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1999年鑑賞作品

ノッキン・オン・ヘブンズ・ドアKNOCKIN’ON HEAVEN’S DOOR
1997年 90分 ドイツ カラー
監督:トーマス・ヤーン 脚本:トーマス・ヤーン
撮影:ゲーロ・シュテフェン 音楽:
出演:ティル・シュヴァイガー/ヤン・ヨーゼフ・リーファース/ティエリー・ファン・ヴァルフェーケ/モーリッツ・ブライプトロイ/ルトガーハウアー


1999/12/20/月 劇場(シネマ・カリテ)
共に末期の脳腫瘍、骨肉腫の男二人が、どうせ死ぬんだから怖いものなんかなにもない、とばかりに病院を抜け出す。海を見たことがないという骨肉腫のルディ(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)に「天国ではみんなが海の話をしている、海を見たことがなければ仲間はずれになるしかない」と脳腫瘍のマーティン(ティル・シュヴァイガー)が主張、車を盗み、銀行強盗をやらかし、まさしく怖いもの知らずにまっしぐら。

悪ガキみたいに気の強いマーティンと、気弱でピュアなルディは好対照。言うまでもなく、二人は同志的な、いわゆる男の友情をお互いに感じはじめる展開になり、これが女同士だとここまでサマにならないことに女の私はまさしく歯噛みするほどの嫉妬を覚えるしかない。マーティンの最後の望みはプレスリーファンの母親にピンクキャデラックをプレゼントすること。ルディの望みは二人の女とヤること。と、ここでも女の役割はお定まりの“母親と娼婦”であり、先日観た「ハイロー・カントリー」の時に感じたことを思い出してしまうのだが、その役割はあまりにはっきりと形式化されており、つまり、ここでの女のキャラは完全な小道具的脇役に徹しているのでそれほど気には障らない。基本的に私は、男の友情が恋愛にも似た色気のある、そしてそれ以上の崇高なる関係に昇華されているものに滅法弱いのだ……「昭和残侠伝」シリーズしかり。逃げる二人はいつのまにかマーティン=誘拐犯、ルディ=人質ということにされてしまっており、しかし実は共犯者同士。前者の一方通行の束縛関係と、後者の双方向の束縛関係、それぞれ別種の色気があるのがいい。

もう一組、こちらはそんな関係とは程遠い二人の男が出てくる。マーティンとルディが盗んだ車は実はギャングのもの。ボスから預かった100万マルクの大金がトランクに入った(ことをこの時点で二人は知らない)ベビー・ブルーのベンツを移動中、男の子をボンネットに跳ね上げてしまい(死んだかと思いきや、ムクリと起き上がる男の子が笑える)、この少年を病院に連れていくことになるのである。冒頭、ジョークをやり取りをする場面からこの二人、特に年若い方のアブドゥル(モーリッツ・ブライプトロイ。あ、ほんとだ、「ラン・ローラ・ラン」のマニだ)がアホなことが描かれるのだが、この場面では怪我をした少年にバナナを差し出す彼のマヌケさがなんといってもオカシイ。これがリンゴやオレンジだったらダメなんである。バナナじゃなきゃ。バナナって、なんかそれだけでコミカルにさせるオカシな効果がある。「DEAD OR ALIVE 犯罪者」や、「男はつらいよ 寅次郎真実一路」なんかでも忘れられないおっかしなバナナ登場場面があったもんなあ。

黒づくめのスーツのこの二人、誰が見たってタランティーノの系譜である。というか、タランティーノ自体あらゆるところからのパロディの(よく言えばオマージュの)固まりだから、どこにその源をおけばいいのかは怪しいところだが、監督のトーマス・ヤンや、製作にも関わった主演のティル・シュヴァイガーはそんなことは百も承知でやっていて、堂々と公言もしている。このあたり、もっとまんまパクリじゃねえかと思いつつ、めっぽう面白かったから許しちゃおうてな傑作、「SCORE」の室賀監督&出演者たちの場合とそっくりで、人間(映画ファン)の考えることは同じなんだなあ、とちょっと嬉しくなる。そのことで映画の国境が狭められ、どこの国の映画というのは関係なしに面白ければいい、面白くなければ映画じゃない!という気合はとても素晴らしいのだけど、逆に、何だか今はどの国の映画を見ても全部アメリカ映画みたいになっちゃってるよなあ、と感じることも事実。本作、確かにめたくた面白いけど、どこをどう切ってもアメリカ映画みたい、と思ってしまうのだ。もちろん国でその映画の個性が語られるべきではなく、作家の個性で語られるべきなのだが、そこまで到達するにはやはり並大抵の個性では難しい。その点、日本映画の作家たちにはかなり可能性があると思うが……。

本作が傑出しているのは、途切れることなく繰り出されるツボをついたギャグの数々である。デコボココンビのマーティンとルディはやることなすことズレまくり。まずガソリンスタンドで、強気に強盗しようとするマーティンを押しとどめるルディ、その二人の様子に「強盗は計画してからやるもんだ」と逆におさめる店主の構図が本作での基本的な形。銀行強盗先でも、マーティンが銃を突きつけたままじっとしているのに業を煮やした女性行員が「何か言わなきゃ先に進まないわ」と言い「俺の欲しがっているものを当ててみろ」というマーティンに奥の男性行員「お金ですね!」「ビンゴ!」なーにやってんだか!?はては防犯カメラに向かって自己紹介し出すマーティンに「録音機能がないのよ」と女性行員がツッコミ入れるのには爆笑!

こんなコミカルな場面の連続を容赦なく遮断して、マーティンの脳腫瘍の痛みが途切れ途切れに襲ってくる。それを介抱するルディ。最初にその発作が起こるのは、豪遊した一流ホテル。バスローブ姿でマーティンを抱きかかえるルディをやや高目のアングルでとらえたショットにおおお、と思う。薬が切れ、薬局に同じ薬をくれと懇願するも、劇薬だからと取り合わない店主に、ぶるぶる震えながら銃を突きつけるルディにおおおお、と思う。そう、私はこのルディにめっちゃ惚れ込みましたッ!いや、外見が好みなんで(笑)。なんか、ちょっとマシュー・ブロデリックみたいなんだもん。大きな瞳で童顔で。そしてついにギャング達に捕まった二人が、殺すぞと脅され、「もうすぐどうせ死んでしまうんだからかまわない」と、顔を見合わせて笑う場面、ギュッとお互いの手をにぎる場面は、もう、おおおおおー!なのである。

そんで、この場面にご登場なのは、おっとびっくり!なんと御大ルトガー・ハウアーである!!私にとってのルトガー・ハウアーは「ブレードランナー」よりも「レディホーク」。そうそう「レディホーク」はマシュー・ブロデリックがめっちゃ良かったんだよなー、とそんなことはどうでもいいのだけど、とにかくルトガー・ハウアーである。なにか久しぶりに見たけど、まるでマーロン・ブランドなみの貫禄!役柄もそんな感じの大ボスで、めちゃくちゃオイシイ役をかっさらい、やたらカッチョイイんである。この大ボスが、早くしないと間に合わないぞ、と二人の「海を見に行く」夢をかなえさせるため、無罪放免、二人は海へと車を飛ばす。

海岸に腰を下ろす二人。その後ろからのショット、マーティンが発作を起こし、横倒しにコトンと倒れてしまう。それを見つめやり、そして視線を前へと戻し、そのままじっと座り続けるルディ。劇中、ルディはマーティンのように苦しむ場面はなかった。マーティンよりも少し猶予があるということなんだろうが、私はなんとなく、ルディは実は瀕死の患者などではなく、実は海を見たことがなかったマーティンのためにあらわれた、救いの天使のような存在に思えてしまったのだ。それまではマーティンの発作の度にあわてふためいて、彼の痛みを取り除くために薬を口に入れてやっていたルディ。それがこの場面では、マーティンを静かに寝かせようとしているかのように、そばによりそい続けている。それが、もう彼を救えないことを知って、役目を終えたある種の哀しい安堵感に包まれている姿にどうしても見えてしまうから……。★★★★☆


ノッティングヒルの恋人NOTTING HILL
1999年 123分 アメリカ カラー
監督:ロジャー・ミッチェル 脚本:リチャード・カーティス
撮影:マイケル・コールター 音楽:トレヴァー・ジョーンズ
出演:ジュリア・ロバーツ/ヒュー・グラント/リス・エヴァンス/ジーナ・マッキー/ティム・マッキンリー/エマ・チャンバース/ヒュー・ボーンヴィル/ジェームズ・ドレイファス

1999/9/8/水 劇場(錦糸町シネマ8楽天地)
映画スター、アナ・スコット=ジュリア・ロバーツと、ロンドン、ノッティングヒルの街角の本屋さん=ヒュー・グラントがハマリ役すぎる!特に、ヒュー・グラント、こういう役似合いすぎるんだよなあ!オタオタして、ちょっとなさけなさそうで、“ハリソン・フォード似の男に妻を奪われた”というのもむべなるかな、と思えるような、でも誠実で、心優しい……。彼が友人にからかわれて見せる……特に「年をとっていい男が崩れつつある」、なんて、たれ目で笑いじわがステキなヒューになんてぴったりの言葉!を言われる時や、かつての想い人で親友の妻になった女性に「性を超越した友人として好き……あなたには性を感じなかったもの」なんて言われる時の、マイッタナア、なんていう両目を両手でおおって見せる苦笑がイイ!

映画スター、アナ・スコットはハリウッド人だけど、舞台がイギリスに設定されているのがいい。ジュリア・ロバーツ以外はほとんど全部がイギリス人俳優で、アメリカ映画にはなっているけれど、おもむきとしてはイギリス映画。ほとんど儲からない本屋をこれまたマイッタナア、てな感じで経営するヒュー演じるウィリアム(いかにもイギリス人な名前!)とアナが出会う街角が、ハリウッドやニューヨークだったらこの独特の“親密な空気”とでもいったようなものは出ないように思う。オレンジジュースをかけてしまったアナを自分の部屋に招き、お茶がいいか、それとも冷たいものがいいかとか、蜂蜜づけのアプリコットがあるけれど、蜂蜜の味しかしないんだとか、もう傍目で見ていて吹き出してしまいそうなくらい舞い上がるウィリアム。彼女がいったんそこを辞して、忘れ物を取りに再び戻ってくる時、唐突に彼にキスする……いかにも唐突なわけだけど、まあ、このウィリアムの誠実な感じに心打たれたのかな、と納得できないこともない(でもちょっとやっぱり唐突だな)。

再び出会うことになったアナとのデートが、妹の誕生パーティーとなる。アナの大ファンの彼女は大喜び、出席した友人も一様に驚くけれど、あくまで「親友の彼女」に対する態度で接するこれまた誠実な彼ら。うーん、類友だね。ここで一気に紹介されるこれら妹や友人各位が実にいいんだ!男運に恵まれないパンクでファニーな妹、ハニー、株取引の仕事をしているけれど駆け引きが苦手でどんどん部下に追い越されてしまうバーニー、料理が好きなのに料理が下手なマックスに、その美しく聡明な妻でかつてのヒューの想い人、不幸な事故で車椅子になってしまったベラ(この夫婦のお互いに対する献身的な愛情は心打たれる!)、などなど……。このパーティーで“だれが一番ミジメか”告白大会が開かれ、彼らの内面が充分に掘り下げられる。確かに脇役たちなんだけど、主役二人のラブ・ストーリーに邪魔にならない程度に……いや、引き立てる要素として彼らの人間的な魅力ある人生もしっかりと描かれる。

ああ、その友人たちよりも、この人を忘れてはいけない、ウィリアムのストレンジなウェールズ人ルームメイト(ウェールズ、と格別にコダワッているのがいいなあ)、スパイク!言う言葉は下品だし、やることなすこと全てクレイジーで、ウィリアムに迷惑かけっぱなしという感じなんだけど、ずっと一緒に住み続けていてウィリアムが「法律が変わったらスパイクと結婚するよ」というのもなんとなく納得できる、素直で心優しいところを彼もまた持っている。素直といえばホント素直、昔のヌード写真をバラまかれて傷心のアナがウィリアムの元に戻ってきて、彼らがイイ感じになっているのに浮かれまくって、「パブの連中にちょっと喋っちゃったかもしれない」せいで、マスコミが押し寄せてきて大騒ぎ。反省してケチョンとなっているスパイクの可愛らしさ!後に妹のハニーがアナのエージェントの電話番号をウィリアムに届けるのだけど、あれはその後ろに控えめにのぞいているスパイクの尽力なのではないかなあ。後にこのハニーとスパイクがカップルになるのが嬉しい!

アナと再会したウィリアムが彼女に別れを告げたことで、彼を慰めるために他の友人たちは「これで良かったんだよ」てなセリフを絞り出すんだけど、ただ一人、このスパイクだけが「お前はなんって大バカなんだ!」と言ってくれるのだ。そのことでもうダメかと思われたアナとの恋が、奇跡的に、そして実にドラマチックに大ハッピーエンドを迎える。帰国前の記者会見になんとか潜り込んで、記者になりすまして彼女に質問し、「永遠にこのイギリスに残る」と言わせてしまう!……このスパイク演じるリス・エヴァンス、どこかで見たことがあると思ったら、なるほど「ツイン・タウン」のかたわれ(どっちだろう(笑))のお方でしたか!着る服がないからとウィリアムの潜水服を借りちゃったり、グレーのブリーフ(!)いっちょでマスコミのフラッシュの前に出ちゃったり、とにかく独特のアナーキーなチャーミングっぷりが愛しい。どうでもいいことなんだけど、どうしても気になってしまう、ウィリアムの部屋の玄関に立てかけてある和服姿の日本の女の子のボード……一体あれは、なんなんなんだ??リス・エヴァンス曰く「あれはスパイクが作ったんだろう」……うーん、なんとなく納得できたりして!?

ハリウッド人、いやアメリカの、と言っていいだろう、イギリスの伝統や古典に対するコンプレックスをモロ出ししているのも面白い。いかにもハリウッド的な宇宙ものや潜水艦ものに出ているアナにヘンリー・ジェイムズの話を促すと、本当にマジな顔で「やっぱりそういうのに出るべきか」と問いかける彼女は、ほとんどジュリアの地だったりして?「鳩の翼」のタイトルを出してきたりするのも面白いよな……あれには、重要なアメリカ人キャラとしてアリソン・エリオットが出ていたんだもの。そしてアナはオスカーを取り、その後、本当にジェイムズ原作のコスチュームものをイギリスで撮影しているという設定にしているのだから……しかもしかも「オスカーなんてたいしたことないのよ」と言わせるのは、なんとなく昨今の「ほんとに演技力で選んでるのかい!」とツッコミたくなるようなオスカー選びに対する大いなる皮肉に聞こえるのだよなあ!

何一つ軌道を外れないロマンチックな大ハッピーエンドだからこそ、こうした細かいシニカルな味つけが効いてくる。まあ、なにより、単純にシアワセな気分になれるのが、イイのさあ!★★★★☆


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