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「ほ」


2025年鑑賞作品

ボールド アズ、君。
2024年 82分 日本 カラー
監督:岡本崇 脚本:岡本崇
撮影:岡本崇 松本大樹 松本大樹 ましょ 坂厚人 ヨシナガコウイチ 片山大輔 汐華プリン 芦村真司 音楽:岡本崇
出演:伊集院香織 後藤まりこ おかき ぽてさらちゃん。 鈴木智久 下京慶子 岡本崇 daisuk スムルース P-90 アシガルユース 亀 鈴木大夢 愛田天麻 寺岡千紗 ひがし沙優 小島海音 園山敬介 篠田諒 牛丸亮 アール サンキュームービー テルテル坊主 刄田綴色 津田寛治


2025/4/9/水 劇場(新宿K's cinema)
バンド音楽が好きな人たちにとっては、きっとメチャ豪華な人物がぞろぞろ出ているんだろうなぁ。わざわざバンド音楽、だなんてダッサい言い方をしてしまったのは、監督さん自身のパーソナリティーが、まんまそうだから。
というのを知ったのは鑑賞後なのだけれど、ヒロインの珠といい、珠が憧れるバンドのカリスマボーカル、結衣子といい、音楽が自分のよりどころだと、まっすぐに、何の疑問も持たずにいるから。
音楽、というものが多彩なジャンルの集合体であることなぞ知ったこっちゃないとでもいうように、自分たちのやっているバンドスタイルの音楽こそが、音楽そのものなのだと、いい意味での狭い世界で魂を削っている。

それこそ古い言い方で言えばロックミュージシャン、それだけが音楽そのものだと疑わなかった、悩める若き日を懐かしく思い出すような。
劇中繰り返し示される、この音楽、このミュージシャンによって勝手に救われているだけ。音楽が救ってくれているんじゃなくて、勝手に救われているだけ、という、いわば本作のテーマである言葉は、こうした、密にパフォーマーと観客が結びつく、バンドスタイルの音楽でしか、成立しないようにも感じる。

ちょいと人気が出たインディーズバンドに苦言を呈する形で、ファンのために音楽を作るなんてクソだと、クラプトンやジミー・ペイジが俺たちのために音楽を作ったのかとうがったことを言うスタッフと、イマイチ判っていないバンドマンたちのシークエンスはちょっと笑ってしまうが、でもそこに視点を落としたのは、ちょっとなかなかない、面白いと思う。

だってワレワレファンは、自分たちのために歌ってくれていると思いがちだもの。じっさいそうした“愚かな”ファンがステロタイプに登場し、それがダメなんだよ!!という雷が落ちるのだけれど、面白いなぁ。
だって、アイドルとファンの関係だったら、これでいい、それが正解なんだもの。音楽、という、その言葉だけではかなり大きく括った中で、特殊な狭い世界、熱くたぎった世界は、バンド、ロック、というジャンルが現れてから生み出されたものなのかもしれない。

だなんて、こねくり回してもしゃーない。本作は、ラストの圧巻のパフォーマンス、かなりの尺を割いて見せ切るその舞台に圧倒され、もうここだけでオッケー!と言いたくなるぐらい。
珠が憧れる「翳(かげ)ラズ」という、パンクなパフォーマンスをするバンドの、フロントマン、ボーカルの結衣子。演じる後藤まりこ氏に圧倒されまくる。いや……こんな凄い人を知らなかっただなんて罪だと思うぐらい。
慌てて調べてみると、しっかり有名な、しっかり実力のある、そして、なるほど、この結衣子を演じるだけのエキセントリックなパフォーマンスのカリスマ性を持っている人なんだと……。

昔と違って、エンタメ世界は多岐にわたり、知らない世界は本当に判らない。圧倒的な熱量のパフォーマンス、ボブカットを振り乱し、フリフリの甘めのファッション、目を奪われるカリスマ性、あれ、なんかちょっとあのちゃんみたい、後藤氏の名前で検索してたら、あのちゃんとのツーショットが出てきてビックリ。
思っていたよりずっとベテランのカリスマミュージシャンで、あのちゃんの憧れのおひとりだったということなんだろうなぁ。うわぁ、知らなかった、失礼極まりない、すみません。本当に破天荒なステージパフォーマンスで、カッコ良くて、危うくて、最高に素敵。

珠はいまで言うところの、コミュ障女子である。学校での様子が点描されるのだけれど、お弁当の時間、慈悲深きカースト上位の女子が一緒にお昼食べない?と声をかけてくれるも、タイミングよく返答できなくて、そのままである。
後に珠が結衣子に引き上げられてステージに立ち、超絶テクを披露した様子が広がると、この子私のクラスメイト、とか、それまで没交渉だったくせに、という描写があって、それはあるあるなんだけれど、でもそれを、珠が、あるいは作り手側が、苦々しく描くんじゃなくって、良かったね!認められたね!!みたいにポジティブに描くのが、えーっ……と思って……。

それは私がひがみ根性だからなのかしらん。こーゆー、カースト上位の女子が、慈悲深くお弁当一緒を誘ってくるとか、マジ胸クソ悪いと思っちゃったからさ。でも珠は、この時、一緒にお弁当したかったのに勇気を出せなかった自分、っていうスタンスだったもんで、えーっ、それはないよなぁと思っちゃって。

まぁいいや。それは置いといて。本作は、監督さん自身のパーソナリティー、バンドにおける音楽、それに捧げる人生、魂、な訳なのだけれど、なんたって本作は映画であり、そして、この監督さんは、映画というものにも出会ってしまった、ということらしいんである。
本作の舞台となっているのが大阪の第七藝術劇場、そしてラストに外観だけだけど象徴的に映し出されるのが、私が本作を鑑賞したK's cinema。
第七藝術劇場の支配人として登場するのがツダカン、珠は幼い頃からこのミニシアターに通ってきている。集客の悪いインディーズプログラムをかけているから赤字続きで、最終的には閉館に追い込まれるんである。

ミニシアターの立ち位置は、ここ20年ほどで大きく変わった。私はそれをつぶさに見た、ということが、切なくもあり、しっかりと記憶に刻まなければ、とも思う。
ステイタスであった、サブカルを守るオンリーワンであったところから、シネコンが登場し、ミニシアターでしかかけていなかった作品も、その圧倒的なスクリーン数でシネコンに流れていき、多くのミニシアターが消えていったのだった。

ちょっとインディーズであったって、客が呼べる役者が出ていたり、コアなファンを呼べる実績がある製作、配給であったり、最初はミニシアター一館公開でもそこで実績を積んだりすると、あっさりシネコンに移れる今の状況は、とても素敵だけれど、ちょっとビックリ、考えられなかったから、今までは。
さらに今は配信がプラスされ、過去作品を改めてプロモーションすることもできるし、もうホントに、判らない時代になった。それを改めて考えさせられたなぁと思って。

正直言うと、いわゆるドラマ部分は結構クサいっつーか(爆)、作り手側、まぁ監督さんが、音楽の虫だと、それをこそ描きたいのだと、後藤まりこ氏のパフォーマンスを見せたいんだろうというのが判っちゃうからさ。

劇場スタッフの、ホントテキトー男子が、可愛い珠にストーカーまがいの岡惚れ状態で一人バタバタしている感じ。珠はギターコンテストで優勝するほどの腕を磨いているから、地元のバンドマンからスカウトされたり引く手あまた。あるいは珠のバイト先の先輩女子とかね。そうした、珠に関わる、珠のことを心配して、珠のことを好いている人たちが登場するんだけれど……まぁなかなか、見ててツラいっつーか(爆)。
ここはまぁ、ビッグネームのツダカンだけが安心して見てられるかなぁという感じ。風前の灯のミニシアターの館長という役柄。ラストシークエンスでは、閉館後のスクリーンに翳ラズのパフォーマンスを映し出し、皆で見よう!ということになった筈だったんだけれど……。

閉館作業をしながら、珠たちをずっと待っていたのに、偽造チケットを転売から買ってしまって捕まってしまった珠とバイト先の先輩。このあたりはもうすっかりコント状態。さっすが、大阪っつー気持である。
そもそも本作は、がっつり大阪、珠が入り浸るミニシアター、第七藝術劇場から始まるんであって、私が観賞したK's cinemaを、第七を閉める決意をした支配人のツダカンが、次の仕事である配達の途中で見上げる、というラストなのだった。

もうホントに、今やミニシアターの存在意義は風前の灯で。小規模の製作会社、というだけなら、短期間ながらももうシネコンにかかっちゃう。本当の意味でのインディーズ、映倫も通らないほどのものがかかる映画館が新宿のK's cinemaであり、その後継続上映が決まった池袋のシネマロサであり。
この2館が東京では最後の砦と思っているんだけれど、それこそロサは、カメ止め「侍タイムスリッパー」を一館上映でかけたことで名をはせてしまって、これが悪い方向にいかなければいいのだけれど、といらん心配をしてしまう。

とにかく後藤まりこ氏のパフォーマンス、たっぷり尺を取って、見せ切るこれがもう、本当に圧巻だった。監督さんはそもそもインディーズバンドのMVを数多く手がけているところからスタートしているというのが、ここで本領発揮。
ヒロインは珠を演じる伊集院香織氏ではあるんだけれど、後藤まりこという人の凄さをスクリーンで見せたいがため、とさえ思えてしまう。度肝を抜かれた!★★★☆☆


煩悩チン貸住宅 淫らな我が家
2017年 60分 日本 カラー
監督:関根和美 脚本:関根和美
撮影:創優和 音楽:友愛学園音楽部
出演:きみと歩実 水嶋アリス 美村伊吹 泉正太郎 竹本泰志 なかみつせいじ

2025/10/9/木 録画(チャンネルNECO)
蠱惑的な新人女子社員が思わせぶりに登場し、定番のオフィス不倫が繰り広げられるかと思いきや、意外にもシビアな展開。主人公はトップに名前が来ている、新婚夫婦の妻、きみと歩実氏なのだろうが、完全に新入社員役の水嶋アリス氏に持ってかれてる。
ピンクなのに前半はほとんどカラミがなく、新婚旅行から帰ってきた夫婦が一戦交えようとするも、二人とも引っ越し疲れで上手くいかない、という冒頭から始まるもんだから、これはなかなか不穏なスタートと思われる。

それこそこの蠱惑的な新入社員、優奈に、新婚夫の翔太は心かき乱されるのだし、夢の中とはいえオフィスセックスにも及んじゃうのだから。
夢の中だったかどうかさえも、というところがあいまいにされるのがニクイし、本作の全てのセックスの中で、この、一応夢の中で行われたオフィスでの愛し合いが一番エロかったっちゅーのは、妻の気持ちを思うと、ツラいところである。

タイトル通り、新婚夫婦の翔太と亜美は、いずれ妻の親を呼び寄せるつもりだった二階スペースを貸すこととなる。二人の会話中、奥さんの親に家購入の頭金やハワイの挙式の費用をお世話になっていることが示され、そういう意味では翔太は亜美に頭が上がらないというところなのかしらんとも思うが、そういう雰囲気でもない。
ただ、亜美は今の時代では珍しく、寿退社を選び、専業主婦となって昼メロを見、習い事なんかしながら、いずれは子供をもったら教育ママになる、というのが夢だというんである。うーむ、今の時代にこれをまっすぐ示すのはなかなか勇気がいることだが。

新入社員、優奈の教育係を上司から仰せつかり、面倒をみることになる翔太。これにはカラクリがあり、上司の阿久津は優奈をネラっていて、果てはオフィスでレイプし、示談に応じなかった彼女が自殺するんじゃないかと怯えて、翔太の家の二階に間借りさせる、という展開なんである。
このあたりの時間軸はちょっと、判りづらい、のは、私の頭が悪いからかもしれんが(爆)。翔太が新婚旅行に行っている間に阿久津は優奈をレイプしたと思うのだが、だとすると、その前の、まだコトに及んでいない時に優奈の教育係を指名してるんだよね?
で、翔太が帰ってきたら優奈が出社しておらず、阿久津から、優奈の業務能力が改善されておらず、教育不行き届きだとして、翔太は減給、降格を命じられてしまうのだ。

コトに及んでいない時に教育係を指名したとしたら、ちょっと辻褄が合わないような気がする……優奈を間借りさせるために、言いがかりで翔太の経済事情を苦しくし、間貸しのアイディアを授けたという流れじゃなければおかしくない?
てことは、もうこの時点で阿久津は優奈をレイプしていたのだろうか??で、示談に応じず、かといって警察に訴えようともしない優奈を不気味に思って翔太に見させたのか、あるいは、優奈が翔太に気があるのを見て取って、自分のしでかしたことをあいまいに出来ればと思ったのか……。

この阿久津は勿論サイテー野郎で、優奈と翔太で最後、見事に復讐を遂げることにはなるんだけれど、その復讐もスキだらけで、えっ?それで阿久津から反駁されたらどうしようもないじゃん、と思っちゃうのだが。

ちょっとおいとこう。そもそも、このタイトルからなる、本作メインストリームである。阿久津から理不尽に減給され、ローンが苦しくなった翔太と亜美。亜美は働きに出るというのだが、翔太は、亜美の夢を壊したくないと否定するんである。
夢て。専業主婦で、習い事とかして過ごしたいっつーことをかよ。ちょっとね、亜美のキャラクターデザインがあまりに前時代過ぎて、でもこれが、今の時代でも男性が奥さんに求める姿なのかなぁと思うと、しんどいなぁ。

阿久津からのアイディアで、つまり彼が後々優奈を送り込むために提案したことなんだけれど、2階を間貸しすること。最初に入ったのは、彼らの親世代ぐらいの夫婦である。この夫婦がたっぷりカラミ要員としてコミカルにまっとうしてくれる。
若いカップルのセックスをのぞき見し、自らのそれも見せつけることでコーフンするというヘンタイ夫婦、覗き魔であり露出狂。最初の夜にこの夫婦のハッスル声に感化されて愛し合った翔太と亜美だったけれど、このヘンタイ夫婦は次第にエスカレートし、セックスしている翔太と亜美の寝室に忍び込むに至って決裂してしまう。

いやー、いかにもピンク的エロコミカルで面白かったが、この後入ってくるのが優奈であり、翔太にも亜美にも心にさざ波をたてる。
亜美とは、同じ職場で入れ替わりだった。優奈がしっかり覚えていたのは、翔太に想いがあったから、その奥さんだったからということなんだろうと思う。

亜美側はどうだったのか。下宿人として現れて、一瞬判らなくて、でも、思い出したということは、入れ替わりであったとしても、印象的な新入社員だった、それは、夫の職場に残る女の子として??
ちょっとね、亜美の応対というか、リアクションが普通じゃないんだよね。突然下宿人となった優奈のことを、翔太がすまながっているのに対して、いーや!ぜんっぜん!別に大丈夫ですけど!!みたいな。
亜美は優奈が夫のことを好きだというのを気づいていたのかしらんと思ったけれど、その後、特段そういう回収はないので、なんでこんなに亜美がムキになったのかよく判らんのだよなぁ。

その後、優奈が翔太に、阿久津からされた鬼畜の所業を告白し、二人して復讐の作戦を練る。深夜のオフィス、先述した、最もエロい、夢か現実かは明確にされない、セックスなんである。
その直前ぐらいに、優奈が阿久津にレイプされた展開が明示されるので、それまで謎めいた、蠱惑的な、まぁ言っちゃえばあざとい女子な優奈のキャラだったので、えーっ!とビックリし、もうその一瞬で同性としては彼女に気持ちが加担してしまう。

その流れで、夢かも知れないけれど、本作中でもっともエロいセックスを翔太と繰り広げるもんだから、いーや、いーや、これはズルいわ、結局男の願望を女に納得させる道筋を巧妙に作りやがったろ、キーッ!!と思っちゃったり……。
いやその、それはね、ヒロインである、主人公である亜美が、彼女だけが、仕事をしている人たちというサークルからのけ者にされているということが、すんごくモヤモヤするのだ。カラミ&コミカル要員として闖入してきたヘンタイ夫婦だって、料理人である夫を支える奥さん、という図式が確立されていたからさぁ。

翔太と優奈は結託して、クソ上司の阿久津を追いやるのがクライマックスとなる。レイプの事実を社内に送信すると脅し、500万円をせしめようという計画で、500万を持ってこさせて、約束をたがえて、メールを送信してしまう。
優奈は社長にその事実を事前に直訴し、辞める覚悟だったのが、社長秘書としてちゃっかり、と言ったらアレかな、しっかり会社に残ってのエンド。

このシークエンスは……かなりスキがあるというか、ワキが甘いというか、新人社員の優奈がおっさん社員にレイプされたという衝撃の展開に、彼女がずっとずっと悩み苦しんでいたことを考えると、阿久津を追い詰める二人の計画は、そんなんで完了しちゃうんかという甘さがあると思っちゃう。
だって阿久津は、優奈に示談をしてもらいたかった、つまり自分の罪に自覚的だった訳で、それを彼女が受けず、警察沙汰にもせず、自殺するんじゃないかとまで心配していたっていうのは、ちょっと優しいキャラ設定過ぎない、と思う。

その彼に反駁するには、証拠がなさすぎる。そりゃまぁ、証拠がなくてもこんなメールが一斉送信されれば、社内でも、世間的にも、地獄に落とされるのはそうだけれど、示談に持ち込むまで考えていた阿久津が、物的証拠が何もなく訴えられてあっさり失墜しちゃうのは、ないかなぁと思っちゃう。

まぁでも割と、そんなことはどうでもいいというか。やっぱり一番気になっちゃうのは、なんたってヒロイン、主人公、トップに名前が来ているきみと歩実氏演じる奥さんの亜美。
明らかに優奈に対して警戒心があったのに、それが最終的に回収されないのが気になったし、フェミニズム野郎的には、社会に参画していない女、夫のセックスの興奮も引き出せない女、台所にエプロンして立って、それでしか夫の興奮を引き出せない女、みたいな!!あぁもう、フェミニズム野郎の良くないベクトルに行っちゃってるのは判っちゃいるけど!!★★☆☆☆


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