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ろくでなし
2017年 106分 日本 カラー
監督:奥田庸介 脚本:奥田庸介
撮影:高木風太 音楽:しゅんすけフリーローダー
出演:大西信満 遠藤祐美 渋川清彦 上原実矩 大和田獏 毎熊克哉 ヨウジヤマダ 両角周 高麗道子 北川絢椛 新津ちせ 山下ケイジ 椋田涼 内田昌広 松浦祐也 赤染萌 池田良 榎本桜 谷原章介 玄理 赤根那奈 市オオミヤ 川上史津子 牛丸亮 小林さとし 井戸賢生 柳川竜二
凄く、年寄り臭いんだけど、もうバイオレンスがダメなの(爆)。そんな必要あるかなとか思っちゃう時点で、観る資格がないかも(爆爆)。
でもさ、本作も、特に後半に従ってばんばん銃撃で人が死ぬのだが、……そんなあっさり殺人罪に身を投じるワケ??とか思っちゃったら、もうダメ(爆)。頭弱いんじゃないかとか思っちゃう(爆爆)。なんていうか……男の子映画だなぁと思っちゃう。
渋川清彦と大西信満のダブル主演。彼らが関わるそれぞれの女同士が姉妹という関係だが、正直主演二人も必要だったかしらんとか、そもそもなことを思ったり(爆)。いや、確かにそれぞれ同じぐらいのウェイトはあったのだが、二つの映画が同時進行しているような感覚というか……感情移入していけない感じがあった。
渋川氏演じるひろしと大西氏演じる一真は共に、大和田獏(怪演!!)扮する遠山が経営するクラブで働いている。ひろしは子分二人を従えて遠山に付き、時には遠山がウッカリ殺しちゃったヤクザの死体の処理をしたり。一真の方はいわゆる用心棒。出所したばかり、という感じの一真は、流れ流れて入ったクラブで働いていた優子に一目惚れ、したんだろうなあ。
ひろしは優子の妹の幸子と付き合っている。付き合ってるのか……。ここが一番、混乱したところであった。付き合っているようには、どうにも見えない。援助交際にすら見えない。
だって何もしないんだもの。ただ食事をするだけだから、最初彼女は彼の娘で、定期的に“面会”しては食事をする間柄なのかと思ったら、本当に別れた妻子がいて、幼い娘と面会するシーンが出て来たもんだから、あれ、違うのか、と……。
だったらきょうだいかな、幸子は認知症の祖母と家でのんだくれているだけの父親の三人暮らしで苦労しているから、勝手に出て行ったお兄ちゃんかなとか思ったら、勝手に出て行ったのはお姉ちゃんで、それが優子だと知れ、もはや完全に頭を抱えるんである。
え?三人きょうだい……いや違う、「お前の姉ちゃん、男とデートしてたぞ」「何、嫉妬してんの」なんていう台詞があったから違う違うと思い、なら優子の元カレ?……そういう感じでもないんだよなあ……だったら彼らはどうやって知り合って、手も握らないようなこんな摩訶不思議な“付き合い”に発展したのか。
最後の最後、殺人を犯しちゃって、大金を手にしちゃって、美人なねーちゃんを何人もはべらせて酒飲んでるところに幸子が乗り込んできて、「ただ、一緒に酒飲んでただけだよ!!」とひろしが弁明するに至ってようやく、あれっ……付き合ってる、のか??と半信半疑で思ったぐらいで……。
なんであんなに潔癖な描写にしたのかなあ、判らん……そのシーンでもキスぐらいしそうな感じに見えたのに、しない。ぶーたれた幸子の顔を挟んで正面からじっと見つめ、「お前って、こんな顔してたんだな」一体どういう付き合い方なのか、判らーん!!
一方の一真は優子と急接近する。というのも彼女に付きまとうストーカーをボッコボコにしてやったからである。このストーカの描写はなかなかに冴えている。好きだと下手に出ているように言葉では見えながら、かんっぜんに高圧的。俺の言うこと聞かないと判ってんのか、コラ、的なヤンキー兄ちゃん。一度一真にボッコボコにされても、強そうな助っ人を連れてまたやってくる(つまり、弱い)。
この二人を結局一真がどう“始末”したのか……助っ人をコンクリでまずぶん殴ったからただでは済んでる筈はない。その後、このストーカーは現れなくなるが、その後の彼の安直な行動を見るにつけ、何をしたかが想像ついちゃって、不安になるんである。
その後っつーか、常に安直なんだよな、思えば。目の前の困難を力づくで排除すれば道が開けると思っている訳でもあるまいが……思っているのかな??
最初から彼自身が優子のストーカーに成り代わる雰囲気はマンマンで、実際、せっかくお近づきになった優子にもそう言われてケンカになるぐらいであり。
最終的にはさ、優子がお金に困ってることを知って、社長室の金庫をバールで開けようとする安直ぶり。そして殺されかけても、まだ足りないと、パチンコの引換所に強盗に入る安直ぶり。
ラスト、あっさりと警官たちに囲まれる彼を見て、……ひょっとしたら本気で彼は頭が弱かったのか……と、そう決着つけていいのか??と悩みつつ納得したりして……。
確かにそう思えば腑に落ちるんだよな。口下手な感じも、猪突猛進な感じも。それが女にふと安らぎをもたらすも、いつでもそばにいることに気づくと、ストーカーに早変わりするこの哀しさ。
優子にひろしは、「こんなところは長く勤めるところじゃねぇよ」と声をかける。優子はひろしには妙に冷たい。やはり元カレなのか、単にまだ高校生の妹と付き合っているから許せないのか。
そもそもなぜこんなところで働き続けているのか。ストーカーにもつきまとわれて、社長にもイヤミ言われて、いいことなんてないのに。そんなに給料良さそうにも思えないんだけどなあ(爆)。
そもそもなぜ幼い妹にすべてを押し付けて家を出たのかも、特に理由が示される訳じゃない。例えば両親と折り合いが悪かったとか……。
そういやあ、母親の影はない、父親はのんだくれでそりゃあ折り合いは悪かろうが、この妹を置いて出て行って、「お金は入れてるでしょ」と言い放つだけの、出て行った理由が見えてこないのだ。折り合いは、姉妹の間でだったのだろうか。確かに仲はいかにも悪そうだが。
んで、父親が頓死し、実は借金まみれだったことが発覚して、取り立てが優子のところにも及んでくる。……これもかなりの唐突感。
父親が生きて家にいて、ただぼんやりテレビを眺めている時にはまったく、なんにも、そんな描写はなかったのに、なぜ死んでいきなり。まるで優子自身もそのことを知らなかったかのように、エロ社長の誘いに応じてラブホでコスプレショーしたりしちゃうし。
……つまんないこと言っちゃうと、親子であっても借金を払う責任はないし、連帯保証人とかにされていたとしたら、自己破産した方が早い訳で。正直こんな生活を送っている彼女が、自己破産によって失われる何かを憂いてためらうとも思えないし。
……つまり、こういうことも含めて、バイオレンスも含めて、なんか、現実的じゃないのよね。発想がちょっと、古めかしい感じがしちゃうんだよなあ。
ていう展開に至るまでほとんどが一真側なので、ダブル主役なのにひろしはあまり存在感がないというか……。一真が社長室を荒らして社長に見つかり、優しい言葉で騙されて連れ出され、ボッコボコのリンチの場面に、救世主としてひろし登場。
めっちゃ唐突。彼はなぜゆえに、いかにして一真の危機を知ったのか、そもそも彼を救おうと思うほどの友情関係を築いていたようには思えないのだが??
先述したけれど、二つの物語を同列で見せられているような乖離感があるので、「本当に共犯になったな」とひろしが一真にニカッと笑って言うほどのバディ感覚はあまり感じられないのだ。
あ、そうか、この台詞の元になるエピソードがあったんだっけ。ちらっと言ったけど、社長が融資元のヤクザにブチ切れて灰皿でぶん殴って“うっかり”殺しちゃって、その後始末の場面に、一真もいたんだったわ。
「共犯だな」「殺したのは社長だ」「お前、面白い奴だな」……どこが面白いのだろう、判らない……ただ一真の言うとおりではないのかと思ってしまってはいけないのだろーか??
それにしても遠山社長役の大和田獏の怪演っぷりときたら!!本作の一番の(唯一の??)収穫だったんではないだろうかと思っちゃう。ほんっとうにイヤミーな、ヤラシークソ社長、「近ごろの若いもんは……」という型どおりの台詞が、コイツに言われると、お前が言うなや!!と絶叫したくなっちゃう。
彼は庶民派穏やか家族愛系?俳優で、こんな役は想像もつかなかった。どちらかとゆーとお兄様の方が想像つくけど、大和田獏だからこそのインパクトと恐ろしさ。一真を手下にボッコボコにさせながら、ミラーボールを輝かせながらディスコミュージックでおじさんノリで踊っている姿の不気味さよ!!
本作に関しては、二人の女優こそが真の主役だったのかもしれないと思う。幸子を演じる上原実矩は、今から思えば有望新進女優の宝庫だった「ガール★ステップ」のあの子かあ!!と驚く。つぶらといっていいのに強い光を放つ瞳と、ちょっとコケティッシュな唇が目を引くファニーな美少女。
優子を演じる遠藤祐美はいかにも幸薄そうな、不幸を連れてくるようなオーラが、もはや中堅女優の雰囲気を漂わせる。河合青葉のような雰囲気?ただならぬ。
それにしてもあのラストは。一真が「金ならある、すぐそこにある」と言ってパチンコの引換所に強盗に行ってあっさり捕まるラストは、こ、これはギャグなのか……ひょっとして??と笑っていいのか悪いのか、本当に悩んだ(爆)。
その前に一真から血だらけの帯封の札束を渡された優子が、警察に行こうと当然言うよねと思ったこちとらの予想を裏切って、「死んでも誰も悲しまないもんね。お金がまだあるの?どれぐらい?」などと、表面上は動揺した風を見せながらも予想外のリアクションをしたから、ひょっとして通報したのは彼女??いやいや、あんな安直な強盗したら、フツーにすぐ捕まるだろうから……。
その後、優子はスーパーのレジをして生計を立てている様子が描かれる。だったら最初からそーゆー仕事してろ(爆)。
血だらけの100万ぽっちの金で、取り立て屋がくるほどの借金を返せたとも思えないが、そーゆーところもスルーするんだなあ。
なんか、ツメが甘い気がするんだよね。キャラクターとキャスティングの魅力で止まっている感じがする。やたらドンパチしたがるのも、逆に古い気がしてあんまり好きじゃないなあ。それはトシヨリの感覚だけだろうけど(爆)。★★☆☆☆
森岡龍君がいまおか監督とタッグを組むというのも、かなり興味深い。映画作家として確かな才能を持つ彼は、俳優としてはいい意味で普通青年の感覚を持っている。最近よくある、なんでもかんでもイケメンと言ってハードル下げまくる範疇には入らない、ほんっとうに、普通の青年。
むしろこの役……ハードボイルドを気取ろうと思えば出来そうな、施設育ちで前科持ちのやとわれ探偵を、彼ならではの普通の魅力たっぷりに演じていて、なんつーか、お茶の間ドラマを見ているようなステキな安心感がある。いまおか作品は時々ぶっ飛んでついていけないことがあるけど(爆)、本作はとても安心して観ていられたなあ。
彼に仕事を依頼する、ハデハデババアはさすがの貫禄、伊藤清美。彼女を始め、いまおか作品ならば当然、おなじみの大好きな役者のメンメンが登場するので、それもワクワクとする。
特にキャーッ!と思ったのはヤハリ、佐野和宏!今、声が出ない状態にある彼に振る役は難しいと思うんだけど、栗之介の腹違いの妹が嫁いでいる先の中華料理屋のご主人として登場し、久しぶりの栗之介にじっつに嬉しそうに満面の笑顔でカンカン!とおたまで中華鍋を叩いてみせるのが、もー、たまんなくチャーミング!!
佐野氏に色んな役を考えて登用する映画仲間たちが凄くいいなあと思うし、そしてそれは、役者や芝居というものの幅を大きく広げるのだなあということを目の当たりに出来て、ほんっとうに嬉しいの!!
佐野氏に狂喜して大分脱線したが(爆)。伊藤清美氏演じる京子は栗之介の育ての母で、つまり施設の運営者というスタンスらしいのだが、どうもアヤしさ満点である。身寄りのない子供たちを育てるという名目で、裏社会でバンバン働かせているツワモノ。そのせいで栗之介も前科持ちになってしまったと思われる。
物語の冒頭、いきなりアヤしげなアパートに案内される。自殺した女性が住んでいたというんである。表面上は結構強気なことを言いながらも、「怖くなんてないさ、お化けなんて嘘さ、寝ぼけた人が、見間違えたのさ」と口ずさむビビり具合が可笑しい!てゆーか、この歌、めっちゃ懐かしい!あったあったこの歌、なんだっけ、みんなのうただっけ?懐かしー!!
メインキャストの中でおっと思ったのは、栗之介の元カノであるお医者さん、ゆかりである。ミニスカに網タイツのアメリカンキャラみたいなセクシー女医さん。顔を見たとたん、あーっ!と思い出す。
顔を覚えられない私にしては珍しいこと。「たゆたう」でFTMを演じていたあのコ!あの時のマニッシュな魅力が忘れられなかったが、そのキレイな顔立ちはM気味の女医を演じても魅力満点!栗之介とはまるで夫婦漫才のような雰囲気で、実にいいコミュニケーションぶり。
ゆかりが栗之介に告げる衝撃の事実は、「HIVウィルスにかかっている。免疫がとても低下しているから、今すぐ治療を受けなさい」ということ。栗之介はお前がうつしたんだろ!と言い募るし、つまりゆかりもキャリア者ということなので、彼女は栗之介からクソミソに罵倒されながらも、これまでセックスしてきた男たちに告白行脚をするんである。
栗之介を用心棒に雇って。栗之介が「俺のことが一番に好きじゃなかったのかよ」と時に嫉妬するような状況なども出てくる。ゆかりを演じる手塚真生嬢のさっぱりとした色気が放たれていてサイコーである。いやー、イイ女である。ちょっとイチオシしたいコなんだわなあ。
彼女とは真反対のもう一人の強烈なメインキャスト、後にどうやら栗之介の父親らしいということが判明する(!)、競輪場で出会うハデなおばちゃん、蜷川みほのインパクト!女性なのに“オカマ”の役とは(爆)。
それにしてもさ、こんな偶然って、あるかしら。調査の途中に出会った相手が、自分を捨てた実の父親なんてさ!!
あ、そうそう、なんかウッカリ言い忘れてたけど(爆)、栗之介が今日子から依頼されていたのは、彼の住むアパートで自殺した女の子の父親が、どうやら娘がちょろまかしたらしい500万円を探してほしい、という話であり。探っていくとこの柚子という女の子はルックスは極上だけどトンでもない女で、あちこちのフーゾクを出禁になり、仲良くしていた同僚の女の子を生き埋めにして(!!)殺しちまった。
その後自殺状態で発見されたのも、どうやら殺されたらしい……という展開になるのは、調査途中に飛び込んできた、やたらテンション高めの金髪頭の男の証言。
ここまでに至るにも、柚子に頼まれて猫缶を送り続けていたヒモ男(吉岡睦雄♪)とか(あ、ちなみにこの部屋を案内してきた不動産屋さんは、川瀬陽太♪♪)、不可思議な状況は続いている。
猫は、何だったんだろう。どこからともなく迷い込んできた猫に驚きながらも、栗之介は届いた猫缶を与える。あれは……死んだ柚子の姿だったとか??まさか……。でもそんなファンタジー的な感覚を捨てきれないところが本作の魅力でもあるんだよなあ。
で、その金髪頭の男である。ピンク系作家さんたちを重点的に、最近、個性の強い作り手に重用されていると言えば彼、水澤紳吾氏である。
金髪でちょっと頭ヨワそうで(爆)、怯えまくりのヤンキー男、ってのは、それまでも数々の顔を見せてきた中でも、かなり意外というか異色というか。可哀想に、彼、殺されてしまうの……結構死ぬんだよなあ、本作って。
最後に登場する医大生が、すべてのカギを握っていた。柚子が殺した同僚に岡惚れしてて、その生首を隠し持っていた。柚子を殺したのも多分……。
完全に明確には、されないのだ。柚子の父親からの依頼も取り下げられたし(このジジイも裏社会でヤバいことしてるから)、ただ、栗之介がすべての真実を知りたいと思う、それだけで。
柚子は深刻なシャブ中であり、その事実が明るみに出始めたとたんに、消えた金よりも死んだ女の子よりも、後ろ暗さを追求されることを恐れてすべてを取り下げた柚子の父親。
栗之介が柚子のシャブ中の証拠、オルゴールの中に入れられた注射器とシャブのかけらを発見して送りつけても、父親は能面のような顔をしてゴミ箱にブチ込むだけなのだ……。
意外に、大上段に構えて、愛がテーマだったのかもしれないなんて思うのは、めんどくさそうにしていながらも栗之介が家族を大事にしているのを丁寧に描いているから。
腹違いの妹の元に顔を出すと、妹はとても嬉しそうな顔をする。母親だけが同じ、それを「ヤリマンの女だったんだろ」と、それでもどこか照れくさそうに言い捨てるお兄ちゃんに、たしなめるように諭す妹のお腹は、大きいんである。
「私、お兄ちゃんのお父さんに会ってみたい」「酒とギャンブルで、俺たちを捨てたクズだぜ」
「今度こそは絶対に来る」ギャンブル好きが口にする、凡庸な言葉がまさか決め手になるなんて。まさか実の息子とは思わず、カワイイカワイイと栗之介を気に入ってスキンシップしたがる彼(彼女というべきか)に、栗之介はいつ、そうかもしれないと思ったのかなあ……。
もうね、ヒドいのよ、やせぎすで、色ボケで、ぱんつが丸見えの網タイツミニスカ、もう、見たくないよそんなの!と言いたくなる(爆)。
柚子の殺人罪を成立させるために、恐ろしげな夜の森にだってついていくし、なかなかに男気(?女気と言うべきか……)のある人。まさか栗之介の父親だったとは、ねえ!!
元カノ、ゆかりとの関係はなんともイイ感じで、最初は治療を断固拒否して、体調崩しまくって吐きまくっていた栗之介が、「死にたくない」の一点で彼女の言うことを聞くのが、イイんである。
恋人関係は解消しても、一度は濃密な時間を共有した相手に対して、友情にも似た(友情かもしれない)深い信頼を持つのは決しておかしなことじゃない。手塚真生嬢、とっても良かったな。今後注目したい。★★★☆☆