーチスは謎だ……まあともかく、彼が本当におじいちゃんなんだもの。
あのオシャレで色気があって破天荒で、カッコイイミュージシャンの彼が、おじいちゃんなんだもの。
福祉施設での発表会のお芝居で自分が主役でないことにふくれっつらをし、娘は呆れ、孫は無関心、気のいい婿など彼の眼中ではない。
一人暮らしで一日何もすることがなく、老人仲間たちをバカにする割には孤独をもてあまして、ワンカップをかっ食らう。

物語に食い込む話になっちゃうけど、何より衝撃だったのは、ロボットの中に入るためにボディスーツに着替えてほしい、と言われて、ああ、とすとんとスボンを落としてガフガフのブリーフいっちょになってしまうシーン!
いや、車で着替えて……と慌てる木村電器のスタッフたち。めっちゃ往来だよ!
やせ細ったお年寄りな足にガフガフの白ブリーフのミッキー・カーチス(……もとい……ややこしいな)に、コメディだと判っていても軽くショックを受けてしまう。この作品のカルさに反して、なんか、彼の覚悟を感じちゃうんだなあ。

カルさなどと言ってしまったが、いろいろうがって考えれば、意外に深い話なのかもしれないとも思う。
それこそアイディア一発である物語も、ミッキー・カーチスが演じ(だからね……もういいや)、トボけた味わい深い役者たちが台詞を言うと、何かぐっと深い意味を感じてしまう。

リタイアした途端に子供じみた発表会なんぞを披露する老人会に甘んじて、子供や孫から疎んじられる、熱血サラリーマンであったろう彼が、「鈴木さんしか出来ない、鈴木さんが必要なんです!」と言われるカタルシス。
確かにこのロボットは、ていうかロボットですらないし(爆)、詐欺まがいで意味などないのかもしれない。
それでも、確かに“ニュー潮風”に入れるのは鈴木さんしかいないし、実際は何の役にも立たなくても、皆が彼を待ち望んでいるのだ。

まあ、最初から話をしなければ。そもそもなんでこんなことになったのか。
弱小家電メーカーの三人組、小林・太田・長井が社長のムチャ振りで、二足歩行ロボットの開発を命じられて困り果てているところから始まる。
ていうか、困り果てているっていうか……大体がムリなんだから、2、3歩歩いてテレビに映れば社長も許してくれるだろうというスタンスで、冒頭シーンの三人はやる気ゼロ。
特に居眠りぶっこいてめちゃくちゃ粘度の高いよだれをずるーりとたらしている長井はインパクト大。き、きったない(爆)。

ムチャ振りをする社長が小野武彦っつーのもぴったりすぎて。もうこの人、無責任になんでも押しつけてくるって雰囲気アリアリなんだもん。
大体家電メーカーで、ロボット技術なんてある訳ない三人にそんなことを任すこと自体ムチャクチャだし、「もうロボット博のパンフレットに載せちゃったからさ」おいおいおいおいー。

でも考えてみれば、もともとは営業や梱包(!)の担当だった社員が、この冒頭シーンで、2、3歩とはいえ歩行するロボットを作っているんだから、その才能を社長が見抜いていたのかもしれない?いやいやいやそれはないか(汗)。
しかし、あちこち錆び剥げだらけで見るからにアナクロニズムなロボットは突然暴走を起こし、ガラス窓からダイブ!あえなくおシャカになってしまって、三人呆然。

最終的にこのシーンはクライマックスで繰り返され、更にいうとエンディングでまで(窓から落ちるシーンはここではなかったにしても)繰り返されて、最初に実に重要なシーンを示しているんだよね。
それだけに、確かに気合が入ってる。つながっているケーブルがどんどん引っ張られて三人がボーゼンとしている間にバシャン!と窓を突き破る。
コンセントがかろうじてつながっているロボットを窓の下にボーゼンと眺めた小林、「……バックアップは……?」「とってません」その瞬間、コンセントも抜けて地面に叩きつけられるロボット。い、痛々しすぎる。

思いっきりうがって思えば、役に立たない人間、期待されていない人間、窓を突き破る様は自殺のようにも見えて、なんとも言えない気分になる。
実際、三人は、社長はただムチャ振りしてるだけで期待してる訳じゃないし、ただクビになりたくない一心なだけだった。
 そして苦肉の策として“着ぐるみオーディション”を開催、そこに参加したのが鈴木さん。
彼が参加したのもついうっかりという訳じゃなくて、家族から疎まれて、一人ぼんやりと特撮ショーなど眺めていたら、ステージに立っている人たちが子供たちからも親たちからも大人気だったから、なのだ。

オーディション会場で一人場違いなおじいちゃんだった鈴木さんはいったんは落とされるんだけど、合格した青年が金属アレルギーだったことで急遽浮上、いきなり連れて行かれた先がロボット博。
企業秘密だから鈴木さんには何も知らされず、ただ指示通り動いてもらうだけの筈が、鈴木さん大暴走、他のロボットに対抗して安来節を踊ったかと思いきや、ニュータイプロボットに熱狂した人の波に押される形で更に制御不能、小林の無線も届かなくなる。
会場に設置されていた案内タワーが倒れてきたところにいた女子学生を助けたところをスクープされ、一躍有名人、ならぬ有名ロボットに。
この場を切り抜けるだけの筈だった苦肉の策が、ノリノリの社長に本当のことを言える筈もなく、三人とおじいちゃんロボットのてんやわんやがスタートするんである。

金属アレルギーなんていうギャグはそんな、アレだったけど、まあつまり、葉子と共に私も、つまり観客もニュー潮風、つまり鈴木さんに恋しちゃったのかもしれないなあ。
あ、葉子っていうのは、この時ニュー潮風、ていうか鈴木さんに助けられた女子学生ね。彼女のスカートの中に気をとられる、なんてシーンはそれこそアレだったけど、へたりこんだ彼女に手を差し出すロボットという画は、それこそ絵になってた。
そう、この“絵になるシーン”も後にちゃんと繰り返される。上手く出来ているのよね。

葉子を演じるのは、吉高由里子嬢。私はしつこく「蛇にピアス」の違和感を引きずっていて、彼女に対してどうにもしっくりこない感があったんだけど、本作の彼女は素直に可愛いと思ったなあ。
ていうか、そう、監督が言うように、「本人の持つ変態度が尋常じゃない。僕の映画にぴったり」のかもしれない、と思う。世によく言う天然とかそんな単純なことじゃなくて、彼女のぶっ飛んだキュートさがまさに花開いて、とても素敵だった。
正直、ロボット工学に長けているような頭の良さには見えないのだが(爆)、“ロボットオタク”それこそ、監督曰くの変態というほどのロボットへの情熱を傾ける彼女は、ちっとも違和感がないどころか、同じ学生たちからも「彼女は特別ですから」と冷ややかに見られるほどの、ある種のぶっ飛んだ才能の持ち主な訳なのよね。

葉子が小林たちを大学の講演に呼んだ場面で、ハイ!それはこうじゃないですかネ!とウズウズした気持ちを抑えきれず、ホワイトボードにバーッと難しい構図やら方程式を書き連ねるヨシタカ嬢には思わずボーッと見惚れてしまった。
左利きというのも妙にそそる。そう、彼女の熱意、というより可愛さに惹かれて、講演なんぞを引き受けてしまうのね。
てか、小林は最初からそれはヤバイということが判ってるのに、あとの二人がさ、もうのぼせ上がっちゃって。特にチャン・カワイ……もとい(お前もかい)川合正悟が演じるふとっちょ太田が、彼女の可愛さよりもギャラに目がくらんで引き受けちゃったのが発端。

専門知識がない彼らはボロが出ないように、

「イベント、取材にはロボット開発部のみで対応」
「ロボットの半径1メートル以内には人を近づかせない」
「ロボット工学などの専門的なイベントには出演しない」
「ロボットの操作、運搬、メンテナンスなどはロボット開発部のみで行う」
「ロボット開発部に入室する場合は事前に連絡する」
「ロボットは開発部車両にて運搬」

と細かく取り決めていたのに、
「ロボット工学などの専門的なイベントには出演しない」いっちばん大事なコレを破っちゃって!

まあ、ナメてたんだろうけどね。葉子が可愛い女の子だったからさあ。長井なんて「女子高なのかなあ」なんて鼻の下を伸ばしていたから、高校生だと思ってたんじゃないの。研究したいなんていうのも「自由研究?」なんてバカにした感アリアリ。

実際行ってみると、講堂は向学心の瞳をらんらんと輝かせた学生たちでぎっしり。すっかり真っ白になって声が弱々しくかすれまくる小林=濱田岳が可笑しすぎる。
三人の中で最も現実が見えている、主演はミッキー……じゃなくて五十嵐信次郎だけど、開発部側の主演とも言える小林を演じる濱田君はさすが、さすがだよなあ。
まだ若くて、彼と同じぐらいの役者たちを思うかべると、こういうのがつまりは役者だってことなんだよなあ、と思う。
コメディっていうのは、いかに人間を、人間くささを描くことであるかっていうのを、彼のうろたえぶりを見てるとしみじみと実感する。

彼がリアルなユーモアだとすれば、あとの二人、特にチャン・カワイ……もとい川合正悟の芸人の良さを活かしたうろたえユーモアもイイんだよね。
特にあの大学での講演、こんな窮地を引き寄せたのは彼だけれど、それを切り抜けたのも彼だった。専門的な質問をされてすっかり真っ白になった小林に対して太田は「逆に、あなたならどうしますか」と切り返す。
このやり方って、先輩に誘われた時の対処法として、芸人さんの誰かが言っていたような気がする(笑)。まさに、芸人返し(爆)。
でもそれがまさにひょうたんから駒。ロボット熱、知識欲がマグマ沸点に達していた学生たちは、すっかり盛り上がり、僕ならこう思う、私ならこうする、と祭り状態。

こういうのもね、うがって見れば、教育はどうするべきか、なんてことにもなる?うがちすぎかな(爆)。
でもさ、逆にここで奮起したのが、ロボットのことなんて何にも知らなかった筈のこのヘタレ三人組だっていうのが、グッとくるのよね。
中に人間が入っているニセロボットに、こんなロボットが作れるんだと未来のある学生たちが興奮し、その可能性を逆に示唆してくれる。
学生がびっしり書き尽くしたホワイトボードを写真に撮り、学生たちが持っている専門書をメモって本屋で買いあさり、本当に二足歩行の出来る“ニュー潮風”を作ろうと奮闘し始めるのが、心に熱く迫るのさあ。

ただ一方、すっかりヒーロー気分になっている鈴木さんの問題がある。温泉旅館に泊まりたい、マッサージも受けたいと、ニュー潮風ご一行様状態にわがまま放題の鈴木さん。
三人が真にロボット開発に興味を持ち出すのを鈴木さんにはすっかり秘しているのが、後に哀しい結末になるのかなとふと暗い気持ちになる。

でも、直接的にはそれはなかった。鈴木さんにはそんなことより先述したような切ない問題がいろいろあったから。自分がロボットに入っているんだと言ったら認知症扱いされて、余計に落ち込んだりもした。自分がバカにしていた、福祉施設のお芝居に興じていた老人仲間たちによ。
鈴木さんがどういう仕事人生を送っていたのかは明らかにされないけど、娘の台詞からすると、まあいわゆる熱血サラリーマンだったんだろうと思う。それもそれなりに業績を上げ、自負を持っていたんじゃないかと思う。
ロボットに入っているのが自分なんだと、最初の頃鈴木さんは言いたくてしょうがない雰囲気だった。自分こそがヒーローなのだと。
業績がそのまま自分の評価につながるサラリーマンだったからじゃないかと、思う。それこそ、うがちすぎかな。

でも、だんだんと、自分が入っていることを認められなくてもいい、という彼の気持ちの変化が見えてくるのね。
何より認められたいのは家族、特に孫。世間の話題をさらっているニュー潮風に孫たちも夢中だと知ると、それが自分だと知らせたくてたまらなくなる。
でもその事実をそのまま伝えればどんな扱いをされるのは学習しているから、自分はそのロボットを作った人たちと知り合いなんだ、と言う。
最初に約束した場所にはほんの10数分の遅刻、おじいちゃんを信じてない孫たちは、最初から本気にしておらず、早々に引き上げてしまった。イベントを抜け出して駆けつけるロボット姿の鈴木さんがシュールでかつ、哀しい。

この時、ニュー潮風、そして鈴木さんの自立心、と言ったらこんな人生の先達に対してヘンかもしれないけど、この年で、この立場で生きていくそれが芽生えたように思う。
イベントにはコスプレ集団も来ていて、ニュー潮風を巧みにコピーした男性と出会ったことが、その後の展開に大きく関わることになるんである。
コスプレ工房なるものを立ち上げている男性が、「仕事半分、シュミ半分」と言ったあの言葉、さらりと聞こえたけど、実は結構、大きな意味があったんじゃないかなあ。

娘から、特に趣味もないんだから、仕事でもしたらと言われて、これまでがむしゃらに働いてきたのに、まだ働けというのかと怒鳴って娘は鼻白む。
それでも確かにヒマだから求人のチラシなどを見ても、年齢も資格もちっとも当てはまらない。まさに役立たずの烙印を押された感じ。
でもそれは、仕事をしていなければ、つまり肩書きが無職というのが、イコール役立たずだという意識が、鈴木さんだけでなく、世間的にあるから、なんだよね。
よくあるじゃない、事件とか事故とかで高齢者が巻き込まれると、無職、って出るの。そりゃあ、この年で、今まで充分働いてきたんだから仕事してなくていいじゃん、無職ってわざわざ言うの、気ぃ悪いなあ、と常々思っていたからさ……。

それに人生の意味なんて、仕事というより自分が好きなこと、つまりはシュミじゃん。仕事がシュミと共有している人はいいけど、いや、それもいいのかな?それが幸せかどうかも微妙だし……。
コスプレ工房のあの男性だって、正業は別にある感じがしたんだよね。趣味こそ人生。仕事に出来なきゃ意味がないなんて言ってほしくない。趣味という言葉にもっと重みを持たせてほしい。

ま、ていう訳でつまりはさ、鈴木さんは、ちゃあんと、趣味であるニュー潮風に意味を見出したんじゃないかなあ。だからちゃんとその最後も、最期も示したし……。

中に人間が入っているんじゃないかと、ネット動画で海外の技術者たちから疑われる。
ニュー潮風のお披露目の時にも現場にいて、葉子と知り合いになった地元ケーブルテレビの記者、伊丹が、葉子の涙ながらの訴えもあって、真実を追究しようと動き出す。
そう、葉子があまりにも鋭い観察眼を持っていて、ニュー潮風に惚れ込んで、木村電器にウキウキとシューカツまで来たから、こりゃまずいと、そもそも彼女に鼻の下を伸ばして招聘した太田が「君はロボット開発には向いていない。大学にも二度と行かないから」と冷たく追い払っちゃって、ば、バカ。逆効果にも程があるっての。

この時には葉子の才能に感心し、実際に本当に、リアルニュー潮風が作れるかもしれないと思い始めている小林は、彼女を仲間に引き入れたいと思ってるんだよね。
でもそれには、全ての真実を明らかにしなければならない。会社の、ていうか社長の強引さもあっておいそれとはいかない。
しかも葉子と伊丹は鈴木さんの存在を突き止めてしまった。伊丹はわが社のスクープにと、鈴木さんに内密に接触し、記者会見での暴露を求める。決して悪いようにはしない。あなたは被害者だし、スターになるんですよ、と。

今まで袖にされ続けていた鈴木さんが、この時まんざらでもない顔をしていたから、そして記者会見にサプライズで出るべく、台詞をぶつぶつ練習してもいたから、世の中に真実が公表されてしまうのだと、すっかりそう思っていたら。でもそうなったら、矢口作品ぽくないよなあ、と思っていたら。

小林のロボット作りへの情熱を知った葉子が駆けつける。記者会見が始まってる。まさに伊丹がニュー潮風=鈴木さんに真実を語るように迫ってる。と、と!!

約束したのに、暴露するどころか逃げるニュー潮風。後ずさりが早くなる。あれ?これどっかで見た……と思ったら、どんどん窓に近づき、あっ!と思ったらそう、あの画だ、後ろ向きで窓をガシャーン!と突き破って落下!!!
凍りつく面々。恐る恐る窓の下を見ると、中に入っていた筈の鈴木さんはおらず、まさにロボットが壊れてしまった図だけが展開されている。
アレ??と誰もが、観客は勿論、小林たちも勿論、当然そうだろうと思って集まっていた取材陣も思う。
そこで、これもまた芸人ならではだよなー、とっさにチャン……じゃなくて、太田がウワー!!!と取り乱した体で壊れたニュー潮風(のニセモノ)にすがりついて泣きじゃくる。まさに、まさに収めた!!

ちゃっかり葉子は木村電器に入社してロボット開発チームに参加、ニュー潮風二号は完成目前、それをこれまたちゃっかり伊丹が独占取材に来てる。
矢口作品連投の田畑智子、なんとも相性が良くて、頼りなさげがキュートで、だけど自我の強さが可愛くてね。
しかし彼らの目の前でニュー潮風が軽快に走るランニングマシンがどんどん早くなり、ドン、ガシャン!
ブラックアウトの後に、鈴木さんちの呼び鈴が鳴る。ヨシタカ嬢筆頭の情けない開発チーム四人の顔。「鈴木さん、助けてください。」
ニッカリと笑う鈴木さん=五十嵐信次郎=ミッキー・カーチス会心の笑顔!

一体いつ、鈴木さんは身代わりロボットを窓から投げ捨てる計画を思いついたのだろう。ていうか、そんなことを画策する時間もあったんだろうか……。
それともそれ以前に予測して用意していた?いやそこまで言わずとも、コスプレ軍団たちにまさに自分の“趣味”を見出して、コンタクトをとっていたのだろうか。
いろんなことを考えてしまう、あのクライマックス。実は寸前までどうするか決めておらず、それこそ暴露することも考えて、ギリギリまで悩んでいたのかも、などとも思う。
入れ替わりのマジックが示されるまでは、まさに魔法にかかったような、狐につままれたような場面だったけど、マジックが解かれると、そんなことを色々、考えてしまう。ラストの彼のニッカリ笑顔を思うと、更に。

うがって考えようとすればいくらでも考えられるけど、それをしちゃうと本作の面白さが半減するような気もし。
なんといっても主人公たるロボット、ニュー潮風のアナクロな魅力が全てを凌駕してる。
そうそう、湯沸かし器に、ガスメーターに、電器釜だ、確かに!錆び加工だけじゃなくて妙に懐かしい感じがしたのはそのせいかあ。
ロボットオーディションの場面で「うぃー、がしゃん」とありがちな音と動きを示した青年そのままに、うぃー、がしゃんと音を立てて動くのが、その音こそが、人間が中に入っていてもロボットだと思わせてしまう不思議。こんな懐かしいロボット描写もないのにね。★★★★☆


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