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「て」


2017年鑑賞作品

帝一の國
2017年 118分 日本 カラー
監督:永井聡 脚本:いずみ吉紘
撮影:今村圭佑 音楽:渡邊崇
出演:菅田将暉 野村周平 竹内涼真 間宮祥太朗 志尊淳 千葉雄大 永野芽郁 鈴木勝大 萩原利久 岡山天音 三河悠冴 井之脇海 木村了 榎木孝明 山路和弘 真飛聖 中村育二 吉田鋼太郎


2017/5/12/金 劇場(TOHOシネマズ錦糸町)
やっべ、あまりの面白さに再度足を運んでしまった。とゆーのも一回目は後ろのJKたちの私語が気になって思い切り没頭できなかったというウラミがあったからさあ。まあこーゆー爆笑エンタメに対して静かに観なさいなどとヤボなことを言うのもアレなのだが、でも思いっきり笑いたかったんだもん!
実際、二度目は公開からほどほどに時が経っていることもあって、リピーターな感じの反応も多かったような。近頃はマンガ原作ばかりと嘆かれる向きもあれど、これほどザ・マンガチックな世界を見事なまでに若き才能たちが全身全霊で体現してくれるんなら、いいんじゃないのお。そしてそのスケールはまさにまさに映画そのものなのだから!

あー、なんか、今年の映画界の、なんていうかエポックメイキングというか、話題性のトップに行くような映画になる気がする。
そう、おととし「バクマン。」のようなね!思えばあれもマンガ原作だったか。いやいやそれでいいのだ。日本が誇る優秀なソフト、クールジャパンのトップランナー、これを使わずしてどうするのか。

マンガは未読だけど、キャスト相関図を見る限り、見事なまでにキャラクターに生き写しな彼等なんである。近頃は誰も彼もをイケメンといい、ひどくハードルが下がった気がして、正直このメンバーの中で真のイケメンはせいぜい一人か二人か……と昭和のおばちゃんは思うのだが……菅田君はフツーの男の子顔だと思うし、特に野村君は決してイケメンではない……などと言っては怒られるだろーか。
言ってみればお顔は平均点、没個性になりそうなものなのに、お見事!年々、若い役者さんの知識についていくのは大変だが、こーゆー楽しい映画に出会えると一気に覚えちゃうのもまた楽し!

つまりはつまりは、これは生徒会長選挙の物語なんである。なのになのに、なんという、このスケール。まさに政治の世界!それもその筈、舞台となっている海帝高校は、生徒会長の中から何人もの総理大臣を輩出しているという、超エリート校。
主人公、帝一は総理大臣になって自分の国を作るという野心のために、まずは生徒会長にならんとすべく幼少のころからこれまでを生きてきた。成績優秀は当たり前、盗聴を得意とするマシンに長けた優秀な参謀を友人に抱え、どの派閥に入るかを慎重に見極め、いざトップをとらんと、そのためにはイヌになるのだと、すさまじい覚悟!

派閥て、派閥て!高校生の生徒会長選挙で派閥て!でも思えば、大人の世界になって突然そうした世界が産まれるというのもヘンだし、荒唐無稽に見えるけれど、実は案外こーゆー世界ってあるのかも??と思っちゃうほどの臨場感!
現生徒会長から指名された三人の候補が争うシステムは、その時点で民主的とは程遠く、まさに派閥争いが必至。考えてみれば日本の間接選挙システムは、民主的だと表向きには言うが、実は政治家だけの派閥システムで決められてしまう世界なのだということを、皮肉っているようにも思えちゃう。

なんかマジメなことを言っていたら、この面白い世界を言いきれないぞ!とにかく素晴らしく魅力的なキャラが目白押し。帝一を演じる菅田君の百面相と言いたいほどの振り切り方、コメディセンスに口あんぐりの圧巻である。コメディ映画はマジメに評価されにくいという向きがあるが、こーゆー映画でマジに賞とか獲ってほしい!と思うほどの素晴らしさ。
ゆくゆくは総理大臣になるのだからと、盗聴を恐れて糸電話で恋人と会話するエピソードとか、好きすぎる。そのファッションが、裕次郎かよと思うようなハデなサングラスにトレンチコートとか、どうやったらそーゆーチョイスが出てくるの!と思うあたりも。
次第に糸電話の効能?が失われて、完全に地声で会話しだすあたりから、恋人ごっこから本音のぶつかり合いになってきたのかなというあたりもヨイ。

恋人以上に恋人のように寄り添う、参謀の光明、演じる志尊淳君の「だにゃん(ハート)」なキュートさにも舌を巻く。彼は完全に帝一にホレている訳なのだが……ハタから見てもそれはあまりにも判りすぎるほどに判るのだが、恐らく帝一だけがそれに気づいていないってあたりがね!
本当に女の子みたいな可愛さなのに、自作の盗聴器や精密な片眼鏡(SFみたいでメチャカッコイイ!)で、情報や瞬時のアクシデントを察知して、的確に帝一を助ける優秀さといったら、ないんである。
この物語のスリリングさを演出しているのは、ほぼほぼ光明のお手柄と言っても過言ではないのだ。前半のクライマックス、校旗掲揚をジャマされた場面、後半のクライマックス、選挙の結果をひっくり返されそうになった場面、そしてそのどちらも、帝一のライバル、東郷菊馬の策略によるもので!!

菊馬役の野村周平君。素晴らしい。コソクで、結局それ故負けちゃう小さき男、抜群のバカ加減を見事に表現して演じてくれる。ほんっとうに器の小さい男で(笑)、帝一が窮地に陥った時に「ざまー」と両手で指さしてあざけるあの表情!!でも帝一は見事に切り返し、大体その連続なんだけどね(笑)。
以前から達者な、恐ろしいほどに達者な役者さんだとは思っていたが、やはりやはりタダモノではない。菅田君とは少し、似た雰囲気も感じる。タダモノではなく、特にイケメンでもなく(ゴメン!)、コメディもシリアスもコワイ系も軽々とこなす感じが。

そんな二人とまさに対照的なのが、菊馬から「少女漫画の実写版みたいな奴だな」と評される大鷹弾。演じる竹内涼真君が、まさにその言葉を100%、いや、200%、いやいや、1000%体現していると言いたい恐るべきさわやかなイイ男!恐らく女子のキャー!を彼がひとり、さらってしまうんではないかと思うぐらい!
これさ、逆に難しいんじゃないかとも思うんだよね。これはまったきコメディ映画。その中で彼は、まるで遊ばずに(いやそー言ったら菅田君や野村君が遊んでると言ってるみたいだけど(爆))、リアルイイ男を演じるってことはさ。シリアス演技に徹しているのは他のキャラでもいるけど、彼はなんたって「少女漫画の実写版」と言われるぐらいの男なんだもの。これはなかなかにツワモノだよ!

まさに一ミリもぶれず、この奇跡のさわやか男子、大鷹弾を体現した竹内君に脱帽のひとこと。彼は正義の人。まっさらに、何一つ汚れてない。
ヨコシマな気持ちたっぷりに近づいた帝一を最後まで友達だと言い、派閥を嫌い、甘い誘惑を鉄拳で返す。奇跡みたいな男。伝統という汚辱にまみれた海帝高校に外部生として受験を突破した彼は、まさに異端児なんである。

外部生っていう言葉、なんか最近他の映画で聞いたなあ。そんなにも、セレブリティが確立された世界と、異端児の確執ってあるのか……コワイ……。
帝一は優秀で人望も篤い弾を敵視する。外部受験生用の試験問題を手に入れて、勝ってやると挑むシークエンスは、本作の中で一番と言いたいぐらい、サイコーの場面!
帝一の父親は吉田鋼太郎。生徒会長選で菊馬の父親に負けた因縁を、今も政治の世界で引きずっており、それぞれの息子たちがまるでその代理戦争をしているような趣。
だから敵は菊馬だけだった筈だし、あっちも敵としてずっと相対してきたのに、そこにまるでそんな勝負なんて興味ない、というさわやかな風を吹かせて現れたのが弾であり、もうこれが、まったくの強敵なのだ!

……脱線したが、弾が受験で獲得した点数を超えようと、採点した父親の吉田鋼太郎と答案用紙をまるで格闘技のように比較しあう場面。
近年の映画の名場面の中でも屈指と言いたいぐらいの、菅田君と吉田氏のまさにぶつかり合いで、爆笑しながらもなんか圧倒されて目頭が熱くなっちゃうぐらい!!確かにコメディなんだけど、まさに演技バトルで素晴らしい!!

マジ演技で言えば、選挙の魔物、カネにつかまってしまって堕ちていく、本来は絶対王者だった筈の氷室ローランド、演じる間宮祥太朗君が圧倒的で、彼と野村君があの狂気映画「ライチ☆光クラブ」で一緒だったことを思うと、なんとも感無量なんである。
彼は正しきイケメン君である。だから狂気になると本当にゾッとするほど美しく、だからこそ怖い。参謀の駒君に見限られていく哀しさが、投票のシーンで一気に上り詰めるすさまじさと言ったら、ない。
この間、この絶対王者に勝つために、帝一たちは様々な作戦を行っていく訳で、その中でサイコーなのが、マイムマイム作戦!

そもそも帝一はもともと、氷室派閥に属して活動していた。そりゃそうだ、絶対王者なんだもの。現会長を当選させた立役者。派閥的には圧倒的有利。金髪をなびかせたその風格もハンパない。彼のイヌになると決めていた。
しかしその流れが逆転したのは、人望に篤い弾がワイロに流れず、森園先輩側についたから。そして菊馬が耳打ちした、帝一と氷室の父親同士が政治と商売の間の敵同士であること。
絶望した帝一は切腹しようとするも(爆笑!目を見開いて驚く父親の吉田氏が最高に可笑しい!!)、父親から止められて、とにかく勝つんだと、道は一つしかない、森園先輩に寝返り、勝たせることだと。

森園先輩を演じる千葉雄大君も素晴らしい。この童顔が彼のキャリアを若干ジャマしている気はしないでもないが(爆)、童顔を文化系と読み替えて、天才的な頭脳を持つ将棋の名手、派閥を崩す民主的な考えを、人気取りではなく至極冷静に提示する勝負師としての顔を静かに演じ、かなりグッと来てしまう。先輩にも後輩にも丁寧な敬語というあたりも萌え萌えである。
なんたってサイコーなのは、森園先輩を勝たせるための心理作戦、マイムマイムであり、えーっ!そんなのマジかよ、

校庭で最初は小さな輪のマイムマイム、そこに三々五々、生徒たちが、踊りたい!!と集まってくるという……。氷室のワイロにやましい気持ちを抱いていた生徒たちの心を揺り動かすという作戦なのだが、それとは関係ない、一般生徒がワーーッ!!とばかりに走ってきてマイムマイムの輪に加わって楽しげに踊るというこのシュールさ!そして悔しがる氷室サイド!なに、何これ!しかもみんな超マジ!面白すぎるんですけど!!
ひとりの絶対的権力者ではなく、周りの人たちを、その能力を百パーセント引き出して動かして勝利する、それを現生徒会長が、自分の“犬”であった氷室に説いて聞かせる、あの選挙、投票の場面はなんとスリリングだったことだろう!!

菊馬親子に陥れられて、父親が逮捕されてうつうつと引きこもっていた帝一は、仲間たち、そして彼女の美美子に熱い説得を受けて学校に向かう。結局菊馬にジャマされて投票は出来なかったけど……。
選挙結果に絶望して氷室が飛び降り自殺を図るシーンには、これじゃ楽しいコメディ映画が台無しだよー!!とヒヤリとしたが、「良かったー、マット敷いておいて。だって森園先輩が負けたら帝一、死んじゃうかもしれないと思って。あれ、帝一用」と言う光明に、なんか泣き笑いしちゃう。
本当に帝一のこと好きなんだなってことと、生徒会長選挙のハンパないシビアさ、とにかく氷室先輩、死ななくて良かったし、駒と「俺たち友達だよな」「当たり前だろ」とやり取りして、駒の目から涙がこぼれるのには、ちょっと、泣いちゃうでしょ!!

森園先輩が生徒会長となり、公約通り、派閥は撤廃、立候補者に対して全校生徒の投票により決定するシステムとなる。このクライマックスも最高!陣地取りみたいに候補者のエリアに全生徒が集まる様が臨場感があるし、でも菊馬には12人ぐらいしかいないんだけどさ(爆)。
ギリギリのところで、弾を勝たせるために自ら白線を飛び越えた帝一にビックリし、「お前のような人間が生徒会長になるべきだ。そして借りは返した(前回の選挙の時に、弾のプライベートを流出させたこと)」なんて言葉にマジで涙がこぼれたのに、だ、騙したなー!!

あの時、菊馬がコソクにも数操作をしようとしていた。それを目ざとくみつけた優秀な参謀、公明が見つけて知らせ、「負けると、勝たせてやったじゃ全然違う。弾と全校生徒の心を手中に収めた」と誇らしげに言う帝一に、参謀(とゆーか、片思い)の光明も満足げなんである。
そして弾に請われて弾くピアノは「マリオネット」あやつり人形―!!「お前らがそうだろ」と不敵につぶやく帝一のアップで終了とは!!

でもあれは、本音だったのかなあ。菊馬親子の策謀によっていわれない罪で捕まった帝一の父親に、「僕のジャマばっかりずっとしてきた、僕はピアノが弾きたいだけ。だから自分の国を作ろうと思った。そうすれば誰にもジャマされずにピアノが弾ける。あの時から一度もピアノは弾いてない」と泣きじゃくりながら訴えるシーンが、凄い、凄くてさあ……。
ほんっとうに、そのためだけに、何年も大好きなピアノを弾かずに頑張って来たのかと思ったら、本当に本当に涙がこぼれたから、最後の最後、あやつり人形ニヤリには、えーっ!!と思ったり。私、甘いかなあ……。

予告編にもふんだんに使われていた、学園祭オープニングのふんどし姿での和太鼓パフォーマンスに血糖値上昇!(?)。凄くカッコよく作ってるし、なんたって半裸、お尻キューン!!ああ、私色ボケババア!(爆爆)。★★★★★


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